DollClub~Episode 2~(9章) [戻る]
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 研修の後、彼氏である正彦と待ち合わせる聡美。

「よぉ。こっちこっち」
「あ、正彦ー。待った?」
「俺は今来たところだよ。」
「ホント?それならいいんだけど。」

 割と普通の会話から始まる。
 まさか正彦は、ホント数時間前に聡美が目の前にいたとは夢にも思っていない。その事実を考えただけでも、聡美は少し身体が熱くなるのを覚えた。

 正彦に案内され、夕食の場所へと向かう。今夜は和食のようで、最近流行の和食レストランを予約していた。
 聡美と和彦は、この店の名物となっている鮪のカマトロ焼きを堪能しながら、今日あった出来事の雑談を続けていた。

「ふーん。じゃあ、今日はそのホビーショップに行ってたんだ?」
「ああ。俺も始めていったんだけど、ビックリするぐらいでかくて、目的の物を見つけるのに迷っちゃったよ。」
「そんなに広いの?それだけ広いと歩き回るの楽しそうね。」
「結構宝探し的に色々見て回れるよ。」
「そうなんだー。なにか面白い発見はあった?変わった物があったとか。」

 聡美はそれとなくホビー21での事を聞いてみた。

「ん?変わった物?いやー。それは無かったなぁ。うんうん。」

 嘘を付く正彦。もちろんこの嘘は、仮に聡美がホビー21でミクの中に入っていなくても見破れた。彼氏の嘘ぐらいぐらいは見破るのは簡単なのである。

「ホント~?」
「本当だよ。」
「なーんか隠してないぃ?」
「してねぇよ。」
「ふーん。まぁいいか。」

 正彦に、今日のホビー21での出来事を証拠として突きつけられない聡美は、話題を変えてみる。

「あのさ。変な事聞いてもいい?」
「変なこと?」
「うん。正彦ってさぁ。着ぐるみとか好き?」
「な・・なんで急に・・・」
「2ヶ月ぐらい前にさぁ。舞海にある遊園地に行ったじゃない?」
「ああ。マッキーアイランドか。」
「そうそう。あそこで私が着ぐるみに抱きついて写真とかお願いしてた時、正彦、着ぐるみの中身を探ってなかった?」
「え?そ・・そうだっけ?」
「なーんか、凄く視界の穴とか空気の穴とか首の付け根とかチャックとかに興味がありそうだったんだけど。」
「お、お前、何をチェックしてるんだよ。俺はただ、お前とキャラクターがちゃんと可愛く収まるような構図を考えて色々な角度からだなぁ・・」
「ホントかなぁ?実は、着ぐるみの中に興味があるんじゃないの?」
「そ・・そんなわけねぇって。何であんなに暑苦しくて臭そうな着ぐるみに興味なんて持つんだよ。」
「ふーん。暑苦しくて臭そうなんだ?あんなに見た目が可愛くて、中が苦しいって考えると、なんか切なくなるわよねぇ。みんなが見ている可愛い外見とは違う別の人が、中で奮闘しちゃってるんだもんねー。」
「お前ねぇ。何で突然そんなこと言い出すんだよ。実はお前が興味あるんじゃないのか?」
「私?私はちょっと興味あるかも。可愛いぃ女の子の人形とかに入って、可愛かったりちょっぴりエッチな衣装着て、男の人を惑わす小悪魔になるの。普通恥ずかしくて出来ないようなことも全身が隠れたら出来そうでしょ?」
「だけど、その代わり凄く苦しいんだぞ。中は。お客の前じゃ外には出て来れないんだから、苦しくてもそのキャラクターで居続ける必要があるんだぞ。しかもお客さんには苦しそうな姿も見せられないんだ。」
「ふふふ。なんかやけに詳しく状況を語るわね?まるで正彦がそう言うの想像しているみたいね~。」
「バカ言うなって。俺はあくまでお前の言う可愛い小悪魔への変身は、そんなに楽じゃないって事を言いたいだけだ。第一、なんで遊園地のマスコットが小悪魔になるんだよ。小悪魔って言うからには相当セクシーなスタイルじゃないと無理だろ!」
「そうねー。確かにスタイル良くて可愛い着ぐるみじゃないと無理ね。そんな着ぐるみ何処かにないかなぁ。一回でいいから中に入ってみたいなぁ」
「無い無い。そんなの絶対に無いって。」

