DollClub~Episode 2~(10章) [戻る]
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 研修開始から2ヶ月が経過していた。

 そろそろ通常の研修であれば問題なく着こなせる状態になり、いよいよ実践的な研修へと移っていく。
 もちろん実践と言っても本当に客を相手にする事はない。

 シミュレーションという形で、他の着ぐるみを相手に行う研修となる。

 初めての実践研修の相手をする着ぐるみは、ヒカリと言う、店ではトップ5に入る人気の着ぐるみだ。
 もちろん声優により声も付いている。

 美由紀はこの研修を行うに当たって、ヒカリ役の男性や、声当てをする女性に対し、ミクの中に入っている人物の性別を告げることはしなかった。
 この行為自体は特別なことではなく、DollClubの着ぐるみの中は男性であると言う基本があったので、普段からわざわざ告げることは無かった。
 だが、今回、ミクには聡美と言う女性が入ることになる。

 いくら役を演じているとは言えヒカリは男性であり、中身が女性と知っていると、本来の演技に集中出来ない可能性も考えられる。また遠慮なども出る可能性がある。
 その為、事実は告げず、あくまでも通常の実践研修として、相手役を依頼したのである。

 聡美も聡美で、相手が自分を女性だとは思っていない事に、妙なドキドキ感があった。

 通常は着ぐるみに入る男性が、お客さん達に対してのみ味わえる「性別を偽る快感」も、聡美には通じない。
 なにしろ聡美は女性であり、着ぐるみの外見が示す性別そのままなのだ。
 本来、中が男性だからこそ楽しめるはずの「性別を偽る快感」をこんな場面で楽しめると言う事が、聡美をドキドキさせていたのである。

 研修は、通常のコースで、先生と生徒の禁断の恋を楽しむと言う状況設定であった。こういった通常コースはDollClubの初心者が多く楽しむコースであり、目の前に展開する怪しい着ぐるみとの交流を楽しむケースが多い。
 だが、こういう通常のコースは、着ぐるみ側もある程度意志を持って動くことが許される為、研修の最初の頃は皆、このコースで経験を積む。

 聡美は、この日、午後からの研修だったが、午前11時にはDollClubを訪れ、気持ちを落ち着かせながら、その時を待つ。用意されたミクの着ぐるみを見ているだけで、身体が火照ってくるのが分かる。
 ミクの可愛らしい顔を見ると、これから自分を苦しめる娘と分かっていても、凄く愛おしくなる。
 心の中では「今日もお手柔らかに気持ちよくさせてね。」とお願いしていた。

 午後1時を回ると、研修室に美由紀が現れる。

 ガチャッ

「あら、聡美さん。もう来てたのね。」
「ええ。なんだか落ち着かなくて。」
「そうねー。いよいよ今日から実践研修ですもの。これを一通りパス出来れば本当にお店に出られるわ。」
「でも、ホントに私の勤まるのかなー」
「あはは。大丈夫よ。私が保証するわ。私よりも総装着時間は短いはずなのに、私より自由に動けているしなにより楽しそうよ?」
「え・・た・・楽しそう・・ですか?」
「そうね。別の言い方をするなら、気持ちよさそう?」

 美由紀の言葉に頬を赤らめる聡美。

「図星みたいね。まぁ私もキャラクタースーツの中は大好きだから、あなたの気持ちはよく分かるわ。」
「美由紀さんも?」
「ええ。私もまだ訓練中だからお店に出ることは出来ないけど、時々ホビー21でキャラクターの助っ人に呼ばれたり、休みの日は、都内のホテルで一日中に入って楽しんだりもしてるし。」
「美由紀さん、そんな事してたんですか?」
「すっごいわよ~。ホテルで1日キャラクターで過ごすの。大人の休日プランみたいなので泊まるの。
キャラクターはくつろいでも、中の私は責められっぱなし。苦しいし気持ちいいし、どうにかなっちゃうそうなほど頭も真っ白になるけど、それがいいのよね。」
「美由紀さん・・ホントに好きなんですね。」
「あなたはまだ照れがあるけど、正直になっちゃう方が楽よ?別に世間にカミングアウトしろって事じゃないんだし。誰だって変わった趣味はあるわ。たまたま私は着ぐるみなの。それだけの事よ。」
「まぁそうなんでしょうけど、割り切れるところが凄いですね。」
「じゃなきゃこんなに冷静に着ぐるみスタッフの研修に付き合ってられないわよ。」

 美由紀はケタケタ笑いながら楽しそうに話している。
 そのあっけらかんとした無しぶりを聞いていると、どこかで後ろめたい気持ちのあった聡美の心も随分楽になるのが分かった。

「さてと、それじゃあ、そろそろ始めましょうか。聡美さんは、早くあなたの大好きなお人形さんに密閉されちゃってね。」
「み・・美由紀さん、その表現は・・」

 美由紀のあまりにストレートな表現に面食らう聡美。

「いいじゃないの。ホントのことなんだし。ピッチピチに締め付けられて、体中を刺激されながら頑張ってミクちゃんを動かしてあげてね。」
「もーっ。美由紀さんの意地悪。」

