中の人体験してみませんか?「第二話」 [戻る]
[前へ] [次へ]


駆け寄ってきたその影の正体に気付き、オレとあっつんは息を飲みます。
それはアンドロイド・レイラ本人でした。
オレ達てっきり係の人が迎えに来るだけだと思ってたんですよね、なのにまさかのレイラちゃん登場ですよ。
予想外の展開に二人してキョドっちゃいました。
ここに通い慣れてないあっつんはもちろん通い慣れてるオレも実のところ照れがちで、こんな至近距離でレイラを眺めたことって殆ど無かったんですよね。

レイラは金髪に水色の目を持ったアンドロイド、青くメタリックに輝くぴったりとした衣装に身を包んでいます。
そしてそのプロポーションはモデルのようにスマートでした。
その姿を見るとオレは今更ながら不安になってきました、本当にオレの体型でこんなキャラの内臓が可能なのか?って一気に不安になっちゃいました。
O川は電話で「そこは気にしなくていい」って言ってたんですが、その理由が分かるのはもうちょっと後なんですよね。

オレが不安に包まれてるところにもう一人、レイラを追って男性スタッフがやって来ました。
彼の顔にも見覚えがありました、いつも園内でレイラのアテンドをしてる人です。
手に持った資料とオレ達二人の顔を照らし合わせた後、「スタッフの白河です、モニター役のお二人ですね」と彼は確認を取りました。
そしてオレ達はレイラと彼に案内されてホビー21ブースの奥の奥、スタッフ専用らしい通路を抜けた先の一室に通されます。

殺風景なスタッフ通路と違い、そこは独特の雰囲気を持った空間でした。
まるでアンドロイドを寝かせてメンテナンスする為に作られたようなベッドや壁に埋め込まれた大型モニターがあります。
かと思えば可愛い衣装が揃えられた衣装かけに椅子やテーブル、一面鏡の壁まで。
あえて形容するならば近未来の女の子の私室でしょうか。
ただオレのリアル私室も割と広い方なんですが、ここは更にその倍くらいの広さがありましたね。
更に奥に続く扉もいくつか見えます。
この部屋の中を見渡しますがオレが着る用のレイラの着ぐるみはここには見当たりません。
なので扉のどれかの中に隠されてるのかなってその時は思ってたんですよね。

白河さんの説明によるとここはレイラちゃん専用の控室とのことでした。
まず全員をテーブルに着かせると白河さんは書類を取り出します。
オレ達にサインさせる為の誓約書です、初めに書いた通り「ここで知り得た情報は一切口外しない」って誓いを立てさせられました。
なので重ね重ね、この文章の内容は口外無用でお願いしますね!

ただ、誓約書の内容は細かく確認させられたものの、それ以外の細かい文面は殆ど頭に入りませんでした。
なんせテーブルを挟んだ真正面にレイラが座っていたからです。
「どんな人が中に入ってるんだろう?」とか「今からこの中に入れるのか」とか考えだすと集中しろって方が無理ですよね。

白河さんの説明がひと段落したところでオレはいよいよだと思い、早くレイラに入ってみたいと伝えます。
目の前で他の人が入ったレイラを見せつけられたままでは我慢できないと。
あっつんも付き添いとはいえホビー21の着ぐるみの秘密を前にオレと同様限界が近い様子。
ですが白河さんは「順を追って説明するから」と焦るオレ達をなだめます。
そして彼の口から信じられないことが伝えられました「二人とも勘違いしているようだけど、このレイラは人が入ってる訳じゃないんだ」と。

もちろんそんなことを言われて「はいそうでしたか」と素直に納得するわけにはいきませんよね。
ですがこの後オレたちは目の前の「事実」を前に納得せざるを得なくなってしまいます。

