由佳里のバースデー(5話) [戻る]
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 なんとか瞬きを自動モードに戻す事に成功した様子の由佳里。
 ようやく、自由に反応する事が出来るように戻った友達は、今頃由佳里の中で、思う存分固くなった物を反応させて、由佳里の生み出す快感を独り占めしているはずです。
 ですが、もちろん僕から見た由佳里は、瞬きが自然に戻った事を除けば、先ほどまでと殆ど様子は変わっていません。
 しばらくして、サポートメンバーが数名、控え室に入ってきます。

「おっ。と、これはお楽しみ中ですか?」

 スタッフの一人が冷やかしてきましたが、僕は照れ笑い。

「あはは、これは、いや、そう言うのじゃなくて・・・」

 僕が照れ笑いを浮かべて取り繕っているのに、由佳里は僕に身体を預けたまま離れる気配はありません。
 由佳里は、せっかくだから呼吸も整えてしまうつもりだったようですね。

「ほら、この子着ぐるみでしょ? ちょっと疲れたって言うから休ませてただけですよ・・・ははは」
「あー、なるほど。確かにその身体だと大変そうだもんなぁ。って言うか由佳里ちゃんは着ぐるみに入りっぱなしで大丈夫なの?」
「あ、ええ。そこはまぁ大丈夫です。うちの着ぐるみは、こう言う環境でも耐えられる仕組みがあるので、演者がギブアップしない限り演技は続行できますよ」
「へー。凄いなぁ。どういう仕組みか分らないけど、ほんとに良くできた着ぐるみですもんねぇ。ゴムの身体だとさぞや苦しいんだろうなぁって思っていましたが、意外と平気なんですねー」
「そうなんですよ。まぁ辛くないと言うと嘘になりますが、見た目ほど大変ではないでしょうね」
「なるほどー」

 現場のスタッフにはこう言って取り繕いましたが、実際、着ぐるみの放熱機能はあっても、このドレスに全身をくるまれている状況では、由佳里の中が蒸し風呂である事は間違いなく、事実スカートの中から漏れていた空気は、その灼熱地獄を僕に教えてくれていました。
 もちろん着ぐるみの演者は、このぐらいの熱には耐えられる訓練を受けているのですが、それは単に暑さに強いと言うだけであり、その他の色々な条件を考えると、由佳里の裏側は、多分スタッフの想像以上に過酷なはずです。
 なにしろ、ただ蒸し暑いだけではなく、息苦しい上に、ひたすら気持ち良くさせられ、しかもそれを長時間寸止め状態で保たせ続けるのです。
 こんな環境で、可愛らしい女の子を演じる事の苦悩を知ったら、きっとスタッフは絶句するはずです。
 そして、そんな環境は、確実に僕に寄り添う由佳里の中に存在しているはずです。

「ちょっとドレスが重いらしくて、寄りかかっていたいみたいなんで、休憩中こうしてるみたいです」

 僕のこの言葉を聞き、由佳里がムクリと起きあがって、スタッフに向かって、ウンウンと可愛く頷いて、また僕に寄りかかって呼吸を整え始めます。
 ですが、たったこれだけの、起きあがって頷いて寄りかかる、と言う動作の間に、せっかく落ち着いてきた呼吸が、また幾分激しくなっているのが分りました。ドレスと身体の産み出す快感のせいなのか、相変わらず遮られ続けている空気のせいなのかは分りませんが、またちょっとだけ、由佳里の中は羨ましい状態になっているようでした。

「じゃ、そろそろ着替えますかね」

 スタッフの声で、僕は由佳里にトントンと肩を叩いてあげます。

「そろそろ時間だってさ。着替えに行ける?」

 可愛らしく顔だけを僕に向け、僕を見つめる由佳里に向かって伝えると、ウンと頷いて、その場でスッと立ち上がります。
 まるで、さぁこれらはまた本当の由佳里だぞ、と言うかのごとく、弱々しい由佳里ではなく、さっきまでの可愛らしくて美しい由佳里に戻っていました。

