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何度か堀川君とメールのやり取りをしていて、僕も何度か久しぶりに君のマジックを見たいと話をするものの、なかなか彼が実際にマジックをやっている場所を教えてはくれない日々でした。
最初にメールが届いてから2ヶ月ぐらい経過した頃でしょうか?
この日、僕はホビー21でいつものように仁美ちゃんを追っかけていました。
いつものようにステージマジックを披露したり、グリーティングをしたり。そんな中、グリーティング中の仁美ちゃんが僕に、一つのマジックを勧めてきました。
3つの金属のリングが繋がったり離れたりするマジック。
綺麗に決めるととても不思議に見えるのですが、タネを知ってるといまいち面白みに欠けるマジックではあります。
ですが、僕はこのマジックに思い出がありました。
高校の頃、堀川君が最初に僕に勧めたマジックなのです。
当時は堀川君の持ち物を借りていたんですけどね。
仁美ちゃんは商品の近くに置かれているサンプルのリングを手にして、実際に実演してくれます。
細く可憐でしなやかな指先が巧みにリングを操って、実に見事に3つのリングが繋がったり離れたりを繰り返し、あっという間に周囲にも人が集まります。
タネを知っている事もあって常にタネになっている部分を目で追うのですが、タネを知っていても追うのが大変なぐらい目まぐるしくタネの位置が変化しているのが分かります。
あの着ぐるみの手でよくぞここまでと思うほど見事な手捌きです。
そてしこの演目を見ていると、ふと高校時代の堀川君を思い出してしまいます。
彼もまた、とても華麗にリングを繋いだり離したりを繰り返し、タネのあるそのリングが、本当に繋ぎ目もないのに3本離れたり繋がったりを繰り返す様に見えるのです。
それにしてもなぜ堀川君を思い出したのか。
多分最近堀川君とメールをしている、と言うのもあると思いますし、彼女がやったマジックは、この演目の基本技ではなくマニュアルには出ていないテクニックが含まれていて、それが昔堀川君のやっていたテクニックによく似ていたからでもありました。
そういえばあいつも、あんな技を使っていたよな。と。
もちろん彼の高校生なりに男性的な手と、仁美ちゃんのいかにも美しい美女と言う大人っぽくも美しく可憐な手とでは雰囲気がまるで違うのですが、それでもこうして手元で見ていると堀川君をなんとなく思い出させてくれるんですよね。
懐かしさもあって、僕はそのリングマジックを購入する事にしました。
仁美ちゃんはすごく喜んでくれて、それがとても嬉しかったりもしました。
彼女たちが販促中にマジックを購入すると、お客さんが嫌がらなければ購入したマジックを彼女たちが持って、お客さんと腕組みしてレジまで行ってくれると言うサービスがあるんですが、実は僕はこれが苦手ではあるんです。
とても柔らかい女性の身体に腕組みされて密着される感じは、男としてはとても悪くない気分なのですが、彼女は美少女着ぐるみで、中には見知らぬ誰かが密閉されてる事実を見せつけられている気がして、なんだかとても悶々とします。
だから、マジックを買うにしても、出来れば彼女たちがいないスキを狙いたいのですが、今回は状況的に彼女に勧められて買ってしまったので、腕組みしながらレジに向かう事になりました。
もちろん拒否も出来るとは言え、彼女との関係を悪くすると今後の撮影にも支障が合ったら嫌だと思ったので、今回は悶々とする気持ちを押さえてにこやかにレジに向かいました。
背丈の差もあって、腕を組むと彼女の胸に僕の肘が当たるんですよ。
スーツの中でパツパツに締め付けられているであろう胸の感触は、独特のハリと柔らかさが同居していて、本物の女性が相手ならそれはそれでドキドキしそうですが、そういうドキドキより前に、この胸が作り物で、その中に本物の胸が存在しているであろうことを想像して羨ましくなってしまう方が先に来ていました。
密着することで呼吸が結構荒い事も分かるんです。見た目は全然苦しそうな様子は無いのですが、明らかに呼吸が荒い。お腹がまたったく動いていないのが不思議なぐらいに荒く感じます。
と言うかこんなに荒いと他のお客さん達にも心配されそうな気すらするぐらい荒い。
でも彼女を見ると優しい微笑みなんですよ。
こんな笑顔に苦しさを隠蔽される気分てどんな感じなんだろう、と思うと、股間が疼いてくるので少しだけ妄想は控えました。
今日も何度かグリーティングからの着替えやマジックショーがあって、トータルで5時間半ぐらい彼女達の出番がありました。
最後はにこやかに手を振って楽屋に引き上げていくのですが、今日の仁美ちゃんは最後に僕に目線を合わせて手を振ってくれた気がしました。
そしてその夜。再び堀川君からメールです。
今日はリングのマジック買ってたね。
昔を思い出しちゃったよ。高校の頃は結構練習してだいぶうまかったもんね。
中川君はテーブルマジックは得意そうだったから、今度ちょっとトランプのマジックにも挑戦してみないかな?
