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「こ・・・こんにちわ」
着太郎は緊張気味に挨拶をした。
マオが着太郎を迎え入れる挨拶をする為に、席を立ち着太郎に向かって言う。
『あら、着太郎さん。いらっしゃい。お待ちしてましたわ。』
マオの手で誘導された着太郎は、久々の着ぐるみ達を見て、改めてこの子達の凄い造形に感動と興奮を覚えていた。
最初にあった時同様のメイドドレスや豪華で真っ白なドレスを着た3人に息を飲みながら誘導されたソファーに腰をかける着太郎。
「まさかまた会えるとは思っても見なかったので、ちょっと感動してますよ。」
3人を改めて見渡しながら着太郎は言った。
『ありがと!私たちも着太郎さんと遊んで欲しかったから呼んだのよ!』
マナが元気よく言う。
「ははは。気に入られたのは嬉しい限りだなぁ。でもこの前みたいに途中でいなくなるような事はさせませんよ?」
『へへへ。やってみなくちゃそんなことわかんないもーん。』
「って事はまた居なくなるって事?」
『それも内緒だもーん。』
マナは着太郎の話をはぐらかす。
『それにしても着太郎さんは私たちに興味津々みたいね?』
マユが横から口を挟む。
「え?!そ・・そりゃそうですよ。こんな凄い着ぐるみが目の前にいたら、誰だって冷静じゃなくなりますよ。」
『もーーっ。私たちは着ぐるみじゃないの!』
「あ、そうか。。でもまぁお人形だとしても、興味あるに決まってますって!」
『そうなんですかー?でもまだ私たちのことを着ぐるみだと思ってますよね?着太郎さんて本当に着ぐるみが好きなんですねー』
「そ・・そりゃまぁ、そうだけど。」
『着ぐるみの何がいいんです?可愛いところとか?』
マユはわざと少し核心をそらしつつ質問してみた。
「い・・いや、この前も言ったじゃないですか。なんて言うかその、、密閉されている感じとか、見た目と中身とのギャップとか・・・」
『ふふふ。じゃあ着太郎さんは私たちみたいなゴムの人形が、実は着ぐるみで、中に人がいたらいいなぁって思っているの?』
「ま、、まぁ。。」
『へー。素直ねー。そっかー。素直な着太郎さんにちょっとだけいいこと教えてあげますよ!』
「え?いい事?」
『うん。いいこと。』
マユの『いいこと』と言う発言に、残りの2人も身を乗り出して聞き入る。
『実は私。ちょっと前に着ぐるみのアルバイトやっていたんですよ。』
「え?マユちゃんが?!」
『そう。私。劇団で可愛いアニメに出てくる女の子のヒロインとかお姫様とかやっていたんです。デパートのステージとかで色々なショーを経験したんですけど、あれはとっても苦しかったなぁ。。』
マユは感慨深げにウンウンと頷きながら昔話をしているが、着太郎は今のマユのほうがよっぽど苦しそうに見えて仕方が無かった。また、着太郎にとってはこの話がマユの話だとは思っていない。嘘かも知れないが、もしそう言うアルバイトの事実があるとすれば、マユの中にいる女性の体験談なのだと思えた。
そしてその延長で今、マユの中にいるのだと。
「苦しいって?」
『炎天下、1時間ぐらいステージに出ずっぱりでフラフラになりながら、苦しくて酸素が欲しくても小さなマスクの中ってあまり空気がないから、本当に苦しいのよ。視界もちょっとしかないし、動きづらいし、あのアルバイトは本当に大変だったわ。』
「なるほど。いいなぁ。女性だとそう言うアルバイトも堂々と出来るだろうし。」
『あら。私の劇団には男性もいたわよ?』
「でもそれは男役だよね。」
『そうねー。殆どの場合はそうかも知れないけど、本人の体格とか人手不足な場合とかには、女の子を男性がやっている事もあるわ?』
もちろん梶原はそんなバイトの経験はないのだが、こういう事に興味がある人間ならだいたいみんなが知っているような事を、いかにも本当に経験したことのように言っていたのだ。
「そうなんだ。。そう言う男性が羨ましいなぁ。」
