秘密のインタビュー(2話) [戻る]
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 来杉の紹介により、ソファーの中から2人の着ぐるみが登場した。
 2人はそれぞれリンゴ、ミカンと言う着ぐるみのようである。

「どうせ紹介するならインパクトがある方がいいと思って、この状態でスタンバイして貰っていました。」
「スタンバイって・・・椅子の中でしょ?」
「ですね。インタビューの始まる20分ぐらい前からずっと入っててもらったんです。なのでもう30分以上入ってたって事ですね。背もたれに上半身、肘掛けに手、それにシート部分には女の子座りの状態で入ってて貰いました。この椅子は今日のインタビュー用に特注したんですよ?」
「僕のため?」

 2人ともウンウン頷く

「ソファーの中をくりぬいてます。スポンジとか綿を取り除いて人が入れるように。ただ、それでも背もたれは厚みが無いから、背中の蓋を閉じると結構顔も身体もむぎゅっと押される見たいですね。それと、シートのお尻の部分のスポンジはちょっと堅めになってて、座ると中の着ぐるみの下腹部あたりに圧力がかかるようになってます。背もたれに寄りかかって座ると胸と下腹部が圧迫されて、中の着ぐるみはそれなりに楽しいことになってたと思いますよ。」
「え・・そ・・そんな・・」

 笑顔を崩さな2人も。

「椅子の上でちょっと座り直したりすると、肘掛けの裏の手がピクピク反応したり、顔が背中の裏で少し動いたりしてなかなか楽しめましたよ(笑)気づきませんでした?」
「ま・・まったく・・」
「じゃあ、リンゴは相当頑張ったって事ですね。」

 来杉の言葉に深々と頷くリンゴ。
 自分の座っていた椅子にこの娘がずっと入っていたなんて全く気づいていなかった奈賀我。
 その事実を知り、少し下半身が熱くなるのを感じた。

「こ・・この椅子って、中に入ったら、外から開けないと出てこれないとかですか?」
「ははは。そう言うの期待します?でもそれは無いです。うちは着ぐるみの安全は最優先なので、もし何か問題があったらいつでも出られるように、中から蓋のロックをはずすピンがあります。電子的な物じゃないのでトラブルもまずありませんしね。」
「あー、そうなんですか。」
「つまり、2人は自分で中にとどまる選択をしてたんですね(笑)」

 2人は恥ずかしそうに手で顔を覆って頷く。

「ではさっそくですが、まずはスタイルが分かりやすいのでミカンを使って解説しましょう。」

 ミカンは可愛らしくちょこんと一歩前に出る。

「じゃあさっそく説明です。まずミカンの身長ってどのぐらいだと思います?」
「え?あ、うーん、155センチぐらいかな。ブーツのヒールが5センチぐらいありそうだし。」
「おぉ。いいセン行ってますね。153が正解です。」
「ほほー。小柄で可愛らしいですねー。」
「じゃあ次に、私の身長は何センチぐらいあると思います?」
「え?来杉さんのですか?私とあんまり変わらない感じなので、172センチぐらい?」
「いいですねー。私は173なんですよ。」
「なるほどー。私と一緒だ。」
「じゃあ、問題です。私の入っている着ぐるみキャラクターの身長って何センチぐらいだと思います?」
「え?来杉さんの??うーーん、まぁ常識的に言うなら175以上ですよねぇ。」
「そうですね。普通に考えるとそのぐらいは最低必要ですよね。」
「ええ。頭のサイズは普通の人間より大きいでしょうから。」
「でも、うちのショップの着ぐるみって、みんな身長は170センチ未満なんですよ。」
「え!?な・・なんで??」
「実は私の入っている着ぐるみと、このミカンの身長は同じなんです。」
「えーと、、、意味が分からないんですが。173がどうして153に??」
「それが、先ほど説明を後回しにした体型補正の秘密です。」
「体型って・・身長も??でも身長なんて気軽に変更できる物では無いんじゃないですか?」
「ふっふっふ。最新の科学を知りませんね?」
「はぁ。。私は理系は苦手でして。。」
「もう1年以上前になりますが、サイエンティストって雑誌に発表された論文を知りませんか?」
「全く。。。」
「そこに画期的な論文が出てたんです。ある波長の電磁波を組み合わせて放射すると、その放射の強さによって生物の細胞が伸縮すると。」
「伸縮?」
「そうです。つまり縮んだり伸びたりです。」
「それを使って身体を縮めているって事ですか?」
「そう言うことになります。」
「それってなんか怖いなぁ。元に戻らなくなったりしないんですか?あと、変な病気になったり。」
「それについては色々な実験で問題ないと証明されていますので大丈夫です。電磁波の放射をやめると元に戻りますしね。」
「そんなことが出来るんですか。へーーっ。」
「ただ、きめ細かく放射制御をしないといけないので、全身を覆うようなこういうスーツじゃないと人間の身体を縮めるのは難しいんですよ。だから一般的には実用化されていない。と言うより実用出来ないんですね。」
「なるほどー。そうなんですか。」
「でも、着ぐるみの場合は元々全身を覆いますし、スーツには元々センサー類を埋め込むために特別な素材を使ってますから、そう言う放射が出来る装置も埋め込めるんです。でも、問題もありますね。」
「問題ですか?」
「ええ。身体が縮むとセンサー密度が増しますから、非常に感じやすくなるんです。ただでさえ気持ち良くなる仕組みに、この体型補正効果も加わるので小柄になればなるほど中の人は感じやすい事になります。」
「な・・・なるほど・・・やっぱり中は凄そうですね。。」
「ええ。そりゃもう凄いです(笑)。ベテランでも4~5時間操演すると、ホントにヘトヘトになってしまうもんですから。」
「あれ?でも来杉さんは今日も仕事の後なんですよね?」
「ええ。でも今日はこのインタビューがあるから2時間で上がってます。5時間勤務後だと多分全く元気が無いですから(笑)」
「なるほどー」
「ちなみに、リンゴとミカンは勤務の後そのままこっちに来て貰ってますから、もう4時間は経過してるはずです。」
「おーー」
「そろそろかなり苦しくなってきてるんじゃないですかねー」

