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テレビをつけると目当ての番組はすでに始まっていた。
『探偵タイトスクープ』
視聴者の依頼を受けて、タレントが探偵として派遣され
お悩みや疑問を解決するという地方番組だ。
俺たちの地元でも平日のお昼に再放送されているというのはつい先日知ったばかりだった。
局長「盛り上がっております探偵タイトスクープ、
いよいよ本日最後のご依頼となりました。
『探偵の皆さんこんにちは。
実は僕のクラスメイトについて調査して頂きたくてお手紙しました。
僕は某私立高校に通ってる高校生なのですが、少し困ってることがあります。
その悩みの種は僕のクラスメイトです。
彼女は信じられないことに普通の人間ではありません。
僕の学校にはイメージマスコットとしてmaiちゃんという白い髪と白い肌のアンドロイドのキャラクターがデザインされてたのですが、
彼女はそのキャラクターの着ぐるみなのです。
イベントなどで生徒がマスコットキャラの着ぐるみを着るっていうだけならあり得る話かもしれませんが、彼女の場合は全然違います。
朝から着ぐるみ姿で登校し、キャラクターとして授業を受け、部活に参加し、下校するまで決して素顔を見せることがありません。
なんとクラス名簿にもそのキャラクターとして名前が載っているのです。
逆に、中に入っているであろう生徒の情報は一切乗ってません。
彼女は自身の本当の姿を一切隠したまま、本物の生きたマスコットキャラとして毎日を過ごしているのです。
クラスの他のみんなも最初は戸惑っていたようですが、今はもう打ち解けて普通の生徒と何ら変わらないように接しています。
むしろ彼女は明るく性格もよく、勉強もスポーツも人並み以上にこなしていて学校全体の人気者と言っていいほどです。
ですが僕は他の生徒のように単なるクラスメイトとして見ることができません。
彼女の中に入ってる子のことが気になって仕方ないのです。
彼女の体はラバ-のような素材で覆われており肌の露出どころか一切の継ぎ目すら見当たりません。
顔の部分もよく観察したのですが目・鼻・口は造形されているもののそこに穴は一切空いてないため、どこから外を見てるのか、どうやって呼吸してるのかも分かりません。
そんな着ぐるみの中で彼女はどんな気持ちで毎日を過ごしているのでしょう?
思い切って直接訊ねてみたこともありましたが結局はぐらかされて終わりました。
彼女が言うには、彼女は本物のアンドロイドで中の人なんて居ないというのです。
だから脱ぐためのファスナーも無いし、呼吸や食事のための穴も必要ないのだと。
ですが僕は当然そんなことは信じられず、彼女の秘密が気になって夜も眠れない毎日を過ごしています。
優秀な探偵さん。
彼女は本当にアンドロイドなのでしょうか?
もし違うのなら一体どんな子が中に入ってるのでしょうか?
是非ともその正体を知りたいのです。
彼女が着ぐるみだっていう証拠を見つけてどうか彼女の秘密を暴いてください。
どうか宜しくお願いします』
う~ん、なんとも変わったご依頼ですね。
着ぐるみだっていう証拠が見つからない着ぐるみ・・そんなもの本当にあるんでしょうか??
このご依頼は、しむらけんじ探偵が調査してくれました。」
探偵「はいっ、ドーモ―!しむらけんじで~す!
という訳で調査に行ったんですが、思いのほか骨の折れる依頼でした。
果たしてその少女は本当にアンドロイドだったのでしょうか?
本物のアンドロイド発見となると探偵局始まって以来の大スクープになりますよ」
(オーディエンスの笑い声)
局長「それでは、VTRスタートです」
(場面転換)
探偵「え~、依頼者の学校の近くの某駅前にやってきました。
ただいま時刻は朝8時。
情報によると、ターゲットのmaiちゃんって子は毎朝この駅前広場に登場するらしいです。
おお~、なんやあれ!?
えらい人混みができてますね、行ってみましょう」
人混みの中心にその子はいた。
観光客らしい人混みを相手に次々と握手や写真撮影に応じている。
身に纏っている夏制服こそチェックのミニスカートと胸元のリボンが映える他の生徒と変わらないそれであったが
モデルのようにスレンダーなプロポーション、アニメチックな赤く大きな目、光沢を放つお人形のような白い髪と肌と
その姿はタレコミの通りどう見ても普通ではなかった。
探偵「うわっ、何あれ想像してたのと全然ちゃうやん・・!
ホンマにドキドキするくらい可愛いかも・・
と、とにかく行ってみましょう」
人混みをかき分けて進むしむら探偵。
探偵「ドーモ―!探偵タイトスクープでーす!
君かな?maiちゃんってゆーのは?
