由佳里のバースデー -inside-(4話) [戻る]
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≪ 北野side ≫


 いよいよバースデーパーティーの開始です。
 ドアが開くと一気にスポットライトを浴びせられますが、僕の視界は若干サングラスの変わりにもなるので、それ程まぶしくありません。
 ゆっくりと、優雅に、そしてちょっぴり生意気そうに、由佳里らしく、一歩一歩歩を進めて行くと、緊張感のせいか、さっきまで程の快感は感じられません。

 が、感度が何割か弱く感じるだけで、実際気持ちがいいのは事実ですから、僕のモノは由佳里の中で凄く喜んでくれています。
 おかげで僕は苦しいんですけど、その苦しさがさっきまでよりは長時間耐えられる程度になっていると言う感じです。
 スポットライトの熱が、徐々に由佳里の中に浸透し、由佳里の中の温度と湿度はかなり高くなっていますが、それでも僕は耐え続けます。
 一応由佳里の身体が熱を発散してくれているはずなのですが、ドレスという装備のせいでほぼ全身を布でくるんでしまっているので、熱が逃げないんですね。
 サウナスーツとまでは言いませんが、実際かなりの蒸し風呂になっていて、汗が身体中で滲んでいるのが体感できます。
 スーツは汗を吸って体外に放出もしてくれるので、このぐらいで、汗でびちょびちょになる事は、無いのですが、やはり蒸れて相当に不快感は強くなります。
 そんな環境でも、僕が、部屋の正面センターに向かってゆっくりと歩を進めていくと、凄い勢いでフラッシュが光っているのが分ります。
 みんな一斉に、この僕が演じる、ゲームのヒロインである由佳里を写真に納めているんです。
 由佳里の中で僕がこんな状態になっている事も知らず、可愛らしいヒロインを写真に納めているんです。

(みんな…ごめんね……みんなの由佳里は、僕にだけはとってもエッチな事もしてくれるんだ…みんなには分らないように、僕と由佳里だけの秘密の世界でしてくれることなんだけど、みんなが知らない由佳里を、僕だけ知ってるんだ……でも安心して。みんなの前で僕はそんな由佳里を見せることは無いから…みんなは一生、そんな由佳里は知らないままでいられるんだもん。知ってしまったらきっと凄く嫉妬するだろうけど、知らなければ幸せな事ってあるもんね……)

 こんなことを心の中で思いながら、精一杯由佳里として存在します。

 でもこの「みんな」の中に、残念ながら成田君だけは入ってないんです。
 可愛そうだけど、彼だけは、由佳里の中で起こっている真実を想像出来てしまうんです。

 実は、この場には、他にもそう言う世界を想像出来る人物が、三人います。
 そう。それは、この場でお手伝いしてくれるメイドさんの着ぐるみに入っている、三人の新人です。
 彼らは、もちろん着ぐるみに入っている立場ですから、基本的なシステムは由佳里と同様の物を装備していますし、当然今この瞬間も、自分のモノを襲う快楽と闘い、新鮮な空気を切望しながら、股間に溜まった濁った空気を吸って、メイドさんを演じています。
 彼らの衣装は、初心者が着るにはそれなりに苦しいロングスカートと、殆どストレッチしない生地で出来たメイド服。
 ですから、それだけでかなり過酷な環境の中に身を置いていると言えます。
 そんなメイドさん達の中にいる彼らから見れば、由佳里の中で起こっているであろう事はリアルに感じられるはずですし、リハーサルの時には、かなり羨ましがられる事も多々ありました。
 ただ、彼らは由佳里とまでは言いませんが、かなり近い世界にいます。
 実際に自分を覆うメイドさん達の意地悪い奉仕も受け、メイド服が産み出すであろう涙が滲むような快感と、スカートをめくり上げたくなるほどの息苦しさを体感しているはずです。
 唯一、この中で、由佳里の裏側を想像しながら、何も特別な空間を持たず、生身の身体で存在しているのが、成田君なのです。
 外にいて、見てるだけの彼には、かなり酷な状況だとは思います。
 ですが、彼の仕事は由佳里のサポート。
 僕が入ってる由佳里がお願いすれば、可能なことならなんでも助けてくれる役。
 普段は友達ですし対等ですが、今は、僕は由佳里で、彼はその手助けをする役。
 この立場の差がある上に、さらに、彼は由佳里の中を想像しながら、見てるだけなんです。
 可愛そうだとは思うけど、これは仕方がないこと。
 だって、彼はまだ、女の子の着ぐるみに入って、長時間その女の子を存在させておく事が出来ないんですから。
 だから、せめて成田君には、彼が大ファンである由佳里を、凄く素敵な女の子として存在させてあげるように頑張ろうと思っていました。
 もちろん、彼にもちょっとだけ特権を分けてあげる為に、由佳里が、他のスタッフよりも仲良くしてあげようと思います。
 そうすれば、他のスタッフ達からはきっと羨ましがられるはずです。

