天使のドレス-悩ましきドレス編(中編) [戻る]
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添田さんが出て行った後、楠さんが出てくる気配のない研修ルームを見て、僕はちょっと中を覗いてみたくなりました。
研修ルームのドアノブに手をかけ、そっとドアを開けると、中を覗き込むようにドアの隙間から顔を入れてみます。
部屋の中をきょろきょろ見回すと、不思議なことに人影は見当たりませんでした。

僕は不思議に思いつつも部屋に入り込み、部屋をよく見てみるのですが、やはり楠さんは見当たりません。
ただ、そこにはミリアのいつも着ているドレスが机の上に広げられて置かれていました。
長いスカートは机からはみ出すようにして垂れ下がり、なぜかそのスカートに向かって扇風機が首振り状態で回って、風を当てていました。

「おかしいなぁ?楠さんは?」

つぶやきながらなんとなくミリアのドレスに近づくと、なんとなくドレスの布に触れてみます。
いつもは楽屋でハンガーに吊るされた状態にあるドレスですが、いつもだいたい早くミリアに入りたい気持ちが先に立ってしまい、こうして衣装をじっくり見ることは無かったんですね。
操演終了後も、脱いだドレスはすぐにクリーニングに出すための箱に入れてしまうので、じっくり触ることもありませんでしたし。

ですが、こうして丁寧に手で感触を確かめると、改めてこのドレスの生地が、つやつやのサテンで出来ていることを実感します。
いつも、こんなツヤツヤツルツルの布が僕を締め付けて、シワを作って、擦れて、その感触にイッてしまうんですよね。

このウエストの辺りに巻き付く生地もほんとにツヤツヤぴちぴちで、物凄く苦しいんです。
いつも、こんな手触りのいい生地におなかの辺りをピッタリ覆ってるんですから、そりゃー感じちゃいますよね。
そう思ってそのツヤツヤした生地を優しく撫でるように触ると、背中に生えている羽がゆっくりと動きました。

「あれ?」

声や音を出したわけでもなく、ただ生地を触っただけですが何故かゆっくりと羽が動くその様子を見て、つい不思議そうにつぶやく僕。
羽の動きはすぐに止まるのですが、次に胸を収めるカップの部分に触れてみると、またゆっくりと羽が動きます。

胸を収めるカップは、いつものホビー21の衣装と同様に、少し小さめで、僕の固くなたモノはこのカップの中でいつもいつも本当に苦しんでるんです。
また次回もこの中で苦しむんだろうなぁって思いながら、そんな部分を指先で優しく撫でてみると、その僕の気持ちに反応するかのように、胸に付いた羽もゆっくりと動きます。
その羽が優しくカップを弄る僕の手を擦る感触は、手で感じるだけでもゾクゾクします。
普段、この感触を、このドレスのサテン生地を通して感じてるのですから、それは気持ちいいわけです。ピッタリピッチリとツヤツヤのサテンに巻きつかれたその上から、羽毛でさわさわと撫でられる感覚、と言えばその苦しさは想像できますよね?
僕はお客さんの声によってそういう感覚を無理やり与えられながら、ミリアを演じる訳ですから、その苦しさはなかなか体験できない物だと思っています。
お客さんに虐められながら、ミリアを演じ続けるのって、相当興奮できるんですけどね。

こうしてドレスを着ているミリアを想像して、ちょっぴり興奮しかけていると、扇風機の風が僕の身体に当たったことで多少曲がったのか、不意にスカートの裏側に風が入り込んだようで、ドレスのロングスカートがふわりと舞い上がるようにめくれ上がりました。
ふわふわのパニエも一緒になってめくれ上がったことで、目に飛び込んできたのは、スカートの中のレオタード。
以前説明したとおり、このドレスは、実はサテンで出来たハイネックレオタードの素材に、パニエやスカート、タイツ、袖などが繋げられて、さらに羽が繋げられている状態です。
スカートの中にはそのドレスの本体と言えるレオタードの、股間部分がチラリと見えたんです。

