手品が趣味なせいで羨ましい着ぐるみに嫉妬してしまう件(1話) [戻る]
[次へ]


大学に入学し、いよいよ念願だった東京での一人暮らし。僕はなんとしても東京の大学に進学したかった。
特別に行きたい大学があった、と言うよりは東京で暮らす口実として東京の大学に行きたかったんです。
就職でもいいじゃないか?と言われそうですが、社会人になってしまうと自由時間は減る気がしたので、そこは大学が良かったんです。
幸い、僕はそこそこ勉強は出来たので、トップクラスとは言わないまでもそこそこ名前の通った大学に受かり、無事に東京での生活が始まりました。

自己紹介が遅れました。

中川篤史と申します。

何故そこまで東京の大学にこだわったのかと言うと、それはホビー21の存在が大きかったんです。
東京郊外の広大な土地に作られた、おそらくは世界最大の総合ホビー専門店。ホビーショップと言いながら、テーマパークのように楽しいアトラクションもあって、本当にあらゆる楽しいことが集まっている場所でした。

中学生ぐらいからネットでずっとその存在を知っていて、いつか見に行きたいと思っていたその場所。
高校の夏休みにアルバイトで貯めたお金で東京観光をしに行き、3泊4日のうち3日間はホビー21に通い詰めた思い出。
そうまでして見に行きたかった場所がホビー21でした。

それは何故でしょう?

実はホビー21には、マスコットとして常時沢山の美少女着ぐるみが稼働しています。
着ぐるみと言うと、キャラクターショー等を想像するのですが、ホビー21の着ぐるみはそう言う着ぐるみとはちょっと異なりました。
普通は、肌色のタイツの上から衣装を着て、FRPのような硬質な素材で作られたお面を被った感じの着ぐるみを想像するのですが、ホビー21のマスコット達は違うんです。
素材は不明ですが多分シリコンやゴムのような密閉性が髙くて柔らかい素材を使い、全身を繋ぎ目やファスナー無く一体型で作られているらしく、本当に動くフィギュアと言うか、アニメ等のキャラクターそのものと言える雰囲気のキャラクターたちがいるんです。
繋ぎ目等が全くない、と言うのは、時々ビキニの水着のような衣装の着ぐるみを見る事があるのですが、その姿でも着ぐるみなら絶対ある筈の出入り口が全く見当たらない。
そのうえ至近距離で見ても、顔にも隙間や穴は見えない。つまり中の人は呼吸をどうやって確保しているのか。視界をどうやって確保しているのか、まったくの謎でした。
ホビー21の着ぐるみ達はネットでも様々研究されている人達がいて、彼らもこの視界、呼吸、出入り口がどうなっているのか、正解に辿り着けている人はいませんでした。
毎回接着しているという説は割と有力ですが、それでも接着をすれば少しは繋ぎ目が見られる気がするんですよ。
そこを毎回「全く分からないレベルで接着している」と言うのはちょっと考えにくいかな、と。
そういう秘密を持った可愛い着ぐるみを見に行くのが楽しかったんです。

楽しかった、と言うのはちょっと正確ではなかったですね。

そもそも僕が中学生ぐらいからホビー21の着ぐるみにハマった理由があるんです。
多分僕の中に、ああいう着ぐるみに入って何時間も密閉されてる人、に興味があったんです。
後からそういう人を「着ぐるみフェチ」と呼ぶらしいのですが、着ぐるみフェチの中にも様々いて、中でも、あの中で苦しんでる女性を想像したりする人は比較的多いみたいでした。マゾヒスティックな環境に置かれながら、美少女として振る舞うという仕事をしてる女性たちを想像してオカズにしてる人たち。
確かにそういう嗜好は理解できるのですが、僕はその中でもちょっと特殊でした。

ああいう中に自分が入って蒸されたり窮屈に締め付けられたり息苦しかったりする中で、それを感じさせないように女の子とてして振る舞う。
そういう世界にとても憧れたんです。
ですが、自分もバカではありません。写真の時はサイズ感が全く伝わりませんでしたが、高校生の時に実際に見て痛感しました。
殆どのキャラクターはものすごくスタイルがいいのに、小柄なんです。160センチある着ぐるみはほぼいないと思えるぐらい、みんな背が小さくてかわいい。
175センチの身長を持つ自分があの中に入る事は現実的に不可能だとは思いました。