 可愛い着ぐるみと親しいスタッフ達は、ホビー21でも羨ましい対象らしいんですよね。
 そのぐらいのメリットはあげないと、ホントに頑張って色々我慢している彼が可愛そうですから。

 とは言え、まずは今の僕の仕事は、このイベントに由佳里として存在し続ける事。
 会場の正面に儲けられたセンターステージに辿り着くと、軽く階段を上がります。
 フワフワのスカートが、階段を上がる時に重力で引っ張られ、僕の身体にパニエを押しつけて来ますが、それも覚悟して登っているので耐えきります。
 みんなの前にスポットライトを浴びて立つと、いよいよ由佳里の挨拶が始まります。
 音声に合わせて、演技指導の先生に教わったように、由佳里をちょっぴり生意気そうに、そして可愛らしく、照れくさそうに動かしてあげると、再びカメラのフラッシュの嵐が由佳里に浴びせられます。
 身体全体を使っての演技ですから、当然スカートや上半身の産み出す快感を感じますし、徐々に緊張もほぐれてきているので、僕のモノもヒートアップし始めるのですが、まだ始まったばかりの段階でイク事は、後々のことを考えると、あまり賢い選択とは言えませんので、僕としてはまだまだ我慢を続けることになります。
 まだ上り詰めていける余裕があるからなのか、快感の制御も入らないですが、それはつまり快感の感度も全開になっていると言うことであり、由佳里の中は余りにも切ない感覚に包まれ続けています。
 身体の動きに合わせて産まれる、ドレスに包まれて締め付けられている感覚が、僕のモノを翻弄し、ドレスは清楚で綺麗な物なんかじゃなく、とっても嫌らしい衣装だと錯覚ししてまう程です。
 周りから見たら、綺麗なドレスを纏い、可愛らしく動く由佳里の中に、そんな世界があるなんて想像するお客さんはいないはずですから、僕は頑張って、由佳里の裏を隠し続けます。

「ありがとう」

 って感謝の気持ちを照れくさそうに言って小さく頷くときなんて、首周りのシワやネックレスの動きで、ホントに腰が引けそうなぐらい気持ち良くなっていて、思わず由佳里の中で、

(くっ……)

 って、歯を食いしばってしまいました。
 みんなの名シーンを再現しながら、僕は裏で、由佳里によって込み上げてくる物を必死でなだめているなんて、絶対みんな想像しないでしょうが、こんなシーンで、こんなに気持ち良くなってしまっている自分に、ますます興奮してしまいます。
 でも、最後の台詞を言い終わった後、少しみんなの様子に感動した演技をすると、明らかにお客さん達も感動してるんですよね。
 目の前で、あこがれのキャラクターが名シーンを再現したんです。
 ファンなら感動しますよね。

 ちらりと見ると、最前列にしゃがんで待機している成田君もちょっと感動しているみたいですし、我ながらいい演技だったと思います。
 苦しい思いをして頑張っただけありますね。
 ここで、主人公の男の子が登場です。
 男の子の着ぐるみは、ゲーム会社が用意した物で、演技している男性も、今回のために派遣されたショーチームの人です。
 所謂普通の着ぐるみで、肌色のタイツの上に衣装を着て、その上からマスクを被るスタイルなのですが、有名な造形社に頼んだらしく、かなりいい値段が取られた変わりに、出来も、この手の着ぐるみとしては良く、小顔できりりと締まっていて、中々ハンサムです。
 もちろんホビー21製の美少女着ぐるみを見慣れている人から見たら、ごくごく普通の着ぐるみなのですが、一方でホビー21製の着ぐるみは完璧すぎて、中にいる人を想像し難い分、ああ言うタイツとマスクと言う着ぐるみの方が好きと言う人もいるみたいです。

