友達?彼女?それとも・・・(18章) [戻る]
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 3人の着ぐるみの瞬きの仕組みを知りたいと思う真一ではあるが、こまちにはぐらかされ、真相は分からずにいた。

 当然その間もイベントは進行する。
 イベント進行中、着ぐるみがステージ上に上がっていると、真一はステージを眺める事になる。
 着ぐるみの様子がおかしければヘルプをする必要があるからだ。
 だが、着ぐるみは可愛らしく、大人っぽく、清楚に、それぞれのキャラクターとして、ごく普通に存在している。

 イベントの進行中も着ぐるみ達は、製作スタッフの話に相づちを打ったり、喜んだり悲しんだりと着ぐるみマスコットとしてのリアクションを一生懸命に取っている。
 そのアクションの途中、ふと気づくと、こまちの瞬きがしばらく無い事に気づく。
 周りの人間は特に気にしていないし、こまちの操演自体もおかしな所はないので、もしかすると瞬き機能のトラブルなのかもしれないと思うが、真一がステージに上がって、こまちを引っ込める程の理由でもない為、そのままイベントを見守る事にする。

 その後のこまちの様子を眺めていると、真一が瞬きの異変に気づいてから10分ぐらいが経過した後、再びこまちの瞬きが再開している事に気づいた。
 どうやら一過性のトラブルだったのか、あるいは操演が大変で瞬きをさせる事を忘れてしまったのかは分からないが、何らかの事情があったのだろうと思い、後でこまちに聞いてみる事にした。

 そのままトークイベントやミニゲーム大会が終わり、一旦着ぐるみ達が楽屋に引き上げる。

 次はステージを片づけて、着ぐるみ達の撮影会と握手会、サイン会である。

 楽屋に戻った着ぐるみ達は椅子に座ってくつろぐ。
 真一も含めてスタッフがステージ上のテーブルやら椅子やらを片づけて、撮影会の準備に入る。
 撮影会は、順番に着ぐるみがステージに登場し、各キャラクター5分ずつ。さらに3人同時に5分。計20分の予定である。
 その後はステージを降りて握手とサイン会が催される事になっていた。

 ステージの準備が整うと、楽屋から1人ずつ着ぐるみがステージに登場し、一斉にフラッシュが光る。
 ステージ脇で司会が着ぐるみにポーズのリクエストなどを行うと、それに合わせて着ぐるみがポーズをする。

 のぞみ、ひかり、の順番でステージに上がり、いよいよこまちの番である。

「じゃあ次、こまちちゃんお願いしま~す」

 他のスタッフが楽屋の中に入ってきて部屋に残っている真一とこまちに告げる。
 こまちはウンウンと頷き椅子を立ち、ステージに向かおうとする。

 だが、やはり瞬きの操作が気になる真一は、はぐらかされる可能性も予想出来たが、ダメもとでこまちに尋ねてみた。
 もちろん楽屋内には真一とこまち以外はいない事を確認してからである。

「瞬き、ホントに口じゃないの?手足とかは動いてないようだし。」

 その質問にはウンと頷くこまち。

「うーん。とするとリモコン操作とかなのか?でもそんなの担当してるスタッフいないよな?」

 再びウンと頷くこまち。

「じゃあ、さっき10分ぐらい瞬きが止まっていたのは瞬きのギミックのトラブル?」

 すると今度は横に首を振るこまち。
 トラブルではないのに10分程瞬きが出来なかったと言うのは不思議な話ではあるが、やはり和志が操作を忘れてしまったのだろうか。

「そうじゃないとしたら、操作し忘れてた?」

 この質問にもこまちは首を横に振った。

「じ・・じゃあ何で止まってたんだよ。なんか別の理由があるのか?」

 今度の質問には少し考え込むような仕草をするこまち。
 すると丁度そのタイミングで、外から人が入ってきてしまう。

「あのー。出番ですけど、なんかトラブルありますか?」

 スタッフがこまちを呼びに来たのだ。
 こまちはそのスタッフに振り向き、首横に振る。

「じゃあ出られます?」

 今度はウンウンと頷く。
 そしてそのままスタッフに連れられてステージに出て行くこまち。
 楽屋から出る瞬間、こまちが一瞬だけ真一に振り向きウインクを1つして出ていった。

