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コーシュカに入ってる僕の同級生とは一体誰なのか?
僕以外にホビー21に実習に来てる同級生は3名、これは実習のことが気になって何度も確認してたんで間違いはないはずです。
更にそのうち女子はただ一人、文芸部長の本多さんしか居ませんでした。
小説家志望の知的な美人ですがツンツンしておらず気さくなところもあって、学校内の男子人気ランキングでもベスト3は確実な程でした。
かく言う僕も彼女に憧れてる一人だったりした訳です。
性別条件だけで考えたら本多さんで間違いないはずです、だが一点問題がありました。
本多さんはすらっとした高身長で、男性の僕と比べてもそう身長は変わらなかった筈です。
ですが目の前のコーシュカは明らかに僕より背が低い、穿いているブーツの厚みも考えると頭一個分近くは差があるように見えます。
ブーツに何か仕掛けがあるのでしょうか?
しかし多少の仕掛けを施したところでこの慎重差が生まれるとはにわかには考えられません。
むしろ身長だけで言えば残る二人の男子生徒のほうが比較的近いと思われました。
だとすると演劇部の女川の可能性も棄てきれなくなってきます。
女川は素でも女性に間違われるほどの中性的な容姿に加え華奢で撫で肩な体つきをしている、俗に言う男の娘という表現が似合う男子生徒です。
本人も昔はそのことでからかわれる事を嫌っていたようだが、中学の部活で演劇に目覚めてからは逆にその個性を活かして女役を演じるようになり
2年の時の演劇コンクールでは彼が演じたヒロインが素晴らしいと話題になり、地元新聞に紹介された程でした。
アンベルクワンピースの上からでもラインがよく分かるその体型はどう見ても女性にしか見えませんが、
彼ならばコルセットなどの体型補正を駆使すれば、もしかしたらこのラインを作り出すことが出来るのかもしれません。
しかし身長的に一番近いのは最後の一人です。
そいつの名は速水といい僕の幼稚園からの幼馴染です。
幼少の頃から身長はクラスで一番低かったですが運動神経には非常に恵まれており、中学では水泳部で潜水の県内記録を更新する活躍までしてました。
呼吸を含め中の人の負担が非常に大きいというこのスーツも、あいつならば耐えられるかもという可能性も感じてました。
また、コーシュカが登場するアニメを僕に勧めてきたのも他ならないあいつでした。
あいつが着ぐるみフェチかどうかは知りませんが、僕がそうしてきたようにあいつも同じ思いをずっと隠し通してきた可能性は否定出来ません。
ただあいつは女川のような華奢な体つきではなく、脂肪は少ないものの細マッチョという表現がしっくり来る体型です。
それがどうしても目の前のコーシュカの華奢なイメージとは一致しません。
これも何か上手くごまかす仕掛けが施されてるのでしょうか?
しかしもし中の人が女川や速水だった場合、本人は男性の身でありながらあの可愛らしい人形の中に閉じ込められ、
逃げない熱や少ない酸素に耐えながらコーシュカを演じていることになります。
もしそうだった場合、僕は中の人に対する羨ましさでどうにかなってしまいそうだと感じていました。
そんな中でたどり着いたのが更なる可能性、つまり3人の中に中の人は居ないという可能性です。
先程までの五条さんの話やホビー21の建物構造から、ここの情報管理は非常に徹底されていることに間違いはないようです。
つまり中の人となってる生徒自身の実習先自体が早い段階から隠すか偽装するかされていて、
僕の知らない5人目の実習生が今目の前にいるコーシュカの正体だということも有り得なくは無いという訳です。
一番現実的な回答のような気もしますが、だとすると容疑者は僕の同級生100名余りに及ぶことになります。
そうなるともう誰なのか見当すらつかなくなり思考はもう空回りを繰り返すだけとなってしまいました。
予定ではこの後、ホビー21の開店にあわせて店内に出て1時間グリーティングを行い、それで今日の実習は終わりとのことでした。
短いようですがスーツの構造上長時間の演技は装着者への負担が大きいため、今回は大事を取って短めのスケジュールが組まれているということです。
僕のほうも体力的にはともかく精神的には既にいっぱいっぱいなところがありましたからありがたいですね。
グリーティングの予行練習で着ぐるみの待機エリアの中をコーシュカにぐるっと歩いてみることになりました。
コーシュカが先頭になって廊下を歩きます。
その足取りはやや不安げではあるものの、特にグリーティングをするにあたって問題が無い様に思えました。
すれ違うほかの着ぐるみとも手を振って挨拶を交わしたり余裕があるようでした。
