お嬢様物語:核心(4話) [戻る]
[前へ] [次へ]


 着太郎はどうにか外の世界に戻ってくることが出来た。

 もの凄い脱力感に襲われながらも、初めて体験したその特殊な着ぐるみに満足し、今後も中に入れる事になった事を内心で喜んでいた。
 だだ、何故そう言う展開になったのか。そもそも何で着太郎用に着ぐるみが用意されていたのか、それがさっぱり分からなかったのも事実である。

 不思議に思っていると、ふと気づいたことがあった。
 先程までマユだった着ぐるみが、既に真っ白なスーツ姿になり、今まさに背中のファスナーを開けようとしていたのである。

 息をのんで見守る着太郎。

 チーーーッ

 ファスナーが開き、小柄な男性の後ろ姿が現れる。

 しばらく沈黙しつつ見守る着太郎。

 やがて男性が振り返る。

「えっ・・・・・・か・・かじポンさん・・・」
『かじポンさん??』

 着太郎の言葉にマオは不思議そうな反応をする。

「あぁ、いやいや。私のハンドル名ですよ。」

 梶原はネット上ではかじポンと名乗っていたのだ。マオはそれを聞き頷くように納得した。

「何で、かじポンさんがこの中に・・?」

 着太郎は見てはいけない物を見てしまったかのように、恐る恐る梶原に尋ねる。

「ははは・・いや、話せば長くなる話なんだけどね。色々あって、この着ぐるみを着てるんだ。」

 着替えながら着太郎と会話を続ける梶原。その間も体格は徐々に本来の梶原へと戻っていく。

「色々?」
「まぁ簡単に言うと、ある企業の研究目的のテストに僕らが借り出されてるんだ。」
「研究目的の着ぐるみ?」
「そうそう。知り合いの着ぐるみ仲間がいて、その彼が勤める会社が作る予定のホビーショップでマスコットとして活躍してもらう為の着ぐるみのテストだよ。」
「かじポンさんの着ぐるみ仲間?っとすると僕もオフとかで会った事ある人?」
「いやいや。彼は殆ど知られてない人だから。元々うちのサイトの小説コーナーを見て共感してメールくれた人で、普通のブツは全く持ってないんだ。どっちかって言うとラバリスト?」
「あ、なるほど。それでこの着ぐるみなんですね。」
「そうそう。で、彼は会社の企画で可愛い着ぐるみを用意すると言う提案をしたら通っちゃって、もともとゴム好きだからこんな構造の着ぐるみを作っちゃった。でもテストする人がなかなかいなくて、私の嗜好を知ってたのでこちらにテストを依頼して来たんだ。」
「なるほど。」
「テスト中で極秘の着ぐるみだから大っぴらには出来ないんだけどね。」
「だけど・・大っぴらに出来ないのに何で僕の所に??」
「着太郎さんが興味有りそうだったからね。どうせテストするなら興味有りそうな人を巻き込んだ方がいいし。着太郎さんにもちょっと楽しんで貰えればいいかなと思ってさ。」
「確かに興味あったけど・・まさかかじポンさんがこの中に入っているなんて・・それに興味があるって言うだけなら僕以外にもいるでしょ」
「着太郎さん以外?例えば?」
「え?ネット上にだってそう言う趣味を前面に出したサイトもあるし、何より既に接触を持っているはずの浅川さんて言う人なんか、凄く興味有りそうだったじゃないですか。」
「あ、あーー。浅川さんね。うんうん。確かに浅川さんは興味津々て感じだったよ。ね。マオちゃん。」

 しらじらしくマオに同意を求める梶原。

『そ・・そうね。凄く興味会ったみたい。』

 しどろもどろになりながらも答えるマオ。

「だったら、僕以外にもテストに加われる可能性がある人はいるわけじゃないですか。なのに何で僕なんです?」
「んーー。まぁ元々浅川さんより前から、着太郎さんには声をかけようと思っていたんだよ。だけど、浅川さんの場合、単純に偶然先に知り合っちゃったって事なんだよね。」
「そ・・そうなんですか。でも、それだったら何で僕だけじゃなくて浅川さんも参加させてあげないんです?」
「え・・えーと、その点についてはね。浅川さんに言わなかったわけじゃないんですよ。ねえ。マオちゃん。」

