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調整後のスーツを試着したのが、3日後の事でした。
僕としては茫然とした気持ちから全くスーツを試着する気力が出ず、調整後のスーツを試着したのはこの日から3日後の事でした。
結果。
あっさりと30分の壁を越えたどころか、当初目標とされた3時間すらもやすやすと越えたのでした。
自分でもハッキリ分かるのですが、これだけ気持ち良くて制御もしっかりされているなら、何時間でも耐えられそうなぐらいに。
この日は僕のお腹がすいたと言うつまらない理由で5時間程で切り上げましたが、訓練用のスーツではいくら感度が調整されていても、実際の体形や衣装は訓練用ですから、正直物足りないのです。
訓練教官からも、複数の指定したキャラ設定に沿ってちゃんと演技も出来ていたし、実に魅力的なキャラの動きが訓練生とは思えない演技力だと言われ、マネージャも、多分本番の役者の中でも相当レベルが高いと評価されました。
具体的に言うなら、僕の評価は、
「演技力:10、耐久力:10、経験:1、絶頂時演技力:10、限界時演技力:8」
絶頂時演技力とは、イキながらの演技力です。
限界時演技力とは、体力の限界近くまで行ったところでの演技力なのですが、僕は今回のテストでそこまで追い込まれていなかったので評価が低いのです。
総合的に見て、経験知以外はほぼオール10と言われました。
ちなみに、あの北野ですら、演技力は9、耐久力が9.5、絶頂時演技力が9なのです。
と言うより、主要要素がオール10の評価を受けている役者は、現役では3人しかいないそうですから。
3人は非常に過酷な役に選ばれる事が多く、そのうち1人は連日、かなりの長時間着ぐるみの中に入り続ける3人組アイドルユニットの中身をやっているそうです。
その評価を聞いた直後に、マネージャから早速配役を言われました。
僕はまさかこんなに早く配役が決まるとは思っていなかったので、とても驚きます。
だって、普通に考えたら、こんなに短期間で配役されるって事は、脇役みたいなキャラクターか、誰かが辞めちゃった余りの役って事でしょうから。
ですが、話を聞くとどうもそうでは無いらしいのです。
僕が担当するキャラクター。
それは、僕も聞いて驚いたキャラクターでした。
現在流行ってるゲームの中に、メイク・プリンセス、と言うお姫様育成ゲームがあるのですが、そのゲームのキャラクターであるプリンセスに入る事になったのです。
このプリンセスは何が凄いのかと言うと、育成する人によって、育成される姫が変化すると言う物なのですが、その姫を演じる、と言う事は、一人で何体ものキャラクターを演じる必要があるのです。
そしてホビー21の着ぐるみが凄いと思うのは、このキャラクターを1つの着ぐるみで表現出来る仕組みを導入した事です。
凄く簡単に言うと、リアルタイムに体形や顔を変化させる事が出来る最新の仕組みを使って、あらかじめプリセットされた幾つものキャラクターにその場で変化して見せると言うのです。
髪型についても形状記憶の繊維に特殊な液晶を染み込ませて、電気パターンにより、長さ、形、色が変化すると言う凄い技術によって、まるで変身魔法にでもかかったかのように、全く別人と言えるキャラクターに変化出来ます。
身長や体形も変化するので、本当にその人が育てたキャラクター、を再現できる訳です。
そんな機能を何処で使うのか、と言うと、撮影会とかでです。
お客さんが自分で持ってきたプリンセスのデータを貰って、そのキャラクターに変化して一緒に撮影をする、といったイベントをやるのです。
ただ、当然ですが、プリンセスと言うだけに衣装は基本的にドレス。相当重装備です。
その上、変化している時は感度が増すらしく何度も変化すると猛烈に気持ちいいのです。
また、撮影中は着替えている時間が無いので割と汎用的なドレスを身につける事になりますが、最もスタイルの良くない姫から最もスタイルのいい姫まで、何段階にも変化するので、最もスタイルがいいと胸がきつく、最もスタイルが良くないとウエストが締まると言うどちらにしても切ない快感に変わる衣装となってしまいます。
もちろん、最もスタイルが悪いプリンセスでも、生身の人間でいうと一流のモデル体型に近いのですけどね。
あと、これも聞いて驚いた仕組みなのですが、今自分がどういうキャラクターに変化しているかを伝える仕組みがあります。
