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とっさに振り返った浅川は、その光景に驚く。
沙織。そう名付けられ、着太郎のページに登場するサイトのメインキャラクターだ。
沙織は浅川に可愛らしく手を振る。
間近で見ても、非常に良くできた造形と、色も良くしっかりとたるみ無くフィットした全身タイツの為、画像で見た以上にそそる着ぐるみだ。衣装は何処かのデパートのエレベータガールがバスガイドか、と言うようなカラフルで、かつシンプルな制服である。タイトでスタイリッシュな制服姿は、浅川の心を非常にそそった。
「き・・着太郎さん?」
とっさにそう言う浅川に、プルプルと首を振って否定する。
「あ、沙織ちゃんか」
すると満足そうに沙織が頷く。
「はめまして。浅川っていいます。よろしくね。」
挨拶する浅川に、ぺこりとお辞儀をして、楽しそうに浅川の横に並んで画像を見始める沙織。
おそらく、浅川が画像に夢中になっている間着替えてきたのだろうが、それにしてもさっきまでの着太郎とうってかわり、着ぐるみが相手となるともの凄くドキドキした。
沙織は浅川の横で一緒に画像を眺めながら、オーバーにも思えるアクションで可愛らしく動き回っている。
確かにあの時伊豆で見た着ぐるみのような特異な興奮はないが、それでも中が男性で、しかもさっきまで一緒に話をしていた着太郎だと分かっていると、この豹変ぶりには興奮と共に嫉妬も覚える。
身体がタイツ製と言うことは、自分でも多少背丈の事は無視して道具を揃えられれば、沙織のような着ぐるみに入れると言うことを目の前で証明してくれているのだ。
入れる可能性があるとなれば、俄然羨ましくなる。
あの伊豆の着ぐるみでは、構造から見てどう頑張っても自分は無理だと悟ったが、これなら可能性はあるのだ。
気付けば浅川は、いつか沙織のようなブツを所有したいと思うようになっていた。
画像閲覧中の沙織の口元から時折聞こえる呼吸音は、浅川の集中力を確実に奪っていったが、沙織は全く意に介さない様子である。
一通り画像を見終わると、沙織は浅川の持ってきたカメラに興味を抱いている様子だった。
つまり、沙織は浅川に写真を撮ってとおねだりしたいようなのだ。
それを察した浅川は、早速撮影会に移る。プロ用の高級デジカメに、性能のいいレンズを組み合わせ、持ってきた小型の照明なども組み合わせて撮影を開始すると、沙織はノリノリでカメラの前でポーズを取る。
最初は引き気味に全身なども撮っていたのだが、だんだん接写を多用するようになると、カメラ越しとはいっても、より一層着ぐるみを細かく観察する事になり、それが浅川の興奮度を増していた。
また、照明機材のおかげで部屋の温度も比較的高いのか、次第に沙織のタイツに汗が滲み始める様子が、興奮を高めていた。
最初の制服だけでなく、メジャーなアニメのキャラクター衣装、OL風のスーツ姿、水着と、いろいろな撮影をこなす。
その間、もちろん着太郎は一度も沙織を脱がない。着替えは全て浅川の目の前で行われ、時には浅川自身も服を脱ぎ着させてあげた。
面があるので被って着るタイプの衣装は着ることが難しかったが、用意された衣装は全て前や背中が開いて着るタイプの物だったので、面を取らなくても衣装の着替えには問題にならなかったのだ。
こうして着替えをしつつ撮影を繰り返すのだが、中でも浅川が気に入ったのは、ロングのチャイナドレスだった。
着せてあげる時、沙織の胸が大きいため、胸をドレスの中に押し込むようにするのだが、作り物と分かっていても、胸を触るのは気が引けた。
また、その胸を弄られる沙織のリアクションの可愛らしさも、浅川の想像力を掻き立ててくれる。
ドレスを着た沙織は、体型の補正も見事である。
アンダーバストあたりは女性との体型の差からか、かなり苦しいそうにドレスがフィットしているのだが、笑顔の沙織からはその苦しさは全く想像が出来ない。
ドレスを着てポーズを取る沙織は、室内の照明にドレスの光沢が写り込み、身体の凹凸を嫌らしいぐらいに浮かび上がらせる。
そして、その光沢は、沙織の動きに合わせて身体の凹凸の変化を浅川に見せつけている。
こんなに嫌らしい身体の中に着太郎がいるのだ。
着太郎はさぞかし気分がいい事だろう。そう思っても、やはり今は浅川の手の届かない場所なのだ。
ドレスの足のスリットはかなり深く、そこからチラチラ覗く足は、しっかりと光沢のあるパンストに包まれている。
これも着替えの時に浅川が履かせた物なのだが、こうして隠れた場所からチラチラと見せられると、先程まで自分が触れていたはずの物が、何処か遠くに行ってしまった感覚になる。