 由佳里のスピーチの後、客席に紛れて座っていた彼氏が、ゆっくりと近づいてきて由佳里の事を祝福してくれます。
 僕は、嬉しくて愛しくて、大好きな彼氏に近づいて行く由佳里を演じ、彼氏もまた、大好きな由佳里を優しく抱きしめてくれる名シーンです。
 彼氏に抱かれるように包み込まれると、もちろん身体が締め付けられて、僕のモノはその窮屈な感触にヒクヒクと反応してしまうのですが、見た目の由佳里は、可愛らしく彼氏の腕に包まれるようにして、素敵なシーンを再現しています。
 そして、そのまま顔を上に向け、彼氏を見つめ、キスシーン。
 やさしく、彼氏にチュッとされ、由佳里は恥ずかしそうに、そして嬉しそうに照れながら彼氏から離れるのです。
 練習中も結構興奮するシーンでしたが、実際にお客さん達の前でやると、もうその興奮はかなり物も。
 僕のモノはカチカチに固くなって、衣装の感触を目一杯受け、今にも出そうな物を繋ぎ止めていました。
 キスの瞬間、彼氏の顔が間近に迫ると、口元のスリットが見えました。
 彼の中の人は、こんな場所から空気を吸ってるんですね。
 多分周りの人から見たら、こんなに小さくて薄いスリットからの呼吸は、かなり苦しそうに見えるんでしょうね。
 僕も、そんな彼氏の中の人に同情してしまいます。
 きっと苦しいんだろうなぁって。

 もちろん僕の入っている由佳里は、苦しいと言うところだけを取れば、彼氏の着ぐるみとは比較にならないぐらい苦しいはずです。
 ああ言う着ぐるみに入ったことがないので、直接比べたことは無いですけど、ああやって空気の出入り口が外界に露出していると言うだけで、かなりマシって言う気がします。
 でも、僕は彼氏の着ぐるみと由佳里の中と、どっちに入りたいかって言われたら、絶対由佳里の中です。
 確かに、由佳里の中はもの凄く苦しくて、まるで長距離走を続けているようにずっと荒い呼吸を続ける事になってますし、呼吸口はずっと下着やタイツに覆われて外界に露出する事は殆ど無いし、仮に許されるとして、今、この瞬間に、新鮮な空気を吸いたいと思っても、スカートを捲るだけでは新鮮な空気は由佳里の中には伝わってきません。
 そもそもこの重装備のスカートを軽々と捲るなんて無理ですから、まずはスカートを捲り、パニエをかき分け、露出した下半身からタイツを脱ぎ、下着を脱いで、ようやく小さい呼吸スリットが露出するんです。

 僕の感覚からすると、新鮮な空気は遙か彼方にしか無いと言えます。
 彼氏の着ぐるみなら、マスクさえ取ってしまえばいいので、簡単ですが、由佳里の中には、新鮮な空気を届けるのは相当に大変な作業なのです。

 こんなに苦しいのに、なんで由佳里の中を選ぶのか、と言われたら、それは、由佳里が、僕にくれるのはただ息苦しいだけの世界ではなく、息苦しくて、その上、嫌らしい快感を絶えず与えられ続け、簡単に外に出られない由佳里の身体の中で、人知れず処理する興奮を知っているからです。
 こんなに可愛い女の子の中で、こんなに嫌らしい世界を独り占め出来るんです。
 女の子の着る衣装が、殆ど全て、僕には嫌らしい性処理の道具に思えてしまうぐらい、女の子の着る衣装が産み出す悩ましい快感は、僕を興奮させてくれるんです。
 今着ているドレスのようなツヤツヤした布に、絶えず締め付けられ、扱かれる行為が、どのぐらい気持ちいいか、想像付きますよね?
 由佳里の衣装と言う理由があるから、堂々と、そんな嫌らしい布に身体を埋めて、しかもお客さんからは憧れの女の子として見られる状況で、気持ちいい世界を独り占め出来るんです。
 そんな快感によって興奮し、息が荒くなっても、吸える空気はスカートの中に充満する濃密で衣類と吐息と汗とゴムの臭いが混ざった、凄く臭くて蒸し暑い空気。
 この空気を呼吸していると、僕が如何に虐げられた由佳里の中に閉じ込められているかが実感できるので、余計に興奮して来るんです。