その光景に僕は思わずドキッとします。
いつも、ここに僕の呼吸口があり、僕はあの布の香りを嗅ぎながら、ミリアになっています。
もちろんその裏にはタイツや、元々ミリアが穿いている下着もありますから、実際にはさらにいろいろな香りが僕を包んでいるのですが、タイツとサテンの香りって、なんだかとっても興奮するんですよね。
なんとなく気になって、そのレオタードの股間部分に手を入れてみると、意外と蒸れていることに気づきました。
誰かが着ていた訳でもないのに、何故こんなに蒸れているのか不思議に思ったのですが、そのツヤツヤしたサテンの肌触りを感じたくて、つい指先でその股間を覆うはずの布をつつーっと弄ってみたりします。
サテンの気持ちのいい手触りが指先に伝わり、いつもこの感触を僕の大事な部分で感じているんだと思うと、さらに自分が興奮してくるのがわかります。
ただ、不思議なことに、この部分を指で触っていると、すごくスカートの中が蒸れてくることと、少しだけですが、この布が固くなっている気がすることに気づくんです。

弄ると固くなる布?

非常に不思議な現象でしたが、よく考えると、楽屋ではドレスは吊るされたままの状態で置かれているし、着ぐるみに入ってからこのドレスを手にするので、あまり素でドレスを触ったことがない僕は、今更ながらにこのドレスの不思議な部分に気づいてしまいました。
確かに着ぐるみに入ってこのドレスを着ると、僕が興奮するにしたがって、股間の部分が窮屈に感じることもあったのですが、それは僕自身が興奮しているからと言う理由以外にも、実際にここの布が少し固くなる現象があり、その固くなた感触が、締め付けられたように感じたのかもしれませんね。

不思議に思いながらも、その固くなっている触り心地が面白くて、ついつい指先で擦り続けると、ある瞬間に急にその固さが無くなっていく事に気づきました。
あえて言うなら萎えてしまった、とでも言うのでしょうか。
それと、スカートの中に突っ込んだ手に感じる蒸し暑さが、さらに増しているのも感じます。
本当に不思議なドレスですが、ホビー21で用意したドレスですから、きっとなんか仕掛けがあるんでしょうね。

そうやって不思議なドレスを弄っていろいろ発見していた丁度その時、研修ルームのドアが開いて、添田さんが部屋に戻ってきました。

「あ・・・」

目が合った僕は、思わずそう呟きました。

「あれ?栗田君じゃないの?何でここに。って言うか君はドレスの中に手を入れて何をしてるんだ?」

添田さんは慌てた様に言いました。

「ぼ、僕は添田さんと楠さんがこの部屋に入っていくところを見て、その後添田さんだけが部屋から出てきたから、気になってドアを開けたらこのドレスだけが部屋にあったんです。で、ドレスを見てたらいろいろ触ってみたくなって、触ってたらこのドレス、まるで生きているみたいにいろいろと不思議な反応をするんで、つい面白くなって・・」

添田さんは僕の言い訳を聞いて、やれやれ、と言った顔をします。

「なるほど。僕と楠君がここに入るのを見た、と。」
「ええ。楠さんは、今はどこに?この部屋にはあのドア以外の出入り口は無いですよね?」
「・・・・・」

僕がそういうと、添田さんはしばらく黙ってしまいました。そして、しばらくの沈黙の後、うんうんと納得するように頷くと、こう切り出しました。

「いずれは話すつもりだったんだが、予定より少し早くなったかな。まぁいいか。」
「話す?」
「ああ。実は今、ホビー21の内部でもかなり限られた人しか知らない、新しいプロジェクトのためのテストをやってるんだ。」
「テスト?」
「そう。リモコンなどの遠隔操作が効かないエリアで、着ぐるみの表情を変化させたり、衣装の小道具などを動かすためのテストだ。」
「あー、それで音声に反応するドレスを試しているって事ですか?確かにこれなら電波を出すことが難しい場所でも羽を動かせたりしますし」
「音声に、、か。まぁ当たらずとも遠からず、だ。」
「え?じゃあ音声ではないんです?これ。」

