お嬢様物語:フローラ(1話) [戻る]
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 梶原の家から帰宅した浅川。
 疲れからすぐに寝てしまい、起きたら既に昼を回っていた。この日も会社は休んでいた浅川は、ダイエット薬の効き目が切れ、猛烈に空腹感に襲われ、備蓄してあったカップラーメン5つをいっきに平らげてしまう。
 その後は昨日持ち帰った荷物を整理する。
 いくつかの荷物を整理し、床に置かれたマオの身体一式と、そのマオが身に纏っていた真っ赤なスーツ、下着類、ストッキングだ。
 これらを手に取り、昨日の出来事を思い出すと、おもわず疼いてしまう浅川。

 今日はこれから特に用事もなく一日ゆっくりするつもりだったのだが、気づいた時には全裸のマオが居た。

 マオゆっくりと、自らを焦らすように下着を着け、スーツを着込む。
 完全にスーツを着込んだマオは、再びその内側にいる浅川を責めながら、美しく存在する。

 ただ、何をするでもなく、マオが浅川の家で、普通に過ごしているだけである。
 特別嫌らしい事をすることも一切無く、本を読んだりテレビを見たり、のんびりしているマオがいる。

 だが、それでもスーツの生み出す快感は、浅川を容赦なく責めた。
 浅川は、このスーツの意地悪な責めを存分に堪能する。昨日はこんなに感じる状態で、みんなに責められ、みんなを責めていたのだ。それを思い出すだけでも十分に楽しめるのだが、浅川は実際に今もこうしてその責めを楽しんでいる。
 客観的にマオの姿を想像すると、その裏側にいる自分とのギャップには今更ながら興奮してしまうのである。

 時間にして2時間。4回も堪能したあと、マオから解放された浅川は、残ったスーツの片づけをして、一日を終えた。

 翌日。
 仕事に行く前に朝のメールチェックを行うと、着太郎からメールが入っていることに気づく。

 どうやら富士五湖での出来事を報告したいと言う事のようである。
 浅川は週末であれば時間があると返事を書き、その後のメールのやりとりで、週末の昼から着太郎の家で落ち合う事になった。

 そして週末。

 浅川は何度か来たことのある着太郎の家を訪ねる。
 着太郎の家に行くと、早速部屋に上げて貰い、簡単な挨拶を交わす。
 飲み物と茶菓子を用意された後、着太郎はいよいよあの日の出来事を話し始めた。

「いやぁ。浅川さん。メールに書いたけど僕も見ましたよ。あの着ぐるみ達。」
「え。。おーー。それはおめでとうございます。」
「浅川さんの仰るとおり、凄い着ぐるみですね。どんな人が入っているのかは知らないけど、見てるだけで羨ましくなってしまうような凄い構造です。いったい誰があんな着ぐるみを作ったんだろうなぁ。」

 着太郎は興奮を隠しきれないようで、まくし立てるように話を進める。

「それにしても、ホントにあの子達、脱がないんですね。僕が訪ねてから睡眠薬で眠らされるまで、少なくとも6時間はあったはずですから、その間ゴムの中にいて、股間から空気を吸い続けていたなんて、今考えても興奮して来ちゃいますよ。もし僕が女性だったら絶対あんなのに入ってみたいなぁ」
「やっぱり中って女性なんですかね?」

 着太郎の話に、浅川はしらじらしく聞いてみる。

「そりゃあの体型は女性しかあり得ないですよ。股間も全く違和感なくスッキリしてましたし。」
「確かにそうですね。うーん。」
「あら?浅川さんはもしかして、中が男性だと考えてたんですか?確か女性だって言ってたのは浅川さんですよね?」

 確かに以前着太郎に話した時、女性が中身と断言したのは浅川自身だ。だがそれはまだ彼女達の真実を知る前の話だった。

「た・・確かにそうでしたね。まぁそうなんだけど、男だったらなぁという願望というか・・・」
「そりゃ僕だって男だったらそれはそれで嬉しいですよ。僕も入れる可能性があるって事になるし。でも実際にあの姿を見せつけられるとどうしても男は中に入れないと思うんです。骨格が見事に女性でしたし。それに・・」
「それに?」
「もしあの中が男性だったら、僕自身嬉しいけど悔しいですもん。あの日、ずーーっとああいう着ぐるみを着続けていたのが同性だとしたら、そりゃ凄く嫉妬しますし。」
「ですよねぇ。」