もちろんパンストが包んでいるのは肌タイツで出来た足であり、着太郎の足は更にその裏側にある。
視界には見えないが、足のラインを綺麗に見せる目的や、毛を隠す為に内側にパンストを穿くと言うのは、割と着ぐるみ愛好家が良く使う手段だという。
とすると、この肌タイツの裏にもパンストを履いていることになる。
伸縮性のあるナイロンのフィット感など、子供の頃の学芸会で嫌々着せられたタイツの印象ぐらいしか無い浅川は、今こうして目の前で、そのナイロン達の締め付けを堪能しているであろう着太郎が羨ましくて仕方がなかった。
それにしても、沙織にパンストを穿かせる時は、伊豆でマユにタイツを穿かせてあげた時のことが呼び起こされ、もの凄く興奮していた。
また、平気な素振りの沙織の股間は、しっかりとガードされてほとんど膨らみはないのだが、下着をフィットさせる時に何気なく触れてみると、しっかりと堅くなっているのが分かった。
内側で興奮していてもここまで隠せるのかという関心と共に、やはり自分では体験出来ないという嫉妬心もいっぱいだった。
なにしろ、このまま弄って沙織の興奮が高まっても、着太郎の表情は見えないのだから。
結局この日は4時間半ほど沙織と楽しい時間を過ごし、撮影会はお開きとなった。
4時間半たって戻ってきた着太郎は、沙織の面を抱えて、被らないという条件で浅川に見せてくれた。
先程まで着太郎が密閉されていた空間を垣間見ることは凄くドキドキした。
中は表面とは裏腹に、最低限の内装加工しかされていない。また口元のスリットも、視界であろうス
リットも決して大きくはない。
着太郎は、こんな場所から呼吸をし、こんな隙間から外界を見て4時間半、蒸れた沙織の中にいたのだ。
浅川にとって、それは凄く羨ましい場所であった。
「いやぁ。楽しかったです。正直言うと、ちょっとだけ気持ちよくなっちゃってたりしましたし。」
着太郎は笑いながら言う。
「ちょっとだけですかぁ?その割に結構堅かったですよ?」
浅川は着太郎のノリに合わせて冗談ぽく返す。
だが、実は着太郎の感想に、今まで以上に嫉妬心が沸く。この沙織の中を体験していた着太郎にとってはいつもやっている着ぐるみを着るという行為なのであろうが、浅川にとっては全く想像の世界なのだ。
どんなに想像しようと、あのパンストに包まれたタイツの感触も、窮屈そうな補正も、ドレスの着心地も、そして、沙織の中の息苦しさや蒸し暑さも、所詮は想像の範囲でしかない。
恐らく着太郎にとっては軽く言った感想なのだろうが、こうしてまざまざと立場の違いを見せつけられた浅川は、少し寂しい気持ちにもなっていた。
「堅くしたのは浅川さんですよ~。もともとがっちりと挟んでますから普通は分からないんですけど、ああやって触られるとどうしても我慢できる限界ってありますからね。」
「挟んでるんですか・・」
「挟むと堅くなるとちょっと苦しいんで、本当は上向きにしたいんですが、それだと目立っちゃいますからね。」
「なるほど。そうなんですね。」
「でもまぁ、あの股下で締め付けられる感じもかなり楽しいんですけどね。」
着太郎の話はどんどんエスカレートしていき、やがて浅川の反応についての話になる。
「でも浅川さんも、結構ドキドキしてたでしょ?沙織の中からだとそう言う様子ってよく分かるんですよ。照れちゃって可愛いなぁとか。」
「あはははは・・」
浅川は着太郎の図星の突っ込みに照れ笑いをする。
「こうやって中から外を観察できるのも、中をやっている人の特権ですしね。」
まさにその通りだと浅川は思った。
浅川の着ぐるみに対する憧れの一つは、まさに、中の人間からは常に外は見えているが、外からは中が分からないと言うことである。そう言う秘密のベールが着ぐるみには存在するのだ。
浅川も、こういった着ぐるみの内側を体験するには、自分でブツを所有するしかないと思っていた。
もちろん誰かに借りて、と言う可能性はあるのだろうが、自分がもし所有者なら、あまり人に貸したいとは思わない類の物だろう。とすれば、自分が嫌なことを人にお願いすると言うのも道理から外れる。
やはり自分で手に入れる方法が一番確実だと思えた。
そこで浅川は、思い切って、自分もこんなブツを手に入れるにはどうしたらいいか、着太郎に聞いてみた。
「き・・着太郎さん。例えば私もこういったブツを手に入れる事って出来ない物なのですか?」
「ははは。ストレートに来ましたね。」
「や、やっぱりちょっとストレートすぎますよね。いや、無理なら仕方ないんですけどね。」
「いやいや、別に無理って事はないですよ。いくつか業者を知ってますから、気に入った造形の業者に依頼すれば作ってもらうことは出来ると思います。ただし・・」
「ただし??」
