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「あそこのイベントはコスプレ禁止だからねぇ。」
「でも、前回は、等身大ドール置いてたブースあったし。」
冗談のつもりで口走ったことは、物作りとなると異常な執念を見せる彼らにとって、ゴーサインのようなものだ。
黙っているととんでもないものを勝手に作り上げてしまう。そして、概ね、その実験台になるのは小柄でMな彼であった。
散々反対していたものの、煮詰まるにつれ、興味のない振りをして、議論から遠ざかる。
全く、ドMでツンデレなんだから。
議論の始まりは、いかにしてそれらしくするかだ。
つまり、ただの着ぐるみ、FRP面では、体の肉質感が出てバレバレである。
ノリに乗じて言い切るにも程があるし、開き直りは技術的敗北だ。
ようつべを見ると、関節を制限したモデルの撮影シーン。
黙らなくても、人形らしくなるじゃないか!
この一見頭の悪い情熱は、頭の悪さで説明できぬ、実行力によって現実に成されてしまう。
「本当は樹脂でやりたかったんだけどね。さすがに金型作るわけに行かんから。」
頭部と同じくFRPで作る案も出たが、後で述べる事情により、成形性の観点から、アルミ製とした。
木材で大体の形を作り上げて、これに合わせて、アルミ板を叩き出す。
拘束目的なら、関節さえ固定してしまえばいいものだが、そういうわけにも行かない。
皮膚との段差が出来れば無意味である。
だから、胴体まるまる詰め込んでしまうしかない。
搬入の時も考えなくてはならない。
完全に体全体を覆ってしまうと、その形に合わせた箱を用意しなければならなく、こんな大がかりなものを持ち込めば、確実に怪しまれるし、第一、梱包する面白みもなくなってしまう。
と言うわけで、関節は必要に応じて動くようにしたい。
ああだこうだと話し合った結果、結論としては、中空にした球体関節とすることになった。
関節部分の一部に、関節の開きに合わせた、金具をはめ込めば、関節を固定することも出来る。
予想されたオチではあるが。これが更にいくらかの議論を生んだ。
作ることの困難さは気合いで克服するとしても、体の納め方は物理的事情だけに、気合いではどうにもならない。
外骨格を二分割して、その中に納めればいいが、境目が目立っては困る。
肌タイを外側に着ればいいんじゃないかと言うところで落ち着きそうであったが、汗やよだれの対策をしなければならない。
「人形なんだから、目も口も開けなければいいんじゃないの?」
これで決した。
顔から肩、胴体、股関節まで一つの型に仕上げる。そして、これを合わせれば、着ぐるみ特有の位置からは漏れない。
極度な呼吸制限になるが、小型のポンプを設置し、チューブを目立たぬところから出せばいい。
どうせ電気を使うならと言うことで、必然的な装備が股間に設置された。
また、電気にまつわるギミックとして、もう一つ欲しいのは、外部との通信だ。
足の甲にスイッチを設置した。モールス信号でも行けそうだが、さて、そんな事できる余裕はあるだろうか。
最後に、体液の問題だ。
表の胴体部は、尾骨から回り込むように始まっているので、こちらに一旦落ちることになる。これを乗り越えられると、主に匂い的に困ったことになる。
ここでまた変質者の有効活用である。ある人物が定期的の訪れ、これを吸い出してくれるのだ。
尿となると量が心配になるが、そのときこそ、足先のスイッチの出番となり、こうした協力者の栄養となる。
彼は意識的に情報を避けていたが、当日の事を考えると、股間をぬらさずには居られなかったようだ。
集合場所に喜々として現れた。
この変体集団の中には、どういう訳だか、筋弛緩剤の類に精通した人間さえ居る。
彼は既に人形のように成されるがままである。
外骨格の中に詰め込み、肌タイで包み、服を着せ、アタッシュケースの中に仕舞う。
まずは、サークル会場。
セッティングは進む。等身大ドールを立たせる道具をもして、これに立てかける。
重量があるので、やや大げさになったが、この中に容量大きめのバッテリーを仕込むことが出来たので、結果オーライである。
関節はちょっと堅めに作ってあるので、中の人が動かす場合は、よほど力を加えなければならないだろう。
ポージングは、両手で持って、えいっと力を加えて形作る。
あまり無茶は出来ないが、途中でいろいろ遊べそうである。
身もだえのあまり動かれると困るので、普段はストッパーを掛けておこう。
中の人は・・・・。
呼吸制限と、密閉、視界を閉鎖され、入ってくるのは外部の騒音。
人がこんなにたくさんいる中で、股間に刺激を受け続け、幾度か射精している。
大きなホールの中で意識半ば、無意識半ばを遊泳している。声の反響なのか、脳内での反響なのか、音の所在は遠のいていくばかりだ。
人が来て、精液は吸い出される。粘度の高い液体がアヌスの先から抜けていくので、これもまた新鮮な感覚である。
どんなに気持ちがよくても、体は動かず、直立不動のままである。
声は押し殺さなければならないという心理拘束との二つにより、快感は永続する。
誰が、こんな大勢の前で、こんな恥ずかしいことを出来るだろう。
スタッフの中に怪しむものは多いが、さすがに動かない人形に意味はないと思ったのだろう。じろじろ見られただけに終わった。
自分が変質者でよかった。中途半端に好きであったならば、これらのことは面白くないだろうし、実行に移すほどでなければ、準備と今日という日は、時間を自らに活かせずに過ぎ去っていただろう。
観客に至っては、同人即売会に書いてある内容以上の変体が、それをまさに実行しているなどとは想像もしないだろう。
想像できたとして、それが何だというのだ。
変体の度合いについて、何を誇っているわけでもない。ただ自分の気持ちいいと思うことをそのまま実行しているだけである。だから、それを察したとして、それを実行する勇気があれば、いくらでもやればいい。尤も、変体行為を許容するにしても、ブースの目の前でオナニーされたら迷惑だが。
その後、人脈を全幅活用して、秋葉原のショップや、地方ショッピングセンターのマネキンとなったりしたが、そろそろ飽きてきたため、退役することとなった。
かかった費用は、いくらかの策で回収できたのは驚きだ。マイノリティでも人類そのものが大勢いるのだから、絶対数としては結構な数になると言う証拠だ。
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