 聡美の挑発はほぼ成功であった。
 正彦は、まんまと心の奥の本音を言ってしまったのだ。彼女として付き合っている聡美には、これだけの話しでも十分に正彦の趣味の本質は見抜けていたのである。

 結局この後も似たような話で正彦の本音を探りつつ、夜は夜で、声を出さないプレイなども楽しんでみた。
 正彦の様子から、今まで以上に楽しんでいるのが分かり、ますます聡美は正彦の隠れた趣味に確証を持った。

 数日後、再び研修でホビー21に出向く聡美。
 今回は前回よりも長時間の演技を目標にしていた。

 まだ前回の緊張が抜けきれないが、それでも慣れた手つきでミクの中に入り込む聡美。
 全身をミクに封印すると、そこからはもう、ミクとして振る舞う。

 この日の衣装は、最近マニアの間で流行っている美少女制服戦士のコスチュームだ。
 制服と言ってもセーラー服を模した物ではなく、少しアダルトなスーツをモチーフにしていた。
 ブラウスのような襟が付いたレオタードにタイトなミニスカート、そしてミニ丈のジャケットの組み合わせ。
 長袖ブラウスの代わりにレオタードが長袖となり、柄物のストッキングとブーツで決めている。
 このアダルトな感じが堪らないとマニアに受けているのだから、その衣装を着た着ぐるみがいると言うだけでマニアは勝手に集まってきた。
 ストーリーは比較的子供向けだったので、衣装の割に、子供受けも悪くはなかった。そう言う意味でも集客力のあるコスチュームだった。

 但し、この衣装を着る着ぐるみ達は、かなり大変な思いをしていた。
 レオタードとは言っても、実は生地が結構厚手なのである。衣装が透けないようにと言う配慮からなのだがこのせいで普通のレオタードより着心地は窮屈である。
 しかも身体に対して若干小さく作られる傾向にあるここの衣装である。着る側の窮屈感はかなり高く、また、股間にフィットした生地の締め付けと共に、あまり空気を通さない厚手の素材のおかげで、かなり息苦しいと言う状態になる。
 タイトスカートも、スカートの中の体積を小さくする為呼吸が籠もりやすく、また柄物ストッキングはサポート力の強い物が選ばれていた。

 あらゆる衣装のパーツが、演者を締め付け、苦しめる方向で作られているように思えたのである。

 もちろん、衣装に文句があればすぐに演者からは苦情が出る。
 だが、不思議なことに誰も苦情を言う事はなく、そのままこの衣装が採用されていた。

 聡美は僅か2度目にしてこの過酷な衣装を着ることになった。
 恥ずかしい話なのだが、衣装を装着している段階で、あまりの気持ちの良さと息苦しさに果ててしまった程、この衣装は聡美を苦しめた。

 それでも有無を言わさず仕事はスタートする。

 セクシーな女戦士を鏡で確認し、店内へ行くと、早速マニア達が集まってくるのが分かった。
 見られることで余計に興奮し、呼吸が奪われることでさらに興奮する。と言う悪循環の中で、あっと言う間にイク寸前まで上り詰めてしまう。
 この衣装は、例えば聡美が聡美として着たとしても、その締め付けや動いた時の突っ張る感じで興奮しそうな程窮屈でであり、そんな衣装をこの敏感な着ぐるみの上から着ているのであるから、今の聡美のように簡単に上り詰めてしまっても仕方が無いと言えた。

 そんな状態でも、あくまでもミクとして店内を動き回る聡美。
 歩くたびにスカートの中に吐息を漏らしながら周りのお客さん達には、可愛らしく、セクシーに、ポーズを決めながらコミュニケーションを取っていく。
 30分も店内を歩き回ると、ミクの中は凄い事になる。
 トロケそうな快感を押し殺し、ミクを演じる聡美ではあったが、今日は意外と外的な刺激が少ない。衣装から得られる刺激はイク事が難しい感度に調整されている為かなり悶えながら演技を続け、その結果、聡美の頭の中は嫌らしいことでいっぱいになりつつあった。
 だが、もちろんミクは可愛いマスコットでなければならない。ここはDollClubでは無いのだ。
 この制約の中で可愛らしいキャラクターを演じることは、ある意味、DollClubで働くよりキツイ事にも思えた。