まず白河さんはレイラの身体に耳を当てて音を聞いてみるように言います。
その言葉に従い、オレ達はドギマギしながらもレイラのお腹のあたりに耳を当ててみました。
すると驚くべきことにそこから聞こえてきた音は人間の発するものとは全く違ったものでした。
「ウィィィン」「プシュゥゥゥ」「カチカチッ」といった明らかな機械音が聞こえます、逆に呼吸音のようなものは聞こえないんです。
バルブから溜まった空気が解放されるような音も聞こえるのですが、人間の呼吸音にしてはスパンが長すぎますしタイミングもランダム過ぎました。

次に白河さんの指示に従ってレイラはベッドに横たわります。
そして白河さんが手元の端末を操作するとレイラ目にかすかに灯っていた明かりが消えて、その身体は全く動かなくなってしまいました。

そこからは白河さんに従い3人で協力してレイラの衣装を脱がせることになりました。
青いストレッチエナメルでできたミニのワンピとショートパンツそれにタイツと手袋にショーツといったパーツに分かれてるんですが、どれも見た目以上に複雑な構造をしてて3人がかりでも脱がすのは一苦労だったんですよね。

そしてレイラは真っ裸になった訳ですが、この後信じられないことが起きました。
白河さんがレイラのお尻の割れ目に手を突っ込んだかと思うと、ぐいっとお尻の穴を押し広げます。
するとレイラの皮は信じられないくらい伸びて中から銀色のボディが顔を出しました。

皮をはぎ取られたそれは一見メタルヒーロー系のヒロインキャラのようにも見えます。
その全身はメタリックな硬いパーツに覆われていますが、胸や股間部分、それに関節のところどころはシリコンのような柔らかいパーツで覆われているようです。
ですがリングむき出しの首の部分をはじめ、どんなに細い女性でもこの中に隠れるのは不可能だと思われる構造があちこち見て取れます。
白河さんは更にダメ押しといった風にヘッドパーツの銀色のカバーを外しました。
中には機械のパーツがぎっしり詰め込まれてました、とても人間の隠れる隙間なんて見当たりません。
実際に中を見せつけられた以上、オレ達は今まで見てきたレイラの正体が本物のアンドロイドであることを認めざるを得ませんでした。

恐らくこれを読むコミュの皆さんにとってもこの事実は信じ難いものかと思います。
ですがそう考えるとホビー21が何十人もの人間離れしたナイスプロポーションを持った内臓を揃えられる理由も、着ぐるみの頭部に呼吸穴が見当たらない理由も説明がつくわけです。
ただ、諦めきれないオレは脱がされた皮の方も着ることができないか調べました。
ですがボディ部分のラバーは信じられないくらい良く伸びるのに、その頭の部分は形状保持のせいか他の部分ほど伸びは良くなかったんです。
中の空間はせいぜいマネキンと同じくらい小さな頭でないと入りそうにないですし、仮に被ることが出来ても呼吸のための穴が一切空いてなのであっという間に窒息してしまうに違いありません。

レイラの着ぐるみを着れると思ってたオレはこの事実にかなりショックを受けました。
それ故暫く放心状態が続き、このあたりの記憶は本当に曖昧です。
ただ、レイラをこのままの格好にしててはあんまりだということで、再度皮をかぶせ衣装を着せ、ソファに移し替えて座らせたように思います。

そんなオレに白河さんは声をかけます、「そろそろ中の人になる準備をしてもらわないと困る」と。
オレはまるで訳が分かりません。
そりゃそうですよね、レイラはアンドロイドだったのにどうして中の人が必要なのか?どうやったら中に入れるのか?

すると、白河さんは部屋の奥にあった扉を開け、中からいくつかのものを取り出してきました。
それはぱっと見、VRゲーム用のゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)とグローブに見えました。

オレは言われるままそれらを装着します、そしてそのツールにスイッチが入れられました。
するとゴーグルの内側に水色に染まった光景が映し出されます、そこは先程までと同じこの部屋の中のように見えます。
ただ、目の前に信じられないものが立っていました。
それはゴーグルとグローブを装着した俺自身の姿だったのです。
あっつんも信じられないものを見るような視線をこっちに向けています。

