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僕がクローゼットの中で見つけたある物。
エナメルで出来たそれは90年代に大ヒットしたSFアニメに登場するプラグスーツに酷似しています。
全身黒のカラーリングで、お腹の部分や手先足先しっぽの先と所々白く染まっています。
それはコーシュカが劇中で巨大ロボットに乗り込むときに身にまとうパイロットスーツでした。
ピッチリしたデザインがホビー21の着ぐるみ達のボディのイメージと重なります。
ふと僕はこれを着てみたい衝動に駆られました。
それにもしこれに上手く袖を通せるならばホビー21の着ぐるみを着ることも不可能じゃないかもしれません、それも確かめてみたくなりました。
「・・・確か、部屋の中のものは自由にして良いって言ってたよな・・?」
そう呟くと大きな音を立てないよう、慎重に衣装の作りを調べます。
一見どうやって着るのか見当もつきませんでしたが、よく見ると首のパーツが外れてその下にコンシールファスナーの取っ手が隠されていました。
それをつまみ引き下げるとおなか側に一直線に走るファスナーが股間部分まで走ってるのが分かりました。
エナメル部分は多少伸縮するものの、全身ぎっちりエナメルに包まれるこの衣装ではこんな下までファスナーをつける必要があったんでしょうね。
意を決して腕を通してみようとしますがやはり袖は細く、一体型になった先端のグローブ部分までどうやっても手が到達しません。
それもその筈です、この衣装はスレンダーなコーシュカの体型に合わせて作られてる訳ですから僕の体型では着れる筈がなかったんです。
落胆しながら衣装をたたみ元あった場所に戻します。
その時ふと思いついたことがありました。
「そうだ、この衣装があるということはアレも・・」
それは目線の上、天井近くの棚になった部分に隠されてました。
コーシュカのパイロットスーツのヘルメット部分です。
ヘルメットとはいえその形状は特殊で、猫の顔が彫られ大きな猫耳も生えたその形状はFRPで出来た猫の全頭面といったほうがしっくりくりきます。
大きくくり抜かれた猫の目の部分のみ紫色のシールドが張られていて、劇中ではコーシュカがそれを被ると目の部分だけが外から伺えるようになってました。
首の部分はかなり細く、どんなに頭の小さい人でもそこからすっぽり被ることは不可能に見えます。
宇宙服だけあって機密性のあるデザインになっており、首周りの形状がボディスーツ側の首のところに付けられたパーツとぴったり噛み合う形になってる筈です。
僕はこれも試しに被ってみたくなりました。
しかし肝心の被り方がどうしても分かりません。
ですが散々弄り回すうちにふとピッという音が鳴りました。
最初はクローゼット入り口のロックが外れた音かと思いましたが違いました。
よくよく見るとヘルメットの後頭部側に読み取り機があり、それに僕の腕の電子キーが反応した音だったようです。
そしてヘルメットの首後、横から見た約3分の1くらいの範囲だけが観音開き上に開くようになってることに気付きます。
その状態で被ってみると、なんとか頭を入れることは出来ました。
ですがその中は予想以上に窮屈で、しかも紫色の視界は僕の吐く息によってみるみる曇っていきます。
このヘルメット、呼吸用の穴が全く開いておらず顔の周りはクッションでみっちり固められるためにどこからも息が逃げない構造だったんですね。
首後ろの開口部を閉じてみたいところだったんですが、結局一分も耐えることができずに僕はヘルメットを脱いでしまいました。
僕はまたも落胆し、ヘルメットを元あった場所に戻します。
そると今度こそ扉のロックが解除される音が響きました。
コーシュカに入っていた同級生が着替えを完了したのでしょうか?