ホビー21には結構テクニックが必要だけど成功するとすごく不思議に見えるマジックも売ってたりするし、中川君ならちょっと練習すれば上手くなると思うんだよね
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こんな内容が主題でした。
まず僕がリングマジックを買った事を知っていた事にちょっと驚きました。
あの場に彼、いたんですね。
それっぽい人は見なかったけど、会計してる時に見られたのかなあ。
と思ったら、最後に追伸で
着ぐるみと腕組んでたみたいだけど彼女のおっぱい柔らかかった?
結構ドキドキしてた?それとも悶々としてたのかな?
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と書かれていたのを見て、あー、そこも見られてたのかぁと焦りました。
ドキドキ、は理解できるのですが、悶々としてた、と言う言葉も意味深で気になります。
ただ、その時はその言葉の意味は深く考えず、ドキドキしてたと返信したんですけどね。
それにしても、カードマジックに挑戦してみたらどうか、なんて気軽に言うなぁ。
堀川君は上手だから簡単にやっているように見えますが、実際のところ陰では相当に練習を積んでいるらしいです。
そんな技術を僕が少々真似たところで、彼のように華麗な技は見せられないと思うんですよ。
ただ、そういわれてしまうと気になってしまうのも事実。
と言うか、次にホビー21に行ったときにはついついカードマジックのコーナーを色々見てしまいました。
簡単そうなのからテクニックが結構必要そうなものまで。
やはりテクニックが必要そうなマジックは見栄えもよさそうだなぁ、と眺めていたんです。
すると横から現れたのは仁美ちゃん。
綺麗な容姿は相変わらずですが、そのパツパツなスーツを見せつけながら僕にカードマジックを勧めてきました。
そのマジックを見て、驚きます。
「これ・・・俺に勧めるの?」
そう言うと彼女はウンウンと頷いています。
透き通るようなきれいな青い目で見つめられてドキドキするのですが、同時に、この目のどこかから中の人が僕を眺めているんだなと思うと羨ましくなってしまうんです。
今日だって既に数時間は中の人は彼女に密閉され続けている訳です。相当蒸し暑いだろうし苦しいだろうに、絶対にそういう態度は見せません。
見せないからこそとても気になる。
そんな彼女が勧めてきたカードマジックは、まさに先日、堀川君が勧めてきたマジックだったのです。
その偶然にちょっと驚いた訳ですが、結局彼女に乗せられるようにこのカードを買ってしまいました。
もちろんまだ腕組みされて、胸の柔らかさや張りを肘に感じながら。
せっかく買ったのだから、とマジックの練習をするのですが、コツなどは堀川君のメールに返信する形で質問したりもしました。
他にもカードマジックやコインマジックを数点、仁美ちゃんに勧められるままに購入すると言う事がありましたが、何度かこの状況を経験して違和感を感じ始めました。
簡単に言うと、堀川君が勧めてくるマジックが、仁美ちゃんが勧めてくるマジックと余りにも一致していたのです。
最初のリングマジックだけは特別に勧められた訳ではないのですが、それ以降は確実に一致していました。
その事が不思議だったので堀川君への返信に質問として付け加えたんです。
そして次の仁美ちゃんの稼働日の事。
僕はいつものように彼女を追いかけつつ、マジック商品を物色したりしつつしていたところ、またも仁美ちゃんが僕に近づいてきたんです。
また今日も堀川君の勧めるマジックを勧めてくると言うミラクルが起こるのかな、と思いつつ彼女の行動を見ていたら、あるマジックを勧めてきました。
いつもはパッケージを指さして「これがいい」とアピールする程度なのですが、今回はパッケージを手にして直接手渡して来たので、今日はずいぶん強引な売り方をするんだな、とちょっと思ったぐらいです。