「ええ。今はもの凄く欲しいという人が増えているので、何処の業者もバックオーダーがもの凄く、最短で作って貰える業者でも数ヶ月。長いところだと1年以上待つ必要が有るみたいです。他には自作という手もあるみたいですが、これもそれなりの造形が出来る人じゃないと、なかなか上手には作れないと思うんですよね。」
「あー、なるほど。時間ですか・・・」
浅川にとっては、依頼が可能というのは収穫ではあったが、時間がかかると言うことを聞き少し残念に思っていた。
「そうですね。僕のブツも業者製ですが、色々造形的に注文を聞いて貰ったのもあり、出来るまでに半年かかってます。でもまぁ今と比べたら全然短い時間で出来たと思いますけどね。」
この後、1時間程雑談をして、業者の連絡先だけ聞いて解散となった。
浅川は、家に帰るなり、早速業者に連絡を取り、制作までのスケジュールや予算をメールで問い合わせたが、数日後に帰ってきた内容を見ると、何処の業者もあまりパッとせず、着太郎の言うとおり、半年以上待つ覚悟が必要そうだった。
予算についても想像していたより高く、一ヶ月の給料が飛ぶ覚悟が必要だったが、そんなお金よりも早くブツが欲しいという一心だったので、何もしないと先に進めない以上、多少時間がかかっても自分用のブツを依頼しようと、業者を選定し、1週間後には発注をかけていた。
ブツの依頼前も、その事を逐一着太郎には伝え色々アドバイスも貰っていた。
そのおかげもあり発注はスムーズに行き、あとは最終的に9ヶ月かかるという制作待ちが過ぎるまで、じっと我慢するしかなかった。
発注後も着太郎とのメールでのやりとりは続き、時には直接合ったりもしていた。
そんなやりとりの中で、時期的にもうOKだろうと判断した浅川は、思い切ってあの伊豆での出来事を話してみることにした。
この日は喫茶店でお茶をしながら会話をしていたのだが、浅川の突然の告白に、着太郎自身驚きを隠せない様子だった。
「実は、その伊豆での出来事が、本当だったのか、夢なのか、私自身よく分からないんですけどね・・・」
「・・・いやぁしかし驚きました。凄い話ですよね。その着ぐるみは、実は僕も噂で聞いたことはあるんですよ。」
「え!知ってるんですか?」
着太郎が驚いたのは、自身が噂として聞いていた着ぐるみを、第三者である浅川が目撃したと言う情報からだったのだろう。
「知っていると言っても、別に僕が見たわけじゃない。今から1年ぐらい前に、ネットにある匿名の掲示板にそんな話題が書き込まれて噂になったことがあるんです。結局ネタ扱いされて終わったのですが、僕自身、その特殊なブツの存在についてその後も調べていたら、そう言うブツが存在するという噂話は、ごくたまに聞くことがあるんですよ。」
「じゃあやはり事実として存在していると?」
「いや、なにしろあまりに特殊なブツですから、存在していれば愛好家達の誰かのアンテナに補足されているはずなのに、未だにそう言ったブツを見たという物的証拠が見つかっていない。しかもここ半年はその噂すら全く聞かれていない。」
「なるほど。それだけ実物を確認出来ないとなるとやはり夢でも見てたのかなぁ・・・」
浅川は自分の体験が夢なのではとすら思い始めていたが、そこは着太郎がすぐに切り返す。
「いやいや。確かに今までだと単なる噂って事でしょうが、今回は、今まで全く着ぐるみに関心無かった浅川さんが、そのブツを見たことで着ぐるみに関心を持ち始めたわけですよね?」
「ええ。まぁ」
「最初から着ぐるみに関心が有れば、そう言う噂は聞いたことがあるかもしれませんが、興味が無く予備知識もなかった人が、いきなり作った夢物語にしちゃリアルすぎますから。そう考えると、信憑性は高い気がするんですよ。」
つまり、着太郎のような元々着ぐるみに関心のある人間なら、うわさ話を元に、それらしいストーリーも作れるだろうが、浅川には予備知識が全くなかったのだとすれば、実際に起きた事としか考えられないと言うのだ。
「じゃあやはり・・・」
「ええ。僕が思うに、この日本の何処かに、その着ぐるみは存在しているはずです。しかも、今この瞬間も何処かで姉妹になりきって楽しんでいるかもしれません。」
「今も・・ですか。」
「少なくとも僕なら、そんな素晴らしいブツを持っていたら毎日だって着たいですよ。」
「確かに・・・」
「とにかく、もうちょっと仲間内にも情報集めを依頼してみますよ。何か分かったら連絡しますね。」
着太郎は、まだ新人に近いため少ないとは言え、自らの人脈を駆使してその着ぐるみの調査を行ってくれることを約束し、この日は帰宅した。
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