ボクとエリカ「第3回」 [戻る]
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何にも食べないの?

 エリカちゃんは続けて書いた.

 「***さんが何言っても,もうこんな遅いんだから,エリカ,一人では帰れ なー---い」

 ボクははっぽうふさがりだと悟った.エリカちゃんのことはココロの底から好 きだったし,ホビー21でエリカちゃんを眺めていることは,ボクにとって最高の時間 だった.だからといって,こんなすごいことにすぐに結論が出せるはずはない.人形 といったって,どう考えたって,動いているんだから,中に人が入っているわけだ し,全く脱がないで生活できるわけないじゃん.

 

 ボクはしどろもどろに答えた.

 「今日はエリカちゃん,と,泊まっていいよ.ボ,ボクは,どこか,よ,よそ で寝るから.ね,そしたら明日は帰りなさい.」

 エリカちゃんはなおもノートに書きつづけて,ボクの目の前に突きつけた.

 「エリカ,って呼び捨てにして.」

 ボクはなおもしどろもどろのまま続けた.

 「わ,わかったよ.エリカ,ちゃ,あ,エリ,カ.」

 エリカちゃんはボクの態度にすごくうれしそうに両手を組んで体をゆすった. 本当にこの子はボクと住みたいらしい.でも,人形なんだぜ.何度も言うようだけ ど.すっごいかわいいけどさ,人形の着ぐるみ脱いだらバァなんてことはないだろう な.なんて変なことを考えながらも,(何がバァなんだろう?)ボクはエリカちゃん を受け入れるしかなかった.

 「ねえ,何か飲む?そしたら,ボクどこか,寝に外へ行くから.」

 ボクは立ち上がって,冷蔵庫のほうへ向かった.ジュースかなんか入ってたは ずだ.日本茶のペットがあったので,それをグラスについで,エリカちゃんのところ へもっていった.その間,エリカちゃんは夢中で,何かたくさん書き付けていた.

 「***さん,ありがと.エリカ,すっごくうれしいでーす.気使わせちゃっ てごめんね.エリカてきには***さんと一緒に寝てもいいよ.でも変なことしない でね.あとね,エリカね,お人形さんだから,ジュース飲めないのね.でも,ジュー スありがと.気持ちだけもらっておきます.」

 ボクは,エリカちゃんの書いたのを読んで,仕方がないからジュースを自分で 飲んだ.(このときは「ジュース飲めない」の意味をそれほど深く考えなかったけ ど,これが後で大変なことだと気づくんだよね.)そして,エリカちゃんのために敷 布団と掛け布団を出してあげた.(一応,布団はあるのだけど,いつもはソファの上 で寝てるんです.ボク.)そして,ボクはあたふたと部屋を出た.

 仕方がないので,渋谷まで行って,カプセルホテルに泊まった.(こんな時, 友達の家へ行くと,何かと痛くもない腹をさぐられるので(「痛い」か!)気が進ま なかったから.翌朝,6時くらいには目を覚まして,ボクは慌てて自分のマンション へ帰った.月曜日だから朝から仕事があるし.

 エリカちゃんは布団にくるまって寝ていた.アイマスクをしていたので顔は見 えなかった.ボクは,そおっとエリカちゃんを起こさないようにと着替えた.今日は このまま出かけようと思った.

 仕度がすっかりできて出かけようと思ったそのときに,エリカちゃんは起き た.ボクはエリカちゃんが起き上がったところを見なかったが,エリカちゃんは昨日 と同じ服を着ていた.どういう格好で寝たとか(マスク脱いで寝たのかとか)そうい うことをすごく聞きたかったが,遠慮した.

 「今日はここにいるの?ホビー21へは行かなくていいの?」

 ボクは普通の社会人モードに入りながら尋ねた.エリカちゃんはこくっとうな ずいた.べつにとられて困るようなものはないし,エリカちゃんはボクと一緒に住み たくて来たっていうし,ま,ともかく,昼間ここにいる分にはいいか,と思った. (ボクが諜報部員だったりしたら,エリカちゃんはスパイってことになるんだろうけ ど、こちとらしがないプログラマですから.)

 「テレビ見てていいよ.新聞は取ってないんだ.あと,ネット見ていいよ.パ ソコンつけるとネット見れるから.あと,カーテンは閉めておいてね.外に出たりし ないでね.」

 自分でもここまでは整理整頓して考えることができたが,あとは何を言ってよ いものやら良く分からなかった.エリカちゃんは「ばいばい」と手を振ってくれた. ボクも手を振った.そして仕事に出かけた.

 

 エリカは(もうここからは,「ちゃんづけ」でなくします.)ボクの前では人 形のままでいるつもりらしいけど,中にはもちろん人が入っているんだから,ボクが 出かけているうちに何か食べるだろうしねえ.そんなことを考えながら,ボクは夕方 6時頃,2人分の弁当を買って自分のマンションに帰った.