『え。ええ。確かに浅川さんにも教えたわ。』

「じゃあ何故浅川さんはテストのことを知らないんです?」
「し・・知らないわけじゃないと思うよ。」
「知ってるのに参加して無いんですか?つまり浅川さん自身が参加を拒んだと?」
「んー、そう言うわけでもなくて、拒んだわけじゃないんだよね。」

 梶原の曖昧な説明にも、着太郎は食い下がり、何故浅川がテストのことを知らないんだと言い寄る。
 もちろん梶原は、浅川がテストのことを知らないとは言ってないし、それどころかテストに参加していないとも言っていない。むしろ、目の前のマオにはその浅川が入っていると喉元まで出かかっていたがぐっと堪えていた。

 着太郎としても、まさか目の前のマオが浅川だとは夢にも思っていなかったので、最初からこのテストと呼ばれる会に浅川がいると考えていない。その為、梶原の曖昧な説明を深読みすることが無かったのである。

「まぁ、じゃあ、取り敢えず浅川さんはこのテストのことを知っているって事ですね。」
「そうそう。よく知ってるはずだよ。」
「それで、この場に参加しないって事ならまぁ仕方ない。」

 着太郎は勝手に浅川を不参加にして納得してしまう。冷静に想像力を働かせれば、既に浅川も着ぐるみに入っていると言う事も思いつきそうな物なのだが、あまりの衝撃的展開に気が動転していたのも手伝い、全く浅川が着ぐるみに入っていると言う発想にはならなかった。

「それと、この前のオフの時、なんにも言って無かったじゃないですか。」
「言ったら面白くないじゃん。着ぐるみの醍醐味の一つは、中が誰だか、どんな状況だか分からないから想像して楽しむって言うのがあるわけだし。」
「まぁそりゃそうですけど。」
「でしょ?だから中身は隠して隠して、徐々に真実を伝えて楽しんで貰っていたわけ。もちろん接触を持った相手は最後には僕ら同様に中に入って貰う前提だから、その前に色々想像して貰って、外側からも楽しんで貰ってたわけ。」
「そんなぁ・・そりゃ確かに楽しかった部分もあったけど、見せられてヒミツってのが続くと凄く辛いですし。」
「でも、そのおかげで今日は楽しかったでしょ?念願の場所を体験出来たわけだし。」
「・・・」

 着太郎は、さっきのマミの体験を思い出し顔が真っ赤になる。

「そんなに照れなくてもいいよ。これからは嫌でもマミとしてテストに付き合って貰うんだから。ね。」

 梶原は、そう言ってマナとマオに同意を求める。
 マナもマオも可愛く頷いている。

「僕なんかで勤まるのかなぁ・・さっきも我慢出来なかったし」
「それは大丈夫。最初は立ってられない事も十分考えられるから。1ヶ月ぐらい練習すればそこそこ着こなせるようになるよ。ただし・・」
「ただし?」
「但し、着こなせると言っても、楽になるわけじゃなくて、苦しい状態を長時間保てるようになるって言うだけなんだけどね。」
「はぁ」
「今だって彼女たちの中は、ずっと凄い状態だから。こうして可愛らしくじっとしてるだけでも焦らされるような快感と戦いながら、最小限の空気を吸って演技を続けているわけなんだし。その辺は実際に体験しているから想像付くでしょ?」
「そ・・そんな事言わないで下さいよぉ。。また興奮しちゃうじゃないですか・・・」
「はは。大丈夫大丈夫。それならまた彼女たちが処理してくれるから。ね。」

 再び梶原が2人に同意を求める。

『はーい。わかりましたー』
『ええ。分かったわ。』

 マナもマオも凄くしっかりと返事をする。

「い・・いや、処理は自分で出来ますし・・・」

 照れまくる着太郎。

「それとも、今度は着太郎さんもマミの中に入った状態で責められてみる?感度が高いし拘束されている状態だから凄く苦しいと思うけど。」
「もぉぉ。かじポンさん!勘弁して下さいよぉ。」
「ははは。まぁそれは冗談だけど、実際それだけ大変な場所でテストすることになるから、頑張ってよね。それと、今度テストサンプルをもうちょっと増やすことになりそうなんだよね。だから、また新たに人員を確保する必要が出て来ちゃって、誰か新しいターゲットを決めようかと思っているんだよ。」
「え?ターゲット??」