サロンに赴いた際にはアイドルグループの着ぐるみの一団に捕まり、囲まれて頭をなでられたりといった一幕まで。
しまいにはアイドルグループの元気担当キャラが自室からカメラを持ち出してきて、写真撮影まで始まってしまいました。
どういう仕組みなのかは知りませんが、コーシュカの猫耳や尻尾はピコピコと可愛らしく動くようになっています。
アイドル達にとってもそれが珍しいのか、それらのパーツは随分いじられてました。
他のキャラと比べるてもコーシュカはよりドールらしい雰囲気を備えていて、はたから見ると他のキャラ達がお人形遊びをしてるように見えます。
そのコーシュカの中に入って他のキャラ達に囲まれてる同級生が僕は羨ましくて仕方ありませんでした。
エリアもあらかた歩きつくし、もういいだろうということで部屋に戻ることになりました。
ですが部屋の扉も目前の段階でメイド姿の着ぐるみ3三人組とすれ違った際、歩きながら横に向いて手を振っていたコーシュカは不意にバランスを崩して前に突っ伏してしまいます。
すぐさまメイド達は両側に回り込み、手を貸してコーシュカを優しく立ち上がらせます。
更にこけて乱れたフリルを整えたり、白タイツの膝を払ったり落ちた軍帽を被せなおしたりと甲斐甲斐しく立ち回り、それを終えると三人そろって可愛らしく挨拶をして去っていきました。
一見、お嬢様とメイドの微笑ましい一幕の様でした。
だがそれを横で見ていた僕は立ちすくんでしまいます。
こけた際に大きくめくれあがったコーシュカのスカート、その内側の何重ものパニエの内側にはドロワーズが隠されていました。
そしてそのドロワーズがコーシュカの呼吸に合わせて大きく膨らんだりしぼんだりしてるのを僕は見逃してなかったのです。
出合った時からずっとコーシュカの中の人はこのドロワーズ越しの呼吸で演技を続けていたんですね。
しかもその呼吸はドロワーズの収縮の激しさからかなり苦しい状態にあることが想像できました。
先程までの演技からはそんなこと一切感じ取れてませんでしたが、裏側では僕が想像してた以上の苦しい状態にあったということです。
部屋に戻ってからも僕の妄想は止まりませんでした。
コーシュカは再びソファーに座りおしとやかにしています。
が、よくよく観察してると方が非常にゆっくりした周期で上下を繰り返しているのが分かります。
恐らく裏側ではゆっくりと深く息をすることで必至に呼吸を整えてる最中なのでしょう。
そんなことを考えてると不意に五条さんに部屋の隅にひっぱられ、コーシュカに気付かないであろう小声で注意を受けました。
どうやら妄想に耐え切れずに、僕のズボンの股間部分にいつの間にかとテントを張ってしまっていたみたいです。
「仕方ないな・・店内に出る前にウチの制服に着替えてもらうんだが、その時に下にこれを穿きなさい」
とゴムで出来た薄いパンツのようなものを手渡されました。
開店10分前、僕とコーシュカはホビー21正面玄関前の広場に居ました。
ホビー21は開店10分前に全フロアの着ぐるみ達がここにに集結し、お客さんを出迎えたり写真を撮ったりするウェルカムタイムがあるんです。
なのでその時間から既に正面広場は大きなお友達でごった返してるのですが、コーシュカが登場したときの彼らの反応は凄かったですね。
僕がそうだった様に、当然彼らにとってもコーシュカの登場はサプライズであった訳ですから。
おかげで今コーシュカは写真撮影で引っ張りだこです。
そして開店のアナウンスが流れると着ぐるみ達はお客さん達と共にフロアに向かうことになります。
キャラによってはそのままお客さんと手を繋いでフロアに向かったりもするんですが、
コーシュカは先程つまづいた件もありグリーティング中は僕がずっと手を繋いで誘導することになってました。
大きなお友達からの羨ましそうな視線を感じます。
本当はコーシュカの中に居る同級生の方がよっぽど羨ましい立場ですし、
それにこんな間近で接する僕の役目は大変辛く、彼らに変わってもらえるなら今すぐにでも変わって欲しいくらいなんですけどね。
ぴったりしたグローブに包まれたコーシュカの手、その小さな手は思っていた以上に冷たく体温は殆ど感じられません。
ですがもう既に結構な時間、コーシュカの中の同級生は着ぐるみの中に閉じ込められ続けています。
どう考えても熱が篭って無い訳がありません、それどころか熱が外に伝わってないということは熱はずっと内部にとどまり中の人物を攻め続けてるということにもなります。
エスカレーターを降りる際、コーシュカは先程のようにつまづくのを警戒してか僕の腕にぎゅっと抱きつく形になりました。
その際僕の腕にコーシュカの胸の柔らかい感触が伝わります。
しかしやはりその体から体温は伝わってきません、一体どれ程徹底された断熱性なんでしょう?