鏡でも見ないと普通は分からないのですが、この仕組みによって、自分が何色のどんな髪で、どんな表情でどんな目の、どんな性格のキャラクターなのか、が分かる仕組みなのです。
その仕組みは、凄く単純に言えば、パッドに伝わるバイブレーションパターンです。
これを覚える事で、今自分がどういう外見なのか、どういう性格のキャラクターなのか、が分かるのですが、このバイブレーションパターンは、体形が変化してから数分間は連続で続くので、実は相当な地獄なのです。
元々、このプロジェクトのキャラクター候補には北野も挙がっていたらしいのですが、結局僕はその候補にねじ込まれた所、経験以外のほとんどの部分で評価が高いと言う事で、選ばれたそうです。
お詫びの印にゴリ押しで決められたのかと思ったのですが、候補リストにねじ込んだのは確かに強引にやった部分はあるらしいですけど、一応審査自体はとても公平にやったそうです。
その公平な審査の結果選ばれたと言う事で、僕自身とても嬉しかった。
何より、このプロジェクトの場合、稼働時間が長いと言うのが猛烈に嬉しかった。
新人なら最初はせいぜい1時間稼働のチョイ役で、中堅まで行っても3時間稼働が基本なのです。5時間以上の稼働は、ホントのベテランな人達の担当であり、それは憧れの存在でもありました。
そんな大役に新人の僕がいきなり抜擢されるのです。
これは興奮せずにいられません。今まで散々我慢していたけど、この時は素直に嬉しかったですね。
しかも、僕が中に入ると言う事は基本的に伏せられていました。
ホビー21に複数ある、長期プロジェクトのキャラクターでさえも、そのキャラクターの役者さんは、基本的に他のキャラクター担当の役者さん達にも明かされる事は無いのです。
口コミで知ってたり、稼働期間が長いキャラクターの場合、いろんな所から漏れるので、結局役者さん達は知ってたりする事が多いのですが、完全な新規キャラに、新人が入ると言うケースは前代未聞なので、当然何も知らない人たちは、中身が僕だなんて思われないはずです。
こう言う隠ぺい性も、ホビー21ならではと言う気がします。
初めてメイクプリンセスの主人公、アイリの着ぐるみを見た時のうれしさも相当な物でした。
自分用に用意された新品の着ぐるみは、今後僕がこの中で苦しくて気持ちいい思いをするんだと言う想像をしただけで興奮してしまう程でした。
本番用新品スーツは、訓練用のスーツとは比較にならないぐらい締め付け力も強く、全身をピチピチに締め付けられる感覚は想像以上の気持ち良さでした。
もちろん快感制御システムの仕組みは完璧で、凄く絶妙にイク寸前の快感を与え続けてくれます。
確かに感度で言えば、以前の問題があった訓練スーツに比べれば数段弱いのですが、むしろあれは気持ち良さが余りにも強引で、まるで強力なバイブレータを問答無用で押し当てられ続けてるような感覚なんですよね。
ですから気持ちいいのですが、他に何も出来なくなる。
一方でこのアイリのスーツは、我慢出来るギリギリをキープし続ける。
快感は弱いのですが、それでもこの快感がずっと続くと言う状況は、短期間に猛烈な快感が与えられるより、ずっと切なくて苦しくて気持ち良いんです。
呼吸口も訓練用の物より狭くて苦しいですし、大人な体形はスタイルがいい分、凹凸に対する揺れや衣類の突っ張り、擦れ等の入力が絶え間なく伝わり、ホントにじわじわと苦しいし気持ちいいんですよね。
さらに言えば、プリンセスの衣装ですから、凹凸を強調しつつも、スカートも長くてふわふわのパニエが中にぎっしり詰まってて、訓練中に着ていた衣装達より数段意地悪くて気持ち良いんです。
キャラクターも衣装も違うんでしょうけど、北野達はいつもこんなレベルの快楽の中にいたんだ、と思っただけでやはり悔しい気持ちは湧きあがって来るのですが、それでも今はこうして自分が体験できている行為に大変な喜びと興奮を感じていました。
身体の変化による演じ分けの練習は3ヶ月続きました。
身体は、外部リモコンからの操作で変化するのですが、基本的にはお客さんがプレイしているキャラクターのカードを専用リーダーに読ませるとそこから発する信号で身体が変化する仕組み。つまりお客さんのキャラクターが目の前で再現される仕組みでした。
変化して数分間襲ってくる快感に慣れるのは思った以上に大変でした。