僕はそういってドレスを指差します。

「音声以外にも反応する。それは分かってるんじゃないのか?」
「んー。まぁ確かに、なんか僕が興奮するような事をすると、羽が勝手に動いたりしましたから、僕の興奮とシンクロしているのかも、とは思いましたけど」
「うーん、それもちょっと違う。」
「え?じゃあ何に反応しているんですか?」
「隠していても仕方が無いから正直に言おう。ホビー21は、新しい着ぐるみを作ったんだ。」
「新しい着ぐるみ、って、、僕が入ってるミリアの事ですか?」
「そうじゃない。ミリアは確かに新造の着ぐるみだが、あくまでも今までの着ぐるみの構造を踏襲している。今回作った着ぐるみは、そうではないんだ」
「じ、じゃあ、その着ぐるみって、いったいどんなやつなんです?僕もちょっと見てみたい気がしますし」
「見てみたい、と言うが、君は何度も見ているんだ。」
「え?僕が?新しい着ぐるみを?」
「そうだ。君はホビー21の中でもトップクラスに見ている回数が多い人だ」
「うーーん、思いつかないなぁ。なんだろう・・」
「今、目の前にいるんだ。その着ぐるみは」
「ま・・・まさか・・・・添田さん?」
「アホっ!そんなわけ無いだろう」
「そりゃそうですよね~って。じゃあ、いったい何処に??」
「今さっきまで君が触れていた」
「え?触れていた?触れていたって言うと・・・・・・ま・・・・・まさか・・・これ?」

そう言って僕は再びドレスを指差します。
無言でゆっくり頷く添田さん。

「え!?え~~っ!?」

驚く僕。
添田さんはゆっくりとドレスに近づき、ドレスの背中のファスナーを開いて、裏地を露出させます。裏地もツヤツヤのサテンなのですが、わき腹付近をよく見ると生地が折り重なっている部分がありました。
その折り重なった生地を掻き分けるように開くと、その中には一筋のコンシールファスナーのようなものがある事に気づきます。
右脇の下から、右の腰まで縦に一直線に、と言えばいいのでしょうか。
ここをツーッと開くと、次第にドレスの身体の部分がむくむくと膨れ上がり、脇のファスナーが開いた場所から、ぬっと全身をシルバーのラバーのような素材で覆われた人が出てくるんです。
それまで軽かったドレスが急に重みを増したのか、机がぎしぎしときしむ音もします。
僕は呆然としながらその光景を見守ると、手際よくその全身ラバーの人が、着ぐるみの中から出てくるように、ドレスの中から出てきました。

「・・・・・」

あいた口がふさがらない、と言う感じの僕でしたがすぐに添田さんはいいます。

「このことは絶対に他の仲間には言わないように。じゃないとミリアを降板することになるからね」

ラバーに覆われた人は机からよいしょっという感じで降りると、床に立ちます。背丈は僕と変わらないぐらい。目にクリアパーツをつけていることや、股間の造形を見ても、それが気ぐるみのインナーであることは分かるのですが、僕らの入る気ぐるみのインナースーツは白。
ですが目の前の人はシルバーのスーツなんですね。
その人は、背中に手を回すと、自力で背中のファスナーを下ろして、自らの顔を、インナースーツから露出させます。

「よいしょっと。ふう。」

一つ深呼吸したその人は、部屋の中から忽然と消えた楠さんでした。

「いやー、気持ちよかったっす。弄られて正体ばらしちゃおうかと思ったけど、我慢したらもっと弄ってもらっちゃって」

楠さんは笑いながらそう言いました。
僕は相変わらず言葉にならずに呆然としています。
すると、添田さんが言い始めます。

「驚いただろう?最近の研究チームが発見した、特殊な電磁波の組み合わせを使えば、人がその機能を損なうことなく、紙のように薄くなれたり、重さも感じなく出来るんだ。私もはじめは冗談かと思ったが、実際にこうして、人が布の中に入れるんだ。もちろん人間としての骨格を無視した折れ曲がり方をしても中の人間は痛みを感じない。感じるのはその布の締め付け感やシワ。つまり着ぐるみがその衣装を纏ったときに感じる感覚と同じ感覚だけなんだ」

