風呂場にて
その日のエリカはシャワーではなく風呂に入っているようだった.湯船に湯を
はる音が聞こえ,時間をかけて風呂に入っているようだった.2度裸を見せてくれた
あと,エリカはやっぱりひとりで風呂に入るようになり,ボクはその間,夕飯の食器
を片付けたりして時間をつぶすのが常だった.
しかし,今日に限って,いつまでたってもエリカが出てこない.いつもなら
20分くらいで出てくるのだ.本当の女の子なら,1時間・2時間ということもぜん
ぜんおかしくないけれど,なんといったって,エリカは人形なんだし,中にオトコの
人が入っているんだし,お風呂に入るといったって,お人形を脱いで入るわけじゃな
いんだから,それほど時間が必要なわけもない.ボクは不審に思って耳を済ませてみ
た.しかし水の音もシャワーの音も聞こえない.どうしたんだろうと思って,僕は声
をかけてみた.
「エリカ,どうしたの?イヤに静かだけど?」
エリカはこの間の事件以来,口を利くようになった.やっぱり恥ずかしいから
か,あまり話さない.でも,いつもなら声をかければちゃんと答えてくれるし,必要
なことは筆談ではなく話をしてくれる.今日に限って返事は聞こえない.もう風呂に
入って30分以上たっている.もしかして何か事故があったかもしれないとボクは
ちょっと心配になった.約束では風呂やシャワーの間は覗かないことになっている
が,万が一ということがあるので,この場合は仕方がないと思った.ボクは大きな声
で扉越しに声をかけた..
「エリカ?開けるよ?いいね?」
ボクは風呂場の扉をゆっくり開けた.そこでボクはとんでもない光景に出くわ
した.
エリカは湯船の中にうつぶせになって浮いていた.顔はもちろん湯の中だ.髪
の毛をタオルで巻いているのだが,タオルはそのままに頭はほとんどが水の下だ.背
中だけが僅かに湯の上に出ており,ピクリとも動かない.エリカのきれいな裸を見て
ちょっとドキッとしたということもあるが,水死体のように湯船に浮かんでいるエリ
カをみてものすごくビックリした.
ボクは慌てて,自分の服がぬれるのにも構わずエリカを抱きかかえた.最初に
エリカの首のあたりを腰のあたりを持って,表返しにした.エリカはぜんぜん動かな
い.体に力も入っていないようだ.ボクはそのまますばやく持ち替えて,背中のあた
りと脚を持って抱き上げた.もちろんエリカは裸のままで,体にはぜんぜん力が入っ
ていない.ボクの服はびしょぬれになった.ボクの心臓はバクバクいっていた.一体
何があったんだろう!もしかしておぼれて死んじゃった?!!
「エリカ!」ボクは大声でエリカの耳元で叫んだ.溺れてしまった者の耳元で
声を出して蘇生するはずもないのだが,ボクはとっさに「人工呼吸」という言葉を思
い出した.ボクは人工呼吸という言葉は知っているが実際にやってみたことはない.
でも今はそんなことを言っている場合じゃない.
ボクはその場でエリカを仰向けのまま下におろした.エリカはぐったりとそこ
に横たわっていた.自分からはぜんぜん動かない.僕はエリカの頭の後ろに両手を回
すと,自分の口をエリカの口のところへ持っていって,そして,エリカの口の中に自
分の息を吹き込もうとした.
ええっ?
この段階になって,エリカは口で息していないことに気がついた.ボクはその
場で呆然としてしまった.息をしていない人形に人工呼吸をしても仕方がない.中に
入っている人に人工呼吸したいわけだから.でも,どうやればいいんだろう?ボクは
立ち上がって,しばし考え込んでしまった.お風呂のお湯でぬれた洋服がだんだんと
冷たくなってきた.ボクはくしゃみをした.でも,どうすればよいか,ちっとも分か
らない.むかし,熱を出してエリカが気を失った時も,結局人形を脱がすことはでき
なかった.今日だって同じことだろう.でも,どうすればいいんだろうか?このまま
救急車を呼んでしまおうか?それとも,カッターで人形を切り開いてしまおうか?も
う一度ボクはくしゃみをした.
そのとき,今までピクリとも動かなかったエリカがもぞもぞと動き始めた.
「くっくっくっくっ」という声が僕の耳に届いてきた.唖然としているボクを尻目
に,エリカはゆっくりと起き上がり,そのまま立ち上がって,ぼくにゆっくり抱きつ
いてきた.
「びっくりした?」エリカが僕に向かって言った.エリカはひとりで笑ってい
るようだった.
「え,なに,どういうこと?」ボクはまだ自体が理解できずに大声を上げた.
「***さん,エリカが窒息したと思ったでしょう?」エリカはまだひとりで
笑っている.
「・・・」
「エリカね,全身をお湯の中に入れてたんだよ.そうすると気持ちいいんだ.
あーおもしろかった.***さん,本当に,エリカがおぼれたと思った?」
「・・・・おぼれたかと思ったよ.」ボクは少し落ち着きを取り戻していた.
「だって,エリカ,息してないんだから,おぼれるなんてありえなーい.」
「ねえ,僕を驚かそうとしたんでしょう?」ボクは少しずつ怒りが込み上げて
きた.
