ボクとエリカ「第7回」 [戻る]
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エリカの目
 

 エリカの目はプラスチックか樹脂でできているのはすぐに分かる.内側から (だと思うんだけど、本物みたいに彩色してある.目の色は濃い茶色だ.目は普通の 人よりはちょっと大きめになっていて、こんな大きな目玉の人はいない.けど,この くらいがお人形としては例えようもなくかわいい.ちゃんとまつげもついているん だ.エリカに断って、ボクは目に触らせてもらった.やっぱり人形だ.中の人がどこ から外を見ているか、全く分からない.寝るときにアイマスクをするんだから、多分 目のところから外が見えていると思うんだけど.エリカに「どこから見えてるの」と きいたら「目にきまってるでしょ」といわれてしまった.でも,実は一回、試してみ たことがあるんだ.ごめんね、って言ってから、エリカの目の前に拳骨を振りかざし てみたんだ.エリカは反射的によけたよ.やっぱり目から見えてるんだね、って言っ たら、コクリとうなずいた.5cmくらいの至近距離から観察しても、どこから見え ているのかが全く分からないんだ.

 


 
エリカの睡眠

  エリカは寝る時にアイマスクをする.理由を聞いたら、「エリカの目はね、閉じられ ないんだよ.だから,目を隠さないとまぶしくて眠れないの.」と答えてくれた.こ れはきちんと寝たときの話.

 いっしょにビデオ見てたりして、エリカだけねちゃうこともあう.急によりか かってきたなあと思ったら、ボクのひざの上にどさっと寝ちゃったこともある.こう いうときは目をあけたままだ.エリカの華奢な体はすごく軽くてやわらかい.ボクは エリカの頭をなでてあげる.でも,これが人形の頭なんだから、気持ちはすこし複 雑.猫みたいな生き物をなでるのと,人形をなでるのとでは感覚的にずいぶん違う. でも,この人形は肩で息しているのが見てて分かるから、まんざらモノとも言い切れ ない.でもでも!エリカは口や鼻で息をしてないんだよ.どこから息すってんだろ う?ボクは寝入ったエリカのからだのいろいろなところに手をかざしてみた.どこか に息の出入りがあるはずなのに、それがわからない.

 


 
エリカのシャワー

 こんなこともあった.エリカは最初の日からの約束で「シャワーを浴びる時は 覗かないでね」といっていた.ボクはそれを忠実に守っていた.それはエリカの中に 入っている人がなにかの息抜きをするんだろう、と勝手に考えていた.でも違ったん だ. ある日,エリカは紙にこんなことを書いてよこした.

 「エリカのシャワー見ていいよ.今日だけだよ.」

 そう言って、エリカはその場で服を脱ぎ始めた.ちなみに、その日はぱつぱつ のジーンズのタイトミニスカートに肩の出てるデザインの薄オレンジ色のブラウス. そのときまで、着替えはボクの見ていないところでやっていたから、ボクはすごく ビックリした.女の子の裸・・・・といっても人形なんだけどね.でも,中に人が 入っている.やっぱり裸の女の子,ということになるのかな. エリカ本人は「自分は人形で、中に人は入っていない」って500回くらい力説する んだけど、それだけはありえないでしょ.どこかに皮膚の切れ目があって、そこから 着ているはずなんだ.ボクはエリカ着ぐるみの構造がどうしても知りたくなった.し かも今回はエリカ本人が裸を見せてくれるという.

 エリカはブラジャーも脱いで、パンツ1枚になった.エリカのおっぱいはあまり 大きくないけれど、くいっと持ち上がる感じでしまっている.パンツ1枚になったと ころで、ボクのほうを向いて、ちょっとポーズをとった.すごくきれいな体だった. 体中が薄ピンク色をしていて、滑らかだった.グラビアガールだって,こんな風にき れいな肌に抜群のプロポーションというわけには行かないだろう.しかも,今は、エ リカが僕だけのために裸を見せてくれたのだ.ボクの息子はたちまち反応した.

 「エリカの体よくみてみていい?」

 ボクはつばを飲み込みながら尋ねた.エリカはこくっとうなずいた.ボクはな めるようにエリカの体を眺めた.足の先から手の先から胸から顔まで、ゴムのような 特殊な素材の人工皮膚で覆われている.

 が,どこにも皮膚の切れ目はなかった.もちろん,皮膚を接合している部分は ある.一枚布というわけにはいかないからだ.でも,そこはしっかり接着してあっ て、そこから脱ぐことはできない.

 エリカはいたずらっぽく笑うと(エリカは「笑う」という表情だけはできるの だ.)パンツ1枚のまま、くるりと一回りしたそして,その場にすわりこんで紙に文 字を書き始めた.