 やはり仕組みは教えて貰えないまま時間だけが過ぎる真一。
 ステージに上がったこまちは、ポーズを取りながら可愛らしくウインクや瞬きを繰り返す。その仕草の可愛らしさはかなりの物で、あの可愛らしい着ぐるみに包まれて自由にこまちを動かしている和志が素直に羨ましいと思ってしまった。
 約5分のこまちの撮影が終わると、3人が一斉にステージ上に上がっての撮影である。
 3人が絡むと可愛らしさも増すが、着ぐるみの構造を知る真一にとっては実に嫌らしくも切ない光景が続く。
 軽く触れ合っている様に見えるキャラクター達だが、現実はその軽いタッチでの触れ合いも相当に感じ易いのである。

 しばらくして撮影会が終わると、今度はサイン会と握手会である。
 ステージから降りた3人は、テーブルの前に立ち、お客さん達と握手したり、その場での写真撮影にも応じている。
 握手する時は可愛らしくウインクしたり瞬きしたりと、お客さん達との触れ合いを楽しそうに演じている。

 こうして30分以上は握手会が続いたのだろうか。
 丁度握手会が終了する頃、再びこまちの瞬きが止まっている事に気づく。

 真一は、さすがに和志と言えど、これだけ長時間着ぐるみを操演しながら口元で瞬きを定期的に続ける事に疲れたのかもしれないと考えていた。ただ、その割には、のぞみもひかりも、平気な顔で瞬きを続けているのは不思議である。
 少なくとも着ぐるみへの耐性は和志の方が他の2人の新人よりは上だと思えるからである。

 もしかするとやはり何かのトラブルなのかもしれない。ただ、取り敢えずイベントの重要な部分はこれで終了なので真一としてもわざわざこまちを楽屋に引き上げさせる事はしなかった。

 3人が楽屋に戻ると、会場からバスへ戻る事になる。この際、実は1階でグリーティングをする事になっているのだが、思ったよりお客さんが多く、エスカレータの方向は混乱気味であった。その為スタッフ達が気を利かせ、搬入用のエレベータを利用して1階まで降りる事になった。

 スタッフ総出で楽屋から着ぐるみ達を誘導し、搬入用エレベータのある店舗のバックヤードに行く。
 バックヤードは倉庫になっていて荷物などが山積みされ、店舗内と比べ若干雰囲気が暗い。また空気も淀んでいる様子が分かる。
 空調はかろうじて効いているが、店舗内と比べると湿度も気温も高めで真一にとってもそれほど快適とは言えない場所であった。
 とすると、当然着ぐるみ内にいる3人に取ってはこの環境は結構辛いはずである。
 イベント開始前に野外で簡易グリーティングした時は、まだ操演し始めで体力的にも余裕があったはずだが、今はそれなりの時間着ぐるみを着ているのだから、裏側は相当苦しいに違いない。その上色々動き回っているわけであり、3人とも相当気持ちも良くなってしまっているはずだ。
 見た目の可愛らしい3人だからこそ、その裏事情を想像出来てしまう真一には、非常に嫌な環境と言えた。

 しばらくバックヤードで待つと、エレベータが到着する。

 扉が開き3人の着ぐるみを連れて乗り込もうとすると、丁度荷物の搬出があるようでエレベータは荷物と人で満載に近い状態だった。
 他のスタッフと相談し、次のエレベータまでやり過ごそうと考えていた所、中に乗っていた人がわざわざ数人分のスペースを開けてくれる。
 せっかく無理矢理スペースを作ってくれたのに断るのも悪いと、スタッフ1名と、のぞみ、ひかり、が乗り込んだ時点で今度こそエレベータが満載状態となってしまう。
 真一と、こまちには、次のエレベータまで待つ以外の選択肢は無かった。
 他の数名のスタッフもバックヤードにいたのだが、下のフロアには、今エレベータに乗り込んだスタッフ1人しかいない事に気づき、スタッフ達だけはエスカレータで下る事になる。
 これにより、バックヤードには真一とこまちだけが残される結果となってしまった。