「空気、逃がさないと着替えるときに熱気がバレるよ?」

 僕が小声で由佳里に告げると、軽く頷いて、他のスタッフが離れている事を確認し、くるりとその場で二回転ぐらいターンしてスカートをフワッと広げます。
 一気にスカートの中の空気を押し出すと、その漏れ出す羨ましいぐらいに熱の篭もった臭う空気が拡散し、すぐに由佳里は普通の状態に戻ります。
 スカートの中の空気を逃がした後は、ドレスを脱ぐまでは極力呼吸を減らし、スカートの中を涼しく保っておく必要があるので、ここから先はスピード勝負です。
 ですが、身体の回転が止まった瞬間、スカートが軽く身体に巻き付き、その瞬間に一瞬からだがぴくんと反応したのを僕は見逃しません。
 この手のドレスで、スカートが巻き付く瞬間、裏のパニエがスカートの巻き付く力で、身体を締め付けるように巻き付いてくるので、実はかなり感じるんです。
 我慢していた役者がイク事も可能なぐらい、かなり気持ちのいい瞬間なのだといいますが、由佳里は一応平気な顔でいます。
 ですが、僕はつい、質問します。

「今の、平気? 苦しいなら理由考えてスカート捲り上げて入れ替えるけど・・・」

 僕の提案に由佳里は、少しだけ考えて、ウンウンと頷いて指でOKサインを出しました。

「あ、大丈夫なの? それならいいんだけど無理しないでよ? ホントに」

 すると由佳里はまた少しだけ考えて、ウンウンと頷いて、由佳里が手を掴んで僕を引っ張り、僕をぐいっと引き寄せて、僕の手に自分の顔を頬ずりしてくれました。
 ありがとうという仕草だったのでしょうか?
 その手に当たった顔の柔らかな感触は、本当にドキドキすると共に、こんなソフトな肌触りを持つ顔の中に密閉されている友達を思うと、下半身が熱くなるのを感じてしまいました。
 僕の手の感触は、由佳里の中の友達の顔にも伝わっていたのでしようか?
 そんな僕の疑問を気にする様子もなく、由佳里は直ぐに僕から離れ、着付けの担当スタッフについて行きました。
 本来なら僕も着付けを手伝うはずなのですが、この間に色々やることがあるので、着付けは専門のスタッフに任せています。
 ダッシュで会場に戻ると、次の余興である由佳里のダンスの為に、ステージの正面にダンスのスペースを設けます。
 と言っても、いくつかの装飾品を片付けてスペースを作るだけなんですけどね。
 約五分もあれば準備は完了し、再び由佳里を迎えに戻ります。
 一応着替える為に用意された時間は15分。
 着替えた後も別のカラーのドレスなので、そう言う意味では、インナー類の着替えはしなくていいのですが、それでも結構ギリギリの時間です。
 かなり急いで着替えないといけない気がするので、僕はゆっくり戻って部屋の前に辿り着きます。
 先程僕がこの部屋を出て、約10分ぐらい経った頃でしょうか。
 すると、表に、別のホビー21のスタッフが由佳里を連れて出て来ました。

「おぉ。着替え早いじゃん」

 僕がそう言うと、由佳里は可愛らしくVサインしています。

「ええ。今日は準備万端だったので少し早く出て来ました。次の準備も既に始めてますから、次もすぐですよ。」
「お~。衣装チェンジの準備前倒しはありがたい。お客さんの前からいなくなる時間は短い方がいいからな。」