 ただ苦しいだけなら絶対に嫌ですが、由佳里のくれる全てを味わえるなら、この苦しさは、むしろ由佳里のくれるプレゼントと言えるんですから。
 こんな素敵な空間で、息苦しさも味わえるなら、絶対にその方がいいですよ。
 憧れるヒロインのスカートの中の空気なんて、呼吸できる経験、殆どの人は無いはずでしょうしね。

 こうしてキスシーンも無事に終了し、次は、ケーキのカットとケーキの配膳です。
 この辺りはこのイベント独自のメニューなのですが、お客さんと由佳里との交流の一環として、由佳里がバースデーケーキをカットしてみんなに配る事になっています。
 結構お客さんの人数が多いので、大きめのケーキが三つ用意されていて、全てを由佳里が均等にカットしないといけません。
 練習で何度かやってるんですが、このカットは加藤君の方が上手だった気がします。
 僕がやると、何故か端の方が少し大きめになってしまうんですよね。
 まぁお客さん達は、そこまで比べないでしょうし、なにより由佳里にカットして貰うケーキが食べられるんですから、幸せでしょうけどね。

 大きなワゴンがスタッフによって僕の前に運ばれてきます。
 あ、もちろん僕って言うか、由佳里の前に、なんですけどね。
 ケーキを見て、驚いたような、嬉しいような仕草をして見ると、その動きによってドレスから悩ましい感触が届くので、相変わらずスカートの中は蒸し風呂のような空気が充満しています。
 ケーキの甘い香りが、由佳里の周りに漂っている気がするのですが、僕は由佳里のスカートの中の濃密な香りで我慢します。
 その間にお客さん達は由佳里の周りに集まってきて、由佳里のケーキカットのシーンを間近で見たり、写真に納めようとしています。
 三つケーキがあるので、お客さんを三グループに分けて、グループ毎に順番に近づいて貰うようですが最初のグループが由佳里とバースデーケーキの周りを取り囲みました。
 準備が出来たところでスタッフからナイフを受け取り、ケーキの前で少し前屈みになって、カットするポーズを取ると、カメラを持った人達が一斉にシャッターを切っています。
 ですが、前屈みになって腕を伸ばしてケーキにナイフを入刀した事で、胸が重力によってドレスの布を押しているのが分ります。
 その甘い締め付けは、ケーキの香りが伝わってこない僕にも充分に感じることが出来る切ない物で、ケーキの甘さよりずっとずっと素敵な、甘い締め付けでした。

(ゆ……由佳里ちゃん…そんなに甘く締め付けたら…く…苦しいって……)

 疼いた僕の固いモノを由佳里の中でヒクヒクと反応させながら切ない感覚に耐えて、みんなの写真に収るのですが、お客さんの向きによっては、由佳里が可愛く写っていない事に気付いて、僕はその場で身体の向きを変えてあげたりしました。
 ケーキに刺さっているナイフを抜くと、ケーキが汚くなってしまうので、ナイフは刺したまま位置を変えず、身体だけ向きを変えるため、方向によっては、由佳里の腕が、自分の胸を押している事もあり、そのポーズを取っている時間は、頭の中で15秒ぐらいカウントして、その感だけ我慢しようと必死でした。
 周りのお客さんは、まさか可愛い由佳里の中でそんな悩ましいカウントが続いているなんて誰も気付かないはずですけど、由佳里は本当に僕にだけは素敵な快感をくれるんです。
 もちろん胸だけじゃなくて、ドレスの上半身部分については身体を動かすことで出る布のシワや布の張り、スカートの揺れによる下半身を悩ましく撫でるパニエの感触なども、容赦なく僕に伝わってきますから、由佳里の裏側の世界は、写真を撮ってるお客さんには想像がつかない程に切ない世界になっています。
 気持ち良くて、出したくても、快感がコントロールされている関係で、絶妙な感度で興奮を維持させられ、なかなか最後まで達することはありません。
 僕自身、かなり苦しいのですが、まだイク寸前まで追い込まれているとは言えないようで、先程のような完全な感覚のシャットアウトは無く、由佳里のコンピュータによって、絶えず固くて出そうになる、もうちょっと欲しいと思ってしまう辺りの興奮をキープさせられています。
 もうちょっと派手に動けば多分感覚のシャットアウトによってしばらく落ち着くまで、微妙な感触に晒される事になると思うのですが、今のように、その場でちょっとポーズを作る程度であれば、そこまで感じることが無いので、どうしても高い水準の興奮を維持し続ける事になり、それはかなり苦しい事にもなります。