快感自体に慣れるのも大変でしたが、何より、演技の切り替えが大変でした。
無数にある振動パターンから、今の自分がどういう容姿と性格なのかをイメージして演じ分けるのは、思った以上に大変なんですよね。
何しろ気持ち良くて冷静な判断がしにくいので。
凄いなと思ったのは、それでも快感制御システムのおかげなのかイク寸前を維持させられ続けるのですが、その寸前と言う状態が思った以上に切なくて気持ちいいって事。
これならいっそイカせて欲しいって思うぐらいに気持ちいい状態が延々と続くのです。
それも、僕の訓練用のスーツのような問答無用に与えられる快感と違い、絶妙に我慢が出来てしまう。おかげで延々とその快楽を味わいながら演技する事になる訳です。
呼吸の時もそうなのですが、我慢出来るのと苦しくないのとは違います。
我慢は出来てもとても苦しい、と言う状況から逃れるすべが無いのです。
これは事前に想像していた事なのですが、その想像をはるかに上回る興奮でした。
こんな状態でずっと可愛らしいプリンセスを続けられるのです。こんなに興奮出来る事はありませんよね。
もうひとつ。
プリンセスは表情が自在に変わるんですよね。それと、声に合わせて口も動く。
ウインクしたり、笑ったり。ウインクなんかは北野が入ってる着ぐるみで知ってたのですが、実際やってみると意外と難しいんですよ。
瞬きは基本的には自動ですが、動きのタイミングに合わせて瞬きするケースなどは、結構気を使います。
でも、自分の硬い息子をヒクヒクさせるとそれに合わせて瞼がぱちぱち動いて視界が一瞬ブラックアウトする様は、実に興奮出来ます。
口の動きも呼吸経路を塞いで苦しくなると言う話は聞いてたのですが、実際結構苦しいんですよね。
おしゃべりが長いと、どんどん苦しくなるのですが、そんな中で瞬きをリズムに合わせてパチパチしてると、それがとても興奮出来るんです。
また、表情についても中に入ってる僕が操作する仕組みでした。口元のスイッチを唇で操作して変化させるのですが、気持ち良すぎるとつい唇が緩んでしまい、的確な表情操作に慣れるのには時間がかかりました。
こうして地道な訓練を終えて、いよいよプリンセスとしてデビューする日がやってきます。
初めて入った自分の個人用の楽屋も、僕の知る限り新人用とは思えない充実ぶり。
マネージャー達は相当気を使ってくれているのか、とも思ったのですが、実はそうでは無く、キャラクターの立場がホビー21の中でも重点的に売り出す予定のキャラクターなので、その楽屋もそのキャラクターにふさわしく立派なものになっているのだそうです。
普通は新人はチョイ役なので、始めは小さな個室しか貰えない訳ですが、僕はいきなり大抜擢なので主役級の楽屋なのです。
主役級と言うか、主役ですけどね。
これだけ厚遇だと他の役者さんたちの妬みを買いそうですが、実は数年間僕が頑張ってサポートをし続けていた事を殆どの役者さん達が知っていますし、僕が役者になれなかったのも、本来の能力とは全く別の、単なる機器のトラブルだった事をみんな知らされているせいで、むしろ同情してくれたり、おめでとうと伝えてくれたりしました。
そりゃあ中には妬みを持った人もいるのかもしれませんが、少なくとも僕の努力とか苦労を知ってる人には、好意的に捉えてくれている人が多い気がしました。
とは言っても、そもそもキャラクターに入る人を公表してる訳じゃ無いので、このイベントに絡む関係者を含むごく一部の人だけなんですけどね。僕が入るキャラクターを知ってるのは。
そして、いよいよ着ぐるみに入る時間がやって来ました。
まずは一番のイメージキャラクターと言うか、製品パッケージにメインで描かれる、アイリと言うキャラクターになります。
一番平均的なスタイルと、毒の無い美しい顔立ちに、水色の瞳と金色のふわりとカールのかかった髪は、まさに姫。
確かに一番イメージしやすい西洋の姫様のデザインと言えました。
アイリの身体にピッタリ合ってるデザインの衣装ですが、問題は変身時です。
このままスタイルが悪い方向に変化すると、だいたい胸が緩くてウエストが締まります。
ウエストの締め付けはそのまま息子への締め付けに変化しているのですから、それはそれで気持ちいいし、ぴっちりしてる分身体の動きに合わせてウエストの周りにピーンと突っ張る布のシワが寄ってそれが息子に筆先でなぞるような刺激を伝えてきます。