 僕の言葉にウンウンと頷く由佳里。
 そして、その由佳里は、エメラルドグリーンに輝く綺麗なドレスを纏っていました。
 先ほどまでの薄い水色のドレスとは違い、ハイネックですが肩は露出している様子。
 袖も全く無く、ちょっと濃いめのグリーンのサテンで出来たロンググローブを身につけています。
 肩が出ている分大人っぽいですが、ハイネックなデザインの関係で、上半身はかなり胸が強調されて見えます。
 裏に着ているはずのパニエや補整下着は時間の関係上外せないでしょうから、その上から着ても違和感が無いドレスを選んでいますが、そのせいもあって、相変わらずスカートは床にくっつくほどに長いもの。
 着替えても、由佳里の中の友達が、息苦しさから逃れる事は出来ないんです。
 まぁ着替えているときだけ、ホンの一瞬だけの外気と接する事は出来たはずですが、その後はすぐに、またこの重装備なドレスによって外気が遠くに遮られてしまうわけです。
 綺麗なドレスは、エメラルドグリーンベースではありますが、この色は全てスパンコールで出しているようで、かなりキラキラと綺麗です。
 ウエスト部分は幅の太くて濃い色のサテンのリボンが巻かれ、背中で結ばれていますし、右の胸に濃いめのグリーンの大きなコサージュが着いています。
 背中のリボンは、先程のドレスのような、前に力がかかるほどの重さがない飾りですが可愛らしさは強調されています。
 スカートはプリンセスラインで、後ろ側にボリュームがある感じ。
 先程のドレスの時とは違い、十段ぐらいのティアードスカートになっていて、細いリボンがクルクルと何回転かスカートに巻き付いてデザインされているのもアクセント。
 かなりフワフワヒラヒラが強調されたスカートと言えます。
 このスカートがタイトスカートであれば、このティアードスカートのヒダヒダが裏側の身体に悩ましく伝わる所ですが、ボリュームたっぷりのパニエが間に存在するため、さすがにこのヒダヒダが裏に伝わる事はないはずです。
 ですが、生地が多いはずなので、つまりスカートの重量は重く、その分パニエが身体を押さえつける圧力も強まっている気がします。
 もちろん真実は、実際にこのドレスを纏っている由佳里だけが知る世界なのですが、僕も少しは想像出来てしまうところが辛いところかもしれません。
 ドレスのデザインから、袖が無い分、腕の動きが胸に影響を及ぼす率は、先ほどのブルーのドレスよりはマシと言う気はしますが、胸を覆う布がハイネックによってのみ支えられているので、当然胸の揺れに対する生地の伸縮の影響は、このドレスの方が大きいでしょう。
 もうちょっと分かり易く言うなら、より胸が揺れやすいはず、と言う事です。
 それに、コサージュの重みもそれに拍車を掛けているかもしれませんし、スパンコールという素材も、胸を包む感触を独特の物にしているかもしれませんね。
 由佳里を見ながらそんな事を想像するのですが、もちろん由佳里は僕の気持ちなど全く知らないはずですから、可愛らしく存在を続けています。

 気になる瞬きは自然のもの。
 着替えを見ていなかったので何ともいえませんが、まさかまた手動モードに戻っているとは思いたくありません。
 ただ、少なくとも今見る限り、中の人に対する刺激の強そうな動きと、瞬きのタイミングがシンクロする様子も一切無いので、さすがに自動モードのような気がします。
 僕は、由佳里を誘導し、会場入り口に向かうと、余興を終わらせた主人公の男の子が、引き上げている所でした。
 由佳里はそこに可愛らしく駆け寄っていきます。
 そんな風に走ったら感じちゃって苦しくなるはずなのに、由佳里は平気な様子。
 いや、平気なフリをしているだけで、裏で起こっている現実は、相当に悩ましいのかも知れませんけどね。
 それにしても、男の子を見つけて駆け寄るシーンは、少し嫉妬します。
 役柄での主人公の男の子ですが、本来は僕の方が親しい関係のはずの由佳里が、楽しそうに駆け寄っているシーンは、やはり由佳里は友達ではなく、由佳里なんだという現実を見せつけられている気がするんです。
 羨ましいぐらい苦しそうなドレスを纏って、可愛らしく男の子に駆け寄るシーンだけでも、どれほど友達が悩ましい事になっているのか、を想像すると、それだけでもう、悔しさが込み上げてくるんです。
 入場前に会場の最終確認をしていたスタッフから、あと五分だけ待ってくれと言う話が出ました。
 と言うのも、準備は完了していたのですがお客さんの一人がトイレに行ってしまったのだと言うのです。
 さすがに衣装替え直後の入場シーンですから、全員揃ってやる方がいいと判断し、少し待つ事にしました。
 僕は廊下に据え付けの長いすを見つけ、由佳里をそこに案内して休憩させようとします。

「壁の椅子使っていいから、休んだら? まだもうちょっと待つみたいだし」

 僕の言葉を不思議そうに見つめながら、でも言葉に従って僕の言う通り椅子に座る由佳里。
 僕としては、さっき楽屋で、苦しかったら寄り添っていいよ、と言う話をしたのを実践しようとしただけですが、由佳里は乗って来ないようです。
 僕が横に座っても、寄り添う事はありませんでした。

「今、いいよ?」

 そう言って身体を預けるようにジャスチャーしても、由佳里は、何の事? と言う不思議そうな顔でこちらを見ています。
 もちろん瞬きは自然ですから、モードを切り替える必要は無いのかもしれませんが、そもそも息苦しそうなその姿で、少しでも呼吸を整えられれば、着ぐるみの中の環境を楽に出来る、と思っての提案でした。
 ですが、由佳里はその提案を受ける気は無い様子。
 由佳里にとっては今はそれほど辛くないと言う事なのでしょうか?
 とも思ったのですが、お腹を見ると、呼吸によるお腹の動きは、先ほどまでと比べてもあんまり変わらないぐらい苦しそうです。
 やはり周りにスタッフが大勢いる環境では、完璧な由佳里を存在させ続けるつもりなのでしょうね。
 ですが、こうやって我慢されると、やはり由佳里が僕からは遠い存在に感じてしまいます。

 不思議そうに何の事?