その現実を知った時に、自分が入れる可能性がゼロだという絶望と、たぶん、その背丈のおかげで入れる権利を持って、実際中に入っているであろ小柄な女性達の事が羨ましくて仕方なかったんです。
夜のオカズは相変わらず自分が中に入ってる事を想像して盛り上がりましたが、現実を知ってからは少しだけ物足りないんですよね。
心のどっかで「でも無理だよな」って思っちゃっているからでしょうけど。

それでもあの特殊な美少女達を見に行くのはとても好きでした。
見ていると羨ましくなってしまうので苦しいのですが、それでも毎回キャラクター達を観察し、ほとんど苦しそうな素振りを見せる事のないキャラクター達が時折見せる不意の呼吸の荒さだったり、不自然にも思えるよろめきだったりを見て、中で何が起こっているかを想像してしまうんです。

そんな中でも最近の自分のお気に入りは、マジックコーナー。
ここでは様々なマジック関連製品を見せてくれると同時に、マジック自体もショーとして見せてくれるんですよね。
そしてここでショーをやるマジシャンは全員美少女着ぐるみであり、アシスタントもまた全員美少女着ぐるみです。
人体切断マジックなどは、生身の人間より種が仕込めそうだから、そういう意味ではあまり不思議ではないかもしれませんが、一方でアシスタントの美少女が箱詰めされたり切断されたりするのを見てとても悶々としています。
ちなみに、ここのエリアには常時3~4人のキャラクターがいて、全員がマジシャンであり、また全員がアシスタントでもあります。
それぞれ得意とするマジックがあるらしく、そのマジックを披露する場面では他のキャラクター達がアシスタントをやるんですね。

僕が良くマジックコーナーに行く日は火曜日と金曜日。時々日曜日。
この日は午後の15時ぐらいから閉店間際までの約5~6時間のシフトで、僕がとても気に入っているキャラクターである、仁美、と言うキャラクターがいます。名前がひとみなので、あだ名はひーちゃん、て呼ばれてるみたいですが、僕はひとみちゃんて言ってます。
設定は女子大生らしいのですが、ちょっと大人びた雰囲気と、いつも着ているタイトなスーツが他の着ぐるみ達と違っていてとても好きでした。
瞳は吸い込まれそうな青で、髪は長く、ブラウンのサラサラ髪ですが、左右にふわっと真ん中分けしてあっておでこが見えてるんですね。
なんか髪をかき上げる雰囲気とかも大人なお姉さんな感じが好きです。
もちろんタイト目スーツがパツパツに凹凸を浮かび上がらせる彼女の身体は、かなりのグラマーと言えます。
胸回りの大きさはスーツの生地をみっちり圧力で押し広げて、スーツの胸回りがとても窮屈そうに見えますし、そのちょっとしたのウエストラインはギュッと絞られてお人形さんのように細い。そこから腰を経由して太ももにかけて、とても丸みを帯びで大人な雰囲気のラインは、タイトなスカートを横方向にギュッと押し広げるようにピッチピチに張っていて、スカートの前側に出来る左右に伸びるようにピーンと張ったシワがとてもエッチっぽい。
お尻側も多分下着の線が見えてるぐらいぴちぴちっとしてますが、前側のタイトな雰囲気よりはお尻の柔らかさによる揺れの方が目立ちます。
両足は黒いタイツに覆われ、少し高いヒールの着いたブーツを履いているのですが、それでも身長は150センチ台後半かと思える程度に小さいんですよね。
可愛いのに大人っぽくてかっこいい。そんな雰囲気がとても好きでした。
あのタイトそうな身体に詰まって、あのタイトそうなスーツに包まれながら何時間も過ごしている中の人の気持ちってどんな感じなんでしょうね。
ほんとに苦しくて一刻も早く仕事を終えたいと願いながら仕事をしているのか、それとも、その窮屈で苦しい空間に、自分のように興奮してしまったりしているのか。

いずれにしても、仁美ちゃんを中心に、様々なマジックを見ているだけでも飽きませんし、実は僕もちょっとだけマジックそのものに興味もあったりするので、そういう意味でもここに通うのは好きでした。
ここで買って覚えたマジックをキャラクターに披露してみたりもするんですよ。そしたら喜んでくれたりもして、それもちょっとしたコミュニケーションになっています。