・・って、そんなん被ってたら喋られへんか(笑)」
mai「ええー!?もしかしてテレビ取材ですか?
コンニチハー!maiちゃんでーす!」
そのmaiちゃんという着ぐるみはカメラに気づくと可愛く手を振った。
探偵「うわっ!?びびったぁ・・最近の着ぐるみは喋れるかぁ、知らんかったわ」
mai「キグルミ・・?maiちゃんのデータベースに存在しない単語です。
なんですかそれ???」
maiちゃんは小首をかしげた。
探偵「またまたぁー、何言うとんねん!
しっかし君、可愛い声してるやん。
ほらほら、せっかくのテレビなんやしお面取って中の人の顔も見せてーな」
mai「ちょっと!ナカノヒトなんて居ません!変なコト言わないでください!」
探偵「そんなこと言うてどうせここら辺にファスナーが・・
あれ・・あらへん?なんでや!?」
しむら探偵はmaiちゃんの首筋や制服の裾をまさぐりだした。
mai「やーだー!やめてください!」
どうやらmaiちゃんを怒らせてしまったしむら探偵。
するとそこに同じ学校の制服を着た男子生徒が割り込んできた。
???「ちょっとちょっと!maiちゃんは今は観光のお客さんとの撮影会中です。
取材なら僕が対応しますよ」
探偵「お?なんや君は?」
???「『maiちゃん部』の部長の高木といいます。
maiちゃんに関する質問でしたら俺が代わりにお答えできますよ」
探偵「おー、助かったわ。で、なんや『maiちゃん部』て?」
高木「maiちゃんはアニメの世界から次元を超えてやってきた機械族の女の子です。
なので、この世界のことはまだよく分からないんですよ。
それで僕たちと同じ高校に通って人間の世界の事を学んでいるんですね。
僕たちmaiちゃん部はそんな世間知らずのmaiちゃんのこの世界での活動をサポートするために作られた部活なんです」
探偵「ほほー、そんな設定やったんやな。
で、そのmaiちゃんは具体的にはどんな活動やっとるんや?」
高木「こうして平日は地元で観光客の方々と触れ合い、週末には様々なイベントに出演することで地元や学校のPR活動を担っています」
探偵「ゆるキャラみたいな感じやな」
高木「どちらかというと地方アイドルといった方が近いと思います。
正直想定してたより人気が出すぎちゃって、生徒だけで運営するのは結構大変ですよ」
探偵「えっ、生徒だけなん?
てっきりどっかのイベント会社とかがが絡んでるのか思てたわ」
高木「それが実は俺と発起人の部員と・・全員合わせても片手で数えられる程度の人数しかいないんです。
殆ど発起人の行動力でここまで来た感じで・・、他はただただ巻き込まれたって感覚です、正直なところ」
探偵「ふーん、そうなんやー。
ところでこれから学校の時間やけど、maiちゃんは着ぐ・・今の格好のまま行くん?」
高木「俺にはそんなに言葉に気を使わなくていいですよ。
maiちゃんはステージ上やテレビの中だけでなく、実際にこの世に暮らすキャラクターってコンセプトで活動しています。
maiちゃんはこの三次元の世界では先ほど話した発起人の部員の家に居候してるって設定なんですが、
朝その家から登校し、放課後町の人々とのふれあい活動を終えて居候先に帰るまでずっとmaiちゃんとして存在してますよ」
探偵「ということは授業中も?」
高木「ええ、他の生徒に交じってmaiちゃんとして授業を受けてます」
探偵「休憩時間は?お昼ごはんとか食べなあかんやろ?」
高木「maiちゃんは昼食を食べない代わりに部室でエネルギーの充電が必要になります。
それ以外の時間は他の生徒となんら変わらず過ごしてますよ」
探偵「へ、へぇ~(汗
なぁ、いきなり来て悪いんやけど折角やから一日密着で取材させて―な。
テレビで流れたらPRにもなるしええやろ?」
高木「えっ・・、授業中はまずいけど休み時間とか放課後でしたら・・。
でもまずmaiちゃんに確認取らないと・・・」
mai「良いですよー!」
声とともにmaiちゃんが割り込んできた。
mai「さっきみたいなことはもうされたら嫌ですけど・・・、
でもでも!maiちゃんもテレビの前の皆さんとオトモダチになりたいです!
みなさーん!maiちゃんをヨロシクお願いしまーす!」
掛け声を共にテレビに向けてバッチリポーズを決める。
しむら探偵はカメラに向き直り小声で呟いた。
探偵「えー、思ってたよりだいぶ手強そうです。
しかしどんなご依頼も必ず達成するのが私のモットー、どうかご期待ください!」
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