由佳里のバースデー(3話) [戻る]
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 お客さん達は誰も気付いていない、淫靡で妖艶で悩ましい世界の存在に、由佳里の中やメイド達の中にいる役者の他に、僕だけは気付いています。
 由佳里の中や、メイド達の中は、当然程度の差はあっても似たような環境ですから、由佳里の中がどんなに凄いとしても、酷似した環境にいるメイドの中の人物は、それに近い環境を体験しながら由佳里を想像出来ます。
 そして、当然由佳里の中には、その悩ましい世界を実体験している人物がいます。

 そんな中、唯一、僕だけが、見ているだけ。
 そんな羨ましい世界を想像することしか出来ないのは、この中で僕だけなんですね。

 あの中に、もし自分が入っているとしたら、それはどんな気持ちなんだろう。
 あの中で、身体やドレスの産み出す悩ましい世界を一身に浴びながら、由佳里になりきらないといけないとしたら、それはどんな気持ちなんだろう。
 僕は色々と想像することしかできませんが、確実にその中には、北野か、加藤君が存在しているはずなんです。
 もしそれが北野だとしたら、同期であり一番仲のいい友達。
 その友達が、ああやって美しい女の子の中で、羨ましい世界を独り占めし、僕は彼の入る由佳里をサポートするお手伝い係。
 この立場の差を考えると凄く悲しくなります。

 もしそれが加藤君なら、僕を慕う気のいい後輩。
 でも、そんな後輩が、僕と言うサポートを従えて、由佳里という美しい女の子の中で、あの身体やドレスの産み出す世界を独り占めしているのです。
 後輩が、目の前で、こんな美しい女の子の中で独り占めしているその世界が、どれ程羨ましい世界なのか、想像するだけで悔しくなってしまいますが、僕はあくまでもサポート係。
 北野が入ってる場合以上に圧倒的な立場の差を感じてしまいます。

 北野であっても、加藤君であっても、由佳里は僕に、他のサポートスタッフよりも、ずっと親しく可愛らしく接してくれます。

 このイベントの関係者の中からも羨ましがられるぐらい、由佳里は僕に懐いています。
 それを、羨ましいなんて言うスタッフもいますが、そんな言葉は、真実を何も知らないから言えるんです。
 自分好みの可愛らしい女の子が懐いている男性を見たら、普通なら当然嫉妬もするでしょうから仕方ないんでしょう。
 僕は、彼らから見たら、可愛い由佳里に懐かれている羨ましい存在なんです。
 僕の言うことならだいたい何でも聞くし、僕は遠慮無く由佳里の身体に触れて、衣装の着替えも手伝ってあげています。
 他の男性スタッフでここまで由佳里に濃密に接している人はいませんから、彼らからすれば、僕は由佳里に一番接することの出来る立場に見えているんでしょう。
 でも、僕に言わせればそれは幻想です。

