Anime-Doll Club(2回) [戻る]
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 さて、僕が「DollClub」に通うようになってから二ヶ月ほど経ったある日の事です。

 僕は昼休みの校庭で先輩から特別メニューの話を聞かされました。
 驚いた事に、そのメニューは九割引だと言うのです。先も話した通り「DollClub」は基本的に他のイメクラよりも割高です。それが同じ値段になると言うならまだしも、一割になるとはどういう事でしょう。それも特別なメニューでです。

「最近、おまえバイトが大変みたいだしさ。特別にかけあってきたんだ」

 先輩は笑って言いました。しかし安心は出来ません。そもそも僕が「DollClub」にはまったのも、先輩がタダでやらせてくれたのがきっかけです。それが純粋な善意にせよ、特典狙いにせよ、何か裏があると考えて間違いないでしょう。

 先輩は初めてこの店に来た時と同じ部屋に僕を連れてきました。ここは特別会員専用で、いつもは一回の受付を利用しているのです。
 今日部屋にいるは店員だけで、ノエルの姿はありません。いつも指名しているのですが、少し残念な気がしました。
 店員は机の上のパソコンを操作し、何かを探しているようでした。

「ちょうど君の体型にあったキャラが空いていますね」

 体型? どういう事でしょうか。先輩を見てもにやにや笑うだけです。

「あのう、キャラの好みとかは聞かなくて良いんですか」

 本来は僕が訊ねるような事ではないのに。

「これまでの予約の傾向から把握していますよ」

 店員の答はあまりにも率直でした。どうやら僕の注文はちくいち記録されていたようです。僕は少し気分を悪くしたけど、こんな所でもめても仕方がないでしょう。気を取り直し、どういうメニューなのか訊ねました。

「説明は全て部屋に置いている説明書に書いてあります」

 店員はそれ以上説明しようとはしませんでした。

「じゃ、頑張れよ」

 廊下に出る時、先輩が見送るように手を振っていました。無責任にもほどがあるんじゃないかとも思いましたが、最初ここへ来た時も似たような状況だったと思い出しましたよ。
 今は先輩を信用するしかないのでしょう。

 部屋の構造はノエルの部屋とほとんど同じ。というより、そっくりそのままでした。
 書き物机に椅子、衣装箪笥や靴箱、そして二人が寝てなお余裕があるベッド。
 ベッドの上に、肌色の何かがびろんと広げられていました。なんとなく、脱皮した残りの皮を思い出しました。その向こうには黄色い繊維のかたまりと、白い不格好なお皿、透明なチューブが丸めて置いてあります。色々な大きさの白い布の筒なんてのもありました。
 机の上に説明書が置いてありました。ぱらぱらめくった感じでは図面が多く、難しくはなさそうです。
 僕は机に付いている椅子を引き、座って読み始めました。

「ええっ! 何なんだよ、これは」

 薄々感じてはいたのですが……それは男性が着ぐるみを着る方法が書かれていました。

 そう、ベッドの上に置いてあったのはノノミの着ぐるみだったのです。無料になるのは、僕自身が着ぐるむからなのでしょう。僕は思わず説明書を床に投げ捨てました。騙されたという思いとともに、気持ち悪さも感じたからです。ひょっとしてノエル達も男性が演じていたのではないか、と。

 ……でも。

 僕はつい、ベッドの上に置かれたマスクに手を伸ばしました。ひっくり返すと肌色をした人形の顔が現れます。でこぼこの白い皿に見えたのは、マスクの裏側でした。布のようなゴムのような微妙な感触です。
 マスクは耳を含む顔の前半分を覆う仕組みのようです。全特殊なクリップで身タイツやカツラに留めると説明書に書いてありました。顔立ちは綺麗というよりも可愛らしい系統です。

 僕はマスクを顔に当ててみました。測ったようにぴったりです。

 鏡の中にはスキンヘッドの美少女がいました。もちろん首から下は男物のTシャツとジーンズを着た、さえない小男です。しかしマスクが浮くほどには大きすぎず、男体型に見えるほどには小さくない、絶妙なバランスでした。マスクを右手で支え、カツラを左手で取って頭に乗せてみます。金髪というより黄色いショートカットに赤いリボン、ファニーフェイス。高価なフィギュアでも見た事のない、理想の立体アニメ少女でした。
 僕は取りあえずマスクをベッドに置き直し、床に落ちた説明書を拾って読み進めました。
 白い布の筒は体型矯正と体毛を隠すための矯正具。その上から肌色の全身タイツ、通称ゼンタイを着るようです。全身タイツは尻から背中の途中くらいまで裂け目があり、そこから体を入れるとありました。よほど伸びる素材で出来ているのでしょうか。呼吸は矯正具にチューブを通して確保するようです。