訓練でもこんなに気持ちいいのは経験した事がなかったので、涙が出てくるほど気持ち良くて幸せでした。
しかもこの状態である限りずっとこんな状況に耐え続けていられるなんて、ホントに幸せです。
それにね。胸は少し緩むけど、それでもボリュームが無くなる訳じゃないんですよ。一番小さい状態でもCカップはあるので。当然緩んだバスト周りのせいで揺れが凄い。この揺れ、僕の息子に伝わる訳です。
プロ用のスーツと衣装の生み出す快楽は、そのまま身をゆだねたくなるほど素敵なのに、僕はずっとその姫を演じる事になる。こんなに切ない時間を仕事として過ごせるのですから、役得以外の何物でもありませんよね。
一方で、スタイルが良くなると、今度は胸が凄く締め付けられてウエストが緩みます。
胸周りの布の密着力が息子を締め付けてきますので、結果的にやはり息子は締め付けられて、今度は胸回りのシワを感じるようになります。
ウエストは緩むとはいえ、元々細いので極端に緩む事は無く、つまり甘がみと言うか軽く締められながらシワは感じると言う、これまた地獄。
胸の揺れは、確かに締め付けが強い分減るのですが、締め付けられたまま揺れる感覚とかはもうほんとに、こんな状態をずっと味わい続けていいのだろうか?と嬉しい悲鳴です。
こんなに気持ち良くなってるのに周りからは可愛いまま見られてて、しかも結構いいお給料も出て、こんないい仕事他にあるのかしら?と。
ちなみにドレスは水色が綺麗なプリンセスラインの豪華な物で、全てブライダルサテンで作られた非常に高価な物です。裏地までサテンというこだわりは、着心地を追求したと言う話でしたけど、着ぐるみが着る時点で、性的な意味での着心地って事だよな、と思うと色々考えちゃいます。
フワフワのシフォン生地を幾重にも重ねてボリュームを増したパニエの上から、床まで届く綺麗なラインのスカートを穿くと、フランス人形のように綺麗な姫様なのに、中にいる僕にとっては全身を覆うオナホールのような感覚になります。
昔、北野から聞いた事がある感覚でしたが、まさにその通りと言う感じで、ずっと仕事中こんな気持ちいい状態を続けろ、と言う事なんだと思うと、それだけで色々な物が込み上げてしまいそうです。
もちろん下着類はパンティーもブラもサテンですからそのスベスベの装着感がセンサーを通してパッドに伝わると、息子はサラサラ滑々のサテン生地のフィット感やシワの動きをしっかり感じてしまいます。
その感覚は、慣れないと思わず装着時に息を止めて耐えてしまうぐらいに気持ちいいのです。
もちろん綺麗な水色のカラータイツはデニール数も高めで綺麗な足を艶めかしい水色で着飾ると共に、僕の足全体を締め上げ、同時に息子も気持ち良く締め付けてくれています。
改めて、北野達ってこんなにも気持ちいい事を毎回僕の前でやっていたのかと思うと、今更ながら悔しい訳ですが、それでもまぁ、あいつとは縁も切ったし、何より自分がこうしてその中に入っていられる事の幸せを噛みしめていました。
嬉しくて涙がにじんでいたりもしましたが、それ以上に息子の先っちょからは絶えず嬉しい涙がにじむ状態ですしね。
厳しくも苦しくて気持ちいい訓練も終わり、いよいよデビューとなる訳ですが、最初はゲームの新作発表会の場でマスコットとして登場する事になっていました。
もちろんその場で変身もしてみせます。
その日のトータルの出演時間としては2時間ぐらいなのですが、それでも不特定多数の人前で着ぐるみの中に入った状態を披露すると言うのは緊張するもんですね。
割り当てられた専用の楽屋から、指定の時間前に移動して、イベント会場近くの楽屋に向かう事になります。
すると、ホビー21の店舗内のバックヤードに張り巡らされた、楽屋から移動する通路の中では他のキャラクターとすれ違ったりするんです。
みんなそれぞれのキャラクターを演じきったままコミュニケーションしてくるので、僕も嬉しくてみんなと可愛い姫としての態度で接するんですよ。
でも、その時の興奮て、想像以上でした。
誰も見てない楽屋ですからもちろん多少なら手だって抜ける気はするのに、誰一人手を抜く事無くみんな可愛い。
でも、その中は僕のように、猛烈に気持ち良くて苦しい時間を過ごしてる人がいる訳です。
仕事上がりのキャラクターなんて、多分もう何度も出してるはずなので、きっと可愛らしいスカートの中に覆われた部分には、いやらしい液体をたっぷり吸収させた状態になっているはずなんですよね。