(い……イキたいよぉ……気持ちいいよぉ……)

 と心の中で願っても、由佳里がその願いを叶えてくれる事は無いのですから。
 しかも、今日はまだ一度もイッてません。
 由佳里の身体に入ってから1時間半以上経ちますが、今までずっと、我慢を繰り返している訳です。
 1時間半、寸止めを繰り返され続けるって、苦しいと思いません?
 その苦しさの中で、僕は由佳里を演じているんです。
 こんなに可愛くて綺麗な由佳里の中に、そんな人間がいるなんて想像出来るお客さんはいませんから、みんな楽しそうに、憧れのヒロイン、由佳里の写真を撮ってます。
 イキたくてイキたくて、目を潤ませて、かなり情けない顔になって必死に頑張っている僕を、全身くまなく覆っている由佳里の事を、楽しそうに写真に撮っているのです。
 この状況だけで、僕は更に興奮してしまいますが、由佳里は中々僕に出させてくれないんです。
 残りの時間を考えると、我慢できるなら我慢した方がいいとも思っているのですが、こうも苦しくて気持ちのいい衣装に包まれての演技を続けていると、僕の理性より、僕の本能の方が勝ってしまいそうな場面が度々訪れて、その度になんとか僕の固いモノを理性で押さえ込んでいるんです。

 そんな中で、視界の一部からチラリと見えた成田君の何とも言えない表情も印象的です。
 彼だけは僕がどんな状態にあるかを想像しているはずです。
 こんな重装備のドレスを纏っているのですから、既に何度か出していると思っているかもしれません。
 ですが、仕事として今日は長丁場である事を考えると、我慢している可能性が高い事も理解している気がします。

 そう。
 つまり、彼は、今も、由佳里の中で僕が出したい衝動と闘っている事に薄々気付いている気がするんです。
 こんな美しいドレスを纏った由佳里というお人形さんの中で、その感触を独り占めして、スカートの中の蒸し風呂のような噎せ返る空気を呼吸して、出したいのに出さずに頑張っている僕を想像している気がするんです。
 そんな彼に、僕の真実が伝わることはありませんが、想像されていると言うのも興奮する要素の一つなんですよね。
 そんな興奮の中、どうにか写真に撮られながらもケーキカットが終わり、今度はこのケーキをお客さんのテーブルに配膳することになります。
 配膳は、由佳里が行うのですが、メイドさんが一緒に移動してサポートしてくれます。
 そして、更にそのメイドさんも含めた着ぐるみをサポートしてくれるのが成田君の仕事となっています。
 まずは、メイドさん達が、切り分けたケーキを小皿に乗せて、それを大きなワゴンに乗せて行きます。
 メイドさん達の中でも、あのメイド服の産み出す悩ましい感覚と、長いスカートの息苦しさとの戦いは続いているはずですが、さすがにプロとしてデビューしているだけに、お客さん達にはその悩ましい世界は見せないように頑張っています。
 ですが、ああやって軽く前屈みになって、テーブルのケーキを可愛らしく取り分けていると、さっき僕がそうだったように、重力で胸が服に押しつけられて凄く切なかったり、軽くくの字曲がった腰によって、固定されている中の人のモノへの締め付けが増したり、と、実は結構苦しいんです。
 もちろん彼女達の衣装は、由佳里の着ているドレス程苦しくはないのですが、それでも新人君には相当悩ましい世界のはずです。
 慣れていない人だと、その動きだけで気持ち良くて出してしまう可能性があるぐらいに実は裏側は感じているはずなのです。
 僕から見たら、あんなに嫌らしい行為を淡々と続けているメイドさん達ですが、お客さんから見たら、一生懸命にケーキを取り分けている可愛いメイドさん達に見えるんでしょうね。
 あの可愛らしい動きの裏側で、何が起こっているかを想像出来ないなんて、ちょっと羨ましい気もします。
 知らなければ幸せな世界って言うのもありますからね。
 何しろ、この世界について言えば、知っている方が幸せとは言い切れないんですよね。
 知っていて、こうして僕やメイドさん達のように、実際に体験できている人には、凄く素敵な世界なんですが、成田君のように、裏を知っているのに、それを外から見ているだけ、と言う人には、かなり羨ましい光景のはずですから。
 それならむしろ知らない方が幸せという気がします。