と、ここでちょっとだけ昔話をしようかなと思います。
何故僕がマジックそのものに興味を持っていたか。と言う話です。
実は高校のころ、同級生にとてもマジックが上手い友達がいたんです。堀川圭一。
彼は子供のころからマジックが趣味だったらしく、高校生の頃は既にショーをやったりもしていたんです。
僕もそこそこ手先が器用だったせいもあって彼に教わりながら簡単なカードマジックやコインマジックは出来るようになっていました。
ただ、自分が出来るようになればなるほど、彼の超絶なテクニックが理解できるようになり、その技に感動するとともに、自分ではそれは流石に無理だと諦めていたりもしました。
でもその頃から彼と遊んで、色々マジックを見せてもらっていたおかげで、マジックに興味も持てたし、実はちょっとしたマジックなら種を想像出来たり見破れたりもしたんですよね。

そんな感じで堀川君とは仲良く遊んでいたのですが、高2の夏休みに親の都合で東京の高校に転校することになったんです。
その後もメールでのやり取りはしていましたが、なにせ僕の実家は新幹線と在来線を乗り継いで片道5時間かかる場所なので、結局あれ以来一度も会って無いんです。

懐かしい思い出はさておき、そういう理由もあってマジックコーナーは割と好きで良く見に来ていて、その中でも仁美ちゃかのマジックはテーブルマジックで、そのテクニックはかなりのものだと思い、ついつい見入ってしまうんです。
綺麗な細い指先から繰り出されるテクニックによって、カードもコインも一瞬で消えたり移動したり。
ちょっとかじってるからこそ分かる彼女の技に惚れ惚れすると共に、でも着ぐるみの手先を通してあれだけの技を見せられると言う事は、たぶん中に入ってる女性は本来はもっと凄いテクニックを持っているんだろうなぁ、とも思っていました。
たとえ薄い手袋でも、それを着けてテーブルマジックを披露するのは相当な技量が必要と言うのは何となく想像が出来ます。
彼女の技は、そういうことを考慮すればするほど素人では絶対に無理な技だと思えていました。

つまり、少なくともある程度マジックの技術がある人が中身になっている。
逆に言えば、その人はある程度のマジック技術を身に着けていたからこそ、この仁美ちゃんの中に入れている。
その事がとても羨ましい事のように思えました。

彼女がテーブルマジックを30分程度披露し、みんなから拍手を貰います。
30分の中には実際に店内に売っているマジックのパッケージでプレイできるものもあります。それらのパッケージをアシスタントをする他のキャラクター達がステージ上に掲げるように見せています。
それを見ていたお客さん達は、そのマジックのパッケージを買い、売り上げに貢献していました。
初心者向きのマジックでも彼女が見せると本格的に見えるのですが、実際に家に帰って試すとそこまで格好よく無いんですよね。不思議ですが。

彼女はグリーティングでも手元でできる簡単なマジックを披露したり、お客さんが商品選びをしてる時には横から近づいてお勧めマジックを見せてあげたりしていました。
普通は撮影会や握手会になる事が多いんですが、ここのエリアはマジックを披露する事が多いので、他のエリアのキャラクターより撮影写真のバリエーションも豊富なんですよね。

そうそう。ステージでマジックを披露している時はあまり無いのですが、こうしてグリーティング中にお客さん達に軽めのマジックを披露する時は、ほんとにたまにですが、失敗するシーンも見えます。
僕はマジックシーンは動画で撮る事が多くて、そういう失敗シーンばっかりを編集していた時にふと気づいたのですが、失敗する時は必ず彼女が一瞬ぴくっと不思議な反応している気がするんです。
全体の流れの中で見ていると特に不自然とも言い切れない反応なのですが、その一瞬だけ不自然な停止をしたり、不自然に足や腰が動いていたり。タイトなスーツのスカートのせいで些細な変化も見えるとも言えます。
また、そうして失敗した後はだいたいお腹の辺りが少しハァハァと呼吸している動きになるんです。彼女達は本当に呼吸している様子を見せる事が無いせいもあってこのお腹の動きはちょっと毎回不自然なんですよ。
激しいダンスの後とかでもなく、本当に普通のクローズアップマジックなので。

失敗して動揺しているからそうなるのか、そうなったから失敗したのか、その辺の因果関係までは分からないのですが、失敗する時はだいたいそんな感じがしています。
と言ってもめったに失敗しませんし、実際そういうハァハァしたお腹の反応や足腰や身体の反応は、それ以外でも時々無いとは言い切れないので、その反応が失敗とリンクしているとも言い切れないですしね。