 来杉の言葉に、リンゴもミカンも恥ずかしそうに頷く。

「では説明を続けますね。」
「ええ。」
「今日はミカンにもリンゴにも、説明に協力して貰うために私が指定した衣装にして貰ったんですよ。」
「ほほぅ。と言うことは店内で着ている衣装とは異なると言うことですか?」
「いやいや、そう言う意味ではないです。あくまでも店内で着る物の中からチョイスしてます。と言っても、リンゴやミカンにとっては初めて着る衣装でしょうね。これらの衣装は、コスチューム指定の時間帯に着る物なのですが、彼女たちが着るのは初めてなんです。」
「この2人はコスチューム指定の時間帯には出たことがなかったんですか?」
「ええ。そのはずです」

 リンゴもミカンもウンウンと頷く。

「でも、おかしいなぁ。店内では良くコスチューム指定の時間がありますよね。と言うか、フリーの衣装の時間の方が少ないんじゃないですか?今日だって12時ぐらいからは1時間おきに17時まではコスチューム指定でしたよね。」
「ええ。確かに、一日の7割ぐらいの時間帯は、何らかのテーマに沿ったコスチューム指定ですね。」
「じゃあ、1度ぐらいはこういう衣装の時もあるんじゃないですか?」
「確かに、3~4日毎の仕事でも、1ヶ月のうちに最低1~2度は同じテーマのコスチュームを着る機会はありますね。」
「ですよねぇ。なのに初めてってのはちょっと不思議ですね。」
「でも初めてなんですよ。何故なら」
「何故なら?」
「実は、彼女たちはまだ店に出るようになって3日目。デビュー自体は先週なんです。」
「あ、まだ新人て事ですか?」
「ですです。」