「うん.ちょっとね.・・・・おこった?」
ボクはなんて答えようか少し迷った.もちろん気持ちの中ではエリカのことを
許していたんだけど,それにしても今回はものすごく驚いた.ちょっとお仕置きして
もいいかな,という気持ちになっていた.
「全身をお湯の中に入れると気持ちいいんでしょう?手伝ってあげるよ.」
ボクは怒ったような口調でそういうと,立っているエリカを軽々と抱き上げ
た.エリカはボクがその場で許してくれるものと油断していたようだ.エリカは手を
もがいて立ち上がろうとしたが,ボクは無理やりエリカの背中と脚をもって抱え上げ
た.そして,腰から湯船にもう一度エリカを戻した.エリカは「なにかまずい!」と
感づいてもがこうとしたけれど,それよりも強い力でボクはエリカを湯船に押さえつ
けた.そして片手でエリカの腰のあたり,もう片手でエリカのうなじのあたりを持っ
た.
「いくよ.」
エリカはものすごく驚いて,さらにもがこうとした.ボクはエリカの唇に顔を
寄せて口と口とを合わせた.エリカの体は訳がわからずに硬直した.
そのまま自分の顔ごとエリカを水中に沈めた.水中キスだ.ボクは水中で一生
懸命息を止めた.エリカの頭はボクの頭の下にある.エリカは自分では水中から頭を
出すことができない状態になっていた.前から一度やってみたいなとは思っていた
が,こんなシチュエーションでやるとは思っていなかった.
エリカは股間とうなじのあたりで呼吸しているはずだ.今は,風呂に入ってい
るから,きっとうなじのあたりで呼吸していたんだろう.それなら,あのおぼれて浮
いていた体勢でも呼吸することができるし,僕を驚かすこともできるわけだ.でも,
今は,股間はもちろんのこと,頭全体が水中に入ってしまったから,いくらエリカで
も呼吸する方法は全くないはずだ.しかもエリカの頭はボクの頭で押さえつけている
んだから,息をしたくたって,水中から逃れることはできない.
ボクはエリカと水中キスを続けた.僕の息はすごく苦しかったが,エリカに罰
を与えたい気持ちでいっぱいだった.エリカは最初は脚をばたばたさせてもがいてい
た.ボクはそれを押さえつけるのに必死だった.が,途中から観念したか,息の止ま
る限りこの水中キスに付き合う気になったらしい.じっと動かなくなった.いや,も
う気を失ったのかもしれない.
結局1分くらい,水中キスをやってたかな.自分の息が限界になったので,ボ
クはエリカをもう一度抱き上げた.エリカの体には力が入っていなかった.気を失っ
てしまったか?さすがにやりすぎだった?ボクは声をかけた.
「エリカ?大丈夫?エリカ?」
エリカは反応しない.と思ったその瞬間,もぞ,とエリカは動いた.そしてボ
クの手を振り払うようなしぐさをしたから,ボクはだきかかえた手を離してエリカを
立たせてあげた.エリカは床に立ち上がった瞬間,
バチン!!
ボクのほおを平手で張り飛ばした.
「ばかーーーーーー!!!」
エリカはタオルを手に取るとリビングのほうへ駆けて行った.ボクが追いかけ
ると,エリカはぬれた体のまま,床にぺたんと座り,顔を手で覆っていた.
「もう,***さんなんか,嫌い!エリカ,死ぬかと思った!」
ボクは申し訳ない気持ちでいっぱいだったが,一応意地悪く聞いてみた.
「エリカ,だって,息してないんでしょう?窒息なんかしない,っていつも
言ってたじゃないの.水中キスしたって,死ぬことはないんでしょう?」
ボクの反論に,エリカは一瞬ウッっとなった.でも,感情を爆発させるよう
に,甲高い声で僕に言った.
「エリカに口ごたえしないで!***さんにバツを与えます.もう絶対許さな
いんだから!もう本当に,死ぬかと思った!」
え・・・と思ったが,ここはエリカの言うことを聞いてあげて,エリカの言う
「バツ」を受け入れるしかないな,と思った.最初はエリカがボクにいたずらを仕掛
けたことから始まったことだけれど,ボクのやったことはちょっとやりすぎだったか
もれ知れない.僕はエリカの言うことを受け入れることにした.
「どうすればいいの?」
エリカはちょっとうーーーんと考えた後,言った.
「何か,買ってもらおーかなあ・・・・・.や.そんなもんじゃすまない.今
日のはひどいよひどいよ.」
ボクはうなだれた.高い買物でもしてあげなきゃだめだな・・・と観念してい
たところに,エリカはこう言った.
「もう一回水中キスしようよ.ただし,今度は***さんが下だよ.5分くら
いしようよ.***さんが気を失ったら許してあげるから.」
エリカの顔は笑って見えた.ロリの入ったゴム製のお人形の顔が悪魔のように
見えた.
「え・・・・そんな.本当に死んじゃうヨ.ボク.」
「大丈夫.介抱してあげるから.***さんにはね,選ぶ権利はないんだよ!
もう!エリカを死ぬような目にあわせたんだから!!!気を失わなかったら,何度で
もやるからね!!!はい!洋服脱いで!はやくはやく!」
あと,どうなったかはご想像にお任せします.あーほんとに死んだかと思っ
た.肺に水が入るとホント危ないので,皆さん絶対に真似しないで下さい.
(第14回に続く)
次回予告:エリカも感じてるの?
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