 ある程度ケーキを取り分けたら、僕はワゴンを押して、お客さん達のテーブルまで行き、そこでこのケーキを配膳することになります。
 3人いるメイドさんのうち、2人が残ってケーキの取り訳を続け、1人が由佳里をサポートすることになります。
 もちろん成田君はその後ろで僕らをサポートする係です。
 僕はゆっくりとワゴンを押して、端のテーブルから順にお客さんへの配膳を開始します。
 ワゴンを押すと、スカートが邪魔でワゴンを押すには結構前屈みになる必要があるのですが、それは先程メイドさんのケーキの取り分けの時に説明したとおり、僕にもかなり切ない体勢になります。
 その上、その状態でゆっくり前に進まなきゃならないので、その姿のまま、一歩一歩スカートの揺れや、胸の揺れ、そして背中のリボンの揺れも体感しながらの移動になります。
 甘くて切ない快感が僕の下半身を襲い続け、スカートの中には僕の悩ましい呼吸が充満し、由佳里の身体と、綺麗なドレスの産み出す、その余りの嫌らしい世界に、演技を放棄して自ら嫌らしい行為をしたくなるぐらい気持ちいいのですが、僕の仕事は、お客さん達に、憧れられるヒロインを見せてあげること。
 その為に、僕はこんな悩ましい世界を隠して、由佳里を動かし続けるんです。
 そんな時、不意に僕の固くなったモノが、予想外に締め付けられました。

(んあっ……)

 思わず声が出そうになってしまう急な締め付けですが、一瞬、何が起こったのか分らなかったんです。
 慌ててビックリした仕草をしてしまうとお客さんに不思議がられるかもしれないので、僕は冷静に自分の身体に起こっていることを調べるのですが、少なくとも、自分の身体の前には変な部分はありません。
 こんなに急にモノを締め付けるのですから、ハッキリと力が加わっているはずなのですが、見た感じ、僕の前には、由佳里の押すワゴンがあるだけです。
 そしてふと後ろを振り返ると、さらにモノがギュッと締め付けられ、一瞬腰が落ちそうになります。

(くっ……ち……ちょっと待って…何コレ…)

 訳が分らず悩ましい締め付けに、崩壊寸前まで追い込まれるのですが、次の瞬間スッと楽になります。
 締め付けが急に緩んだのです。
 ここまで締められた後で締め付けが緩んだので、それも相当に切なかったのですが、取り敢えず危機を脱し、ゆっくり後ろを振り返ると、メイドさんがジェスチャーで、背中のリボンが、お客さんの椅子に引っかかったのだと説明しています。
 なるほど、それで胸が締め付けられて、結果的に僕のモノが締め付けられたのですね。
 メイドさんが取ってくれたのでしょうけど、多分メイドさんは、その時由佳里の中でどんなことになっていたかを想像出来るはずです。
 可愛らしくジェスチャーしながら、僕を想像して興奮してるんでしょうね。
 メイドさんの中の人には可哀想な話ですが、その不意の締め付けは、本当に切なくて気持ち良くて、苦しかったんです。
 その締め付けを味わうことが出来たのも、由佳里の中にいるから。
 今でも余韻で凄く疼いてますが、この苦しげに疼くモノは、メイドさんの中では楽しめなかったはずです。

 そうそう。
 多分ホンの一瞬の出来事だったのと、成田君が、たまたま、他の物に注意していたようで、由佳里のリボンのことには気付いていない様子。
 少し残念な気もしましたが、成田君にとっては知らずに済んだのは良かったのかも知れませんね。