 聡美はしぶしぶ着替え始める。

「じゃあ私は相手役のヒカリちゃんを見てくるわね。準備出来たら呼びに来るから、着替えて待っててね。あ、衣装は設定通り、学生服ね。」
「はーい。」

 バタン

 美由紀が出て行き部屋のドアが閉まる。

 その後も美由紀はいつもの通り、手慣れた手順で着替えを続ける。
 最初は時間がかかった着替えも、今では1人で30分有れば衣装まで着て準備が出来る。
 学生服はブレザータイプで、しかもベストも付いた物の為、シャツ・ベスト・ジャケットと枚重ねることになり、手間はかかるが、それでも手早く着替えを完了する。
 この指定制服は、名門校という設定の為、下半身も黒いスクールタイツで覆うことになる。これも意外と苦しいが、今まで着た衣装の事を考えると、我慢出来ないほどの物ではない。

 着替え終わるとドレッサーの前に足を揃えて座る。
 可愛らしい女子高校生のミクが自分に向かって微笑む。着崩さず、かっちりと清楚な制服を着ているのがまたミクの可愛らしさを引き立たせている。
 この可愛いミクが自分に行っている仕打ちが信じられない程穏やかな姿が鏡に映り、早くも興奮気味の聡美。
 足を揃えて座っている事で、興奮気味の呼吸がさらに苦しく感じられるが、それがまた聡美には堪らなかった。
 もちろん少し閉じた足を緩めようと言う気は全く起きなかった。むしろさらにギュッと足を閉じてしまったぐらいである。閉じた足の締め付けにより、パッドへの刺激が強まったことも聡美には楽しめた。

 やはり美由紀の言うとおり、自分はこの空間が堪らなく好きなようだ。
 確かに美由紀の言うとおり、こんな妙な空間が好きというのはおかしな話かも知れない。だが、誰かに迷惑をかけているわけでも無く、むしろ自分のおかげで喜んでくれる人もいると考えるなら、美由紀のように堂々と楽しんでもいいのかも知れないと思い始めていた。

 準備が整って数分後。

 コンコン。ガチャッ。

 ノックの音と共に美由紀が部屋に入ってくる。

「準備はいいかしら?」

 美由紀の言葉に可愛らしく頷くミク。

「じゃあ、あっちの研修ルームで始めるから、付いてきてくれる?」

 ミクは美由紀の誘導で、研修ルームに向かう。
 もう慣れているとは言っても、一歩一歩、歩く毎に下半身を襲う甘く切ない快感が、聡美の意識をとろけさせて行く。
 慣れている事で、演技を続けられても、感じなくなっているわけでは無いのである。

 聡美はこの甘い刺激を受けながら、先日彼氏の正彦と遊びに行った大型テーマパークのキャラクター達の事を思い浮かべていた。
 キャラクター達は笑顔のまま、ダンスやグリーティングを続けていたが、あのダンスは普通に踊っている隣のダンサーすら、終わった後若干呼吸が乱れているのが見て分かる程激しかった。
 キャラクター達の多くは、ずんぐりした体型を形作るため、お腹の動きが見えず、顔も笑顔の為、一見すると平気な姿でダンスの後も淡々とグリーティングを続けていたが、あの裏側を想像すると切なくなる。
 正彦の手前、きゃー可愛いなどと嘘を付き抱きついて写真を撮ったりしたが、キャラクターの裏側にいる役者に嫉妬してしまっていた事は内緒である。
 尤も、正彦もその裏側で、聡美と似たようなことを考えていた可能性はあるのだが、それはあくまでも推測の話だ。

 そんな事を考えながら、美由紀に連れられ研修ルールに行くと、中はすっかり学校の教室と言う状態になっていた。
 座席は生徒用のものが横に3人分、3列並べられている。黒板と教壇、そして教師用の教卓がある。
 壁は掲示板に掲示物、プリント等が貼られ、サイズは小さいが、学校の雰囲気は十分に出ていた。

「じゃあミクちゃんはそこに座って待っていてね。」

 美由紀に指示され、教卓の正面、最前列中央の位置に座るミク。
 椅子に座ると、パッドも身体に深く刺さるので思わず感じてしまう。
 ここで、生徒役の人形としてお客さんに弄ばれるのである。そう考えるとさらに聡美の興奮も高まる。

 美由紀はミクを椅子に座らせると、さっさと部屋を出て行ってしまう。

 そして1分程の沈黙の後、ドアをノックする音が聞こえた。

 コンコン・・・ガラガラーっ

 ドアが開くと1人の女教師が入ってくる。
 ヒカリである。
 タイトスーツに身を包み、出席簿と差し棒を手に、つかつかと部屋に入ってくる。
 あのスーツがヒカリの裏側の男性を苛めていることを想像すると、見ている聡美も気持ちよくなってくる。
 だが、もちろんベテランのヒカリの動きには全くスキはなく、事情を知らなければ至って普通の動きに見える。