それに、その些細な反応も、僕がこうして動画編集している時に気付いた程度で、その場で見ていてもほとんどその反応に気付くケースは無いと思います。僕は注意深く見ているから気づくこともありますが、ほとんどの人はマジックに目線が行ってるせいもあって、その瞬間に他の部分に目が行く事は無いんです。
おかげでその不自然な気がする反応、に気付いてる人はいないようでした。

他のキャラクターがステージでマジックを披露する場面では仁美ちゃんがアシスタントをやる事もあります。
その場合、スーツを脱いで中に着こんでるレオータード姿になるのですが、それも結構見ものと言えました。
いつも色の違うレオタードを着こんでいてそれをアシスタントの時に披露するのが恒例になっているのですが、そのレオタードの色が外からブラウス越しに透けたりしないように、毎回更に一枚、白いレオタードを着ているんですよね。
普通の下着に比べてレオタードがどの程度のタイトさを生み出すものなのか、着用経験のない僕には全く分かりませんが、レオタードを二重に着こんでいるというのを知った時には何だかとても悶々としていました。
アシスタントが終わってスーツを着こむときは、既にレオタードの色やデザインはネタバレしてるから隠す必要が無いのに、彼女は毎回白いレオタードを着てからスーツを着るんですよね。

仁美ちゃんがアシスタントをする時はだいたい大掛かりなマジックの時なんですよ。人体切断とか人体消失とか瞬間移動とか、そういう系統のマジック。
そういう、一瞬でも人から隠れてしまう時は『仁美ちゃんが二人いて入れ替わっている』と言う可能性を考慮して、だいたいお客さんがレオタードにサインを書いて目印を作ってからマジックを実施するんですよね。
サインを書くのも油性のサインペンなので、レオタードを通して着ぐるみに裏移りしてしまうんじゃないか? と心配したのですが、レオタード自体が結構しっかり裏移りしない対策をされているものらしくて、つまりレオタードと言っても薄い生地ではなくしっかりとした裏地もある特注品みたいでした。
そんな専用のレオタードに毎回サインを書かせるんですから、結構いいコストかかっていそうですが、それだけ販促費用をかけられるほど儲かっている、って事ですかね?
v 今日も見ていた女性が指名されて彼女の胸のあたりに名前をサインしていました。
大きく柔らかい仁美ちゃんの胸がサインペンでぷにっと押し潰れながら動いていく様子は結構エッチに見えるんですよね。
仁美ちゃんもくすぐったいらしくて時々ぴくぴく反応したりしています。
司会の女性スタッフさんがその様子を笑いに変えて、仁美ちゃんも照れている感じがまたなんともエッチで、見ているだけで悶々としてしまいます。

この日は2つほど大掛かりなマジックをやったあと、最後のハイライトマジックはウォーキングテーブルと呼ばれるマジックでした。
縦長の箱に入った仁美ちゃんが胴体部分で切断されて、足だけがテーブルと一緒に歩きだすというマジックなのです。
テレビでも何度か同様のマジックを見たことはあるのですが、何となく上半身と下半身は別人で、下半身役がテーブルに胴体を隠してる印象だったのですが、このマジックは足にも仁美ちゃんの目印を書いたタイツを履くんですよ。だから足がすり替わる可能性は低いんです。
逆に、切られた後の上半身は本物の仁美ちゃんかどうかは不明なんですよね。顔と手しか出てないのでレオタードが見えないんです。

で、この上半身を切断された仁美ちゃんの下半身とテーブルがお客さん達の周りを歩いて移動するんです。
多分ですがこのテーブルの薄い空間に仁美ちゃんの胴体が詰め込まれてるんだと思うんです。
ボリュームある胸を持った仁美ちゃんにはこの薄い空間はとても窮屈な気がするのに、どんな気持ちで閉じ込められてるんだろうと思うと、仁美ちゃんの中身が羨ましくて仕方なくなります。そのうえ、テーブルになった仁美ちゃんの下半身はしばらく放置される。
その間もステージは別のアシスタントを使ったマジックがあってその間はテーブルがステージ脇のスロープの下でじっとしてるんですよ。
足が動いてるので作り物じゃないと思うんですが、20分ぐらいはそのままじっとそこにいる。
ただでさえ着ぐるみと言う窮屈そうな空間に密閉され、そのうえマジックの種としてしばらくテーブルの中に入る。しかも下半身はほぼ露出している。
なんというかあの無防備な下半身はとても気になるんですよね。
あの下半身が本物の仁美ちゃんだとしたら、つまりあのむき出しのお尻を触ろうと思えば触れる訳です。
そんなことする人はいないと思いますが、仮に触られても大した抵抗も出来ない状態にある、と言うのはとても興奮しました。