驚いたオレは自分の手に目を落とします、するとオレ自身のそれより一回り小さい手のひらにはストレッチエナメル製の青く輝く手袋が嵌められてました。
ようやくオレは理解します、VR技術によって今のオレはレイラ自身になっているのだと。
いえ、水色の視界はレイラの目に嵌められたグラスの内側から覗いた視界に違いありません。
つまりレイラの皮の中に閉じ込められた銀色のアンドロイドボディ、それとオレの意識が重なっていたのでした。
レイラの中の人になるというのはつまりそういうことだったんです。

レイラを操縦するためのツールは他にもありました。
上下一体になったて首から下を覆うジャンプスーツにシューズ、それとゴムのような素材でできたパンツです。

もう一つの扉の先は個室トイレになっていて、オレは白河さんの指示に従ってそこで着替えました。
パンツは何のために必要なのか分からなかったんですが、中にはペニスを差し込むための穴が開いてました。
恐る恐るそれを履くとなんと驚くことに股間のモノが外からでは分からないくらいまっ平らになっちゃいます。
オレはびっくりしてその上から股間を触ると、その指の刺激はさわさわと非常に切ないものとなって中に伝わりました。
その刺激のあまりの気持ちよさにオレは股間にどんどん血が巡っていく感覚を得ます。
ですがそれでもなお外から見た股間の大きさは変わりませんでした。
必要性こそ理解できませんでしたが、このパンツに込められた技術力には感心せずにはいられませんでしたね。

そんなこんなで着替えたオレは先程までこのVR装備が置かれていた部屋に一人籠ります。
そこはさっきまでの部屋とは打って変わって一面真っ白な壁に囲まれた小部屋でした。
床は柔らかく壁にもまんべんなく緩衝材がひかれています。
こここそがレイラを操縦するためのコックピットでした。

ゴーグルのスイッチを入れると再び視界が水色に染まります、再びレイラの視界になったのです。
そのまま体を動かすと、今度はレイラが立ち上がりました。
VR装備一式を身に付けたことでオレがとった行動がそっくりそのままレイラにトレースされるようになった訳です。
オレが歩くとレイラも歩きます、更にそれに加えコックピット部屋の床もベルトコンベアのようにスライドし、いくらオレが動いても壁に激突しない仕組みになってました。
更にこのジャンプスーツはレイラが肌で受けた刺激を正確にオレに伝えます。
後ろから肩を叩かれても気付けないようでは演技に支障が出ますからね。
但しオレが声を出したところでレイラには反映されません、着ぐるみに入ってる時と同じように身振りを駆使して意思疎通していかなければいけません。

ここまで聞くと本当に着ぐるみの中に入ってるのと変わらない状態だと感じられるかもしれません。
ですが違う部分だって多いんです。
一番違うのはやっぱり「快適さ」ですかね。
今着ているジャンプスーツは非常に通気性のいい素材でできているようで、どれだけ動いても熱や汗がこもる感覚が一切無いのです。
コックピット部屋自体も空調は完璧と言っていいほど効いています。
白河さんによると操縦者の体温まで常にモニターされてるようで、その状態によって細かく温度調節してくれるのです。
更に部屋の酸素濃度まで調節する機能がついてるらしく、激しく踊った後だとしても息苦しさは一切ありませんでした。
確かに一般のお客さんにとってはこれらの機能は素晴らしいものかもしれません。
ですけどオレみたいな着ぐるみフェチにとっては物足りない事この上なく感じましたね。
あくまで操演じゃなくて操縦ってイメージがつきまといます。

実はレイラはコックピット部屋から操縦しなくてもオートで動かすことは可能だそうです、きっとさっきまでのレイラの動きもオートによるものだったんでしょうね。
ですが特殊な動きが必要な時はいちいちその動きをプログラミングしなくても、こうやって操縦することで多彩な芸が可能になるのだと白河さんは言ってました。
この機能を利用すればレイラは一瞬で一流のバレエダンサーにもマジシャンにもプロゲーマーにだってなれちゃうって訳ですね。


[前へ] [戻る] [次へ]