『さて、では補習授業を始めましょう。今回はこの前のテストで赤点だったミクさんの為の補習ですから、覚悟して下さいね。』

 既に研修は始まっている。
 ミクは、ヒカリの言葉に頷くと、背筋を正した。
 声優の言葉に会わせての操演を行うヒカリはだが、この辺は事前に打ち合わせた台詞通りなのか、動きも自然だ。

『今日はこのテストを解いて貰いますね。分からないところがあればちゃんと質問すること。いいですか?』

 ヒカリの言葉に頷きながら補習用のプリントを受け取るミク。

『はい。では早速始めて下さい。』

 合図に会わせてプリントと向かい合い、問題を解答し始めるミク。
 だが、明らかに難しい。
 ミクの知識ではとても回答出来ないような複雑な問題が並び、しかもジャンルはバラバラだ。
 語学は英語ではなく、文字の形からアラビア語に見える。歴史も日本史ではなく、エジプトの現代史のようだ。
 数学に至っては、記号の意味すら分からない問題が並んでいた。
 こんな問題分かるわけはない。だがミクは言葉を発することは出来ないし、あくまでも生徒として先生の言葉に従うのがDollClubでの着ぐるみ達の仕事である。

 問題を解こうと一生懸命机に向かうミク。
 ふと気づくと、真横に先生が立っている。

『ミクちゃーん。しっかり集中しなきゃダメですよー。』

 ヒカリはミクに集中しろと注意しながら、背後に回り、おもむろに胸を弄り始めた。

 カタンっ!

 思わず握っていたペンを机の上に落とすミク。
 気持ちよさで手が言うことを聞かない。だが必死にペンを拾い再び問題を解こうとする。
 制服の上からとは言え、ヒカリの手は上手にミクの胸を弄り、その胸からの伝達で股間のパッドも身体の中と外から同時に刺激をする。
 快感で足をモジモジさせるが、逆効果でさらに気持ちよくなってしまう聡美。

 まだ研修はスタートしたばかりなのにいきなりこの状態である。
 今までと違い、実践に近い形で「弄られる」のは、やはり初めての経験にしては相当に過酷なのだ。
 しかも、ヒカリは、ミクの中が男性だと思っている為なのか、遠慮も無い。
 普段自分が店でお客にされている行為をそのままやって来るような感覚なのである。

 弄られながらもテストに向かうミクは、あっと言う間に絶頂を迎えてしまう。

 もちろん聡美もすでに3ヶ月、ミクを着て練習に励んできたので、ヒカリがその絶頂に気づくことは無かったのだが、目の前で本当にイッてしまった女の子がいるのに、それに気づくことなくミクを責め続けるヒカリ役の男性を考えると、ちょっと嬉しい気持ちもあった。

 イッた事で少し落ち着いた聡美だが、呼吸の苦しさだけはどうにもならない程だった。
 イッた事を悟られないようにするには、足のポジションを変えることは出来ない。だがそれではスカートの中の酸素は明らかに足りないのだ。
 不足した分の酸素は皮膚を通して入ってくるので、気絶するような事は無いのだが、かえってそのギリギリの苦しさが続くことが大変なのである。

『ミクちゃん。こんな問題も分からないのぉ?』

 ヒカリはわざとらしく指さす。

 生物の問題で、テストには男女の身体の違いなどが出ている。

『分からなければ先生の身体を使って確認するといいわねー。』

 ヒカリは凄く嫌らしくそう言うと、一瞬だけ躊躇するが、ミクの手を取って自らの股間をスカートの上から弄らせる。
 タイトスカートの上から触れるヒカリの身体は滑らかで、女性そのものと言っても良かった。ただ、少しだけ下腹部に注意すると、堅い物が存在することも分かった。
 撫でるように弄ると反応しているのも分かる。

 誰だか知らない男性だが、このピッタリしたスカートの中で、スカートとヒカリの身体を通して、私の手を感じている。
 女性の私でも窮屈なのに、男性の物がここにしまってあると考えると、中はさぞかし窮屈で感じる場所なんだろう、と考えているだけで、聡美は再び熱くなり始める。

 ヒカリが一瞬だけ躊躇したのは、中の男性は、まさか「自分を触れ」という展開になるとは思っていなかったからだろう。
 責め役が責められる。しかも毅然として弄られる必要がある。
 これは相当に辛いことなのだろうと思えた。
 女教師ヒカリの火照った身体をピッタリと包み込むタイトなスーツが、裏側の男性の苦悩を想像させてくれるのだ。

 相手の苦しみが想像出来るだけに聡美にとっても切ない行為だが、本来なら男性教師役のお客さんが、そう言う行為を強要すると言うことなのだろう。

 やがてヒカリを弄るミクの手が、ヒカリ自身に誘導されてスカートの中へと進入する。


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