お嬢様物語:K・始動(2話) [戻る]
[前へ] [次へ]


「ごめんください~・・・・わっ・・」

 着太郎である。ドアからのぞき込むように、中の様子を見て、目の前に立つマナに驚き固まる。
 マナは何も知らなかったように驚いたフリをして、いったん廊下を駆け戻り部屋に入る。
 そこからそーっと覗くように玄関を見ると、玄関では固まった着太郎がこっちを見ている。

 ここまではだいたい計画通りだ。

 マナは再び可愛らしく玄関に近づくと、恐る恐る会話を始める。

『あなたはどなた?何でここにいるの?』

 仕組んだのはこちら側だが、ここは知らないフリをする。

「し・・・喋った・・・!」

 着太郎は着ぐるみ達が話すことを知らないので、マナの言葉に驚く。

『お人形だってお話しできるんだから!』

 マナは可愛らしく元気よく言う。

「え・・・あ・・あ・・そ・・そうなんだ・・・」

 着太郎はマナの可愛らしさと、その言葉に、カチコチに緊張している。

『ところで、あなたはどなた?何でここにいるの?』

 再び最初の質問に戻るマナ。

「ぼ・・僕は着太郎って言います・・・実はここら辺に不思議な着ぐるみがいると噂を聞いて調査しに来たんです・・」

 ちょっとたじろぎながら目的を伝える着太郎。

『着ぐるみ?そんなの見なかったわ。別の建物じゃないかしら?』

 しらじらしい嘘を言う。

「いや、そうじゃなくて・・・みなさんの事を調べに来たんだ・・」
『私?』

 口を開けたまま頷く着太郎。あまりに衝撃的なマナの姿に、完全に参っている。

『私は、着ぐるみじゃなくて、メイドのお人形さんなの!着ぐるみなんかじゃないもん!』

 マユが良く浅川に向かって言ってた台詞である。

「あ・・いや・・そうなんだけど、、そうじゃなくて・・・」

 対処に困る着太郎。

『よく分からないけど、困ってるの?』
「ま・・まぁ状況から言っても困ってるよ。噂に聞いてたけど・・これはちょっと凄すぎかも・・・・」
『噂って?』
「凄い着ぐるみがいるって。全身ゴムでスタイル良くて、しかも可愛いって。」
『スタイル良くて可愛いのは当たってるけど、着ぐるみじゃなくてお人形さんよ!』

 こうしてしばらくマナと着太郎の問答が続いたあと、とりあえず玄関にいるのも困ると伝えマナが部屋に誘導する。

 着太郎は恐る恐る廊下を進む。事前の情報で着ぐるみは2体いると聞いているから、何処かにもう一体存在しているはずだと警戒していたのだ。

 廊下から応接室に入ると、マナはマユの横に素早く並ぶ。
 あとから入ってきた着太郎に挨拶をする為だ。

 少し遅れて慎重に様子を伺いながら部屋に入ってくる着太郎。

「うわっ・・・3人も・・」

 マユ、マナは深くお辞儀をして、着太郎を迎え入れ、マオは着太郎に優しく手を振ってあげる。
 さあ、いよいよ作戦の本格始動である。

 着太郎は部屋に入ると、ついに3人と対面することになった。
 あきらかに動揺しつつ、一生懸命人形達を観察する着太郎の様子が見て分かる。

 着太郎は、浅川からの事前の情報で、この3人の中には締め付けと快感と息苦しさを同時に体験している誰かがいる事は分かっていた。
 その点で、最初からこの娘達の置かれている状況を想像するのは、たやすいことであった。

『こんにちは。お名前は?』

 ここでマユが着太郎に挨拶をする。

「き・・着太郎です・・って、どうしてしゃべれるの???」

 マユのペースに思わず挨拶する着太郎だったが、やはりどうして着ぐるみで自然な会話が出来るのか、不思議に思って質問してしまう。

『着太郎さんて言うのね。よろしくね!そうそう。お人形だってお話しは出来るのよ!』

 マユは軽く挨拶をすると、会話の仕組みははぐらかす。

「すっ・・すごいなぁ・・・」

 マユにはぐらかされてしまうが、純粋に会話が成立することに感心する着太郎。着太郎としては、もちろんこの会話が成立している時点で、間違いなくマユの言葉だとは思っていた。だが、実際に話はマユがしている分けではない事も何となく分かっていた。
 どういう仕組みなのかは分からないが、中にいる役者の言葉が発話されていることは間違いなさそうだと言う確信はあったので、その点でも凄く興味を引いていた。

『所で着太郎さん。なんでここに来たの?』

 不思議がっている着太郎をよそに、マユは単刀直入に質問する。

「え・・つ・つまり僕の知り合いで、浅川さんって人が君たちと巡り会って、かなり凄い着ぐるみだからって言うので・・・つい探しちゃったんです・・」

 ちょっと申し訳なさそうに言う着太郎。

『だーかーらー。私たちは着ぐるみじゃなくてお人形なの!』

 マユが答える。

「あ・・そうか。人形ね。人形。」

 納得するように、自分に言い聞かせるように言う着太郎。

『そうそう。確かに浅川さんとは遊んだわ』
「やっぱり。彼とはどういう関係なの?なんで彼にコンタクトを取ってたの?」
『浅川さんはご主人様だったの。でももうご主人様じゃなくなっちゃったの・・・』
「え?ご主人様じゃなくなった??」
『うん。もうあの人はご主人様じゃないわ。今はご主人様を捜しているところ。でもその代わり、今はこちらのマオお嬢様と仲良くなったの!だから、私たちはご主人様を見つけるまではマオお嬢様と遊んでいるのよ。』
「ま・・マオお嬢様??」
『このお人形さん!』