 玄関を鍵で開けると,ばたばたとエリカが走ってきた.特別なことは何もない はずなのに,そのときの驚きはまだ覚えている.だって,先週までは彼女もいないで 一人で暮らしていたのに,迎えに出てくれる女の子がいるんだ.それも,抜群のプロ ポーションの少女人形が,髪を揺らしながら,フリルのついたピンクのミニスカート はいてでてくるんだから,鼻血が出るかと思ったよ.まったく.

 「エリカだって何か食べるでしょう?おべんとう買ってきたから」

 ボクはできるだけ平静を装ってエリカに話し掛けた.エリカはボクの手を引っ 張った.線の細い少女の手がボクを引っ張っている.エリカはソファに自分だけ座る と雑誌を下敷きにして,なにかを書き始めた.ボクはいけないことだとおもいつつ も,ミニスカートの下に見えているふくよかで清らかな太ももに見とれていた.エリ カの足は長い.そしてすごく形がいいのだ.モデルになれると思う.(もっともホ ビー21でモデルみたいなことをしてたわけだけど.)

 ボクはエリカの太ももに目が釘付けだったが,エリカはそれに構わず書いた紙 をよこした.

 「エリカ,人形だから食べないの.ありがとね.エリカのために買ってきてく れたのね.ほんとありがと.」

 「ほんと?」ボクは大声をあげた.

 エリカはこくんこくんと何度もうなずいた.そしてまたペンを取ると書いてよ こした.ボクはエリカのミニスカートどころではなくなっていた.

 「エリカの口ね,***さんみたいに開いてないの.だから,食べたり飲んだ りできないんだよ.みてみて.」

 こう書いた紙をボクに渡すなり,エリカは顔をボクの目の前に持ってきた.あ の,すごくリアルだけどちょっとアニメっぽい,キュートな顔が目の前に近づいてき た.ちょっとビックリしたけど,言われたので仕方なくエリカの口を見た.なるほ ど,口の中はふさがっている.ここからエリカは物を食べたり飲んだりはできないこ とがわかる.それだけじゃない.エリカは口で息をしていない.鼻には鼻の穴がある のも分かるが,ここからも息をしていない.ただ,どういう仕組みだか,唇をわずか にパクパクさせることはできるようだ.口の中には歯はない.舌もない.完全に人形 の口である事がわかった.

 ボクの目の前にはエリカの大きな目があって,しかもそのうるうるした瞳がボ クをじっと見つめているのに気づいた.うっとりするとか,エッチな気分になる前 に,ボクはビックリして少しのけぞった.そんなボクの気持ちを見透かしたかのよう にエリカは微笑んだ.頬のところが少し変形できるようになっているらしく,微笑ん だように見えるのだと後で分かった.そして,自分だけソファに座り直すともう一枚 紙に書いてよこした.

 「エリカ,***さんと一緒に暮らしていいでしょ?でてけ,なんて言わない よね.」

 「いいけど・・・」ボクは口ごもった.「ホントに何も食べないで平気なの?」

 エリカは元気よくなにやらたくさん書き始めた.ボクはソファの脇にしゃがん でそれを覗き込んだ.丸っこい子供のような字だ.

 「エリカ,お人形さんだから,食べなくたってぜんぜんOK!でもね,お約束 がいくつかあるの.

 (1)***さんがお仕事の間は帰ってこないでね.その代り,夕ご飯作っと いてあげるよ.朝ご飯も作ったげる.エリカ,料理上手なんだよ.

 (2)土日は,ずっと一緒にいたいけど,2時間だけは一人で外出してくれる? わけは聞かないでね.

 (3)シャワーあびるときはのぞかないでね.

 (4)***さんがお仕事の間に,頼まれた買い物はしておくよ.鍵わたして くれると,買い物いけるんだけど」

 「えっ,でもーー」とボクは口ごもった.エリカのそぶりには全く悪意はな い.ご飯作りをエリカに頼めばお金だって渡さなければいけないと思うが,大丈夫か な,持ち逃げされないかな,という気持ちも少しあった.

 迷っているボクを見かねて,エリカはソファから立ち上がった.ボクはソファ の脇にしゃがんで座っていたのだけど,ボクの目の前に立った.ボクの目の前にはエ リカのピンクのミニスカートがあって,今にもめくれそうだ.

 ボクはそのままの格好でエリカの顔を見上げた.エリカはチョコッと首をかし げると,ミニスカートのフリルを両手でピラっと持ち上げて中をボクに見せた.ピン クのおこちゃまパンツをはいていた.

 わ,丸見え,と思った次の瞬間,エリカはボクの頭を両手でつかみ,自分の股 の所にボクの顔を押し付けた!!!!!エリカのやわらかい下腹部と太ももがボクの 顔一面を包み込んだ.ボクは息ができなかった.

 しばらくすると,手を離して,ボクに向かって両手で「お願い」のポーズをし た.ボクはすっかりあてられて,一人座りのソファにどさっと横倒しになった.意識 がもうろうとしていたが,右手だけを何とか持ち上げて,エリカに向けて「OK」の 指のサインを送った.エリカはそれを見ると,その場で飛び跳ね,そのままボクの上 に乗っかってきた.

わーーーーーっ



(第4回に続く)

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