お嬢様物語:シンクロ(4話) [戻る]
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『いいんですよ?脱ぎたかったら脱いでも。』

 マユはフローラの中にいるマオに言う。

『ほ・・ほんとに?それじゃあ遠慮無く脱ごうかしら。』

 マオはその言葉を聞きフローラを脱ごうとする。

『だーめ。マオお嬢様はまだフローラのままなの!』

 すると突然マオに脱ぐなと言い出すマナ。

『え?マナちゃん。なんで??』

 不思議に思ったマユが、マナに聞いてみる。

『だって・・マオお嬢様ばっかりずるいんだもん。こんな気持ちよさそうな着ぐるみにずっと入ってるなんてずるいもん。』
『ずるいならさっさと脱いで貰うほうがいいんじゃないの?』
『だめ。。もっと中にいて苦しんで貰わないと嫌だもん。』
『ははーん。つまりマナちゃんは、マオお嬢様が入っている着ぐるみに入りたいのに入れなかったからヤキモチ焼いてるのね。』
『・・・うん』
『じゃあ、次回はマナちゃんにも苦労して貰おうかな。』
『ホント?』
『うん。次はもっと凄い仕掛けを考えてるの。みんな一緒に頑張る必要があるの。だから今日はもう許してあげて。』
『分かったわ。じゃあ次まで我慢する。』

 マユが提案する凄い仕掛けと言うのがどんな物なのかは分からないが、マナは納得する。
 そして、この話をフローラの中で聞いていたマオは、その提案に目眩を覚えた。今のフローラの中ですら意識を集中しないとすぐに腰が反応しそうなぐらい気持ちいい上に、今すぐでもここから出たいぐらい苦しいのだ。
 それ以上の物という事を考えただけで、頭がクラクラしてくる。

『じゃあマナちゃん。せっかくだからマオお嬢様をフローラ姫から出してあげて。』
『うん!』

 マユに諭されて、マナはマオの着替えを手伝う。
 だが、マナはフローラを脱がせながら、上手に刺激を加え、マオを翻弄する。マオも意地になって頑張っている為、マユには全く気づかれていないが、2人の攻防はマオがフローラから出てくるまで続いた。

『お嬢様。おかえりなさいませ。』
『え・・ええ。』
『どうしました?』

 マオに挨拶したマユだが、マオの返事が今ひとつなのが気になる。

『どうもしないわ。気にしなくていいのよ。』
『そうですか。では気にしませんね。』

 よく分かっていないマユはマオの言葉に納得したが、マオの裏側にいる浅川は、マナの攻撃に翻弄され、もの凄く切ない時間を過ごしていた。
 フローラを脱いでしまったため、今迄程刺激が強くなくなってしまい、呼吸も楽なため、イク事も出来ずに、ただ悶々としていた。しかも下手に自ら刺激を加えればマナに見つかってしまう。そう思うと我慢するしかなかった。

 一方でマナも、マオが実は必死な事を悟っていた。
 我慢している様子を想像するだけで、マナの中にいる田端も興奮していたが、もちろんその興奮も全てマナが包み隠していた。

『さあ。お嬢様も脱いだ事だし、今日の最後の仕事よ。』
『そうね。』
『うん!』

 マユの言う最後の仕事という言葉に、2人も同調する。
 次の瞬間、マユは、すっかり眠っている着太郎のジャージを脱がせ、股間に取り付けてあるパッドを外す。
 2度果てた事で、中には白い物が入っているので慎重に風呂場に運びきれいに洗う。
 洗った後は、パッドの内側の保護フィルムを剥がし取り、そこだけラップにくるんで捨ててしまう。
 これでパッドが清潔な状態を保てる事になる。

 マユが掃除をしている間に、マナとマオが着太郎の息子を綺麗に拭き、その後持ってきたメジャーで小さい時の着太郎の息子のサイズを測る。
 さらに、身体の各所のサイズを丁寧に測りメモを取り、全ての作業の後、着太郎に服を着せ元通りにする。

 こうして全ての作業を終えた3人は、いよいよ着ぐるみを脱ぎ、汗びっしょりの身体をシャワーで洗って着替え、荷物をまとめて家路につく事になる。

 帰りの車内では、先程梶原の言った「凄い仕掛け」についての話題と、フローラ姫を独り占めした浅川への言葉責めで盛り上がったが、凄い仕掛けについては結局内緒という事になってしまった。

 こうして、プロジェクトKの第2段が終わり、それぞれが日常へと戻っていった。

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 翌週末

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 着太郎から浅川宛にメールがあり、週末に会う事になり、約束の時間に着太郎の家に向かう浅川。