 マユはそう言ってマオを紹介する。マオは立ち上がるとその場で会釈をして、ゆっくりと着太郎に近づく。

 可愛らしくも清楚なその歩き方は、十分にお嬢様を演出し、着太郎がその独特のオーラに緊張しているのがよく分かる。
 マオはお淑やかに話し始める。

『はじめまして。私がマオです。そして、この子がマユちゃん。こっちがマナちゃん。』

 マオは名前と実際の人形との対応を自ら指さして説明し、紹介する。

「マオちゃん・・マユちゃんに・・マナちゃん?」

 3人はほぼ同時に可愛らしく頷く。
 マオは自然な形で着太郎の手を取り、もう片方の手で進行方向を指して着太郎をソファーに誘導する。

 着太郎はマオのサテンのグローブからも分かる柔らかいゴムの手にドキドキしながらもマオに誘導されてソファーに座る。

 一方、マオの中では浅川の興奮は収まる気配がない。
 猛烈に苦しいマオの中で、興味津々の着太郎に見つめられながらマオを演じる快感は、今までの練習では味わったことがなかった。着太郎がマオの正体に気づいていないと言う事実が、浅川の興奮を何倍にも高めていたのだ。

 マオが着太郎に近づいていく時、着太郎があきらかにドキドキしているその様子を見て、マオになっている自分を再確認した。
 そして、着太郎の手を繋いだ時の着太郎の手がプルプルと震えている所が、着太郎の緊張感を良く表していた。中に自分がいる着ぐるみに緊張している着太郎を見て、少し着太郎が可愛く見えた。

 着太郎がソファーに座ると、テーブルを挟んでその向かいにマオが。そして、着太郎の右側にマユ、マオの左手にはマナが座る。もちろん3人ともしっかりと足を閉じ、スカートの乱れを直してお淑やかに座っている。

『ねぇ。着太郎さん。どうして私たちに興味があるの?』

 緊張している様子の着太郎に、マユが尋ねる。

「え・・いや、だってほら・・・浅川さんが言うには、凄く可愛くて、凄くスタイルが良くて、凄く親切な着ぐるみがいるって聞いて・・」
『着ぐるみじゃないの!』
「あ、そっか。でもとにかくその凄いお人形さんを一度見てみたくて、色々調べたらここに辿り着いたんだよ。」
『ふーん。つまり着太郎さんは私たちを見てみたかったって事?』
「うん。」
『ふふふ。それでそれで?どう?私たちを見た感想は。』

 目の泳いでいる着太郎を楽しむかのようにマユが責める。

「ど・・どうって言われても・・」
『私たち、可愛い?』

 そう言われた着太郎は、3人をあらためて見つめる。
 真横のマユ。斜め前のマナ。そして真正面のマオ。まさにメイドとお嬢様である。
 あまりの可愛らしい屈託のない笑顔と動き方からは想像できないが、浅川の情報が正しければ、この人形は全てゴムで出来ていて、身体につなぎ目は無く、唯一外界との接点が股間にある空気口だと言うのだ。
 しかも、このゴムの身体と衣装のフィット感のおかげで、彼女たちは絶えず襲ってくる快感を我慢しているというのだ。

 だが目の前の3体の着ぐるみの中に、そんな女性がいるとは、着太郎の目にはとても信じられなかった。
 3人は、あまりにも普通にしている。

 もちろん着太郎の目にはゴムで出来た頭部や手が見えている。衣装で覆われた場所が何で出来ているかは分からないが、おそらくはゴムで出来ているのだろう。しかも顔には隙間らしい穴はない。やはり浅川の情報の通り、彼女たちはスカートで覆われた股間から呼吸をしているのだろう。
 そう考えると、浅川の情報はつじつまが合うのだ。だが状況証拠がどれほど揃っても、彼女らの中の苦悩を想像できる程、彼女たちが辛そうには見えなかったのである。

「か・・可愛いけど・・・」
『けど?』
「やっぱり君たち、全部その身体で出来てるのか、凄く気になって・・・」

 マユは着太郎の興味を確認するように他の2人とアイコンタクトをとり頷く。

『そうねぇ。私たちはお人形よ。浅川さんからどんな話を聞いているのかは知らないけど、そんなに興味があるなら、私たちとゲームをやってくれたら、私たちの身体を調べてもいいわ。』

 マユは大胆にも着太郎に身体を調べてもいいと提案する。

「え・・ホントに?」

 マユは頷く。

『但し、服は脱がせないで調べるって約束してくれる?』

 着太郎は考えた。マユの提案は自らの呼吸口や出入り口を知られたくないからなのだ。下着を取らなければ直接見ることは出来ないが、それでも浅川の話では呼吸の呼気は下着越しでも分かったと言う。
 着太郎もせめてそれだけは確認したいと思った。また、もし中で感じている女性がいるなら、触ってみて反応も確かめたいと言う思いもあった。

「服を脱がさなかったら触れるのはいいの?」

 再び頷くマユ。

「わかった。じゃあそのゲームをやろう。どうすればいい?」

 マユの提案に乗ってきた着太郎。
 このゲームの事はマオもマナも全く知らされていない物だったが、実はマユは以前から計画し、ゲームの準備は整っていた。

『ゲームはね。捜し物当て。』


[前へ] [戻る] [次へ]