しかし着ぐるみを脱ぐ時間にしてはいやに早いなと思いつつ、ドキドキしながら扉を開けると・・
そこに居たのは先程と変わらないコーシュカの姿がありました。
お弁当はもういいのかと尋ねると、コーシュカは手に持った容器を見せてきます。
それは先程僕が飲もうした栄養ドリンクの容器でした、どうやって飲んだのか知りませんが中は既に空っぽです。
僕はそれを見て「しまった」と気付きます。
あの容器は着ぐるみのままでも水分を摂取できるように作られたものだったんです。
またも当てが外れ、僕はショックでよろよろとソファに倒れこむように座りました。
その様子を心配したのかコーシュカは僕の横にぴったりと身を寄せると、僕にもディスプレイを見えるようにしてパソコンに文字を入力していきます。
『マスター、機嫌悪いでス?そrとも具合ガ?』
「いや・・そういう訳じゃないよ。
・・てゆうかむしろ心配なのはそんなスーツにずっと入りつづけてる君の方だよ」
『??
これこーしyかのいつもの服、何も問題ないでス』
コーシュカの中の人物はあくまでキャラクターとしての姿勢を貫くつもりらしいです。
『こーしゅかは平気でsけド、マスターが悲しそうなの辛イ。マスターの喜ぶことやりtsいでス』
「うーんでも、着ぐるみを脱ぐのも中の人を教えるのも無理なんでしょ?」
『はイ・・。
で、でもそれ以外ならなnでも答えまス!』
「えっ・・じゃあ着ぐるみの構造とかも?」
『ただしホビー21の人にはナイショにしてくださイ、マスター喜んでくれるばらこーすかも嬉しいでス』
コーシュカの言葉に僕は元気を取り戻します。
ですが一体何から尋ねたものでしょう?
そこで僕は気付きました。
コーシュカはいつもソファに座ってひざの上にノートパソコンを置いて会話してます。
ですがその状態ですとコーシュカの股間にあるはずの呼吸口は閉じた膝とドロワーズやスカート、ソファにノートパソコンでみっちり厳重に塞がれていているのです。
「えっと・・呼吸は股間からしてるって聞いたけど、その姿勢苦しくないの?」
思い切った質問でした。
『実を言いまスと・・・ホントは凄く苦しイ、ずっtp頭クラクラしてまス。
でもこーしゅかはアニメでいつもこう座るから苦しいの関係なイ』
「そ、そうなんだ・・」
返答にまたも頭がクラクラしました。
『マスター、どれだけ苦しいか知りたうでス?』
「えっ?そりゃあ・・・うん」
『いいですヨ、マスター』
そう打ち込んだ途端、コーシュカの手が僕の手をコーシュカのスカートの中に導きます。
そしておなか側からドロワーズの中に僕の手首を突っ込みます。
僕の腕によって彼女のスカートが大きくめくれ、中のむわっと湿気の篭った熱気が僕の顔に当たります。
ほのかにシトラスの香りがしたのは先程の栄養ドリンクのせいでしょうか?
その熱気も相当なものですが、ドロワの中から感じる熱気は更に相当なものです。
指先には彼女の穿く厚手の白タイツの股間部分のじっとりと湿ってる感触が感じられました。
更にそのタイツごしに中の人の暑い呼吸まで感じられます、その深い呼吸に合わせてドロワが大きく膨らんだりしぼんだりするのがよく見て取れました。
コーシュカはその行為によって身体の中の熱気を僕の指先に教えてくれてるみたいです。
「す、凄い・・」
僕は今ようやく知ったコーシュカの秘密に言葉を失います。
すると次にコーシュカは僕の手をドロワの内側に沿わせたままするすると後ろ側、尻尾の付け根辺りに誘導します。
そこでは非常に切ない空気の対流を感じられました。
ドロワの穿き口には全てゴムが仕込まれていて、体に密着するように出来ているんですよね。
つまりホビー21の着ぐるみがドロワを穿いた場合、その中に吐き出される息は逃げ場を失い中の人は窒息してしまう訳です、普通なら。
ですがコーシュカには尻尾があります、それ故ドロワにも尻尾を通すためのスリットがあり、そこから空気が出入り可能になっていました。
ただそれでも決して楽な構造ではなさそうです。