ぶっちゃけ、あの状態の仁美ちゃんの中に入って、見知らぬ人から散々悪戯される妄想で何度も抜きましたから。

そんな僕ら一部大人の妄想を分かってるからなのか、時々マジックを披露する着ぐるみが、仁美ちゃんが詰まってると思われるテーブルのお尻を軽く触ったりもするんですよね。
その時、意味深にお尻がくくっと反応したりしてとてもエッチに見える事があります。
殆どの人は笑ってますが、僕にはあれが、無抵抗な中の人が弄ばれて感じてしまってるようにしか見えませんでした。

そんなウォーキングテーブルのマジックが終わると、まるで何事も無かったかのように仁美ちゃんは元の姿に戻り、その後のショーが滞りなく終わると、レオタードを着こんでスーツを着て、再びグリーティングに戻ります。

こうしてこんなステージショーやグリーティングを何度も繰り返し、合計5時間ちょっとでこの日は終了となりました。

家に帰ったら動画も写真も全てパソコンで処理して編集して、色々気になる点を調べたりしつつ夜のオカズにしたりしています。

そんなある日の事。v 僕のパソコンに一通のメールが届きます。
大学の友達からかとも思ったのですが、そのメールの送信元は意外な人物でした。
高校時代に様々なマジックを披露してくれた堀川君でした。

懐かしいなと思いつつ文章を読みます。

中川君、久しぶり。

 覚えていますか?高校時代一緒にマジックの練習をした堀川です。
 突然メールしちゃってすみません。

こんな始まりでした。
確かに久しぶりだったので驚いたのも確かですが、それよりもちょっとだけこのメールに警戒心を持っていました。
この手のメールは友達がマルチ商法にハマって道連れを探す時に「久しぶりに会いませんか?」なんて持ち掛けてくる時に使われる印象だったからです。
でも読み進むとそうでは無い事が分かります。


この前ホビー21で君を見かけたんだよね。声をかけようかと思ったんだけど、確証がなかったから止めました。ただ、もしあの時見たのが中川だとしたら、今でもマジックを楽しんでくれているみたいで嬉しいなと思います。
僕も今でもマジックをやっているんです。ちょっとプロみたいな感じで大勢の人の前でマジックを披露してお金をもらい始めています。
体力が結構いるので大変ですけど、でも日々楽しんでやっています。

なるほど。僕がホビー21のマジックコーナーにいた事を見られていたんですね。
多分僕はマジックではなく着ぐるみに興味があってそっちにしか目が向いていないとは言えません。
それにしても彼もホビー21のマジックコーナーに来たんですね。
まぁ確かにあの規模のマジックショップは都内にも他に無いでしょうから、彼ほどの技術のある人でも見に来るんですね。

そして最後にちょっとだけ気になる事が書かれています。

 そう言えば、中川君て着ぐるみに興味あったりするの?
 ずいぶん熱心に写真撮ったりしてるみたいだったけど、もしかしてファンとか?

マジックだけではなく、僕が着ぐるみを追っかけていたことも見られていたみたいです。
その事にとても恥ずかしい気がしました。
大学生にもなって着ぐるみを追いかけてるんですから。

でもまぁ事実なので、仕方ない。流石に自分の着ぐるみフェチを明かすのは危険すぎるのですが、可愛いから時々見に行く、と書くぐらいはいいかと思い、そのように返信しておきました。

その日以来、メールによる堀川君との文通が時々ありました。
彼は決まって僕がホビー21にいる時の様子をメールしてくるんですよね。
毎回見かけたら声をかけてくれればいいのに、彼は声はかけないんです。
何度かその事も問い詰めたりしたんですが、なんとなく誤魔化されてしまいました。
また、彼がメールで言っていたマジックを人前で披露しているという話も気になって、久しぶりに見たいからどこでやってるか教えてくれ、とお願いしたのですが、それも答えははぐらかされていました。

何で肝心なことは教えてくれないのに彼は僕の事をそんなにも観察しているのか、謎でしたが、その時は深く考える事はありませんでした。


[戻る] [次へ]