 浅川も同意する。実際、最初にマユやマナが男性だと分かった時の衝撃は、ハンパな物ではなかったのだ。

「でも、いいなぁ。あの着ぐるみ。とくにマオって人形が凄かったんですよ。」
「マオ?」
「あ、浅川さんがいなくなって、代わりにマオちゃんが相手してくれるとか言ってたかも。そうだとすると浅川さんはマオちゃんは見てないのかな。でも凄くスタイルいいし、セクシーだし、大人っぽいんですよ。滅茶苦茶僕好みって言うか。その上凄い構造のスーツを着てずーっと平然としてるんですよ。見てる僕が辛かったぐらいなのに。」
「スーツですかぁ。凄い構造ってどういうのだろう」

 とぼけたように聞く浅川。

「いやぁもう。とにかく見てるだけで窮屈で気持ちよくなっちゃいそうなパツパツのスーツなんです。それにスカートに仕掛けがあってショーツのような物が付いているんですよ。」
「ショーツ?」
「ええ。ブラウスのサイズも少し小さくなっていて、着ると両肩に引っ張られて胸が苦しそうな感じになるんです。それにスカートも、中にハイレグカットの真っ黒なショーツが付いてるんです。」
「スカートの中って事はキュロットみたいなのかな?」
「もっと凄いです。なにしろスカートもかなりタイトなので、ウエストのホックが閉まる位置までスカートを持ち上げると、ショーツがしっかり食い込む仕掛けになっているみたいでした。スカートに隠れちゃうけど、スカートを着ている間はずっと食い込んでるって事ですから。」
「で、、でもそれは無理じゃない?」
「何でです?」
「だって彼女たちは股間から息をしているんだ。とすれば、そんなにいろんな布を重ねたら息が出来ないんじゃ・・」
「それは確かにそうなんですが、どうもそのショーツは少しストレッチするんで、繊維の隙間が出来て、呼吸も出来るみたいでした。実際股間からのなま暖かい空気は、布に遮られてるけどかろうじて漏れてきた感じだったので、かなり苦しいとは思うんですけどね。」
「そんなところまで観察していたんですか。」
「そりゃ、凄い着ぐるみですから、観察できるところは全部観察しました。でもだからこそ羨ましいって言うんですかね。なにしろ普通にショーツ履いて、結構サポート力の強いパンストも穿いて、その上からショーツを重ねて、しかもスカートのショーツは生地も結構厚手でしたし。そんな場所をスカートで覆って、その裏側で呼吸してるんですから、そりゃ一度体験してみたいですよ。それに、衣装自体食い込んで気持ちよさそうだったし。」
「確かに、食い込んでたら気持ちいいかも知れませんねー。」

 浅川はそう言いながらも、あの衣装達の締め付けや服の感触は、実は食い込み程度で得られる快感とは全くレベルが違うと思っていた。それに、あのスカートの中の息苦しさは、快感と相まって相当辛いと言うことも思い出していた。

「ですよね。実は今、次の衣装を発注しようかと思っているのですが、その時、そう言う仕掛けを付けてみようかと計画中なんです。自分の肩から股間までの長さを測って、痛くない程度に締め付ける長さを決めるのが大変なんですけどね。」
「そんな衣装作るんですか?」
「ええ。出来あがったら着て見せてあげますよ。かなり気持ちいいはずですし。」
「はは・・・期待してますよ。」

 結局この日は、こうして着太郎の話を浅川が延々と聞いて終わった。
 まだ、マオが自分だと言える段階ではない浅川は、少し着太郎に申し訳なくも思ったが、最終的には着太郎もあの世界を堪能できるはずだし、それまでもうしばらく辛抱して貰うと割り切って考えていた。
 それに、着太郎に対して凄い秘密を持っているという事も少しだけ浅川を嬉しくさせていた。

 帰宅した浅川は、さっそくこの着太郎の反応を梶原達にメールで知らせ、着太郎が興味津々であることを全員が確認し、プロジェクトKの第2弾開始となった。

 プロジェクトKの第2弾は、場所を伊豆の別荘に移して行われる。
 小道具の準備などに手間取ったが、浅川と着太郎が最後に会ってからおよそ3週間後、着太郎宛にマユから1通のメールが送信された。

「着太郎さん、こんにちは! この前は楽しかったわ。今度の週末。伊豆の××高原の別荘に3時に来てね!1人じゃないとダメよ!マユ」

 既に1度会っているので、今度は単刀直入に誘い出す。
 着太郎のスケジュールはチェック済みであり、この日はイベントもオフもない。その為、着太郎は間違いなく来ると思われた。

 決行当日朝、例によってアウディーに荷物を積み込む。今回の目玉は、体験キットと名付けた、自分たちの着ぐるみを仮想的に体験できるキットである。その他、今回は梶原が内緒でスーツケースを一つ持ち込んでいるのが気になった。後で使うとしか教えてくれなかったのだが、どうせまた大変なことになる小道具なんだろうと想像すると、何故か熱い物が込み上げてきた。