 苦しみながらも何とか仕事をこなしていると、棚の影から覗くようにこちらを見つめる人物がいた。
 正彦である。
 相変わらず着ぐるみとその中身を観察するように見つめている様子がよく分かる。着ぐるみの視線と、実際の聡美の視線の差を利用して、聡美も正彦を観察するのだが、正彦に気づかれないように観察している自分にもまた興奮していた。
 歩き回るとしっかりと後ろについてくる正彦を見て、聡美は大胆な行動に出る。
 うまく正彦を誘導し、倉庫への入り口に導くミク。
 次の瞬間、ミクの行動に驚く正彦。

「え・・ち・・ちょっと・・」

 正彦の腕をぐいと掴んで、商品の倉庫に引きずり込むミク。
 突然の事に状況を把握出来ない正彦は、ただただ慌てる。

「こ・・こんな場所に来ちゃっていいの??」

 正彦の質問にウンウンと頷くミク。
 そして、一応ミクがOKを出したと言う事で少し安心すると、間近で見るミクに興味津々となる。
 壁を背もたれにして座り込む2人。

 ミクの顔に近づいてみても、顔の脱着が可能な構造は全く見えない事が分かった。首筋にもファスナーらしい物は見えない。どうやってこの着ぐるみの中に入るのかは分からないが、簡単に中にアクセス出来るような構造にはなっていない事はよく分かった。

 また、ミクの視界は、隙間や小さな穴なども見えない。とすれば目の一部にサングラスのような加工を施してあるのだろうが、そのような加工が施されている場所は、少なくとも正彦には発見出来なかった。
 キラキラした大きな瞳の何処かに、密閉された人物の本物の瞳があるはずなのだが、それを確認することは出来ない。

 視界以上に不思議だったのは呼吸である。これだけ小さく密閉性の高そうな顔なのに、口にも鼻にも穴やスリットは見えない。静かな倉庫の中にあっても呼吸音らしい空気の音も聞こえてこない。
 つまり彼女は呼吸している様子が無いのである。
 所がお腹はしっかりと呼吸のリズムを刻んでいる。つまり、どうやっているのかは分からないが、この中には人知れず秘密の場所からひっそりと呼吸している人がいると言うことになる。

「き・・君は呼吸口は無いのか?そんな恰好で呼吸口が無かったら窒息しちゃうだろ?」

 不思議に思って聞いてみる正彦。
 ミクはその正彦の腕を掴み、そっと引っ張ると自らのスカートの中へ案内する。

「お・・おい!」

 思わず条件反射で手をひっころようとする正彦。だが、それでもミクがやめようとしないので、そのまま導かれる。

 正彦の手が何かを感じる。

「え?」

 風である。一定のリズムで、布を通して風が漏れてくる。

「これって君の呼吸?」

 恐る恐る聞く正彦。
 その質問にゆっくりと頷くミク。

 正彦は衝撃的な事実を知り、この着ぐるみの持つ妖しい魅力を理解出来た気がした。
 そもそも見た目から、中にいる人間を可能な限り消しているような構造の着ぐるみなのだ。
 呼吸すらもこんな苦しそうな場所に導かれた空気を吸っているとすれば、中は本当に苦しい場所だと思える。
 また、ほぼ完全にゴムで密封されていると思われるその身体の裏側は、蒸し風呂のように蒸し暑い空間に思えた。
 どんな人かはしらないが、こんな苦しそうな空間に身を置き、しかもこんな可愛らしい外観を装い続けている人がいると言う事実に興奮を覚えると共に、その人物が羨ましくて仕方がなかった。
 
 正彦の真横で、今自分の腕を掴む着ぐるみの手の、ほんの数ミリ裏側にいるであろう人が羨ましかったのである。

 一方で実際にミクに密封されている聡美自身も、正彦の反応にすごく興奮を覚えていた。
 目の前にいる自分に全く気づかない上、目に見えない所で苦しいんでいる見知らぬ人物を想像して、興奮しているのだ。
 聡美自身は、恐らく正彦が想像する以上に苦しく切ない状況にいるが、そんな場所から、今まさに正彦を手玉に取れる立場にいる事が嬉しかった。
 ミクという身体を使って、正彦とたっぷり遊べるのである。