空いたスリットは非常に小さいために、多少息を吐いた程度ではその息はドロワ内に留まり外に逃げることはありません。
ドロワ内がパンパンに膨らむほど内圧が高まってようやく空気が逃げるようですが、その状態では中の人の肺の中もほぼ空になっているため
思い切り息を吐き出したところでドロワ外に吐き出せる空気はごく僅かです。
もちろん空気を吸う場合もこれと同様の問題が発生します。
しかもそうしてかろうじて出し入れできた空気ですらスカートや何重ものパニエの中に留まっていたもの。
決して新鮮なものでは無いんです。
こんな環境の中でコーシュカは今までずっと戦い続けてきていたのでした。
僕が中の状況を知りそれに驚愕してるのを確認すると、コーシュカは僕の手をドロワからそっと抜き出します。
そしてスカートを元に調えてノートパソコンを膝上に戻すと、コーシュカは先程まで何もなかったかのように元のすました姿勢に戻ります。
その様子に可愛らしさ以外の印象は感じられません。
ですが今でもコーシュカの体の中には先程と同じ地獄のような世界が続いているのです。
その事実に先程まで収まってた僕の股間にまたも激しい血流が巡ってきました。
コーシュカの目の前だったため、ヤバイと思い自分の股間を確認しますがそこは平坦そのもの。
そうでした、僕の股間はあの特殊なパンツに守られていたのでした。
五条さんから支給されたあのパンツを穿いてなければ、コーシュカの目の前に醜いテントを晒してしまってたでしょうね。
コーシュカの中の同級生が女性である可能性が完全に消えていない今、この細胞補正の存在は非常にありがたいものでした。
ん?
ここで僕は気付きます。
細胞補正の技術があれば、背の高い本多さんや男性の女川や速水ももしかしたら無理なくコーシュカに入れるのではないかと。
中身が本多さんである可能性も捨て切れていなかったために、パンツのことには触れないよう慎重に質問します。
何故か答えにくそうになるコーシュカでしたが「何でも言うことを聞くって言ったよね?」と念を押すと
観念したそぶりを見せ、パソコンの中からあるファイルを開きました。
それはホビー21の着ぐるみの仕様に対する資料でした。
恐らく着ぐるみの中に入るひとだけに配られる資料だったんでしょう。
そこには僕の知らない様々なことが書かれていました。
細胞補正のこと、皮膚呼吸こと。
その機能を発揮するためには興奮状態の維持が必要であること・・・
そして今こうして横にピッタリ座りその体に触れてるだけで、いや衣装に包まれてるだけで中の人が快感を得られる構造をホビー21の着ぐるみ全てが有していることを。
更には男性用と女性用それぞれのインナースーツの存在、つまりホビー21の着ぐるみは少なからず男性が入っていることも示していました。
「じゃあつまり、細胞補正のスーツを使えば僕でも着ぐるみには入れるチャンスはあるってこと?」
『簡単なことじゃなうらしいですヨ。
希望者たくさん居るらしいでスし、それに中の環境に耐えられうようにnるのは訓練と適性が必要だって聞きましタ。
今こーしゅかの身体の中に居る人も、今日の為にこっそりホbー21に通って特訓したって言ってたヨ』
だとすると尚更中の人の幸運が羨ましくなってきました。
ですが、それでも自分の未来にかすかな光明が見えた気がして先程までよりかは随分救われた心持ちでした。
「そっか・・うん、色々答えてくれてありがとう」
落ち着いた途端、さっきまでコーシュカに興奮しっぱなしだった自分が恥ずかしくなってきました。
「あー・・よく考えたらコーシュカの気持ちも無視して答え辛そうな質問いっぱいしちゃったね。
こちらこそお詫びといっては何だけど、コーシュカの言うこと何でも聞くよ」
照れ隠し混じりに僕は提案しました。
『ほんト?!マスター??』
「うん、と言ってもこの環境で僕に出来ることなんてそんなに無いだろうけど」
僕は周囲を見渡します。
5時まではずっとこの部屋で待機していることになっていたことを思い出しました。
この部屋の中で僕に出来ることなんてそんなに思いつきません。
『ありがとうマスター!