 由佳里を自由に動かしているのは、言うことを聞かせている僕ではなく、僕の言うことを聞いて行動している、北野か加藤君なのです。
 僕に懐いているのも、僕が一番裏事情に精通しているからと言うことと、役者として、中にいる人間が僕と仲がいいから、と言うのはあるはずです。
 役者はキャラクターになりきる必要はありますが、そのキャラクターにとって自然であれば、外にいる仲のいい人間と楽しそうにする行為事態は問題視されることはありません。
 実際、ホビー21の楽屋では、着替え終わって男性に戻った役者さんが、知り合いの入る着ぐるみに見つかって、着ぐるみのキャラクターとしてじゃれついて来たり、場合によっては店舗内でも絡んで来たりすることはあります。
 もちろん店舗内ではその絡みは程々にしないと、一般人に紛れている役者さんが、役者さんだとバレてしまいます。
 ですから、役者さん達は、それぞれあらかじめ普通の店舗内スタッフにも、着ぐるみの状態で、仲のいい人間を作っておくんです。
 そして、彼らとも仲良くじゃれ合うので、じゃれつかれる人の中に役者さんがいたとしても、周りの人は、仲のいいスタッフの一人ぐらいにしか思われないようなんです。
 当然僕も、周りのスタッフからは、由佳里と仲がいい普通のスタッフ、と言うふうに思われています。
 でも、仲のいい由佳里は、実はその裏側に、ホントに仲のいい北野や加藤君が入り、そんな彼らは、由佳里の産み出す裏の世界を独り占めしているんです。
 目の前でそんな世界を見せつけられながら、仲良くされても、僕にとっては悔しいだけ。
 他のスタッフが考えるような、優越感は全く無いんですよね。
 むしろ、恐らく、そう言う優越感は、由佳里の裏側にこそ存在しているはずですから。
 この可愛らしくて美しい由佳里を、唯一自由に動かせる立場という優越感が。
 全身を特殊素材で出来た由佳里の身体と、シルクサテンのツヤツヤしたドレスに覆われたその裏側は、相当に過酷な環境になっている事が予想されます。
 歩みを止めたことで、歩いていた時に襲っていたであろう快感も止まり、相当に悶々としているのかもしれません。
 あるいは我慢出来ずに歩いている最中に出してしまい、今必死に落ち着こうとしているのかも知れません。
 その様子からは真実は見えてこないのですが、確実に言えることは、由佳里の裏は、見えている世界とは全く異なる世界であると言う事。
 あの可愛い由佳里を存在させる為に、裏で過酷な仕事を強いられている僕の友達がいると言う事。
 由佳里が会場の中央に設けられたステージに辿り着くと、由佳里の挨拶が始まります。
 歩みを止めた由佳里はスカートの裾も完全に床に降り、その場から動かないことでスカートの中の空気はみるみる淀んでくるはずですが、そんなことを意識させる様子は無い、素敵な挨拶です。
 自分のためにこれだけ多くの人が集まってくれたことに対する感謝を表す、心温まるスピーチで、これもまたゲームの名シーン。
 セリフに合わせて感情を込めた演技をする由佳里が、また凄く可愛らしいんですよね。
 そして、ここでも僕は見たくない光景を目にしてしまいます。
 由佳里が、スピーチに合わせて、感情を込めながら演技をする過程で、その瞬きが明らかに由佳里の動きとシンクロしているんです。
 確かに、言葉に合わせて瞬きのタイミングを選択するほうが、より演技が引き立つはずですが、それはつまり、今この瞬間、友達は再び瞬きのモードを手動に切り替えていると言うことでしょう。
 動きの自然さから考えても、ここでの手動モードは予定していたもので、つまりあの瞬きの機能は、今後もこういったシーンで度々目にすることになるんでしょう。
 あの中で一生懸命演技している友達を思うと、堪らない気持ちになります。
 特に、照れくさそうにしながら小声で

「ありがとう」

 って呟く時は、ホントにキュンと切なくなります。

 瞬きもゆっくりしたり、パチパチっと連続的にしたり、凄く可愛いのですが、それが裏の友達の苦悩を想像出来てしまうんですよね。
 あんなに可愛い女の子に、あんなに可愛らしくありがとうなんて言われれば、ゲームのファンならキュンとなるでしょう。
 実際、中がどんな状況なのかを想像ぐらいは出来る僕でも、その見た目の可愛らしさに、男としてキュンとなってしまいます。