 と眺めているその様子が可愛らしいだけに、余計に、この子は僕の友達ではなく由佳里なんだと言う事を見せつけられている気がするのです。
 そうこうしているうちに、お客さんは席に戻ったらしく、いよいよ出番となります。
 スタッフに言われ、僕も由佳里もその場を立ち、入り口の前へ移動し、由佳里の入場となります。
 ドアが開き、音楽が鳴り、スポットが由佳里達を照らすと、その中を一歩一歩ゆっくりと入場開始します。
 すると、スカートの裾がドアに引っかかりそうになっているのを僕は見つけ、慌ててその裾をドアから遠ざけるようにします。
 そして、その時当然、スカートの中の空気を感じてしまう事になります。蒸し風呂度は先ほどと大差ないように感じますが、少し香りがホコリっぽく、先程までと違う感じになっている様子。
 ドレスが替わった事で、布の種類も代わり、中に充満する香りも少し変化しているのでしょうが、どちらにしても、色々異な物の混ざった咽せ換える様な香り。
 先ほどのドレスとは異なる、それでもとても苦しそうな香りが、今の由佳里の裏側の世界なのですね。
 同じ苦しさでも、少し香りが異なってくる事は、裏の興奮を変化させているのでしょうか?
 凄く苦しそうな状況ではありますが、あんなに可愛らしい由佳里の身体の中で、いくつもの違った、苦しそうな空気を独り占めする友達に、凄く羨ましい感情が芽生えるのは仕方無いと思うんです。
 あの場でスポットライトを浴びてダンスの準備に入る由佳里は、本当にキラキラ輝いて可愛らしくて楽しそうですが、あのドレスの裏側は、先程感じた濃密な空気が充満し、由佳里の中にいる友達は、その空気を吸って、いろんな感覚に耐えて、あの場にいるのですから。
 由佳里は、ゲームの設定で社交ダンスを習っているので、この場でそのダンスを披露するのですが、相手役はなんとメイドさん達。
 本来は社交ダンスは男女ペアで行う物ですが、今回は変則的にダンスをアレンジして、メイドさん三人と由佳里のダンスという形になります。
 部屋の明かりが落ち、スポットライトが由佳里とメイドさんに当たると、クラッシックミュージックが流れ、優雅に社交ダンスが始まります。
 姿勢が良く、動きが大きく、でも優雅で華麗。
 実は足腰への負担も相当にあると言う社交ダンスですが、由佳里達はそんなダンスを見事に踊り始めます。

 そして、その由佳里のダンスを見て、僕は由佳里の瞬きがダンスのリズムに合わせて行われている事にも気付いてしまいます。
 由佳里の瞬きのモードは、またも手動モードになっているのです。
 横長に取られたダンススペースなので、移動方向も変則的ですが、メイドさん三人の間を行ったり来たりくるくると回って移動する由佳里の姿は優雅その物。
 メイドさん達と顔を見合わせ、ウンと頷く瞬間に瞬きが入るのも自然です。
 もちろんそのタイミングで瞬きが行われるということは、中にいる友達がタイミングを合わせている、ということに他ならないのですが、それは実に自然で、全く違和感が無いのも事実。
 ですが、由佳里が優雅に踊っている裏で、あの由佳里の動きによって、非常に悩ましくて苦しい環境に身を置きながら、タイミングに合わせて瞬きを続けている友達がいるはずなのも、また事実です。
 ドレスが身体の動きに合わせて伸縮し、それに伴ってあちこちが締め付けられているはずです。
 フワフワのパニエがスカートの重みと遠心力や慣性によって身体を締め付けたり緩んだりを繰り返しているはずです。