 着太郎の家に着くと、さっそく先日の着ぐるみの事が話題になる。
 以前から浅川に聞かされていたとは言え、実物に余程感動したのか、着太郎の口からは延々と着ぐるみの凄い仕掛けについて語られている。
 だが、やはり、超えられない性別の壁を前に、凄い無力感と、着ぐるみの中にいる人たちに対する羨ましい気持ちもあったと言う。
 特にフローラという着ぐるみの中にずっと入り続けていたマオというキャラクターは、着太郎には相当に羨ましい存在だったようだ。
 あの日は全くそんな様子も見せなかったが、実は相当に嫉妬していたようだ。
 2重に着ぐるみを着ると言うだけでも凄い事なのに、内側の着ぐるみは全身性感帯のような構造と、特殊な空気穴による呼吸システム。そして、つなぎ目のない身体による密閉感を堪能しているのだ。
 これを目の前で見せつけられたら、着太郎のような趣味の人間が羨ましく思うのは当然だろう。

 浅川は、着太郎の話を聞きながら、実はその裏側を体験していたのが自分だと言えない事へのツラさと共に、着太郎に内緒でああいう場所を楽しめた優越感にも浸っていた。

「ねえ。着太郎さん。もし。もしもですよ?もしも自分がそう言う着ぐるみに入れるとしたらどう思います?」

 浅川は、それとなく、もし着太郎自身がああいう着ぐるみに入れるとしたらどう思うか聞いてみた。

「もしもですか・・」

 着太郎は苦笑しながら話を続ける。

「うーん、もしもって言われても、あれだけ華奢でスタイルもいい着ぐるみですから、僕のような体格の男が入れる可能性は無いですよね。仮に入れたとしても、僕の体格じゃあそこまで可愛い姿にはならないですから無様な姿では着ぐるみが可哀想ですよ。」
「まぁ、そうなんですけどねぇ。」

 あくまでも体格的に厳しいと言う着太郎。

「それに、あの身体はゴムでしょ?タイツの身体なら多少伸縮するから体格が違っても中に入る事は出来るかもしれないけど、ああいう素材だと伸縮する量にも限度がありそうだし。きっと肋骨とか肩幅とか骨盤とか、男と全く違う形が前提だと思うから僕には逆立ちしても入れないと思いますよ。」
「確かにあのスタイルは見事ですし、普通に考えると男性が入り込めるスペースがあるとは思えないです。が、万が一、なんらかのトリックがあって、着太郎さんがあの中に入れるとしたらどう思うかな~って気になって。」
「浅川さんも、拘りますね。入れない場所に入れたらって事ですよね。」
「ええ。そう言う事です。」
「だとしたら、そりゃ、僕だって入ってみたいですよ。」
「やっぱりそう思います?」
「浅川さんだってそう思ってたんでしょ?」
「ええ。そりゃもう。」
「同じですよ。僕の前で、あの3人は、全く普通に、声一つ出さずにそれぞれのキャラクターを演じていました。先日は半日以上一緒だったと思うんですが、その間、一度たりともあのゴムの身体から出てこなかった。」
「私の時も似たような感じでした。」
「隠れて見えないですが、あんなに蒸し暑そうなゴムの身体の中ですから、その裏側は相当に蒸し暑い状態が続いていたはずです。顔にも身体にも隙間が見えなかった事を考えると、可愛らしい笑顔の中は、中にいる子達の汗と吐息とでグチョグチョに蒸れて、視界だって曇ったりしているかも知れませんし、臭いだって凄いのかも知れない。それでも、彼女たちはみな素敵な石けんの香りを漂わせてるんですよ。」
「確かにいい香りがしたなぁ。」
「素敵な香りに誤魔化されてしまいそうですが、あの中には僕らの知らない裏側の世界が確実に存在しているんです。彼女たちの言っている事が事実なら、あの身体は全身にセンサーが埋め込まれ、中の人間を長時間興奮状態にするはずです。僕の見た3人は、普通に見ただけでは、とても中の人間が興奮しているとは思えないぐらい普通にしていましたけど、時折見せる態度や、呼吸する時のお腹の動きは、本当に切なそうで苦しそうでした。感じて興奮すれば当然呼吸も荒くなるのに、彼女たちはずっとスカートの中の下着に覆われた場所を通して呼吸していると言うんですからそれは相当に苦しかったに違いないんです。」
「そりゃまぁ苦しいでしょうね。顔から導いたチューブを股間まで通してて、その出口はタイツのような布で覆われて、さらに下着だストッキングだっていろんな布が重なって、そうやって排気した空気すらスカートに籠もっちゃうんですし。」
「あれ?浅川さん、やけに構造に詳しいですね。」
「あははは・・」