 でも、もちろんその演技をしているのは僕の友達。可愛く動きながら、固くなったものを上手にヒクヒクと動かしているんです。
 そんな彼らの演技に、僕は胸をキュンとさせられてしまってるんですよね。
 主人公の男の子のおかげで、こうしてみんなが集まってくれて、本当に幸せそうな雰囲気が、ちょっとした嫉妬を産んでしまうんです。
 僕自身、ゲームを何度もプレイしているので、このシーンはとても有名なシーンとして知っています。
 そして、目の前で展開されるその光景は、まさにゲーム中で使われているシーンその物と言うぐらい、愛おしいシーンです。
 そしてここで主人公の男の子が登場します。
 彼は着ぐるみですが、ホビー21で用意した物ではなく、あくまでも一般的なタイツとFRPのマスクによって作られた着ぐるみ。
 でも、由佳里は、その彼に対して、可愛らしく、いじらしく、彼がみんなと自分との距離を縮めてくれた事に対する感謝を述べるんです。
 その感謝の言葉を受け止める主人公が、羨ましいなぁと思ってしまうぐらいに可愛らしくて愛おしい由佳里。
 男として、好きな女性に対する感情その物と言っていいその感覚に、戸惑いすら覚えてしまいます。
 事情を知っている僕ですら、これほどまでに可愛いと思ってしまう由佳里ですから、当然ファン達は熱狂的です。
 人によってはこのシーンを、良かったね、と、涙しながら見ているケースもある程。
 もちろんお客さんはこれがイベントであり、由佳里が実際には毎日このシーンを再現している事は知っているのですが、目の前でこのシーンを見せられると、彼氏に対して羨ましいのと悔しいのと、そして由佳里に対するおめでとうの気持ちが入り交じり、涙する事もあるようなのです。

 そのピークは、キスシーン。

 彼氏とのキスは、由佳里がちょっと背伸びをした所を、彼氏が優しく抱きしめ、由佳里が軽く顔を上に向け、瞼をスッと閉じて、主人公の男の子が上から顔を近づけてチュッとするのですが、この時、男の子役の役者さんは、着ぐるみの口元に空いたスリットから、由佳里の香りを感じていると言います。
 そう言えば、由佳里って凄くいい臭いがするんですよね。
 香水のようにキツイ臭いではなく、シャンプー後のふわっとした女の子の臭い。
 蒸し風呂のような着ぐるみの中で、男の子役の役者さんはその由佳里の香りをマスクの中いっぱいに吸い込むんです。
 可愛らしい由佳里の表情と、あれだけ近づいて、マスク越しとはいえキスも出来る。
 そんな役者さんにちょっと羨ましいという感覚を覚えてしまうんです。
 目の前にいる可愛らしい着ぐるみに、女性を感じ、惚れてしまうような錯覚です。
 でも、ここで我に返るんです。
 あの由佳里の中には、僕の友達が入り、演技をしているのだと。