 取りあえず、試してみる事にしました。

 少しでも細身に見せるため、全裸になる必要があるようです。誰も見ていないとはいえ、少し恥ずかしい感じがしました。どうしても、どこにもないはずの視線を感じてしまうのです。それでも僕は恥ずかしさを押し切り、Tシャツからトランクスまでを脱ぎ捨てました。
 鏡の中に、あばら骨の浮き出た貧相な体つきの僕がいます。しかし、太っているよりは着ぐるみが似合うだけ良い、と考える事にしました。
 まずは特殊な下着を着けます。見た目はへそ辺りまで覆うブリーフパンツですが、股間をなだらかに見せるため、両脇にパッドが入っています。パッドは柔らかく、吸湿性が良さそうです。説明書によると、元はスーツと一体化していた物を改良して分けるようにしたとあります。

 パッド付きパンツを履くと、僕の股間の物は全然目立たなくなりました。何となく有るのか無いのかが気になって、股間を撫でてみました。
 とたんに電撃が走ったような快感が股間を襲い、僕は少し射精してしまいました。下着の布はあまりにも薄く、肌触りが良いためです。幸い、パッドが精液を吸収して見た目はほとんど問題ありませんが。長時間着ぐるみを着ていると用を足せないので、おむつの機能がついているようです。

 次に矯正用のスーツを着ます。まずは下半身から。足首から太ももまでぴったり覆われます。ふくらはぎは細く見せるためか締め付けるような感覚がありましたが、太ももの外側にはパッドが入っています。女性らしい膨らみを持たせるためでしょう。それに女性は股間が男性より開いているという話も聞きます。実際に隙間を開けるのは無理なので、広がって錯覚させる工夫なのでしょう。太ももを触ると、きちんとその感触が伝えられます。薄い布越しに触っているようで、むしろ気持ちいいくらいでした。

 次に上半身を着ます。腰はコルセットのように限界までしめつけ、ちょっと苦しいくらいでした。それでも着ぐるみの腹が少しでも出ていたら格好悪いので、我慢します。
 胸に入ったパッドは幼い少女らしく控えめですが、現実の少女と比べるとやや大きい感じもします。軽い材質ですが、触ってみると本物そっくりの弾力です。呼吸用チューブは首から胸パッドを通し、パンツのパッドを通して股間下のスリットに届かせました。股間を触らないようにするのに少し苦労しました。
 パッドを通すのはチューブを少しでも目立たなくさせるためでしょう。また胸パッドには、わずかながら予備の空気が入るようです。
 腕も矯正スーツに覆われ、細くしなやかに締め付けられます。
 鏡に体を写すと、シルエットだけ女っぽくなった青年がいました。

 矯正スーツは意外と通気性がありますが、やはり暑くなります。僕は部屋のエアコンを調節して少し温度を下げました。しかしここの着ぐるみ女優は僕達が快適な部屋温度で行動していたのです。中は完全に汗だくだったでしょうね。
 興奮して、また射精しかけてしまいました。僕は首を振って淫猥な想像を振り払い、ゼンタイに取りかかりました。
 尻から潜り込むように、まずは足から。すべすべとしたタイツの感触が気持ち良く、ついつい勃起してしまいます。
 下半身を入れ終わると、呼吸チューブを口のシュノーケル状マウスピースに挟みます。そして上体を屈伸するようにして上半身をタイツの中に入れます。この時股間がこすれて、また少し射精してしまいました。

 とにかく、僕の頭から指先、足の先まで完全にタイツで覆いました。鏡を見ると、眼の所だけ少し色薄い全身のっぺらぼうがいました。後はマスクを付けるだけです。
 マスクをがっぽりと顔にはめます。呼吸はチューブでするため苦しくはないですが、独特の圧迫感があります。マスクに付いたクリップでタイツを挟み、留めます。さらにマスクに付いた紐をお面のように後ろに回してしばり、スキンヘッドの着ぐるみが出来ました。そこにド-ルヘアで出来たカツラを付け、完成です。