 股間に添えられた正彦の手にハッキリ分かるように、わざと深呼吸をする聡美。
 その呼気を感じる正彦は、そろそろ下半身が我慢の範囲を超えて変化してくる事に気づいていた。

 聡美も、正彦の表情と下半身の不自然な様子から彼の変化を感じ取り、いつもの夜以上に、自分の行為が彼に与える影響を楽しんでいた。

 ミクは何も言わず、恥ずかしそうにうつむきながら、正彦の腕を放してギュッと股を閉じる。

「え・・・く・・苦しくないの?」

 ミクは頷くが、明らかに苦しそうである。呼吸のリズムが深く長くなっているのもよく分かる。閉じた足の隙間から少ない空気を吸い込む努力なのだろう。

「や・・やめなって・・無理しても仕方ないし。」

 ミクはイヤイヤと首を振る。
 恥ずかしそうに内股でぎゅっと足を閉じるミクの可愛らしさを見た正彦は、自らの興奮をますます高めてしまう。

 ミクは、確かに聡美へ供給される空気の総量を減らしてしまっているが、それでも足りない空気を皮膚から補う構造の為、聡美が窒息する程の苦しさにはない。とは言え、そんな事情を知らない正彦にはその苦しそうな姿は、正視するのが辛かった。
 聡美にとっても、酸欠にはならない物の、やはり苦しくなることは事実である。
 また、股間をぎゅっと閉じれば、そこは敏感なセンサーも圧迫され、また股間を覆う布達のシワが切ない刺激へと変化し、聡美の理性を奪う。
 それでも聡美はその行為を楽しんでいた。正彦には悪いと思いながらも、自分の立場を最大限利用し、正彦を興奮させながら楽しんでいたのである。

 続いてミクは自らの手で、自らの胸を弄び始める。
 大きくて柔らかそうな胸が衣装越しに動き、それに合わせるように身体をくねらせるミクの姿は、かなり嫌らしい光景である。
 正彦にとってさらに興奮させたのは、ミクがどんなに気持ちよさそうに身体をくねらせても、彼女の笑顔は固定されたままだったと言うことである。
 恐らく中にいる人物は相当に嫌らしい表情を浮かべているに違いなかった。だがその表情を一切隠し、ミクは笑顔を維持しつづけているのだ。この光景は正彦には悪夢と言って良かった。

 もちろん正彦を挑発する為の聡美の演技である。
 だが、その聡美も、自らの行為によりミクからもの凄い責めを受けることになっていた。
 声は出せない。
 態度も、あくまでも正彦を挑発する為の演技を続ける必要がある。だが胸を責められると、胸と同時に下半身まで責められる聡美は、もどかしくて切ない腰が勝手に動き出さないように必死だった。
 そして、その必死の演技が、ついに正彦の下半身を大きくさせてしまう。

 行為をやめたミクは、しっかりと大きくなり始めた正彦をズボンの上から優しく触ってあげる。

「え・・・そ・・そんな・・」

 大胆な行為に戸惑う正彦。
 その行為は的確で、彼女としては当然押さえてある正彦の喜ぶ場所を的確に捉える。
 快感に眉間にしわを寄せて耐える正彦の表情を楽しみながら、自らは行為を途中でやめてしまった事でかなり焦れったい思いに苦しむが、それでも必死に正彦を大きくすることに専念した。

 やがて完全に大きくなると、正彦のズボンと下着を脱がせるミク。
 上手に脱がせたミクは、そっと大きくなった物を握り、優しくしごき始める。
 一方で、空いた手で正彦の腕を掴み、再び自らのスカートの中に導く。今度は呼気を感じさせるだけではなく、大事な場所に触れさせるようにしっかりと導く。
 ミクのタイトスカートにピーンと張ったシワが、彼女の嫌らしい行為を強調しているかのようである。
 ミクの中が男性である場合、このシワが真裏に隠されるはずの男性の息子を刺激する事になるが、ミクの場合はそこまで感じることはない。
 とは言え、全く感じないわけでもないから、意外と焦らされることになる。