 一回転一回転、何を思って身体をくるくると回しているのか。
 一反り一反り、何を我慢して身体を反らしてポーズを作っているのか。

 そんな状態でも、由佳里の中に隠された固い物は、自由に反応する事を許されず、彼女の踊りのポーズに合わせて、非常に可愛らしくて自然な瞬きをするためにだけ動かす事を許されている。
 苦しくても、気持ち良くても、音楽が終わるまでダンスは止まりません。
 優雅な動きに、皆一斉にカメラのシャッターを切るのですが、そのカメラに収る由佳里の裏は、今、正に快感に耐えながら、嫌らしい液体の放出を我慢し続けている最中かも知れないのです。
 また、メイドさん達もまた非常に悩ましい存在でした。
 なにしろ彼女たちの中は新人。
 由佳里ほど優雅な動きは要求されていない役所とは言え、やはりメイドドレスを纏ってくるりくるりと身体を回転させたり、由佳里を支えたり、と、由佳里を綺麗に見せる為のダンスを続けています。
 新人にしては非常に大変な役所ですが、逆に言えば、新人なのに、こんなにも羨ましいシチュエーションで、着ぐるみの中に入って演技を出来ると言うのは、僕には羨望の対象でしかありません。
 あれだけ激しく優雅にダンスをする由佳里に、直接触れて、身体を支えているメイドさん。
 その裏で、当然由佳里の真実を、僕らよりもリアルに感じているでしょう。
 もちろん由佳里の瞬きが持つ意味も、メイドさん達の中の新人は理解しているはずです。
 目の前でダンスに合わせて可愛く瞬きを繰り返す由佳里と共に、ダンスを踊る新人達の気持ちは、どんな物なのでしょうね?
 自分もかなり過酷な環境でダンスを続けているのに、さらに自分が支える由佳里の中には、羨ましいぐらいに過酷な環境が存在する。それをリアルに知ってしまうのです。
 メイドさんの中にいる。
 それだけでも、僕らからすれば、かなり羨ましい立場ですが、そんな立場にいるからこそ、由佳里の真実を垣間見る事で、その中に色々な思いを馳せるはずなのです。
 そんなメイドさん達三人を従えての由佳里のダンスは続きます。
 結局、約10分のダンスが終わると、お客さん達は大喜びで拍手喝采。
 ダンスショーを満喫し、由佳里とメイドさん達も、満足そうにお客さんに向かって大きく手を振って返しています。
 もちろん、大きく手を振って返すと言うことは、その動きによって由佳里の中に色々悩ましい世界を作り出している事になるのですが、そのことに気付いている人達はいません。
 そうしていると、主人公の男の子が割って入って、誕生日プレゼントを渡すシーンになります。
 ここは録音された音声による寸劇になっていて、みんなから拍手を貰っている由佳里に更に感動させようと、主人公の男の子がプレゼントを渡すと言うシーンになっていて、そのプレゼントを受け取った由佳里は、感動で涙を流すのです。
 その涙に誘われて、涙ぐむお客さんもいる、感動的なシーン。
 そのシーンの中心にいる由佳里は、本当に美しくて切なくて、守ってあげたくなるような可愛らしい存在になっています。

 感動のシーンで男の子から受け取ったプレゼントは、大きな熊ちゃんのぬいぐるみ。

 自分の身長の半分はあるかという大きなぬいぐるみは、裕福な由佳里ならいつでも買えるような、それ程高級ではないぬいぐるみ。
 でも、その男の子から貰ったこのぬいぐるみは、由佳里の中では一番大切な宝物になっていくのです。
 値段なんて関係ない。男の子が一生懸命に選んでくれた物だから、それが私の宝物。
 そう言うセリフが実際にゲームでも使われているのですが、正にそのシーンを再現している為、感動もひとしおです。
 嬉しそうにぬいぐるみをギューーーっと抱いてポーズを取るシーンでは、本当に嬉しくて離したくないと言う雰囲気が伝わってくる、凄くいいシーンになっています。
 抱きしめるポーズに合わせて目もぎゅっと閉じられ、凄く愛おしそうにぬいぐるみを抱いています。
 ですが、ギュっとぬいぐるみを抱いたことで、胸やら下腹部に熊ちゃんの身体や足が押しつけられているのを僕は見逃しません。
 目が閉じられていると言う事は、友達の物はまだずっと固くあり続け、あの抱きしめるぬいぐるみの締め付けをも感じ続けているはずです。
 そんな中で、固い物にギュっと力を込め、襲いかかる快感にじっと耐え続けているんでしょう。
 あんな感動的なシーンであっても、演じる側は、込み上げる嫌らしい感情との闘いを強いられ、それに耐えながら演じ続けているんですね。
 大きな熊ちゃんを抱かなければいけない。
 そして目を閉じなければしけない。
 由佳里の中にいる友達は、毎回このシーンになると、その事実と向き合うことになります。


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