 梶原の言葉に反応する着太郎

「そうそう。今回の着太郎さんや前回のマオちゃんのように、まずは接触を持って色々想像して貰って、徐々に中身の状態を明かして、興奮を頂点まで煽った後で着てもらうって言うスタイルを取る予定。」
「でもそのターゲットって?」
「次は、ミツルさんで行こうかと思ってるんだ。」
「え!ミツルさん?あの人は確か私のサイトを見て自前でサイトを作り、わざと脱着しづらい着ぐるみも自作しちゃった凄腕の人ですよね?」
「そうそう。先日ベントの打ち上げで話をする機会があって、なかなかこちら側の趣味を理解してくれそうだったので次のターゲットかなと思ってさ。名付けてプロジェクトMだね。」

「プロジェクトM?」
『プロジェクトM?』
『プロジェクトM?』

 着太郎の声にねマナとマオも声を合わせて聞き返す。

「まぁネーミングはどうでもいいんだけど、ミツルさん取り込みプロジェクトって意味。」
「あ・・あの・・」
「なに?着太郎さん。」
「そんなことより、彼女たち2人なんですが・・」
「マナちゃんとマオちゃんがどうかした?」
「彼女達はずっと着ぐるみのまんまなんですか?」
「あー、そう言えばそうだね。もう5時間ぐらい着続けているから相当辛いはずだし、今日は2重に着ぐるみしたり振動装置で苦しんだから、そろそろホントは辛いかもしれないね。」

『私は平気だけど、中の人が辛い辛いって言ってますー』
『ほんとね。私はこのままでも平気だけど、裏側では我慢が限界に近いようね。』

 梶原の他人事のような言葉に、自分の状況をアピールする2人。

「でもまぁ僕らはもう既に着てないから辛くないしなぁ。」
『そ・・そんなぁ・・って中の人が言ってるよー』

 マナが食い下がる。

「じゃあこうしましょう。2人でゲームをして勝った方が外に出られる。どうかな?」

『ゲーム??』
『どんな内容かしら?』

「複雑なゲームじゃないよ。この赤いハンカチを身につけて、互いにそれを取り合う。取られた方が負け。」

『ハンカチ・・を?』

 不思議そうにマオが言う。

「そう。簡単だろ?簡単に取られないようにするには、服の裏側とかに隠せばいいんだ。やる?やめておく?やめておくならまだしばらく2人にはお人形さんでいて貰うけど。」

 梶原は楽しそうに提案する。

『ハンカチ取るだけでいいのよねー。それなら私、やるー。』

 マナはあっけらかんと提案に乗ってきた。

『いいわ。マナちゃんがやるなら私も受けて立ちましょう。』

 マオも提案に乗る。

 もちろん、2人ともこの提案の意味を理解している。理解しているが今は2人ともマナでありマオであるからその裏に隠れた真実を無視して、提案に乗ったのである。
 提案に乗ってはいるが、この蟻地獄のようなルールに、内心、田端も浅川も既に興奮状態であった。

「じゃあはい。2人とも、向こうの部屋でハンカチを身につけてきてね。」

 梶原はそう言って赤いハンカチを2人に手渡す。
 2人はハンカチを受け取ると部屋の奥へと消えていった。

「あ・・あの・・かじポンさん。ゲームってどういう事?」
「へへ。分かってるくせにぃ。彼女たちは早く着ぐるみを脱ぎたいから、当然ゲームに勝とうとする。」
「ええ。それは分かるけど。。」
「勝とうとするなら、ハンカチは服の奥底に隠すよね。少なくとも簡単に取られない場所に。」
「なるほど。」
「で、彼女たちは相手の服の裏側に隠れたハンカチを取り合う。かなり激しく」
「な・・・なるほど・・」

 着太郎は意味を理解し、彼女たちの裏側を想像し興奮を覚える。
 しばらくして戻ってきた彼女たちは、予想通り先程までの制服姿のままである。
 つまり、服の裏側の何処かに隠していると言うことである。

『準備はいいわよ。』
『私もオッケーよー』

「じゃあ早速ゲーム開始だね。」

 梶原の一言に頷く2人。

「スタート!」

 そしていよいよゲームがスタートする。

[次回いよいよ最終回]


[前へ] [戻る] [次へ]