 周りに人が誰もいなくなり静まるバックヤード。壁のエレベータのフロアを示すランプが1階に到着した事を示している。

 真一は、先程も気になっていた瞬きの事をもう一度だけ聞いてみる事にした。

「なぁ。さっきの握手会の時も、最後の方で瞬き止まってたよな?」

 こまちは、真一の話を聞きながら「なぁに?」と可愛らしく首をかしげ、パチリと瞬きをする。

「今は動くみたいだけど、やっぱりなんかトラブル?まぁイベントはもうすぐ終わりだから今更あんまり関係ないかもしれないけどな。」

 真一のこの言葉に少し考え込むこまち。

 こまちの様子をみた真一は、またどうせ思わせぶりな態度の後、ナイショで片づけるのだろうと考え、ヤレヤレという様子で諦めた素振りを見せる。
 するとこまちは、周りに誰もいない事を確認するように少しだけキョロキョロすると、真一の腕をギュッと掴んで自らに引っ張り寄せる。

「え?」

 こまちは真一の驚く様子を無視して、真一の片手をさらに引き、何を思ったのか自らの下腹部。つまり和志の物が収まっている辺りに押しつけた。
 制服のスカートはこの部分がタイトなので、こまちが押しつけるとすぐに和志の物が分かった。
 軽く触れた程度では分からないが、こまちが強く押しつける上に、真一自身もここにある物を確かめるような触れ方をしたため、物の存在は良く理解出来る。そして、それは羨ましいぐらい固くなっていて、裏側の世界を垣間見せていた。
 こんな可愛らしい着ぐるみの中で、自分の息子をこんな状態にし続けて演技をしているのだ。それはそれは気持ちのいい時間が続いているのだろう。

 だが、そんな羨ましさも忘れてしまう瞬間が訪れる。
 こまちが真一に向かってパチリと瞬きをした瞬間、真一の手には和志の物がピクンと反応するのが感じ取れた。

「なっ・・・」

 驚いたように声を出す真一。
 だがこまちの瞬きは終わらない。
 瞬きをする毎にピクン、ピクンと和志の物に力が込められるように反応している。
 さらに、こまちが右目のウインクをすると、和志の物はピクピクンと2度連続反応を示し、左目のウインクの時は3度連続で反応する。さながらマウスのクリック、ダブルクリック、トリプルクリックのように、連続回数で瞬きの動作が変わるようなのである。

 一通り動作を見せた後、スッと真一の手を離し、再び人差し指を立てて口に宛て、可愛く小首をかしげて右目をパチリとウインクさせる。他の人にはナイショと言う事なのだろう。
 困惑する真一を楽しそうに見るこまち。

 瞬きやウインクは外部の人間のリモコン操作でも演者の口での操作でもない。
 演者が着ぐるみの中で自由を許される場所は概ね2箇所。表情と局部の状態だけである。
 冷静に考えれば、今回の着ぐるみの場合、顔の中に余裕は殆ど無い為、口で操作するとしても、その動きにつられて着ぐるみの表情が変化してしまう危険がある。とすれば、唯一自由を許された局部を利用して操作しているというのは、ホビー21製の着ぐるみであれば、あり得ない事ではない。
 好都合な事に演者はほぼ常に固い状態を維持させている。果ててから回復するまでの時間が魔の時間なのであろうが、それを除けば固くなった自分の物を動かす事が出来ればいいので、外部から悟られずに稼動するパーツを演者の意思で動かすには丁度いい。
 女性演者の場合はパッドを締める事で瞬きをするのか、あるいは前回同様男性型のパッドを身につけて男性演者と同様の仕組みで瞬きをするのだろう。
 なるほど。衣装も少し楽な物を選んだ理由はここにあったのだ。気持ち良すぎる衣装では、さすがの演者も快感に耐えられなくなるのだろう。そう考えると今日の衣装は刺激とのバランスが丁度良いのかも知れない。