  「***さん,ひふのきれめさがしてたでしょーーー.・残念でした.エリカ,お人 形だから、そんなもの,ありませんーーー.」

 

 えーーーー!!ぜったいありえない!!病気にだってなるんだから、エリカの 中に人が入っているのは確かだし、ゼッタイに脱ぐ方法があるはずだ.かといって, ここでエリカに乱暴するつもりもなかった.

 エリカは余裕でパンツも脱ぎ始めた.もちろん,あそこは手で隠したけど、パ ンツで隠れていた腰やお尻に皮膚の切れ目があるわけではない.エリカはそのまま シャワールームに入っていった.髪の毛を束ねてタオルで巻き上げると、そのままボ クが見えるところでシャワーを浴び始めた.鼻歌でも歌いだしそうな機嫌のよさだ. ボクは例えようもなく美しいエリカの体の上をシャワーの水がしたたりおちていくの を見ていた.そして「皮膚のきれめがない・・・」とつぶやいた.

 そのとき,はっと,もっと大変なことに気づいた.

 「エリカは鼻や口で息をしていない.皮膚の切れ目がないとすると、息をする 穴もないことになる.・・・ゼッタイにありえなーーーい」

 でも・・・でも・・・エリカは本当の人形じゃなくて、人が人形を演じている ハズなんだから,息をする方法だって脱ぐ方法だって必ずあるはずなんだ.

 エリカは無事にシャワーを浴び終わると、パジャマを着た.いつもの,レモン とイチゴの柄の子供っぽいパジャマだ.そして得意げにソファに座ると一人でテレビ を見始めた.「何であんなに得意げなんだ?」

 ボクは一人で考えて、そして1時間くらい考えて、1つきりの可能な解釈にたど り着いた.エリカを演じている人が、今日は「何か特別なもの」を手に入れたのだ. たとえば新式のエリカ人形の着ぐるみ、というのがありそうだ.それを着ると、極限 まで皮膚の切れ目を見えなくすることができるんだ.だから,ボクを挑発してでも、 皮膚の切れ目がないことを確認させたがったのだ.完璧をめざしているエリカのしそ うなことだ.にしても,どこから息ができるんだろう?唯一調べていないところと いったら、女の子のいちばん恥ずかしいところしかない.確かに、そこを調べるのは 勇気がいる.だからこそ、そこから息をしているという可能性は高い.しっかしま あ!ホビー21のお人形って,みんなこんなコッた造りになってるのかな!!!

 テレビを見ているエリカの脇でボクは一人で考えつづけた.

 


 
エリカお風呂に入る

 ボクは、いくらなんでも,上半身にも下半身にも皮膚の切れ目が見えない以上(ミニスカートやノースリーブなどの皮膚を露出する洋服が多いので、もう普通のところには皮膚の切れ目はあるわけがないのだ.)股の中に皮膚の切れ目があって、そこで息もするし、脱ぐときもそこから脱ぐものだとばかり考えていた.(あたらずとも遠からずだったけどね.)

 そういうボクを尻目に、エリカはさらにボク挑発してきた.なんと,次の日もボクにシャワーを見せてくれるという.「ホント特別なんだからね」とかいいながら,エリカは体を楽しそうにゆすっていた.ボクに裸を見せることが楽しくてたまらないようだ.でもそれは,エッチな気持ちからではなく、ボクがエリカ人形の着ぐるみをゼッタイに見破れないという自信があるからなのだ.エリカ人形の着ぐるみは完全につながった1つの皮からできていて,どこから脱げるのかも分からないし、その前に,どこから呼吸できるかも分からないのを再確認させようというのだ.

 今度は服を脱ぎ始める前に、なんと,お風呂にお湯を入れ始めた.「まさか?お風呂に入るつもりでは?」というボクのココロを見透かすようにエリカは裸になった.

 

 すっぱだかのままエリカはそこに座り込んで、(前は手で隠しながらだよ)鉛筆を手にとった.

 「あそこみてみる?」

 ボクはえっと思った.女の子のあそこを見せてもらったことはまだない.これが始めての経験になるわけだが、この場合はちょっと事情が違う.エリカのどこに皮膚の切れ目があるか、が今の関心事であって、あそこのかたちがどうなっているか、なんてことは今はとても考えられないのだ.しかも,エリカの自信は大変なものだ.エリカの皮膚の切れ目をボクが探していることを知っているにもかかわらず、それを挑発して「見てみる?」と聞いてきたのだ.