 来杉に同調するように頷く2人。

「まだ新人ですから、色々初めて経験することだらけでしょうけど、その中でも今日のこのインタビューはかなり大変だと思います。」
「え?な・・何故?」
「いや、まぁまずは2人の衣装がそれぞれ着ているとかなり大変な衣装だと言う事と、こういうインタビューで紹介されるのは色々大変だと言うのがありますね。」
「衣装?インタビュー??」
「ははは。まぁ中の人間の気持ちを想像してあげて下さい。こういう衣装を着て、何処がどうなってるとか、どういう刺激があるとか説明される訳ですから。そんな説明を受けながら可愛い子を演じるってベテランでも結構興奮するんですよ。新人にとっては地獄かも知れませんね(笑)。」
「な・・なるほど・・って笑って言う話じゃないような・・」
「いやいや、一応この仕事は強制ではなく、付き合って貰えるならインタビューに協力してくれってお願いしただけなので、嫌ならいつでもこの部屋から出て行って構わないんですから。なのに、彼女たちは既に、30分椅子の中で過ごし、ここでこうして我々の話を聞いているんですから、中は相当楽しいはずですよ(笑)。」
「は・・はははは・・」
「ミカンの場合、着ている衣装はかなりボディーコンシャスですよね。」
「ええ。確かに。」
「こういう身体にまとわりつくような衣装ってのは体感的にはかなりフィット感があるので相当気持ちいいんです。例えば自分の息子が大きくなった時のサイズよりちょっと小さめに、この服と同じ素材の布で袋を作って被せてあげる事を想像してみて下さい。なんか切なそうでしょ?」
「あ・・ははは・・」
「着ているだけでそう言う感触が続くので、凄く焦れったくて、まとわりついた布を引き剥がしたい衝動に駆られるんですよ。でももちろん可愛い着ぐるみが自分の衣装を人前で引き剥がすなんて出来ませんから、着続けるしか無いわけですけどね。」
「なるほど・・・・」
「その上で、動くと衣装にシワが寄りますよね。」
「まぁ・・布ですからねぇ。」
「これがそのまま中の人をくすぐるんですね。お腹とか、胸の辺りとか、それからこの股間の辺りとか。」
「なるほど・・・このシワの感触ってのは、そのまま中の人に伝えられるのです?」
「ええ。そのまま伝わります。なので胸とかお腹とかは歩く度にムズムズしますよね。あと股間の辺りとか。」
「あー、なるほど(汗)歩くだけでも気持ちよくなってくるんですね(汗)」
「シワだけじゃなくて、衣装のフィット感の変化も伝わりますから、布が引っ張られて伸びたらその場所のフィット感は高くなって、中の人の締め付けも増しますし、緩めば楽になる。だいたい、何処かが伸びれば何処かが縮むので体中のあちこちがマッサージされてる感じです。」
「マッサージですか・・それなら普通に気持ちいいのでは?」
「普通のマッサージならそうでしょうね?」
「普通では無いと?」
「ですね。かなりソフトなのでフェザータッチというか、かなり嫌らしい感触として伝わってきますね。意地悪な触り方とでも言いますかね。」
「はは・・とことん気持ちよくなるように作られているわけですね・・」
「気持ちいいのはそれだけじゃないですしね。今言った話は、シワや布のフィット感に変化が起きた場所の真裏に伝わる感触ですが、それ以外にも、同時に息子を包んでいるパットにも同じような感触が伝わりますので。と言うか実はこっちの方が辛いんですけどね(笑)」

 ミカンは腕組みして深々と頷く。

「あー、こうして腕組みしてると胸が押し上げられて、これもまた中の人の息子を締め付けるんですよね。」
「そ・・そんなに辛いんですか・・だったら無理に腕組みしなくても・・」
「そこはほら。見た目が自然である事が大事なんです。だから中に入っている人は、自分が苦しくなる事が分かっていても、キャラクターがそのポーズに似合うと思えば、歯を食いしばって快感を受け入れるわけです(笑)」
「笑いながら説明できるところが凄いです(汗)」
「いやー。でも実際そう言う”当たり前”の仕草で結構感じちゃうことは多くて、それに耐えることもまた仕事の醍醐味ですから(笑)」
「はぁ・・ホントに好きじゃなきゃ出来ませんねぇ。。」
「ですねー。好きじゃなきゃ出来ません。ただ、中の人に選ばれている時点で好きって事なんですけどね。」
「なるほど。その辺も含めた人選な訳ですね。」
「ですです。」

 こうしている間もミカンは自然体その物。とても中にいる人物が快感のまっただ中にいるとは思えなかった。

「ちなみに、ミカンはこのボディーコンシャスなスーツの下に、同じ素材のレオタードも着てるんですよ。」
「ほうほう。」
「なので、表には見えていないシワが、このスーツの下に出来ている可能性があり、そうなるともう、実際に着ている中の人にだけしか分からない状態で気持ちよくなってしまうんです。」
「なるほど・・」
「周りに見えないところで感じるのは実に苦しいんですね。一部スタッフや役者達なら、見た目に分かるシワやら布のフィットしたところで、あー感じてるなって分かるんです。だから、そこで多少気を遣ってあげたりも出来るんですね。」
「気を遣う・・ですか?」
「長時間中にいると、ベテランであってもかなり地獄ですからね。そうなると、キャラクター達のじゃれ合いもお互い遠慮したり、感じにくく触ってあげたりと、工夫が出来るんです。」
「なるほど。」
「でも、こうして裏側に隠れてる状態だと、想像しか出来ないですから、思わぬ所で実は凄く気持ちよくなってしまってた、なーんて事もあるんですね。さっきの腕組みの時も、見た目にはシワはあんまり出来てなかったですけど、裏のレオタードがどうなっていたかは実際に着ているミカンの中の人にしか分からないわけですから。」
「ははぁ・・・」
「それと、さらに今回のミカンが苦しい点があるんです。」
「まだあるんですか?」
「ええ。ミカンは足に何を穿いてますか?分かります?」
「え・・ああ、オレンジ色のタイツ。あとブーツですか?」
「ええ。ほぼ正解です。」
「ほぼ?」
「実はそのタイツの下にはアンダーウェアとしてTバックの下着を身に着けています。な、ミカン?」