 キスシーンの間、僕の友達は、固くなったものにずっと力を入れ続け、由佳里の瞼を閉じ続け、当然その間は気持ちよくなり続けているはずです。
 あの容姿を纏ってあんなにも可愛らしい演技をすると、僕ですらそんな彼女と近づきたい感情が芽生えてしまうぐらいに、本当に良くできた着ぐるみなのですが、あの容姿を纏っているのは紛れもなく友達なんです。
 こうしていよいよ本格的にイベントが始まります。
 最初はバースデーケーキのカットです。
 お客さんは結婚式の披露宴のように、丸いテーブルに十人ぐらいずつで輪になって座り、イベントの進行を楽しむのですが、ケーキカットの時は、大きなケーキをカットするシーンを写真に納めたいお客さんが大勢いるので、実は三回カットを行うことになります。
 全てのお客さんに配るケーキを、その場で由佳里がカットするので、それなりに大変なのですが、由佳里は楽しそうにケーキの前に立っています。
 スタッフが持ってきたワゴンに乗っている、大きなバースデーケーキを前に、ポーズを取る由佳里。
 一斉にフラッシュが光り、由佳里は幸せそうに喜んだり、可愛らしく照れたり、本当にまぶしい光景です。
 フラッシュの光に眩しそうに目をパチパチさせるのもまた、可愛いんですが、それすらも友達が動かしている事実を想像すると、堪らない気持ちになります。
 一通りケーキの前でポーズを決めての写真が撮られたら、今度はいよいよケーキカットです。
 由佳里がゆっくりケーキにナイフを入れると、再びフラッシュの嵐。
 由佳里がポーズを作るとき、ケーキのナイフが見えやすいように斜めにポーズを取る事が多いのですが、ナイフの位置関係から、ナイフを持った方の手が、自らの片方の胸を軽く押している事は僕からはハッキリ見えます。
 他の人が気づいているかどうかは全く分かりませんが、あれだって、裏にはそれなりに締め付けの変化が伝わっているはずなのに、何度も身体の向きを変え、場所によってナイフが見えにくいようなら、遠慮無く自らの胸を押さえるようにポーズを作っているのです。
 多分、由佳里の中は、切ない快感との戦いになっているはずです。
 胸を押さえるだけでは無く、身体を斜めにする為に動けば、身体の他の部分も引っ張られ、突っ張って締め付けられ、それすらも感じているはずなのですから。
 しかもその動きはそれほど派手ではなく、凄く自然な動き。
 ホビー21製の着ぐるみは、この程度の刺激だと、興奮はするけれどイク事は難しい刺激しか与えてくれないのです。
 これはベテランが、長時間操演出来るようにするために、興奮をキープする仕組みのせいなのですが、長時間演技が出来ると言う事は、つまり長時間我慢を強いられると言う事でもあるのです。
 今日、由佳里は、いったい何時間由佳里でるのでしょう?
 少なくともこの現場に現れた時間から考えれば、既に一時間弱にはなりますし、この現場に来る前の時間を合わせたら、一時間半ぐらいにはなるかもしれません。
 そして、全てのスケジュールを考えると、実際にホビー21に戻って由佳里の身体から役者が出てこられるのは、恐らく今から五時間以上先の話になります。
 その間、今も、そしてこれからも、由佳里の中で込み上げてくる物との戦いを続けているであろう友達は、既に何回か由佳里の中に出しているのでしょうか?

 もし何回か出せているのであれば、残りの時間を考えると、今後はじっと我慢を続ける時間が続くはずですし、万が一にも、あのドレスを纏ってあれだけの行為を続けながら、まだが一度も出していないのだとすれば、今の由佳里の中は、本当に延々と続く快楽との戦いになっている気がするのです。
 友達だって人間ですから、一時間半も我慢を続ければ、出したいと願うはずです。
 ですが着ぐるみは、派手な動きをしない状況では、予想外の刺激を受け取らない限りは、快感の制御によって、簡単にイク事は出来ないはずなのです。
 一般的なグリーティングなら、自由に動く事は可能ですから、人知れず処理する事はそれなりに可能ですが、今回の由佳里は主役であり、常に由佳里としての振る舞いを要求されています。
 つまり、人目を避けての不自然な行動は、余りするチャンスがないんですね。
 もちろん役者の技術でそう言う状況でも処理する技はあるらしいのですが、もしそれを使えない状況であれば、我慢が続いているかも知れないわけです。
 そして何より、今は瞬きの演技も友達が行っている最中です。
 とすると益々、物を固く保つ必要がありますから、イク事は出来ないはずですよね。

 ただ、さすがに一時間半我慢を続けていると言うのは、なかなか想像が出来ない気はしています。
 普通は平均で一時間に一度ぐいらのペースで処理をする、と言う話を聞いたことがありますから、それを考えれば、多少長期戦に備えて我慢しているとしても、そろそろ一度は処理が終わっている気がするんです。
 瞬きのために固さを保つ意味でも、どこかで一旦処理をしている可能性は高いと考えています。
 そして、このドレスは、僕から見ても、かなり裏側に与える快感は強い気がします。
 快感を制御される状況であっても、知らず知らずに予想外のテンションがかかっている可能性はあります。
 とすれば、既に友達は、人知れず処理している可能性はあるんです。
 あんな美しいドレスを纏った清楚なお嬢様の中で、です。
 いずれにしても、今の由佳里の中では、ああやって幸せそうにケーキカットのシーンを写真に納められている見た目とは異なる、想像した僕の方が興奮してくるような快感との悩ましい戦いが続いている可能性が高いのです。