 

 「ちょっとだけね.そんなにばっと広げなくていいよ.はずかしいから.」

 ボクは答えた.エリカはすっと自然に立って、すっと自然にかくしていた手をはずした.そこに毛は生えていなかった.とても小さななにかがそこにあるのが分かった.ボクはその部分をあまりまじまじと見つめてはいけないような気がした.その付近に皮膚の切れ目があるかどうかをゆっくり調べてみたかっったが,なんか恥ずかしい気がして、でも一通り調べてみた.

 どーーーしてだろ.どこにも皮膚の切れ目がないよ.完ぺき主義のエリカが自信を持ってボクに至近距離から見せる以上、すぐには見つからないとの思いはあったが、これまで考えてきた仮説が全部崩れてしまって、ボクは呆然としてしまった.ボクはエリカに手で隠すように促してから、お風呂に入るように言った.

 お風呂はかなりぬるめにお湯が張られていた.エリカは髪の毛をタオルで束ねると、ゆっくりと、その中に入った.そして,クビまでつかると、すらりとした足を片方ずつ上に持ち上げながら、手でさすった.ちっさい風呂がまなのに、すごく絵になってた.

 はっとした.

 エリカは首から上には皮膚の切れ目がない.ということは今、息ができないはずだ.ボクの推理では皮膚の切れ目はなくとも,股のところで呼吸をしているはずなのに、その場所が完全に水に沈んでいて,なんでこんなに悠々していられるんだ?これも演技か?ボクは見ているだけでだんだん息が苦しくなってきた.覗き込んで、腰のあたりからぶくぶくと空気が漏れてくるかどうかを確かめたかったが、すっかり動転してしまって、それもできないありさまだった.

 エリカはお湯にゆっくり20分くらいつかっていた.その間、足を外に出すことはあったが、腰の周りは水につけたままだった.腰のあたりに息継ぎの穴があるとすると、とてもじゃないけど,生きていられる訳はない.しかも,べつに苦しそうなそぶりはなく、ゆったりと入浴を楽しんでいる風さえ見られるのだ.ボクは全く信じられなかった.

 あとで冷静に考えたが、「呼吸モード」が2種類あるんじゃないか、という疑惑があるということも一応言っておこう.普段は息の音が聞こえないように股のところから呼吸をしているけれど,新型着ぐるみではそれを首の上での呼吸と切り替えられるようになっているんじゃないか.でも,それを確認する方法はなかった.

 エリカはボクを挑発している.なんとかして,着ぐるみの化けの皮をはがそうというボクに対して、かえって挑発してくるのだ.自分は本当の人形であって、どこにも着ぐるみの証拠はないのだと主張するのだ.まったく,ボクは信じられなかった.

 エリカはお風呂から上がって、体を拭くと,裸のまま布団を延べて、服を着ないでそのままそこに大の字になって仰向けに寝転んだ.ボクのほうへ顔だけ向けて、しきりに挑発しているのだ.これは別にエッチをしようと挑発しているんじゃないということはボクにもすぐわかった.自分が人形でない証拠を見つけてみろとボクに挑発しているのだ.

 やっぱりエリカの体を眺めてみた.エリカのからだのあちこちの部分を手にとって動かしてみて、そして皮膚の様子も調べてみた.エリカはボクの方を絶えず見ながら、クビを楽しそうに揺すっていた.たしかに,僕の目の前にある物体は,ロボットでも人形でもなくて,生きた人間だ.人工皮膚の下には人間の手足の感触がある.しかし,この人工皮膚は完全に体を覆っていて、着脱できない.人工皮膚はゴムのようなもので通気性はなく、しかも,息をする穴もないのだ.どうしてだ!どうやってこの着ぐるみを着るんだ!どうやって息をしているんだ!全く分からなかった.

 あらためてボクはエリカの頭を眺めた.頭中がゴムで覆われていて、それが切れ目なく耳から喉からクビからそして胸へとぴったり張り付くようにつながっているのを見るのは実に奇妙なことだ.普通だったら、この段階で窒息死している.でも,このお人形は確かに生きているし、僕が望めば一日中だって一緒にいるかもしれない.

 「負けたよ」

 ボクはエリカに言った.

 「君はどこから見ても本当の人形だ.君は呼吸をしていないし,中に人が入る方法なんてありやしない.」

 エリカはボクの言葉を聞くと、飛び上がって、喜んだ.そして,こともあろうに,裸のままで,自分の股をボクの顔に押し当ててきた.これで2回目だね.今度はパンツはいてないから、エリカのあれが丸見えだよ----.よっぽど自分が認められたことがうれしかったんだろう.ボクは鼻血を出してしまったよ.エリカのきれいな体がちょっと血でぬれちゃった.エリカはでもぜんぜん怒る様子もなく,悠々とまたシャワーを浴びに行った.ボクはタオルで鼻を押さえながら,ぼーっとしていた.

 

 

 (第8話に続く)

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