こーしゅか、クローゼットぼ中のパイロトスーツ着たいでス。
でも一人だと細かい作業出来なイ・・手伝て下sイ』
それがあったかと僕は凍りつきました、確かに見てみたい気持ちもある反面で目の前であれを着られるのはとても羨ましすぎて出来ることなら避けたい気持ちもあったのです。
「えっ、流石に勝手に使ったら怒られるんじゃない?
部屋のものは自由にしていいとは言われたけど破損しちゃったらきっと弁償できないよ・・・」
僕はとっさの言い訳で誤魔化そうとしますが・・・
『マスターさっきクローゼットn中で着ようとしてましタ。
ギチギチって音聞こえtwましたヨ』
「うっ、・・バレてたの?」
『それにマスターは約束ちゃnと守る人。
こーしゅか、よく知てまス』
真剣なのか演技なのか、コーシュカはまっすぐに僕に向き直ると目をしっかり見つめてきました。
ここまで言われてしまっては仕方がありません。
コーシュカのたっての願いに付き合うことにしました。
僕がクローゼットからパイロットスーツ一式を取り出す間、コーシュカは着ていた軍服ワンピ一式を脱いで準備します。
スーツに覆われてるとはいえ真っ裸になるのかと思い焦りましたが、どうやら下にインナーとして真っ白な袖なしレオタードを着込んでいました。
これも劇中の設定どおりです、レオタードと言ってもスク水のように厚みのある生地のようですが、その股間部分は色の変化が目で見て取れるほどぐっちょりと湿っていました。
まず最初に準備したのは手先、足先まで一体になったエナメル製のボディスーツ。
先程僕が着ようとして失敗した一品です。
コーシュカは足先から順に通していきます。
ミチミチと音を立てながらコーシュカの足にエナメルの肌が吸い付いていきます。
コーシュカの身体にぴったりと作られてるようで腰までスーツを引き上げるとシワ一つない完璧なラインが浮かび上がりました。
今度は僕の役目、スーツの内側お尻のあたりについた穴にコーシュカの黒い尻尾を通していきます。
先程の資料によると、この尻尾や猫耳から伝わる刺激はダイレクトに中の人の性感帯に伝わるそうなんですね。
なのでこの部分を扱うのは中の同級生を非常に羨ましい状態に導く、僕にとっては悔しい行為なのですが、
約束を交わしてしまった以上おとなしく従うことにします。
穴が尻尾の根元まで到達すると、今度はスーツ外側のファスナーを一気に引き上げて尻尾をエナメルの袋に閉じ込めます。
急に尻尾がぴったりしたエナメルに締め付けられたせいかコーシュカの腰が後ろに引けますが、
僕は悔しいので着ぐるみの内側で起きたことは考えないようにします。
今度はコーシュカが袖に腕を通していきます。
先程僕では通せなかったその袖も、コーシュカの腕ならギチギチ音を立てながらも割とすんなり通っていきます。
腕の先についたグローブは肉球のついた厚みのある形です。
これは内側にロボットの操縦装置が組み込まれているからという設定だからです。
劇中ではまるでドラ○もんのようにその一見不自由な手に物を吸いつけて操ることが出来たようですが、
流石のホビー21といえどそこまでの機能は再現できなかったらしく、実際はただの「物を掴んだりしにくい猫の手型のグローブ」として完成していました。
両手首のあたりに短いコンシールファスナーがついていて、これを僕が引き上げると手首がぴったりとフィットして手がグローブ部分から抜けなくなります。
コーシュカの正面に立ち股間の下からコンシールファスナーを引き上げていきます。
エナメルは通気性が無いためにコーシュカの股間の呼吸穴が塞がれたように見えますが、
股間部分で非常に分かりにくい形で布を切り替えてあって呼吸は確保できるようになってるそうです。
もっとも、切り替えがあると知っててよく観察しても、外からではどこがそうなってるのか全く見分けが付きませんでしたが。
そして幼さの残るその顔つきとはやや不釣合いな成熟したバストをエナメルのスレンダーなシルエットの内側に封印しながらファスナーを引き上げていきます。
ファスナーを首まで引き上げると、最後に首輪上のパーツで首を覆います。
首後ろでパーツを閉じて留め具を閉じると首から下は完成しました。
首パーツを閉じるときにコーシュカのうなじが目に入りました。
ヘルメットを被るために今はセミロングの髪をアップにまとめてあってうなじがよく見えるんですよ。
普通の着ぐるみならばこの部分は面の被り口にあたるのですが、コーシュカは髪の生え際からボディまで完全に一体のスーツとして繋がっているんですよね。
この密閉空間に閉じ込められる人はどれだけ幸せなんでしょうか?