 テーブルに着くと、メイドさんがお客さんのテーブルのスペースを確保し、由佳里がそこにケーキを配っていくのですが、お客さんにはサービスの為、由佳里の大きな胸を更に大きく見せてあげるように、わざと二の腕で胸を押すように手を差し出してお皿を置きます。
 お客さんは、最初は由佳里の顔を見ているのですが、胸を押すと、面白いように、ほぼ確実に視線がそちらに移動します。
 ツヤツヤのドレスの生地がライトによって照らされてテカテカになっているので、その凹凸を変化させるように、胸を押すと、確実に視線が移動するんです。
 もちろんその度に僕のモノはソフトに締め付けられることになりますので、由佳里の中の環境はかなり悪化するのですが、そんな苦しい思いまでして、ポーズを作ると、お客さんの視線が集まることに、更に興奮します。
 お客さん達の目を釘付けに出来る魅力的な身体を、自由に出来るって、ちょっと興奮すると思いません?
 しかもそんな身体は、僕にだけはもの凄く嫌らしい快感をくれるんですから。
 素敵ですよね?
 由佳里の中で、出したい感情を必死に堪えながら、スカートの中の息苦しい空気を呼吸し、可愛らしく由佳里を存在させる行為は、本当に苦しくて、本当に切なくて、そして本当に興奮出来るんです。
 お客さんにケーキを配り歩きながら、何度も何度も込み上げる液体を我慢し、固くなっているモノをなだめているのですが、そのことに誰も気付きません。
 可愛い由佳里を間近にして、しかもケーキを配って貰えることが、お客さんにとっては非常に幸せなことなんですね。
 お客さんからみた由佳里ちゃんは、ゲームに出てくるように可愛いですか? そして、優しいですか?
 それ、全部、僕が演じてるんですよ?
 それも、こんなに苦しい世界を隠して。

 そんなことを思いながら、テーブルを回ってケーキを配り、ワゴンに乗ったケーキのお皿が無くなると、引き返して取りに行き、再び配る、を何度か繰り返します。

 そして、最後に、由佳里の彼氏に対して、ケーキを配ってあげるんです。
 愛しい彼に、由佳里の切り分けたケーキを、愛情たっぷり、可愛らしいポーズで配ってあげて、最後には座っている彼氏にギュッと抱きついてイチャイチャします。
 ゲームに出てくるのでよく知っているのですが、由佳里と彼氏はホントにラブラブなのです。
 ですが、そのラブラブの由佳里を演じる僕は、当然その可愛くも愛しい動きによって、大事なモノが虐められ続けています。
 由佳里に抱きつかれた彼氏が何を思っているかは知りませんが、僕はそのせいで、自分のモノに与えられる締め付けや衣類のシワによって、とても苦しんでいました。
 ギュッと抱きついてそのまま気持ち良く出したい衝動に駆られるのですが、長時間不自然に抱きつくのは、由佳里の行動ではありませんので、目の前にある快感を何度も諦めて可愛らしい由佳里を存在させているんです。
 そんな僕の苦労に気付いているお客さんがいるとは思えませんけどね。

 こうして、由佳里のケーキ配膳が終わります。
 凄く苦しい時間でしたが、由佳里の中でこんな時間を過ごせることに喜びを感じてしまいます。
 この後は、一旦退室して、次のイベントの準備をします。
 由佳里が希望者に向かって花を投げて、その花を取ったお客さんに、あとでキスをしてあげるというイベントです。
 由佳里は、彼氏と共に一旦退室して、ドアの外で準備が出来るまで待機します。
 この間に希望者を募って、席の前の方に集まって貰っているはずです。
 スタッフ何人かと由佳里と彼氏が、ドアの外で待っている状況ですが、他のスタッフの目もあるので、僕は彼氏とラブラブの由佳里を演じてあげます。
 本当は、彼氏はこれから休憩なのですが、彼氏も由佳里に付き合ってちょっとラブラブな雰囲気を作ってくれています。
 もちろんその度にとても苦しいのですが、未だにイク事も出来ず、ひたすら我慢が続いています。
 ホントにそろそろ出したいのですが、由佳里が許してくれないので、僕はずっと寸止めされ続けているんです。
 この美しいドレスが、由佳里を覆っていることで、僕がこんなに苦しんでいるのに、由佳里はきっと凄く綺麗なんでしょうね。
 由佳里に近づくと、由佳里の髪は凄くいい臭いが漂うのに、可愛い由佳里の顔に遮られて、直ぐ目の前にある由佳里の髪の毛の香りがいっさい伝わって来ないんです。
 僕に伝わるのは、僕の顔から遠くに離れた、スカートの中に充満する噎せ返るような空気の臭いだけ。
 凄く苦しくて臭いこの臭いが、僕の知る由佳里の臭い。
 そして、その臭いは、僕を凄く興奮させる臭いでもあります。
 誰も知らない由佳里の真実の臭いであり、これを知るのは、由佳里の中にいる僕の特権なんですから。
 髪の臭いなんて、誰でも嗅げる臭いですが、スカートの中の臭いを知っているのは、基本的には、着ぐるみの中にいる人達だけなんですから。

