「3.陳列」 [戻る]
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店頭には、フィギアの箱をそのまま大きくした箱がディスプレイされている。

同じキャラクターの同じポーズのフィギュアが同日に発売されたからだ。

ニュース系ブログに、「等身大フィギュアの展示」と書かれていて笑ったのは何人いただろう。


覗きのない面を用いて、手足は極力動かぬように、厚手のゴム製の素材で覆い、つや消しクリアを吹いた。

衣装も、出来るだけ布の質感を失うよう、外側はアクリルを整形して組み立てた。

箱から何まで忠実に再現したが、中が曇るので、本物の箱のようにフィルムの窓は用意していない。


表には触らないでくださいと張り紙がしてあるが、こうした張り紙を見て、守らない人間がこの世の中にどれほどいるだろうか。

しかも、こういった文化を持つ人間の目の前に大胆なポーズで陳列してあるのだ。一日中、その決まりが破られぬことなどあるだろうか。

但し、一人を除いてさして面白くないだろう。ただのゴムの質感があるだけである。

これで満足できる人間がいるなら、ゴム毬と戯れるがいい。

ゴムの中には、中には二種類の圧電素子が仕込まれているのに留意すべきだ。外側の圧力をアンプで増減して、内側に与えることが出来る。

繊細さには欠けるが、彼らが繊細な動きなどするほどの人間だろうか。


無数の人間にまさぐられ、その様子、或いは手垢を見て、再びブログ面白おかしく伝える。

真の意味その報告を喜んでいるのは、ただ一人ではあるが。


金のある人間が、売ってくれとせがむことは一度や二度ではなかったが、値段を聞けば立ち去るばかりだ。

売るつもりがないという風に捉えられたのだろう。しかし、真実、それだけの価値は十分にある。


彼らの及ばぬ場所で、ある権利がオークションにかけられる。

もちろん、フィギュアの所有権ではない。

展示は、これからも度々行われるのだから。


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