添田さんがそう説明すると、楠さんが付け加えるように言います。

「いや、それ以上ですわ。このドレスであれば、本当にダイレクトにドレスの生地のつややシワ、ミリアの身体に張り付く時のフィット感を感じるんです。着ぐるみの中に伝わる感覚を10とすると、僕が感じるのは20ぐらいかも。そのぐらい悩ましく感じるんですよ」
「だそうだ。このシルバーのインナースーツは、その為のスーツだ。これに入ってドレスに入る事でドレスと演者が一体となる。中に入ると、両足で胴体に巻きつくように座る。ミリアがドレスを着たら、ドレスの中の人は両足でミリアの腰に絡みつく。両手は胸にある。胸の中にパッドがあり、そこに圧電センサーがあって、ドレスの中から手を動かすと、その動きに従ってセンサーが反応し、羽が動くんだ。羽が動いて重みで胸の締め付けが変化する部分もあるが、むしろ羽を動かすためには、中で楠君が手でドレスの胸を締め付ける必要があるんだ。結果的にドレスを着ているミリアの胸も締め付ける事になるから、実際羽が動くとミリアの中にいる君も感じる」
「と言うわけで、いつもミリアの胸を揉み揉みさせてもらってます。気持ちいいでしょ?」
「呼吸は他の着ぐるみと同じで、大部分は股間の布から取り込んでいる。普通のドレスよりも息苦しくなる速度が速く感じるだろ?」

僕は無言で頷きます。

「楠君の呼気も混じるから、倍のスピードで呼気がスカートの中に充満することになるんだ。あと、大事なのが股間パッド」
「それなら、栗田さんも場所に気づいたでしょ?」
「そうなのか?」

楠さんの言葉で、先ほどのことを思い返します。固くなった布と弄り続けたら柔らかくなった布。
股間を覆うレオタードの布です。
僕は頷きます。

「そうか。気づいていたならいい。そう。股間の布だ。演者が中に入るとあそこに格納される。着心地とかは楠君に説明してもらったほうがいいかもしれないな」

添田さんの一言に、うん、と頷いた楠さんは、説明の続きを始めます。

「着心地って言う意味では、さっき説明したとおり、ドレスの布に与えられる感度は、着ぐるみの感じる感覚の2倍ぐらいになるかな。でも着ぐるみが着ているブラやら下着は、ドレスの下に着るものだから、ドレス側にはその感覚は伝わらないのでその点は楽かも。あと呼吸も、下着やタイツ越しではなく、サテンの表面に加工があってそこからしているからミリアの中から呼吸するよりは楽かもしれないな。臭いもスカートの中の臭いに比べ、少しだけサテンの香りが強くする程度で、下着とかタイツの臭いは含まれないしね。そこはちょっと残念だけど」

そう言って楠さんは、楽しそうに軽く笑いながら説明します。

「その変わりに、股間パッドが股の間って言ったでしょ?あれが相当苦しいんだよね。ほら、ドレスに入ると、基本的には中からドレスの布を動かすことはほとんど出来ないから、ミリアの股に挟まると、常にミリアに股で扱かれている状態になるんだよ。ミリアの股ってすごくエッチだからかなり苦しいんだよね。栗田さんが感じてスカートの中でひそかにもじもじ足を動かすときとか、猛烈に気持ちいいんだけど、ドレスの中からじゃ、何も出来ないからミリアの太股に弄ばれまくるしかないんだ。栗田さんも、僕のが固くなってるのは感じることあったでしょ?じわじわと股間が締め付けられる感じで。でも、逆に、レオタードとしてミリアの身体に密着しているから、僕もミリアの下腹部の固さは感じられるんですよ。僕が興奮して固くなると、多分ミリアの中で締め付けが増して、あー、栗田さん感じてる、って分かっちゃうから余計に興奮するし。それに、羽を動かすために胸を弄ると、栗田さんが感じてるのもよく分かっちゃうから、こういう羽の動かし方に弱いんだーってのもある程度分かるし。」
「そ・・そんな・・・・」
「でも、さっき言ったように、着ぐるみが感じる行為は、僕自身にも跳ね返るから、実際に胸を弄ってると、胸のカップの変形は僕自身にも伝わるし、栗田さんが気持ちよくなって、呼吸も荒くなっていると、ドレスのお腹のシワが動いて、それは僕も感じてしまうから、栗田さんの呼吸が荒くなると僕まで一緒に気持ちよくなっゃうんですよね。もちろんスカートのひらひらフワフワも感じちゃうし」