代りに胸を激しく上下させて呼吸する動きが伝わってきます、外見からは一切感じさせてきませんでしたがやはり中が地獄のような環境というのは本当のようです。
この状況の唯一の救いは先ほど五条さんに手渡された物でした。
それはゴムで出来たパンツのようなもので、内側には僕の性器がすっぽり収まる溝が刻まれた構造になってます。
このパンツには細胞補正という技術が備わってるらしく、その中のものがどれだけギンギンにいきり立っていようと外には全く変化を及ぼさない仕組みなのです。
いや、むしろ最初から男性器が存在しなかったかのように、このときの僕の股間は平坦そのものになってました。
これが無かったら本当に大変なことになっていたでしょうね。
長いグリーティング中でコーシュカはもうサポート無しで動いても大丈夫じゃないかというくらいそのスーツに慣れていったように感じましたが、
結局最後まで僕の手を離してはくれませんでした。
中の実態はともかく傍目からは汗をかかないコーシュカと対照的に、僕のほうだけが汗ぐっしょりになりながらようやくグリーティングが終了しました。
ヘロヘロな僕と対照的にコーシュカはその立ち振る舞いも板につき、フロアの他の着ぐるみ達と見比べても最早遜色ない動きに思えます。
この演技力の高さを考えると、コーシュカの中に入ってる同級生は女川である可能性が一番高いように思えてきました。
ですがこの過酷なスーツに耐えられる体力を考えると速水である可能性も棄て切れません。
また先程衣装越しに感じた体のむちむちとした柔らかさは女性である本多さんにしか出せないようにも思えます。
報告に行くという五条さんと別れ、僕とコーシュカの二人は元居た控え室まで戻ってきました。
僕のキーでは当然部屋の扉は開けませんが、部屋の主のコーシュカは軽く指で触れるだけでロックを解除できるんです。
二人きりになったのをチャンスと思い、思い切ってコーシュカ自身に中に誰が入っているのか尋ねることにします。
コーシュカは元居たソファに腰掛けて先程部屋に置いていったノートパソコンを起動するとカタカタと文字を入力していきます。
僕に向けた液晶には
『ごmwんなさイ、マスターの願い叶えたいでsyが、こーしゅかには不可能でス。
マスターも最初に誓約書サインしtsはすでス、こーすかも一緒でス』
との表示。
やはり中の人も誓約書によって固く口止めされてるようでした。
しかし朝初めて会ったときと比べ、コーシュカのタイピングにミスが増えてることが気になりました。
これは疲れのせいなのでしょうか?それとも中で湿気がたまり視界が悪くなってるせいなのでしょうか?