 車に乗り込み現地へと向かう車内では、今日すべき事の最終確認を行う。
 今日の予定は、着ぐるみの中で起きている事実を着太郎に知らせることにある。中身の性別だけは伏せるが、実は自分たちが着ぐるみであり、もの凄く感じていることを知って貰い、その姿に興奮して貰う。
 この後、興味を持っている様子なら、先程の体験キットを使って、実際に少しだけだが着ぐるみの世界を体験させる。もちろん本当の着ぐるみに入って貰うのはまだ先なのだが、キットを使えば世界の一部を体験する事が出来るのだ。

 伊豆に向かう途中、熱海で一服するためにファミリーレストランに入る。まだ10時前。昼には早すぎるが朝早起きしている3人は、何かをお腹に入れたかったのだ。
 梶原は、ファミリーレストランに車を入れると、朝の割には意外と車が混雑していて、1カ所だけ駐車場が開いているのを見つける。

「あ、あそこが開いてるな。よし。そこに入れよう。」

 そう言って駐車場に車を入れようとすると、その隣の車が普通でないことに気づく。

「あ、なんかヤバそうだなぁ。ぶつけないようにしないと。。」

 あまり車に詳しくない梶原でも、その独特のオーラが分かるようだ。

 ベントレーコンチネンタルGT

 ロールスロイスと並ぶ超高級車メーカーとして有名なベントレーが作った、高性能2ドアスポーツカーである。
W型と呼ばれる独特のシリンダー配列を持つ6リッター12気筒DOHCツインターボエンジンは、実に560馬力の出力と66.3kgのトルクを生み出し、重量級のボディーをフルタイム4輪駆動でぐいぐいと加速する。高級レザー張りの室内からは想像できない豪快な走りは、高級スポーツカーとはこうあるべきと言う圧倒的存在感と主張が感じられる。

 ベントレーを避けるように駐車場に車を止め、ファミリーレストランで朝食を取りながら、今日の計画を確認する。
 確認と言っても、基本的には前回同様、たっぷりと着太郎の興味を引く為に行動するという事を確認しただけである。浅川が気になった大きなスーツケースについてはやはり実際に使う時まで内緒らしい。

 30分程食事を取り、再び目的地を目指して車を走らせる梶原達3人。

 しばらく走るとようやく目的地に到着し、さっそく荷物を車から降ろして準備にかかる。
 トイレを済ませ、ダイエット薬を飲み込んで、いよいよマオへの変身を開始する。
 床に置かれたマオのスーツと最初に着るドレスを眺め、今日一日、彼女に責められ続ける事を想像し、早くも下半身を熱くする浅川。
 どんなに苦しくても、どんなに気持ちよくても、マオはこの笑顔を崩すことは無く、浅川にこの笑顔に見合った演技を強要する。

 でも、それは浅川には決して苦痛ではなかった。
 むしろ、こんな可愛らしい顔に自分の本当の顔を奪われてしまうこの瞬間が嬉しくて仕方なかった。

 手慣れた手つきでマオに変身し、衣装のドレスも着込み、お嬢様への変身を完了する浅川。
 ほぼ同時期に、マユ、マナの変身も終わり、別荘内は再び美少女達の園になった。

 この状況は練習でも何度か経験し、前回1度だけではあるが本番として着太郎の相手もした浅川だが、やはり何度経験してもドキドキする。
 全員同性なのに全員異性。しかもそれぞれがいろいろな事を我慢して各キャラクターになっているのだ。
 全員普通にくつろいでいるように見えても、その裏側では大変な苦労と闘っているのである。

 こうして準備の整った3人は、1時間程着太郎の到着を待つことになる。
 3時と指定したのだが、やはり迎える側は準備を完全に整えてから着太郎を迎えたい、と言う思いと共に、実はこの3人だけの時間もまた堪らなく好きなのであった。

 やがて、約束の時刻から5分程遅れて、玄関のチャイムが鳴る。

 ピンポーン

 3人はその音に一瞬反応して、心の中で(よしっ)と気合いを入れると、打ち合わせ通りマナが着太郎を迎えに行く。
 マナは可愛らしく小走りで玄関に出向くと、そっとドアを開ける。

「や、、やぁ。」
『あ!着太郎さん、来てくれたのね!』
「う・・うん。せっかく呼ばれたし、僕としても君たちには興味あるし。。」

 正直に来た理由を告げる着太郎。
 マナはそんな着太郎を嬉しそうに部屋の中に案内する。
 マナの案内に従って部屋を進むと、部屋の奥には前回同様、マオとマユも待っていた。

「こ・・・こんにちわ」

 着太郎は緊張気味に挨拶をした。


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