何と言うことでしょう。
僕はせいぜい音声センサーで稼動する程度なんだろうと思っていたドレスの羽は、ドレスの中に楠さんが入り、操作していたんです。
しかもあのドレスの気持ちよさそうな生地感やシワを、ミリアの中にいる僕の2倍もの感度で。

「スカートのひらひらの感覚はかなり悩ましいんですよ。それは倍じゃ効かないかも。スカート表面にも触覚はあるので、表面をさわさわ触られるだけでも中には気持ちよく伝わるし、何より揺れるとその動きも伝わるのでかなり苦しいんですよ。無意識なんでしょうけど、ミリアって結構手がスカートを擦るから。」

そりゃそうです。あれだけ長くてボリュームのあるスカートです。両手を普通に下ろしていれば、自然にスカートと触れ合ってしまいます。つまり、気にしたことはありませんでしたが、いつもサテングローブで包まれた手で、スカートを擦っているんです。

「で・・・でも、ホビー21の着ぐるみって、中の人が自力で出られないものは認められないんじゃ無かったでしたっけ?」

僕は精一杯の抵抗のつもりで、ホビー21の規定ではこのドレスを着ぐるみにするのはおかしいと説いてみます。

「それが、意外と出られるんですよ、これ。自力で」
「え?だって手足は使えないんじゃ?」
「中に入ると足と股間は固定されるけど両手は割りと自由なんですよ。で、右手をこうずらして、ファスナーに手をかけると、簡単に開く」
「な・・・なるほど」
「もちろん布を折りたたまれると開け辛いですし、例えば箱にしまわれたりすると、あけても空間が無いから出られませんけど、まぁ折りたたまれても特に痛くないですから、そのときは あけてもらうまでじっとしてるか、声を出して助けを呼ぶか」
「え?声も出せるの?」
「ええ。ミリアが着てる時に出したら、ミリアも大変ですけどね」
「何で?」
「だって、顔は胸と胸の間辺りに収まるんですが、このドレス、胸パツパツでしょ?で、声は布を震わせて伝えるんで、多分胸がジンジン振動してかなり切ない気がしますよ。まぁ実は他にも、緊急の時に中から外に情報を伝える装備があるんで、サポートの人が誰かいれば、万が一でも助けてもらえますよ。最悪の場合、着ているミリアを無視すれば、無理やり出てくることも出来ますしね」
「なるほど・・・・」

僕はこれらの説明を聞き、しぶしぶ納得するしかありませんでした。
ミリアのドレスには楠さんが入り、楠さんは、ドレスの生む感覚を感じながら、ドレスの中から羽を動かしているんです。ミリアが感じていることもすべて分かった上で。
その事実に納得するとともに、僕は、そのドレスを見て、なんて悔しいドレスなんだろう、と思ってしまいました。

「そう言えば栗田君は今日は仕事じゃないよね?」

僕が言葉を失っていると、添田さんが言いました。

「あ、今日は、ちょっと練習しに来ただけなんですけど・・・」
「なるほど。じゃー丁度いい。ついでだから実際にミリアのドレスを着て練習したらいいじゃないか」

添田さんがそう提案すると、すぐに楠さんも言います。

「おぉ。いいですね。僕も実際に着ぐるみに着られてる方が練習になりますので、栗田さんがそれで良ければ、二人で練習しましょうよ」

楠さんは楽しそうに言いますが、つまり、僕はミリアに入って、その上から楠さんを纏うと言う提案をされているんです。
今回限りなら拒否もしたのですが、今後、僕はそう言うミリアを演じ続けなければいけません。
となると、相当悔しい提案ではあるのですが、実際に楠さんが入っているドレスを、ミリアが着て、練習する、というのが一番妥当なんですね。
そう考えると、添田さんの言う提案に乗るのが自然です。
こうして、僕はしぶしぶながら、添田さんの提案に乗り、ミリアを演じる練習をすることになりました。


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