今度はヘルメットの番です。
先程と同じように後頭部のロックを解除して首後ろの観音扉を開きます。
そしてグローブのせいで手が不自由なコーシュカを手伝いながらそれを被せていきます。
黒い猫耳も含め、コーシュカの頭部がすっぽりと収まりました。
先程呼吸困難になりかけたことを思い出し、つい「大丈夫?」と声をかけてしまいますがコーシュカは何も問題ない様子。
目の部分の紫色シールドも全く曇る様子はありません。
そりゃあそうですよね、コーシュカは首より上で呼吸してるわけではないんですから。
ヘルメットの首の部分を首輪パーツの凹凸と合わせ、首後ろの観音部分で挟み込んだら後頭部の読み込み機にリストバンドを合わせます。
ピッと音がしてヘルメットがロックされました、これでパイロットスーツは完成です。
宇宙服も兼ねてるだけあって、一見したところ露出の無い外気が一切遮断される構造に見えます。
「チョールナヤ コーシュカ」とはロシア語で黒猫を意味してるそうです。
全身をぴっちりとしたエナメルとFRPで隙間無く覆われた、その名の通りのスレンダーな黒猫が僕の目の前に出来上がりました。
黒猫はその物を掴み辛そうな両手で僕の右手を挟み込むと、先程まで座っていたソファに引っ張っていきます。
そしてノートパソコンを開こうとするのですがうまく開けることが出来ない様子。
代わりに僕がそれを開いてあげると、黒猫はグローブの先に付けられた爪の先で器用に文字を打ち込んで僕に見せました。
『マスター、大好きでス。ナデナデしてくださイ』
インターフォンの音で目が覚めました。
時計を見るともう5時前です。
どうやらベッドで横になるうちに眠ってしまっていたようでした。
隣には先程と同じようにパイロットスーツ姿のコーシュカが僕の腕に抱かれる形で寄り添ってました。
あの後は二人でしばらくソファでまったりくつろぎ、その後精神的な疲労の限界を迎えた僕はベッドに横になることにしたんです。
その際コーシュカが抱き枕役を買って出てきた為に、こうやってコーシュカを抱きながら寝てしまったのでした。
「おはよう、コーシュカ」
僕の言葉にコーシュカは反応します。
コーシュカの目は閉じることは無いのでこうして横になってると起きてるのか寝ているのか判断付きませんが、今は起きていたようです。
いや、ここまでピッチリと呼吸を制限された人は状態ではたしてゆっくり眠れるものでしょうか?