でもそのパッケージを受け取ったとき、パッケージの底面にある物の手触りから、下に一枚紙がある事が分かりました。
今日の彼女はその行動の後、ささっと僕から離れて行き、お客さんの目線が僕から遠ざかるように、みんなを引き連れてグリーティングを続けていました。
人目が途切れた事を確認するようにそっとパッケージ底面に添えられた紙をチラ見すると、何やらメモが書かれていました。
そのメモにはこう書かれています。
と。
搬入倉庫は商品の在庫をストックしている場所だと思いますが、あちらの方はスタッフしか行かないエリアと言う認識があります。
そもそも脇にエレベータなんてあったのでしょうか?とそんな事を思いながら、実際にその場所を確認しに行きます。
マジックコーナーの脇に、いつもスタッフが陳列する商品を持ってくる通路があるのは知っていました。特に部外者禁止とは書かれていないものの、その先には倉庫しかないと想像しているので、普通はその通路を進もうとは思いません。
ですが今日はそこを進んでみます。
すると、L字に曲がった角に倉庫のドアらしき扉。その脇にエレベータが存在しているのが分かりました。
多分店舗外からエレベータで商品を運び込んでこの倉庫に保管し、必要に応じて陳列する、と言う事なんでしょうね。
ですが、ここは店頭からは全く見えないある意味死角なスポットです。
ここに18時に来い、ってどういう意味なのでしょう。
と思いながらもその時間まで彼女の追っかけを続けていました。
ところがです。
今日に限って、彼女は17時30分ぐらいに引き上げてしまうと言うのです。
スタッフの説明では、彼女の代わりに別のキャラクターが残った時間を引き継ぐと言う事でした。
引き上げた後に出てきたキャラクターは、普段は日曜の午前中に稼働してるキャラクターでした。
彼女も可愛いですが、大人っぽい仁美ちゃんの魅力には劣ると思っていました。
仁美ちゃんが予想しないタイミングで引き上げてしまい、驚いていたのですが、もしかして中の人のトラブルとかでしょうか?
あれだけ厳重に着ぐるみの中に閉じ込められながら何時間も仁美ちゃんを演じているのですから、体力はかなり消耗すると思うんです。
それが今回は限界になった。と。
でも、それにしては次に控えていたキャラクターは、本来今日は稼働する予定の無いキャラクター。
ピンチヒッターとして登場するにはちょっと用意が周到だなとは思います。
不思議ではありましたが、でもメモには18時と書かれていましたので、とりあえず18時になったタイミングで倉庫脇のエレベータ前に行ってみる事にしました。
人の気配が全くなくなった倉庫の脇ですが、18時ちょっと過ぎぐらいに突如エレベータの到着を示すランプが点滅します。
商品の搬入でもあるのか、と思いちょっとエレベータ前から移動しつつ、もしもスタッフに怒られた時の言い訳はどうしようか、なんて考えていました。
エレベータのドアがスッと開くと、そこにはスタッフらしき人物が大型マジックの仕掛けらしい箱状のものに白い布をかけた状態でを乗せた台車と共に立っていました。
そのスタッフは台車を押して降りてくるのか、と思ったら、僕を見てこういいます。
「中川篤史さんですか?」
と。
何故見知らぬスタッフが僕の名前を知っているのか、と言うのは疑問ではありましたが、名前を呼ばれ条件反射のように「はい」と返事を返します。
「よかった。もしよろしければエレベータに乗ってください」
「えっ?いいんですか?これ、業務用ですよね?」
「ええ。でも今日は大丈夫です。弊社の仁美から連絡受けてますよね?」
「連絡ってさっきのメモですか?」
「そうです。それを見て来てるのですから中川さんはエレベータに乗って問題ないのです」
「そ・・そうですか・・」
物凄く意外な展開にちょっとだけ驚きます。
けれど、仁美ちゃんに指示されて来た場所で、スタッフらしき人物に言われたのですから、従った方がいいのかな、と思い、エレベータに乗る事にしました。
