|
彼女は中身を知っている。
中身は彼女を知らない。ただ、どうやって詰められたかは記憶にあるはずだ。
また、場所は察しがつくだろう。
メイド服程度ではあまり目立たぬ場所だ。しかし、多くの人がカメラを向ける。
免税店で買ったばかりのコンデジを使うガイジン、ケイタイを向ける観光客、そして、大げさなカメラを担いだ男どもだ。
何を考えているのだろうか。ただ、彼らはそれほど想像力に富んでいない。
清純さのカウンターに淫乱な部分を持つなどというのは、およそ凡人の考えそうな妄想だ。
彼らが思う程度の変態ではない。
高貴な人間は大胆なことを平然とやってのけると、昔の悪魔は言ったものだ。
不規則なタイミングで、不定な長さ、振動音が聞こえるが気のせいだ。この街は騒音にまみれている。
彼女は彼女の思うところに、キャリーケースを持ち歩く。
ロッカーに入れたり、街中を歩いたり、電車に乗ったり・・・。
そして、その都度、人に手を借り、また、乱暴に扱うことも厭わぬ。
食事に入り、店員に荷物を預け、終わったら何食わぬ顔で会計をし、出て行く。
店員が大きな荷物をなじる声が聞こえるはずだ。
公園のベンチの前に放置して、仕込んだ男に置き引きをさせてみる。
「私のだって中身を見れば証明できますけど、どうします?」
暗闇の中なのだ。それらしい声色で話せば、田舎芝居も信じられる。
しかし、こうした状況においても、振動音は度々聞こえるのだ。
夜になり、吸水樹脂の性能を超えてしまっているか。バッグは人形の香りがたっぷりするようになった。
車に乗せ、彼女の家に運び込む。
この後どうなったかは、彼女以外知る由はない。相手は人形なのだから。
|
|