『でも着太郎さんも沙織ちゃんに変身できるんでしょ?それじゃだめなの?』
「まぁそりゃそうなんだけど、やはりプロの着ぐるみは羨望の的だよ。オフなんかじゃ僕が男性だって言うの、みんな分かっているけど、そう言うショーでは、周りの人は裏側の事実なんて知らないわけだし。」
『なるほどー。確かにそうかもねー。』
「それに、ショーのための着ぐるみって、ちょっと興味もあるし。」
『へー。そう言うのは見たこと無いの?』
「ショーは見たことあるけど、ショー用の着ぐるみに触れる機会はないですから。」
『へへへ。じゃあ着太郎さんにいい物を見せてあげるわ。』
「いいもの?」
『いいもの??』
『いいもの???』
着太郎、マオ、マナが声を揃えて言った。
『これよこれ。』
マユはそう言うと席を立ち、部屋の奥から大きなトランクを引きずって持ってきた。
『なに?これは?』
マナは不思議そうに見ている。マオも言葉は発することはなかったが、不思議そうである。
確かこのトランクは今日、梶原の家を出発する時に車に積んでいた物であり、中身は内緒と言われていたのだ。
ガチャッ・ガチャッ
トランクのロックを外して蓋を開けると、中には肌色の布とアニメ調の顔、そして、カラフルな洋服が現れた。
「え?これは?」
『これは昔、私がアルバイトで入っていた着ぐるみよ!』
自慢げにその物体を取り出すマユ。
『うわぁ、かわいい!』
マナは興味津々でのぞき込む。
その着ぐるみは、非常に可愛らしい笑顔の女の子であるが、とても綺麗でショーなどで使っていたとは思えなかった。
しかも、ショーで利用する物に比べると顔の作りが明らかに小さい事にも気づく。また、よく見ると首の付け根部分には肌色の布が縫いつけられているようである。
タイツは一見するとごく普通の物のようだが、触れてみるとかなり厚手でサポート力が強い物だと分かる。
衣装は豪華絢爛なドレスで、おとぎ話のお姫様が着ていそうなドレスだ。
「こ・・これを着ていたの?」
着太郎はマユに訪ねる。
『ええ。そうよ。』
マユは当然と言わんばかりに答える。
「凄い作りだなぁ。。こんな着ぐるみ、ショーでは見たこと無いよ。」
『そうなの??』
着太郎はこの着ぐるみの不自然な作りがすぐに分かり、マユに質問した。
「だって、顔と面下が繋がっている必要なんて無いはずだし、第一このタイツ、普通よりずっと締め付けがキツそうだし。」
着太郎はかなり的確に不思議な特徴の箇所を指摘する。
『でも、着太郎さんは間近でこういう着ぐるみを見たことがないのよね?何で分かるの?』
確かに着太郎はバイト等の経験はないので観客としてしかショーの着ぐるみの構造は知らない。だが、実際には、こういう趣味を持つ知り合いなどからの情報を得ているので、構造にはかなり詳しいのだ。
「そりゃそうだけど、僕にも色々情報源はあるからね。第一こんなキャラクターが出てくるショーなんて知らないし。」
『ふーん。そうなの?でもいいわ。私はアルバイトしてたし、ここにその着ぐるみはあるんだから。ね。』
「ま、まぁ、確かに実際にそう言うショーがあったかどうかって事よりは、ココにある着ぐるみのほうが気になるけどね。」
『でしょ?』
着太郎としても確かにマユの過去のアルバイト話の真偽より、目の前の不思議な構造の着ぐるみに興味があった。
『マユちゃんはこんなのに入ってたの?』
マナが不思議そうに質問をする。
『ええ。これは凄く苦しかった思い出があるの。タイツも凄く締め付けられるし、面と面下が繋がっているから、首に隙間が無くて凄く蒸れるし息苦しいのよ。その割に、口元のスリットが実は口元にはなくてアゴの辺りにあるから、空気がなかなか吸えなくて大変だったの。』
マユは感慨深げに面を手に取りながら言う。
『そうなんだー。着ぐるみのお仕事って苦しそうねー。こんなに苦しそうなのにお姫様でいなきゃダメって、とっても大変なお仕事なんだねー』
『そうよ。本当に大変だったわ。』