エレベータのドアが閉まると、動き出すのか、と思ったら、スタッフがドアと反対の壁を何やら操作しています。
すると、壁が開いて新たなドアが。
「こちらです」
スタッフはそう言うと、そのドアを開け、奥に伸びる通路を台車を押しながら案内します。
驚く展開に圧倒されつつ、スタッフについて移動すると、とあるドアの前に案内されます。
「こちらで少し待機しててもらっていいですか?」
スタッフはそう言うと、僕の回答も聞かずドアを開け、僕と台車を部屋に誘導しました。
中は10畳ぐらいの小さめな会議室。適当な椅子に腰かけてスマホでも触りながら待つことにしました。
10分が経過し、15分が経過し、なかなか戻ってこないな、と思ってドアの外を見たりもしました。
そういえばスタッフが運んできた箱も、何で自分と同じ場所に置いておく必要があるのかも疑問でした。
そうやって待たされる事20分。
ガチャリとドアが開くと先ほどのスタッフが戻ってきました。
「お待たせしてすみません。書類を探しててちょっと手間取ってしまいました」
そう言うと手元のクリアファイルに入った書類をヒラヒラさせて見せました。
「書類?」
「ええ。ちょっと中川さんにお話ししたいことがありまして。まぁそのまま座っててください」
「は・・はぁ」
「申し遅れました。私、紀平と申します。ここで着ぐるみ関連のスタッフをやってるものです」
「紀平さん・・・着ぐるみですか?」
「ええ。今日はその着ぐるみの事でちょっとお話したい事がありまして」
着ぐるみの話、と言うのにちょっと驚きました。
確かに僕は着ぐるみに対してちっょとフェチな感情を持っていて、それを理由に着ぐるみの追っかけをやるようになっていましたが、理由はともかく僕以外にも似たような着ぐるみの追っかけをやってる人たちは結構多いんです。
ですので、僕がその事にいつて怒られると言うのはちょっと疑問でした。
「はあ。いったいどういう話でしょう・・・僕、なんか悪い事をしましたかね?」
恐る恐る聞いてみました。すると紀平さんは
「いえいえ。そういう事では無いんです。ただ、ちょっと場合によっては誓約書にサインしてもらう必要があるんですけどね」
「せ・・誓約書?」
「急に誓約書と言っても驚きますよね。それは分かります。ただ今回の話は他言されるのが非常に困る話を含んでいます。ですのでここで見聞きしたものは他言しないと言う事を約束してほしいんです。そのための誓約書です。まぁ一読してみてください」
紀平さんはそう言うとクリアファイルに挟まった何枚かの紙を僕に手渡します。
その内容は、ここで見聞きしたものを口外し、それが店の不利益になると判断したら即損害賠償請求を行うと言う事でした。金額があまりにも現実的ではない数十億のお金だったので、ピンとは来なかったのですが、要するに言ったら物凄い金額が請求されるから絶対に人に言うなよ、と言う事です。
SNSなどのネットへの情報公開もかなり規制される事が示されていました。
ですが、そもそも今日、どんな話をされるのか、全くわかってないのです。
それなのにこんなにリスクの高そうな誓約書にサインをしてしまうのは危険すぎます。
その事を紀平さんに伝えると
「あはは。ごもっともごもっとも。ではまず取りあえず話の導入部分だけ話をしてみて、もしも興味がありそうだったら誓約書にサインしてもらって続きを話す、と言うのでいかがでしょう?」
「まぁそれなら構いません」
「よかった。ではさっそく話を始めますね」
紀平さんはそう言うと、導入部分について話し始めました。
「中川さんは、うちの仁美の事をとても気にって、いつも撮影等して頂いてますよね?」
「ええ」
「仁美もその事を認識していて、最近はマジックのタネを勧めると購入してくれると言う事で喜んでいました」
「はぁ」
仁美ちゃんに付きまとっている事を怒られるのかとも思ったのですが、どうやらそういう事でもなさそうなので話の続きを聞いてみます。
「そんな仁美から、ちょっとした話を聞いたんです。中川さんが、もしかしたら単なる自分のファンではないかもしれない、と」