 鏡に体を写し、カツラとマスクを微調整しました。マスクから手を離すと、全裸の少女着ぐるみが姿を現わします。

「可愛い……これが、僕なの?」

 マウスピースを噛んでいたため、僕の声はほとんど出ませんでした。しかし本当にアニメの少女が人間の肉体を借りて誕生したような可愛さがありました。

 驚いた事に体型も僕の理想通りです。くびれた腰に適度な胸、細身の体。ゼンタイにつけられた微妙な色の変化のおかげか、肩幅もほとんど気になりません。
 体を少しでも動かすと皺がより、さらさらとした触感とあいまって快感を覚えます。まるで全身が男のモノになったかのようです。しかし、鏡に写っているのは美少女そのものなのです。
 僕はそのまま二回目の射精をしてしまいました。鏡に写ったノノミが、笑いながらも腰をぶるぶる震わせています。倒錯的な美しさでした。マスクは表情を変えるはずがないのですが、角度によって、清楚な令嬢にも淫蕩な娼婦にも見えます。
 ベッドに腰掛け、左手で体を支えながら股間に右手を這わせてみました。指で撫でると、布によって快感が増幅されて、またイッてしまいました。パッドにどこまで精液が吸収されるのか、少し心配になるほどです。
 股間で呼吸しているため、姿勢の関係もあって息苦しく、それがさらに快感を増します。
 胸を揉むと、呼吸用チューブを伝って股間に快感が伝えられ、さらに射精をしてしまいました。

 時計を見ると、あまり時間がありません。息苦しさもどんどん増してきています。とにかく一度は服だけでも着る事にしました。もちろんアニメに出てくる制服です。

 まずは下着から。歳が下の方の設定だから、あまり派手な物にはしません。ブラジャーも着ぐるみの上からだと難しそうなので、純白のショーツとスリップだけにしました。
 ショーツをつけると呼吸穴がふさがり、息苦しさがいっそう増します。呼吸が荒くなってしまいますが、鏡の中のノノミは微笑んだままです。ギャップが出過ぎないように、苦しそうなそぶりは見せないよう、我慢しました。スリップを着けると、清純な少女の半裸体となりました。
 それに見とれる暇もなく、ハイソックスを履きます。締め付けられる感触に、またイッてしまいそうです。太ももにゴムがパツンとあたり、またどくどくと射精してしまいました。
 そこにミニのプリーツスカートを履きます。もちろん初めての体験です。心もとなさこそありませんが、スカートのゴムが息子の頭にちょうど当たり、気持ち良いです。何度も射精した股間が再び勢いを取り戻しました。
 上に白いブラウスを着て、紺のベストのボタンを留めました。胸から股間に伝わる快感を我慢します。赤いスカーフを取り、首に巻きました。鏡に写して各部をチェックします。

 ベッドに腰掛けた美少女がそこにいました。

 人形のようで、少女のようで、実はそのどちらでもなく、着ぐるみを着た男性なのです。
 立ち上がって、くるりとターンしてみます。ふわっとミニスカートが舞い上がり、純白のショーツを見せてしまいました。ターンを終えるとスカートがまとわりつき、プリーツが太ももをさわさわと撫でていきました。
 ベッドに這い上がり、あお向けになりました。そのまま胸を揉み、股間を触り……
 横を向いて鏡を見ると、僕の動きに合わせて女の子が自慰を行なっていました。
 鏡の中の少女とともに、僕は射精していました。鏡の中の少女も腰をびくびく震わせ、射精しています。

 脱ぐのは、着る時よりは簡単でした。名残惜しさも感じながら、僕は脱いだ着ぐるみをベッドの上に置きます。後でスタッフが回収するようです。気がつけば、汗で体中がびっしょりになっていました。
 扉の横にあるシャワー室で熱い湯を浴びると、疲れ切った体が回復していきました。

 僕は前以上に「DollClub」にはまっていました。
 バイトも半分に減らし、時間を惜しんでノノミに変身し、ノノミの中に入り込む事に熱中しました。
 気がつけば金が足りなくなり、ダイエット代わりに食費を切り詰めるようにまでなりました。

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