着太郎はマユとマナの会話を聞き入っていた。明らかに今の2人のほうが苦しそうな着ぐるみを着ているのに、何故平気な顔をして(まぁ顔は変わらないのだが)そんな会話が出来るのだろうかと不思議で仕方がなかった。
『ねえ。マユちゃん、中に入ってみて!』
マナが唐突に言う。
『え?私?私はもういいわよ。昔散々やってたんだもん。これは思い出の品として取っておくのよ。』
『なーんだ、つまんないのー。』
『そんなに言うならマナちゃん、中に入ってみる?』
『え?私?嫌よー、苦しそうなんだもん。』
『でも興味あるんでしょ?どう?』
今度はマユがマナに、中に入ってみたらどうかと提案するが、マナは頑なに拒否をする。
すると突然マナが話をそらせる。
『あ、そうだ!だったらマオお嬢様に中に入って貰いましょうよ!』
『え?わ・・私!?』
マオは今までの展開から急に自分に話が振られたことに驚く。
『そう。お嬢様。』
『それ、いいわね!』
マナの言葉に同調するマユ。これでますます追い込まれるマオ。
『そ・・そんなの嫌よ。私だって苦しいのは嫌なんだし』
浅川はマオにその台詞を喋らせながらも、少しだけ興味はあった。だがここは話の流れ上、必死に拒否をする。
『でも、この着ぐるみはお姫様なんだし、お嬢様ぐらい品があるお人形さんが入る方が自然だと思いますよ!』
『そうね。私もマナちゃんの言うとおりだと思いますわ。』
2人の攻撃に防戦一方のマオ。
『で・・でも・・』
間髪入れずに次の一手を打つマナ。
『着太郎さんもマオちゃんが着たら似合うと思うよね!』
急なご氏名にたじろぎながらも、マオが中に入った着ぐるみというのにも興味があった着太郎は、マナに同調する。
「そ・・そうだね。確かにちょっと見てみたいかも。」
『ほら!マオお嬢様!着太郎さんもこう言っているんだし、諦めて中に入って下さいよ!』
『私も、お嬢様はそろそろ諦めて中にはいるべきだと思いますわ。』
3人の攻撃によりついに陥落するマオ。
『わ・・・分かったわよ・・・ちょっとだけよ?ホントにちょっとだけなんだから。』
そう言いながらも浅川の内心はドキドキしてした。
マユや着太郎の説明を聞きながら、実際の着ぐるみを見ると、確かにフィット感は強そうである。
顔で呼吸をしていない浅川は、首周りの密閉感については特に気にはしていなかったのだが、見た目を考えると隙間がない着ぐるみの方が中にいる人間の密閉感を外部から想像できて楽しめる事も事実である。
着太郎の趣味から言って、顔の密閉性が高い女の子の着ぐるみはかなりのツボだとも思っていた。
着太郎を誘惑するという意味では、この着ぐるみはかなりポイントが高いような気もしていた。
この着ぐるみを着て着太郎の反応を楽しめるという意味ではちょっと興味はあるのだが、問題はタイツだ。着太郎の家で以前見せて貰った肌タイツの3倍ぐらいはありそうな厚手の生地と、触っただけですぐに分かる程のパツパツのサポート力は、マユの身体の上から着る浅川にとっては、想像しただけでクラクラする物であった。
『じあ、さっそく着替えましょう。お嬢様。まず向こうの部屋でこれに着替えて下さいね。』
マユはそう言って真っ白いレオタードのような物を手渡す。
『これは?』
『下に着る物ですわ。裸で着るわけではないので、まずはこのレオタードを着てからです。』
『で・・・でも、これは?』
マユはレオタードと一緒にかなりハイレグなアンダーショーツと光沢のあるパンストを手渡していた。
『アンダーショーツとストッキングですわ。ショーツはレオタードが透けないようにするには必要ですし、パンストは足を綺麗にするために必要なんです。』
元々マオの足のスタイルは相当に良いし、ショーツなど穿かなくても身体が透ける程薄い生地のレオタードではない事も分かっていた。にもかかわらず手渡された物に、少し戸惑うマオだが、あまり嫌がるのも不自然だと思い、承諾した。
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