 ミカンは来杉の問いかけに頷く。

「Tバックですか?」
「ええ。一番下にTバックです。」
「それがまた感じやすいと?」
「ふふふ。想像できませんか?」
「あー、いや、あまりにも色んな事で感じるってのが分かって、さっぱり想像出来ないです(汗)」
「Tバックって結構お尻に食い込むんですよね。」
「え・・ええ・・多分そうでしょうね・・あっ、つまり食い込むから気持ちいい・・・と?」
「うーん、半分正解。」
「半分?」
「食い込むから気持ちいいんです。気持ちいいから食い込みを微調整して感じにくくしたいって考えるわけです。長時間演じるために。」
「ああ。それは確かに考えそうなことですね。」
「ですから、食い込みを直すにはお尻に指でも突っ込んでパンツを引っかけて微調整する必要がある。」
「ですね。確かに。」
「でも、その上からタイツを履いて、さらにレオタードを穿くとどうなるか分かります?」
「レオタードの上からだと下着に指が引っかかりにくい??」
「いいですね。近いです。正確には、タイツが邪魔してレオタードがお尻に食い込まないわけです。」
「あー、なるほど。タイツの引っ張る力があるからお尻に食い込みきらないんだ?」
「ですです。すると、一足先に食い込んでしまっているTバックには指が全く届かない。」
「あ、、、なるほど」
「ですから、役者さんはずーーーーーっとムズムズしたお尻の快感に悩まされ続けるわけです。」
「自分で着ているのに手が出せない・・と」
「いいこと言いますね。その通り。その切なさが分かって貰えると、彼女の着ている衣装がどれだけ嫌らしい物なのかが分かると思います。」
「そうかー・・・ずーーっとムズムズが続くのか・・・」

 ミカンはウンウンと当たり前のように頷く。

「それから、手のグローブと足のブーツ、それとスーツのハイネック。これもかなり気持ちいい。」
「あははは・・」
「手、足、首のそれぞれフィットした物のシワやフィット感も全て伝わりますからね。」
「そんな所まで・・・」
「ええ。例えば首で行くと、首にまとわりつく布は、そのまま首にフィットして独特のこそばゆさに変わるんですね。着ていて、ムズムズする感じです。シワなんかも伝わりますから、こういう薄い素材がフィットしてもキツイし、あとはスカーフとかもヤバイですね。ハイネックのセーターはシワこそあんまり無いですが、柔らかいフィット感は実にくすぐったくて、演じている最中に何度も脱ぎたくなる程ですよ。」
「ミカンちゃんのスーツのハイネックもかなりピッタリ首にフィットしてますよね。」
「ええ。少しですが首よりサイズ小さいので、フィット感はなかなかの物だと思いますよ。」

 ミカンはウンウンと頷く。頷くたびにフィットしたハイネックにシワが出来る。

「そしてその感触はもちろん中の人の大事な物にも伝わります。振り向いたり、頷いたり、首をかしげたり、可愛い動きにはだいたい首の動きが伴いますから、演じる側は必死ですね。それから、さっきちょっと言いましたけど手と足も同様に感覚があるので、フィットするグローブやブーツは身に着けているだけで大変です。ブーツであれば足首のシワなんかはかなり気持ちよくなりますし、しゃがむとふくらはぎの辺りがギュッと圧迫されてそのまま大事な物の締め付けに変化してくれますし、グローブの場合も手首のシワはかなり大変です。手は特に良く動かす場所ですからね。子供に手を振ったり握手したりするだけで、涙が出る程気持ちいいんですよ(笑)」
「グローブやブーツにも反応するとなるとホントに大変ですね。。。」
「もちろん今のは例です。長袖の服の袖でも感じるし、彼女が穿いてるようなタイツもしっかりフィット感やシワはツ伝わって来ますよ。」
「何というか・・動けなくなりますね・・感じすぎて・・」
「ははは。まさに初めて着ぐるみに入るとそんな感じです。何をしても感じるので、何も出来ないんです。でも何もしなくても結局感じちゃうんですけどね。」
「え?何もして無くても?」
「呼吸は止められませんし、じっとしてても人間は、僅かですが動きますから。呼吸に合わせてゆっくりお腹が動けば衣類のフィット感は変化しますし、僅かでも動けばその感触も伝わります。僅かな動きで産み出される快感は、かなり焦れったい物なので、最後には耐えられなくなって動いちゃうと思いますしね。」
「なるほど・・・・」
「ちょっと面白い実験をしてみましょう。」
「実験?」
「ええ。ミカンの前にしゃがんで貰えますか?」
「え・・ああ、こうですか?」


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