コーシュカが首を僕に向けて突き出してきます、僕はそれに応えヘルメット越しのキスを交わしたのでした。
コーシュカが爪先で器用にパソコンを操作して五条さんを迎え入れます。
パイロットスーツを勝手に使ったことで怒られることは覚悟してましたが、意外にもお咎めは無しでした。
それどころか着替える時間も惜しいと言うことでこのスーツのままグリーティングに出ることになったのです。
午前のグリーティング以上に大きなお友達の注目を集めることになったのは言うまでもありませんね。
結局、コーシュカの中に入っていたのが誰かはこの日の最後まで分かりませんでした。
グリーティングが終わった後、流石に息が上がった様子のコーシュカを部屋に送り届けたらそのままコーシュカと分かれることになったのです。
そういえばコーシュカの部屋の入り口のロックをコーシュカの指のICキーで解錠しようとしたんですが、グローブの厚みのせいか反応しなかったんですね。
幸い数字入力キーを使った暗証番号入力でも扉は開けられたんですが、あれがないと部屋に戻れなくて大変なことになってたかもしれません。
その後はスタッフ用の更衣室で私服に着替え、脱衣ボックスにお借りしてたゴムのパンツ含め返却しました。
そのまま五条さんに付き添われ別室に行き、秘密を外部に漏らさないといった制約の再確認、
アンケートの記入や簡単なレポートの作成をさせられた後に退館することになりました。
後日、同じくホビー21に体験実習に行った三人の同級生にコーシュカの件でそれとなく探りを入れてみることにしました。
コーシュカの中に入ってたのが一体誰なのかは当然気になってましたからね。
ですが三人とも着ぐるみとは全く関係ない部署で働いたと答えます。
更に全員バラバラな売り場での実習だった為にお互いのアリバイも証明しあえない状態だったんですね。
誰かが嘘をついてるのかと疑ったんですが出来事が出来事ですし、秘密を漏らさないという制約もあって深く探りを入れることも出来ずに居ました。
それからしたらく経った後で僕の家に一通の封筒が届きます。
それは聖包学園からの入学案内でした。
ここを読んでる皆様ならきっとご存知ですよね。
ホビー21と同じタイプの着ぐるみの生徒が通う秘密の学園です。
まさかこんな夢のような学園が存在するなんて夢にも思いませんでした。
偏差値が非常に高いところなので受験は楽ではありませんでしたが、猛勉強の末になんとかギリギリ合格することが出来ましたよ。
もっとも、ギリギリ合格だったので実はまだ着ぐるみ生徒にはなれてないんですけどね・・・
今もその権利を得るために猛勉強の日々が続いてるわけです。
これは後で知ったことなんですが、あの日の職業体験は聖包学園が秘密裏に行う入学者選定用の適性検査を兼ねたものだったんですよ。
聖包学園は着ぐるみに強く憧れるといった「適性」を持った生徒を全国から極秘裏に見つけるために様々な形でこのようなテストを行っている訳です。
スクールバッグを僕に気付かせた一見も含め、一連の出来事は検査対象者の着ぐるみに対する感情や執着を計るために仕組まれたものでした。
五条さんもコーシュカも実はグルだったんですね。
一日入館証といって渡されたブレスレットは脈拍や体温を常に計る機能が内蔵されていて、それによって僕の着ぐるみに対する興奮度はモニターされていた訳です。
思春期の学生が対称の調査なので流石に隠しカメラなんかは使用されてなかったみたいですけどね。
結果はブレスレットによる測定記録や試験管役の五条さんの評価、そしてコーシュカの中に入ってた人物のレポート内容なども含めて総合的に判断されたそうです。
実はこれ、みんなコーシュカの中に入っていた人物が入学後に明かしてくれた事なんです。
今、その人物は聖包学園に着ぐるみ生徒として通いつつ、休日にはホビー21であの日から引き続きコーシュカの内臓としても活躍してるそうです。
更にはたまにコーシュカの着ぐるみを学園内に持ち込んで、僕の住む寮に遊びに着たり学園内デートをしたり・・なんて出来事までありました。
本人としては僕が早く着ぐるみ生徒になれるためにやる気を出させてくれてるんだと思います。
気持ちは嬉しいんですが、このままでは僕も悔しいだけなので早く成績を上げて着ぐるみ生徒になって中に入る立場で楽しみたいですね。
えっ?コーシュカの中の人は誰だったのかって?
そうですね、その話もいずれまた機会があれば。
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