 いずれにしても、ステージ上での3人は、瞬きをする度に、その裏側で気持ちよさに耐える吐息を漏らしていたはずである。
 そして、こまちの瞬きが止まった時間と言うのは、恐らく和志が果てた直後だったのである。

 真一が呆気にとられるようにこまちを見ていると、こまちは「素敵でしょ?」とでも言いたげにパチパチっと瞬きをする。

 この瞬きの動作も、和志が2度反応させているのだろう。
 自分の息子もパッドの中で固く大きくなっている真一は、それを反応させて楽しんでいるかの様子のこまちに対して非常に激しい嫉妬心を覚える。
 と、同時に、こまちの瞬きのペースに合わせるかのように、自分の息子を反応させて疑似体験のまねごとのような事もやってみる。
 もちろんその行為自体は余り格好がいい物ではないし、和志のように快感に包まれながらの行為ではないと認識していたのが、少しでも和志の感覚が味わってみたかったのである。

 だが、ここで自分が疑似体験する事でさらに和志の苦しみを知る事になる。

 息子を反応させれば瞬きをする。と言う事は、逆に言えば反応させたら瞬きをしてしまう事に他ならない。
 着ぐるみの中の快感は非常に激しい物なのは真一も良く分かっている。
 そんな着ぐるみを着て操演を続けていれば、自分の意思とは裏腹に息子が反応を繰り返す事など、ごく当たり前なのである。その事を見越し、パッド内部の反応が外からは分からないように作られている為、演者は息子の反応を気にする事無く演技しながら自由に感じられるのだ。
 所が、こまちの瞬きの仕組みが、真一の想像通りだとしたら、和志は自由に感じる事が出来ない。
 いや、感じる事は感じるのだろう。だが息子を好きなように反応させる事が出来ないのである。

 自然な瞬きに見せる為には、数秒間から10数秒間の我慢と1回の反応を繰り返す必要がある。動きや衣装によって感じ方もダイナミックに変化する着ぐるみの中で、このリズムを守る事は、実は相当に苦しい事のように思えた。

 こまちの衝撃的秘密を知った真一が、呆然としている間に、エレベータが到着する。
 今度は先程と違い誰も乗っていないようである。

 だが、衝撃を受けた真一は、エレベータに乗る事すら忘れてしまっている。
 それを見たこまちが、真一の手を引っ張ってエレベータに乗せる。
 少しだけ気が緩んだのか、あるいは真一に知られた事で安心したのか、こまちは一歩歩く毎に瞬きを繰り返しながらエレベータに乗り込むのだが、真一はその瞬きを見つめながら、和志の事を思うととても胸が締め付けられる思いだった。

 ドアが閉められエレベータが動き出す。

 エレベータに乗っている間も普通の感覚で瞬きを繰り返すこまちを見て、真一が言う。

「な・・なぁ・・無理しなくてもいいんだぜ?」

 真一は、和志に気を遣いつつも、見せつけないで欲しいという願望も入っていた。

 こまちは真一の言葉にコクンと頷きながら少し近づき、真一の手を取る。
 真一の手のひらを広げ、そこにこまちの指先で文字を書く。

「い」・・「ま」・・「も」・・・「と」・・「ろ」・・・・「け」・・「そ」・・・「う」

「今もとろけそう」

 真一が復唱するように呟くと、こまちはウンと頷いて瞬きをする。
 わざわざ真一の前でそんな嫌みにも聞こえる事実を告げるこまち。
 もちろん、和志はこまちの中で、むやみに反応出来ない息子の悩ましい刺激に耐え続けているはずであり、それは相当に苦しい事のように思えるが、苦しければ今ぐらいは自由になればいいのに、こまちは至って普通に瞬きを続けている。
 苦しそうな状況とは裏腹に、至って普通に可愛らしいこまちを目の前にして、和志の事を心配するどころか羨ましいと思ってしまう自分がいる事に気づく真一。
 悔しいがやはり立場の違いを実感してしまった。

 丁度その頃。2人の乗ったエレベータが動き始めて数フロア移動した辺りで、突然エレベータが停止する。
 一瞬室内灯も消えるが、次の瞬間電気は復活して事なきを得る。
 だが、エレベータは停止したままとなってしまう。


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