僕が落胆してるところにインターフォンを鳴りました、どうやら五条さんが戻ってきたようです。
コーシュカがパソコンを操作すると入り口のロックが外れる音がしました、どうやらこのノートパソコンは部屋全体の機能とも連動しているみたいです。
五条さんが戻ってきたことでようやく僕はこの環境から開放されると感じました。
コーシュカの中の人の秘密に迫れなかったのは正直心残りですが、精神的には中の人への羨ましさで一杯一杯だったんです。
ですが五条さんから告げられたのは意外な言葉でした。
5時からのグリーティングに出る予定のキャラクターが急遽出られなくなったらしいのです。
そこで可能なら代わりにコーシュカに引き続き出演して欲しいという事になったそうでした。
どうやら先程のグリーティングでのコーシュカの立ち振る舞いが評価されたんだそうです。
またアテンドのスタッフも人手不足らしく、出来ることなら僕にも残って引き続き協力して欲しいということでした。
僕はもうこの辛い時間を終わらせたい一心でした。
コーシュカにももう疲れてるだろうと断ることを勧めたんですが、コーシュカ自身は残って出演することに賛成してしまいました。
ならばと渋々ながら僕も残ることにします。
例え僕がここで逃げ出したところでコーシュカは5時からのグリーティングに出演するわけですから、僕の悶々とした気持ちは晴れることは無いでしょう。
それに今はまだお昼前、コーシュカの中の同級生も一旦休憩を挟むでしょうから、その正体を探るチャンスも得られるという訳です。
僕たちの返答に五条さんは感謝を述べてくれました。
ですがその後で「それと申し訳ないが」と続けます。
五条さん自身午後からのスケジュールが詰まってるらしく、この先はグリーティング開始前まで二人に付いて居るわけにはいかないらしいのです。
それに外の着ぐるみ待機スペースを五条さんの案内無しに出歩かれても困るので、二人はそれまでずっとこの部屋の中に居てもらう必要があると。
お昼ご飯についてはお弁当を届けさせるし、お手洗いは部屋の奥に専用のものがあるのでそこを使えばいいとのこと。
それと、その間部屋の中にあるものは全て自由に使ってもらって構わないということでした。
それを申し訳無さそうに告げると五条さんは部屋を出て行きました。
僕はこれでコーシュカの中の人を知ることが出来ると期待しました。
待機時間が長いのは勿論、お弁当が来るということは食べるために一旦脱ぐ必要がありますからね。
ですが勧めてもコーシュカは一向に着ぐるみを脱ごうとはしません。
「最初とは事情が変わったんだし無理して隠さなくても・・」
「絶対人には言わないし、なんだったら僕はずっとトイレかクローゼットの奥に篭っててもいい」
と説得しましたが、コーシュカは『大丈夫でス』の一点張りでした。
そうこうする内にインターフォンがまた鳴り響きました。
スタッフの方がお弁当を届けてきてくれたみたいです。
届いたお弁当はホビー21にテナント出店してる人気レストラン製のものが二人分。
それにペットボトルのお茶2本となにやら特殊な容器に入ったドリンクのようなものが一本。
「ほら、お弁当が二つって事は脱いで食べても問題ないって事だよ」
と僕は再び説得するもののやはりコーシュカは応えてはくれません。
観念して先に弁当を平らげることにします。
実を言うとこの頃僕はじらされ続けて胸が一杯で、とても食欲なんて無かったんですけどね。
ですがコーシュカの中に居る人物も育ち盛りの同級生の筈、しかも今までずっと演技を続けてきたことを考えると実はもう腹ペコになってるだろうと思われました。
いやそれ以上に喉はきっとカラカラに違いありません。
ならばと僕は精一杯美味しそうに弁当を食べることにしました。
横目で観察するとコーシュカは気の無いそぶりをしながらも、僕が弁当を頬張るのをチラチラと気にしているのが見て取れました。
「このお弁当超美味いなー、食べないんだったら僕がもう一個貰っちゃおうかなー、お茶もよく冷えてて最高だなー」
と意地悪な言葉に反応して明らかにソワソワしだしてるのも手に取るように分かりました。
お弁当の〆のお茶を"美味しそうに"飲み干したところで先程の謎の栄養ドリンクのことを思い出しました。
デザートに貰おうかと先端の短いストローのようなものがついた部分を吸ってみますが、吸い出せる気配はありません。
どうしたものかと四苦八苦していると、不意にピピッと音が響きます。
ウォークインクローゼットの扉の方からです、先程閉めたロックが解除された音の様でした。
コーシュカの方を見るとパソコンのディスプレイ部分で恥ずかしそうに顔を隠しています。
ディスプレイには
『マスター、お願うがありまス。こーしゅかが合図すrまでクローゼットに入っててくださイ』
との表示。
僕は快く了承し、クローゼットに入ることにします。
準備が終わるまで部屋の扉をロックしたいというのでそれにも応じました。
クローゼットの中はまた凄い空間でした。
所狭しとコーシュカが劇中で着た様々な衣装が並んでいます。
今日デビューしたばかりなのにも関わらず、これだけの衣装が揃ってるという事はコーシュカはこれからもずっとホビー21で出番が予定されてるみたいですね。
その時はホビー21の別の役者さんがコーシュカを演じるのでしょうか?
まさかこのままなし崩し的に僕の同級生がコーシュカを演じ続けることになったら・・・
と、考えたあたりで僕はあることを思い出しました。
先程コーシュカが隠したスクールバッグはこの部屋に隠されている筈、それを見つけたら中の人の正体が判明するのではないでしょうか。
そう思い立ち部屋の中を漁りますが、狭い部屋にもかかわらずバッグが見つかることはありませんでした。
その代わりに僕は凄いものを発見してしまいます。
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