「単なるファンではない‥と言うのは?」
「仁美の分析によると、どうも中川さんは自分の中身に興味がある可能性が髙い、と言うのです」
「えっ・・・」
「驚かれました? もしかしてそういう所に興味はありませんか? 単に仁美が可愛いから追っかけていた、と?」
「あ・・ま・まぁ」
「本当ですか?仁美からは色々聞いているのですが・・・」
「色々って・・・」
僕は正直驚きました。仁美ちゃんではなく、中の人に興味がある、と見透かされている事に。
確かに僕は、あの中に入ってる自分を想像してオカズにしています。
でもそれは僕の中の密な楽しみではあったのです。
ネットには何人か同種の嗜好を持った人がいて、彼らとはネットではつながっているのですが、少なくともリアルな世界にそれを持ち込んだ事は無い。
そう思っていたから驚いてしまったんです。
「仁美の構造がとても気になっているようで、出入り口や呼吸の経路について色々調べまわっているような気がする、とか、特に苦しそうな呼吸を見られている気がする、とか、時々よろめいたりする時にそれを見ている気がする、とか、おおよそ仁美の中の人の状態について調べているような気がする、と」
「えっ・・って」
そもそもホビー21は着ぐるみではなくそう言うキャラクターなのだと言うスタンスです。
ここで着ぐるみとか中身と言う言葉を聞いているのも意外なのですが、何せ僕がそういう事に興味がある、とバレている事に驚いたのです。
「って、ホビー21は着ぐるみではなくキャラクターなのでは・・・」
精一杯の抵抗を、店のお約束を使って返します。
「ええ。なのでここから先は誓約書にサインが欲しいのです。そういう前提を取らないとできない話になるので」
「なるほど・・・」
「ちなみに、その情報は仁美の中の人からの話です。もうちょっと話をできれば、納得していただける情報も出せるんですが」
「えと・・・今日ってそういう話をする為に呼んだのですか?僕がちょっと普通とは違う目線で着ぐるみを見ているから、それを注意されるとか」
「あー、いえいえ。そういうことはありません。あーそっか。中川さんは私達が怒っていて、それを正すためにここに呼んだと思っているのか」
「ち・・違うのですか?」
「安心してください。そういう事は全くないです。そもそもホビー21に来るお客さんには、そういう目線の人たちも結構いますから。表立って彼らを歓迎はしていませんが、そういう感情になる人達が一定する存在する事は理解していますので」
「なるほど・・・」
「ですのでこの先の話をするに当たり、誓約書にサインを、と」
「口外しなければ問題ないんですよね?」
「ええ。と言うか多分最後まで聞いたら口外する気にならなくなると思います。勿体ないですから」
「勿体ない?」
「そうですね。今は意味が理解できないと思いますが、最後はこの意味が理解できると思いますよ」
「なるほど・・」
僕はその話を聞いて、少なくとも僕が怒られる訳じゃないと分かり安心すると共に、最後まで聞いたら口外する気も起きなくなる、と言う部分がとても気になりました。
紀平さんの口調では、着ぐるみと中身に関する話題も出ると言う感じでした。だから誓約書だと。
普通はそんな話を聞いたら外で言いたくて仕方なくなる気がするんですよ。でも話したくなくなる。と。
その意味が良く分からず、逆にそれが興味を引きました。
そして、結局僕はその誓約書にサインを書くことにしたのです。
「ありがとうございます。これで誓約書の手続きは完了です。なーに心配いりません。多分本当に話をする気にならなくなると思いますから」
「そう・・だといいですね・・」
「あはは。まぁ最初は不安でしょう。でもその不安を取る為にも早く話を始めましょう」
こう言って紀平さんは今回僕が呼ばれた理由を話し始めました。
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