 気持ちいいだろうなぁ。

 と想像しても、由佳里はただただ笑顔でポーズを作っているだけです。
 約二十分かかって、三つ用意されたケーキのカットが終わると、今度はこのケーキを由佳里が各テーブルに配る事になります。
 本来、ゲーム中ではメイドさんがやるお仕事なのですが、ここはイベント用に少し設定を変えてあって、由佳里が自ら進んでやりたいと言い出すのです。
 メイドさんは、由佳里をサポートしてついて回る事になるのですが、更に、僕が由佳里やメイドさんをサポートして回る事になります。
 お皿に取り分けたケーキを、ワゴンに乗せて、各テーブルにケーキを配りに行く由佳里。
 慎重にワゴンを押しているのですが、スカートのボリュームがあるので、とても移動がし難そう。
 そう言う不自由な所は、こう言うドレスの欠点ではあるのですが、何故だか僕はそう言う衣装を纏って、動きにくそうにしている由佳里が凄く羨ましかったんです。
 それにしても、由佳里と共に移動しているメイドさんも気になる存在ではあります。
 メイド服は、由佳里のドレス程の重装備では無いにしても、かなり露出が少ない、衣装としては苦しい部類。
 その衣装を纏い、由佳里と共に可愛らしく愛想を振りまきながらテーブルを回る姿は、かなりの嫉妬を産みます。
 なにしろこの中には、まだ役者に成り立ての新人が入っているのです。
 僕よりもずっと後からやってきて、今では、こんなに羨ましい空間に密閉されているんです。
 その新人達は、メイドさんの中で、由佳里の後ろ姿を見て何を思っているのでしょう。
 目の前で、自分より更に苦しい環境が、可愛らしく動いている。
 この状況での、メイドさんの中の興奮は相当な物という気がするんです。
 メイドさんの中だって、僕にはかなり羨ましい。
 そんな環境に身を置いているからこそ、より、リアルに由佳里の中が想像出来て、興奮してしまう気がするんです。
 メイドさん達は可愛らしく存在していますが、その裏を想像すると堪らなくなってしまうんですよ。
 こんなメイドさんを従えて、一つ一つテーブルを回ってケーキを配る由佳里。
 ライティングの効果もあって、その幻想的な雰囲気は、本当に遠い世界のお姫様。
 お客さんに配るお皿を持つ手が、自らの胸を押さえつけるような位置にある事も、先程のケーキカットの時のナイフと変わらず、何度も目にします。
 その動作は決して派手ではなく、丁寧で愛らしい物。
 でも、それってつまり派手には動かない分、急激に刺激が伝わる可能性は低く、結果として、中々イク程の刺激にはならないと言うこと。
 じわじわと由佳里の中で、寸止めが繰り返され続けていると言うこと。