 そうやって、苦しい中でラブラブの由佳里を演じていると、不意に成田君が視界に入ります。
 彼は、次の余興のために、花束を丁寧にバラしているんですね。
 僕が投げる花を一本一本バラバラにして準備してくれているんです。
 そこで僕は、彼にちょっとだけイタズラしてみることにしました。
 彼氏役の男の子も、由佳里が成田君に興味を示しているタイミングで楽屋に引き上げた様子なので、ここから先は、他のスタッフは無視して成田君に絡むことにします。
 バラバラにしようとしている花を、手で纏めてバラバラに出来ないように押さえたり、彼の手を弄って邪魔したりします。
 可愛らしくじゃれつく由佳里の姿を彼に楽しんで貰うように、頑張ってみました。

「ち……ちょっと、まってまって」

 彼は戸惑うように言います。
 面白そうに笑う仕草で彼の様子を見ると、ちょっと複雑な気持ちなんでしょうか?
 でもちょっと嬉しそうにも見えます。
 そりゃそうですよね。
 彼にとっても、由佳里は憧れのヒロインですし、そのヒロインにじゃれついて貰ってるんですから、ちょっと嬉しいはずです。
 でも、当然その裏には友達が入ってる事を理解しているはずですから、そのことも想像しているはず。
 それでちょっぴり複雑な表情なんでしょうね。
 でも、こんなに可愛く由佳里がじゃれつくのは、彼氏以外では、成田君だけなんですから、もうちょっと喜んで欲しいかな。
 僕だって、こんなに苦しいのに、彼のために快感を押し殺して頑張ってるんですから。
 あ、でも、そうすればする程、彼は裏を想像しちゃうのかも知れませんね。
 君の手に触れてあげた、このサテンのロンググローブの感触はどうですか?
 とってもツヤツヤで気持ちいいでしょ?
 でもね。
 それが、僕のモノをずーーーっとソフトに包んでるんだよ?
 グローブを付けている間は、ずっと逃げたくても逃げられないの。
 手首動かすだけで、シワが動いて生地が突っ張って、その優しい締め付けに目が潤むの。
 どれだけ苦しいか分る?
 どれだけ気持ちいいか想像つく?
 そんな感情を隠して、由佳里は可愛くじゃれてあげるんです。

 すると、緊張したのか手元が狂ったのか、成田君は花を床に落下させてしまいます。

「あーあ。もう。もう一度やり直しだよ。」

 少しだけぶっきらぼうに言うのですが、顔は明らかにじゃれつく由佳里の仕草の色んな事を想像してしまっている様子。
 ただ、彼は彼の仕事がありますから、ここは素直に謝っておこうと思いました。
 シュンと落ち込んだような仕草をしてみたのですが、彼は無視するようにしゃがみ込んで、花を取ろうとしています。
 その様子を見た瞬間、いいことを思い付いちゃいました。
 このまま僕がしゃがむと、きっとスカートの中に溜まった空気が裾から漏れ出すんです。
 するとどうなると思います?
 しゃがんで花を取っている成田君の手に、その空気が吹き付けられるはずなんです。
 由佳里はしゃがんで、彼の前でごめんなさいをするんです。
 その為にしゃがんだ事にすれば、違和感は全くありません。
 しかも、彼はその手に僕だけが知っているスカートの中の空気を、少しだけですが、感じて貰える。
 憧れのヒロインのスカートの中の空気なんて、中々知る機会が無いでしょうから、特別サービスですが、彼は一生懸命仕事してくれているので、ちょっとだけ素敵な空間の一部を教えてあげる事にしてあげましょう。
 フワリと可愛らしく、由佳里を座らせて、彼の前でごめんなさいのポーズを作ります。
 すると予想通り、一瞬だけ由佳里の顔を見た後、彼の視線はスカートの裾に落ちました。
 計算通り、彼はこの蒸し風呂のような空気を知り、色々想像しちゃってるみたいです。


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