「ん・・・あっ・・・」

 ミクの手で完全になすがままの正彦。
 それでも正彦は、自らの手が導かれた先にある場所を弄ってあげる。つつくように、撫でるように、押すように、その行為の度にミクが切なそうにする様子に、堪らなく興奮する。
 苦しそうに漏れてくる彼女の呼気も正彦には堪らなかった。

 ミクはそのまま正彦の腕を自らの太股でギュッと締めるようにして固定する。
 これで両手が自由になったミクは少しだけ正彦に首を向け、挑発するように自分の胸も弄り始める。

 正彦は締め付けられた太股の中で、蒸れた空気を感じ取る。
 タイトスカートの裏側の空気が、どれだけ淀んで蒸れた物なのかがよく分かる程の苦しそうな空気である。
 正彦が知る、彼女の中との唯一の接点をその手に感じながら、彼女を弄り、彼女の姿に興奮し、そして彼女の手に翻弄される。
 やがて正彦が限界に達しそうになると、彼女はさっとその手を止めてしまう。

「くっ・・そこでやめなくてもいいだろ・・っ」

 嘆願するがミクは甘い甘いと言いたげに首を振る。
 正彦を触っていた手でもう一方の正彦の腕を掴み、自らの肩胸を弄らせ始めるミク。
 洋服越しでもその柔らかい感触はしっかり伝わって来る。
 そして、彼女の鼓動もしっかりと感じ取れる。激しい鼓動が裏側で演技する人間の興奮を伝えている。だがもちろんミクは愛らしい笑顔を忘れない。このギャップがまた正彦にとっては辛いのである。

 やがて正彦は、ミクの身体の変化を感じ取る。
 ミクの股間を弄っていた腕が、今まで以上に激しく不規則に締め付けられ、彼女の腰が浮きそうに反応しているのが分かったのである。またその直後には呼吸が若干速くなるのも感じた。
 もちろん、ただ見ていても分からない、僅かな変化である。
 だがこれだけ接近し直接触れていればこそ、彼女の変化がダイレクトに感じ取れたのだ。

 ミクの中で聡美はイッていた。
 悟られないようになるべく態度を変えないようにしながらイッていた。だが、それでもここまで接近されるとなかなか誤魔化せないのだ。

 聡美はイッてしまった事を誤魔化せなかった自分に多少がっかりもしていた。
 だが正彦はそうは見ていない。
 むしろ、こんなに接近していなければ分からない程の僅かな変化と言うことは、彼女は普段店の中で人知れず果てている可能性があっても、分からないとすら思えた。
 弄りながら歩き回っている着ぐるみなどいないから、さすがに果てている着ぐるみがいるとまでは言い切れないが、例えば長いスカートの着ぐるみが、裏側にローターでも仕掛けていたとしたら、誰にも見つからずに楽しめる可能性があると言う事なになる。
 こんな可愛い着ぐるみに入りながら、人知れず楽しめるとしたら、自分なら絶対にそうすると思えた。
 そして、正彦は、そんな着ぐるみに入れる権利のある人を羨ましいとも感じていた。

 イカせて貰った聡美は、今度は総力を挙げて正彦を翻弄する。何度か我慢もさせ、その苦しそうな表情を楽しむ。
 そして、そろそろ可哀想だと思える頃に、最後までしてあげた。
 たまたま倉庫におかれていたティッシュで片づけをして、正彦の服を着せ、何事もなかったかのように店に戻る2人。
 だが、正彦はさっきまでの妖艶なミクからは想像できないほど、普通のマスコットに戻っているミクの姿に、再び熱い物を感じていた。
 そもそも何故、ミクがあんな大胆な行為に及んだのかは正彦にはさっぱり理解出来なかった。
 しかも、あの行為はミクというよりは、恐らくミクの中にいる人間が望んで行った行為である。
 とすれば、あのミクの中の人間に気に入られたのだろうか?
 いくら考えても答えは出なかったが、あの特殊な着ぐるみに気に入られたことは、正彦にとっては悪い気分はしなかった。

 この日から、タイミングを見てはミクを見にホビー21へ出向く正彦。
 そして、ミクもまた、店内で正彦を見つけると、明らかに他の客以上にじゃれつく。ただ、あの倉庫のような日はその1度キリで、聡美のホビー21での研修が一通り終了した頃には、いつの間にかミクは店内から姿を消すようになっていった。


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