 勢い余ってつい構造を説明してしまった浅川に、すかさず突っ込む着太郎。
 浅川は笑って誤魔化す。

「でもチューブの構造まではよく分からないけど、僕も浅川さんの言うような構造を想像していました。多分スカートを捲り上げて深呼吸したい時だってあっただろうに、彼女たちは全くそんな様子を見せなかった。特にマオちゃんて娘は、途中からフローラと言う着ぐるみを着続けていましたからその苦しさは凄かったと思うんですよ。」
「ま・・マオちゃんですか。」
「あー、ほら、前にも言ったけど、浅川さんの時はいなかった着ぐるみです。彼女は凄いですよ。」
「はは・・」
「大人っぽくてスーツとかも似合うんですよね。あのスタイルは罪だよなぁ。いいよなぁ。僕も女だったら、あんなスタイルのいい着ぐるみに入って頑張ってみたいなぁ。でも、やっぱり僕の体格だとあの身体の中には入れないんだよなぁ・・」
「まあ、諦めちゃうのも勿体ない話ですし。もしかするとって希望があれば、また接する時にも楽しそうじゃないですか。」
「浅川さんはポジティブだなぁ。確かに浅川さんの言うとおり、諦めたら終わっちゃうんですよね。」
「そうですよ。それに、私も、彼女たちとコンタクト取れるだけでも嬉しい事だと思っていましたし。」
「ホントにそうですね。僕も噂の着ぐるみが現実に存在していて、しかも噂よりずっと凄い着ぐるみだって事には感動してますし、なにより彼女たちからコンタクトを取ってくれるというのは、何か理由がありそうで、ちょっとそれにも興味あるし。」
「理由・・ですか?」
「ええ。だって、世の中の大半の人には秘密の存在なのに、僕と浅川さんにだけは会ってくれた。ただ、見せつけて自慢するだけなら、もっといろんな人間に会ってもいいはずなのに、2人だけっておかしいと思いませんか?」
「そ・・そうですね・・・」

 着太郎の言葉を聞きながら、着太郎の鋭い分析に、少したじろぐ浅川。

「見せつけられて僕らの反応を楽しんでいるだけなのかも知れないけど、もしかすると何か別の理由もあるのかも知れない。だから、取り敢えず付き合えるところまでは付き合ってみようかなと思ってるんですよ。」
「なるほど。」
「そう言えば浅川さんには最近は連絡無いのですか?」
「え?あ・・・ああ。そうですね。確かに彼女達からの連絡はなくなりましたね。」
「あら、そうなんですか。何でだろうなぁ、今度会うチャンスがあれば、それとなく聞いてみましょうか?」
「い・・いえ・・そこまでしなくてもいいですよ・・」
「何でです?もう飽きちゃったんです?」
「違います違います。ただ、きっと何か事情があるんだろうなと思って。もし必要があればきっとコンタクト取ってくるでしょうし。」

 まさか自分はもう彼女たちではなく、彼女たちの中身から連絡が来るとは言えない浅川は、何とか誤魔化す。
 結局この日は、着太郎の話に付き合って、延々と彼女たちの話で盛り上がり解散となった。

 後日、着太郎はマユに対してメールで、今後も遊びたいという気持ちを伝えたようである。

 そして、次の週末、浅川は、プロジェクトK第3段の打ち合わせの為に梶原のマンションにいた。

 着太郎からの意思確認も済み、いよいよこのプロジェクトも最終段階へと進む。
 今回の作戦では、いよいよ着太郎に、中身が男性であると言う事を理解させ、彼の興奮と羨望を頂点にまで高める。
 少々意地悪な設定ではあるが、羨ましいと思わせてその裏側に嫉妬して貰う事で、実際に中に入れる感動を味わって貰うためにも、絶対必要な事だった。
 そして、散々焦らした後に、梶原達が浅川にやったように、正体を明かし、着太郎を取り込む。
 着太郎用の着ぐるみは前回の作戦の最後で、着太郎のサイズをくまなく計っているので、それを元に既に発注済みである。
 制作に少々時間がかかっているが、来週までには完成する予定である。

 あとは、着太郎と、こちら側の時間を調整し、コンタクトを取るだけとなる。

 プロジェクトKの基本的な作戦は決まったのだが、それ以外にも、浅川達は興味がある話があった。
 前回の作戦の後、マユがマナに言った「凄い仕掛け」についてである。これについても今日、梶原から詳細が聞けるとの事で、2人とも楽しみにしていた。

「それで、例の凄い仕掛けってなんなんです?」

 田端は唐突に梶原に聞く。

「ふふふ。凄いぞーこれは。あんまり凄いから、今週から2週間、みなさん家で練習して貰うつもりなんですよ。」

 梶原は自慢げに大きな段ボール箱を持ち込むと、中から大きなビニールにくるまれた物体を3つ取り出す。

 床に置かれたその物体に浅川と田端は驚く。
 梶原がこの3つの物体の使い方を説明している様子を、生唾を飲みながら聞き入る2人。

 結局この物体を持ち帰り、各自2週間程かけて練習を繰り返す事となる。


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