そして多分僕も何時間か後にはそういう状態になって戻ってくる。
この事を想像したら、彼女達の可愛い姿に今まで以上の興奮を覚えてしまいました。
今までだと、単に羨ましさの方が先に立ってしまっていますからね。
こうしてようやくイベント会場近くの楽屋にたどり着きます。
そこでは、この日、僕の演じるキャラクターの担当となるスタッフがいるのですが、そのスタッフを見て衝撃を受ける事になります。
その人物は、なんと、北野だったのです。
一瞬、何故北野がこんな所に素の状態で存在しているのか分からなかったのですが、実はその理由がすぐに分かります。
僕は個室の楽屋に入って少し待機する事になるのですが、その楽屋ではテーブルに手紙が乗せられていました。
手紙は封がしてあって、差出人も不明でしたが、開封して中を見ると、マネージャーからの手紙だと分かりました。
そして、こう記されていたのです。
「今回、北野君が君のサポートに着く。ちなみに彼は中身が君だとは知らない。北野君がサポートをするようになった経緯だが、実はひと月ほど前に彼は自宅で転んで腰を痛めてしまったんだ。通常の行動に支障はない程度には回復しているのだが、細胞補正が働くと痛みが強いらしく、まだしばらくは着ぐるみに入る仕事は出来ない。だが我々としては彼に給料は払う必要があるので、彼にはサポートを担当して貰う事になったんだ。彼は普段から着ぐるみに入る専門だったから、ここら辺でサポートする側の気持ちと言うのを味わうのも勉強だと思ってこのアサインをした。少なくとも今月いっぱいは北野君が担当する事になっている。君が北野君に正体を告げるかどうかは、君の自由だ。」
北野とは縁を切って以降、彼の動向は全く知らなかったのですが、なるほど。彼は腰を痛めていたのですね。
わざわざ僕の演じるキャラクターにサポート担当として割り当ててくれたのは嬉しいですけど、それはマネージャーからのプレゼントみたいなものなのかと、その時は思っていました。
ですが、後から色々聞いたところ、いろいろ苦労した僕だからこそ、北野に対して出来る教育ってのがあるんじゃないか、と思っての事だったらしいです。
そうか。それにしても、北野は僕の正体を知らないんですね。
これは面白い事になった気がします。
過去に、正体をバラされずにサポートさせられて悔しい思いをした事も多々あります。
今回は僕が真逆の立場に立てたのです。こんな夢みたいな話はありませんよね。
しかもマネージャーは、北野のサポートされる側に慣れてしまったが故の問題と言うのに気付いているからの割り当てでした。
末期の北野は、僕のサポートを当たり前のように感じていたようで、まるで僕のサポートに対する感謝の気持ちなんてなかった。それどころかわざわざサポートが大変になるような悪戯を平気でやってきたんですよね。
挙句の果てに、僕の目の前で彼女とあんな行為に及んだ訳です。
受け入れた彼女も彼女だけど、北野の行為はどうしても自分には許せないものだったんです。
多分昔なら気を使ってくれたんでしょうけど、あまりにも長い間サポートをしていたから、それに慣れてしまい、サポートする側の苦労を全く想像出来なくなっていたんでしょうね。
確かに主役は着ぐるみに入っている側ですから僕らは目立たないサポートに徹する必要がありましたけど、それにしたって、サポート側に対する感謝が全く感じられなかったんですよ。
もちろん、サポートは着ぐるみを輝かせる為に色々世話を焼くのが仕事ですから、ある程度は馬車馬のように着ぐるみをサポートするのも仕方ないと思うんです。
でも、やはり限度ってあるじゃないですか。
サポートされる事に慣れすぎると、多分そう言う感謝の感覚って薄れるんだろうな、とは思うのですが、だからこそ、北野にはサポートする側の苦労も知る方がいい、と思うんですよね。
特に彼の場合、元々エリート街道まっしぐらで、サポート役の経験なんて皆無ですから。
だからこそ、色々な苦労をしてきた僕に、彼を再教育してほしいって事だったんだと思います。
なんとなく、そう思ったら、彼がサポート役として割り当てられた事に対して、それまで以上にこの割り当てをしてくれたマネージャーに感謝する気持ちでいっぱいになりました。
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