 そんな状態にある由佳里の目を、ついつい眺める僕。
 由佳里の瞬きに不自然な動きは無いように見えます。
 ですが、今の瞬きが自動モードか、実は手動モードで、中にいる友達が、頑張っているのかなんて、外から見て分かる筈も無く、ただただ、その自然な瞬きが羨ましく見えました。
 お客さん達に、優しい笑顔でケーキを配る由佳里の裏側で、何が起こっているかなんて想像する人はきっといませんけどね。
 お客さんの位置が遠くて少し身体を伸ばしてお皿を手渡す時など、胸が重みで垂れるのをドレスの生地が阻止すべく、ムッチリと胸がドレスの生地を押して、かなり窮屈そうになっているのも見えます。
 あの瞬間、スカートの中に響く呼吸音は、どう変化し、裏側で固くなって固定されているであろう友達の羨ましい物は、どういう刺激を受けているのか、想像したくないのに、ついつい想像してしまいます。
 苦しくったって、気持ちよくたって、由佳里から逃げ出す事はせず、じっと受け入れて演じているのです。
 演じ続けているという事は、もちろん耐えられる範囲なのでしょうけど、現実には相当に頑張って我慢している可能性の方が高いはずなのです。
 由佳里、と言うみんなの憧れるゲームのヒロインと言う立場に包まれ、そんな羨ましい感覚と戦う友達に対して嫉妬するのは、ある意味当然でしょう。
 そして、最後に主人公の男の子の前に来ると、そのケーキを本当に愛おしそうにプレゼントする由佳里。
 愛おしそうにプレゼントを渡す瞬間、由佳里の目が、可愛らしくゆっくりと、はっきりと、パチッパチッと二回瞬きしました。
 瞬きは未だ手動モードと言う事。つまり、少なくともこの一連のシーンはずっと瞬きが手動モードって事ですよね。
 自動モードでこの瞬きはあり得ませんから。
 つまり、友達は、このシーンの間、ずっとあの可愛い由佳里の中で、相当に固くなった物を必至に維持すべく、何度も込み上げてくる物を我慢したり、寸止めされて悶々とする切なさに耐え続けながら、このシーンを再現する演技を続けているんです。
 瞬きが手動と言う事は、不自然に物を反応させる事も出来ませんから、一生懸命に固い物の反応を押さえる戦いを続けている訳です。
 刺激を受けながら、寸止めされながら、それを態度に出さないだけでも苦しいはずなのに、友達はあの可愛い由佳里に隠れて、自分の固い物の反応とも戦い続けているんです。

 そんな大変な状況に、普通の人なら、中の人の境遇を可哀想だと思うかも知れません。
 あるいは、そんな状況になっている中の人に、こんな可愛い女の子の中で行われている世界に、不快感を覚える人もいるかも知れません。
 ですが、僕には異なります。そんな世界にいられると言うのも、あまりにも羨ましすぎる事なんです。
 ただ、残念ながら、そんな事が行われているかも知れない真実は、可愛らしい由佳里の中にいる友達だけが知っているんです。

 そして、役柄とはいえ、あんな態度で迫って貰える主人公の男の子が羨ましいと心底思ってしまいます。
 その美しくも可愛らしい姿の由佳里が、一番好きな男の子が、彼なんです。
 ゲームではその彼が自分になるのですが、ここでは男の子は目の前に存在する彼であり、由佳里はその男の子が好きなのです。
 由佳里の中は友達で、その友達の演技なのに、由佳里の姿でそれをされると、本当に切ない。
 あの絶妙なタイミングの瞬きも、また、その由佳里の可愛らしさに拍車をかけている。
 多分会場にいるお客さん達も似たような感情を持った人は多かったんじゃないでしょうか。もちろん中に友達がいると知ってるのは僕だけなんですけどね。

 約二十分かけて、ケーキを配り終わる由佳里。
 この後しばらく、ケーキを食べながら、由佳里のプロモーションTVRがプロジェクターによって映写され、お客さんはそれを見ながら歓談となります。
 その間、由佳里はしばらく席を外し、次のイベントの準備です。
 由佳里と主人公の男の子は、一旦部屋を出ると、外に待機しているスタッフと合流します。
 次は、お客さんの中の希望者に、由佳里が花を投げて、それを受け取る事が出来たお客さんに由佳里がキスをすると言うイベントがあります。
 全部で二十本の花が用意され、お客さんに向かって投げて、それを取れた人が権利獲得となるんです。
 僕は会場でのセッティング確認の後、部屋を出るのですが、部屋の外では、主人公の男の子と由佳里が仲良さそうにじゃれている姿を目にします。
 由佳里と仲良くしている主人公の男の子に凄く嫉妬を覚えるのですが、双方とも、そう言う役所と言うだけなのだ、と自分に言い聞かせます。
 僕は、由佳里の投げる花を用意するため、事前に用意されている花束をバラバラに分解します。
 すると横から由佳里がその花束にちょっかいを出してきました。
 バラバラにした物を束ねさせないように、邪魔してきたのです。


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