悲しいけれど、これも仕事なんですよね(1話完結) [戻る]


※このお話は、過去の成田君のお話(「由佳里のバースデー」など)を読んでいる前提で話が進みます。着ぐるみの仕組み等は、新たな説明が無い限り、過去の仕組みを踏襲しているとお考え下さい。


こんにちは。成田行夫です。
今日は、僕に舞い込んできた新しい仕事をします。
とあるゲーム会社が最新のハードウェアを駆使して作成したフライトコンバットシミュレータ。
簡単に言えば全国の人間と対戦出来るとても良くできた戦闘機のシミュレーションなのですが、その映像のリアルさと、ヘッドマウントのディスプレイを使い、VR技術を駆使した体感システムによって、臨場感たっぷりのドッグファイト体験が出来るのです。

ホビー21は、このゲーム会社から依頼を受けてキャンペーンを行う事になったんです。
もちろんコンパニオンはホビー21の用意した着ぐるみ美少女です。

ホビー21の店舗内にある巨大ゲームセンターがそのキャンペーンの第一弾。
今回はここのサポートスタッフになったんです。

キャンペーンキャラクターは、SF的なシルバーとブルーの2色を基調としたパイロットスーツとヘルメットを装着しています。
ヘルメットは首の部分のリング状の器具によって固定できる為、実際カチッとヘルメットを固定すると、見た目上、宇宙服のように隙間が見えなくなる仕組みです。
もちろん身体は宇宙服と言うよりはかなりタイトに身体のラインを露出するパイロットスーツのようなデザインですけどね。

ヘルメットはキャラクターの顔がよく見えるように、と言う理由から、金魚鉢をひっくり返したように、すべてアクリルで出来た球状のヘルメット。アポロの月面着陸で使った宇宙服のヘルメットのようなデザイン、と言えば分るでしょうかね。

キャラクターは2人いて、アオイちゃんとソラちゃん。
二人ともスタイルは抜群でアオイちゃんが黒髪のロングストレート。ソラちゃんは金髪のふわふわカールのロングヘア。
どちらもヘルメットをかぶるために後頭部で髪を束ねています。

実は、アオイには北野が入ってるんです。そしてソラの方は僕の彼女の麻里が入ってるんです。
何故二人が選ばれたのかは僕にはわかりませんが、二人が選ばれたからこそ僕がサポートに選ばれた、と言う感じはしました。
恐らくですが、北野が指名した可能性はあるんですよね。

サポートは通常マネージャが割り当てるのですが、役者さんが「このサポートスタッフがやりやすい」と言った指名も出来るらしく、ローテーションや他の割り当てが無ければ、指名によって決定する事もあるんです。
おかげさまで最近は北野のサポートをすることが多い気がしてます。

でもそのおかげで、北野と麻里が羨ましい状態にあるのを「間近で見せつけられながらサポートをする」と言う事になり、ホントに逃げ出したいくらいツラいです。
仕事じゃなければ投げ出しています。けど、仕事ですし、嫌だと言うと訓練すらさせて貰えなくなってしまいますので、悔しいですけど頑張ってサポートする訳です。

楽屋にはすでに二人が準備を整えて座っています。
彼女たちの身体にフィットしたパイロットスーツの素材は、通気性が悪そうで、しかも伸縮性もそんなになさそう。
つまり蒸し暑くて苦しくて、その上動けばあちこちが突っ張って感じてしまう、と言う事になります。
にも関わらず、胸周りの上下左右の揺れに関するサポート力だけは弱いのか、彼女たちが軽く動くだけでも結構はっきりと大きな胸が揺れるのが分かります。
一方で、ウエストはギュッとしっかり絞られているのが分かり、バストやヒップラインとウエストの細さとの落差が、非常にセクシーです。
一度麻里に聞いたことがあるのですが、女性の場合、締め付け力は性感帯への締め付けに変換されるだけではなく、挿入されたパッドが膨らむような方向に力がかかるらしいです。
これだけだとそんなに気持ちいい訳では無いらしいですけど、この状態でパッドが反応して動くと、かなり感じるらしいですね。
中で大きくなって動くって事らしいですから。

もちろん北野について言えば、このウエストの絞られた感覚はそのまま、北野の固い物への締め付けへと変化しているはずです。
締め付けられるだけなら、実はすぐにその感覚には慣れるはずですが、その状態ってかなり敏感になってるので、そこで胸の揺れや衣類の擦れ、シワの感覚が加わると、トロけるような快感に変化するようです。

あのパイロットスーツを着ている限りずっとそんな快感が襲うのですから、北野の息子は今頃さぞうれしい涙を先端から滲ませながら頑張ってるはずで、そのことを思うだけで立場の差に悔しくなります。

唯一の救いは、二人が仲良し、と言う設定ではなく、ごく普通にコンパニオンと言う設定だったので、二人が楽屋からイチャイチャするような事が無かった点です。この姿でイチャイチャされたら、たぶん僕はトイレで泣く自身がありますから。

イベントが始まると、まずはゲームの開発責任者などのトークショーがあります。
その間は、キャラクターはただ立ってじっと笑顔を振りまいてるのですが、動けないと言う事はある意味切ない時間となっているはずでした。

苦しいと言えば空気。
スーツの素材的に呼気が外に漏れて抜けるとは思えません。とはいえ中で籠るだけだと呼吸できなくなってしまいます。
どうやっているのかはハッキリとは分かりませんが、何らかの方法であのスーツの中に呼吸用の酸素を取り込んでいるんでしょうね。

イベントが始まって1時間ぐらいが経過し、トークショーが終わりました。
いよいよ、集まったプレイヤーがゲームをする、と言う感じになります。
準備が整う間は、一旦アオイとソラは楽屋に戻るのですが、僕はその二人を観察して、もしかすると、と言う呼吸の仕組みを見つけてしまいます。

後頭部付近のヘルメットのほんの一部が、若干曇ったり曇りが取れたり、を一定リズムで繰り返しているんです。
後頭部の、丁度ヘルメット固定リングの付け根辺り。
良く見るとそこに隙間らしいスリットが刻まれているようでした。

さらによく見ると、リングの前側にも同様のスリットがあり、そのスリットはリングの模様に沿って外側とつながっているように見えます。

後頭部のスリットは、実はスーツのシルバーとブルーのデザインされたパイロットスーツの色の変わり目に沿って存在する太麺のパスタぐらいの細いチューブ状の飾り模様があり、そのチューブ状の模様はデザインの中で股間辺りに導かれているようでした。

僕の考えが間違っていなければ、このチューブ状の模様を通し、呼気が、股間から後頭部に伸び、一旦後頭部のスリットからヘルメット内に溜まり、その後、前側のスリットからリングの模様を通して外に出ているはずです。

もしもこれが事実なら、ヘルメットの中はロングスカートと同様、呼気がたまってとても苦しい状態のはずです。
また、後頭部は束ねた髪の毛があるので、リングのスリットがそれを覆ったりする事もある様子。
もしかすると、彼女たちの中には、彼女たちの髪の毛の香りが導かれているかもしれないですけど、その分呼吸は猛烈に苦しいんじゃないですかね。

あくまでも推測ですけど、形状から言って多分間違いないでしょう。
こんな苦しそうな装備で、しかも全身をぴちぴちに締め付けられながら胸を揺らしてコンパニオンをやってるんです。
これ、相当切ない仕事でしょう。
楽屋に戻った時ぐらいヘルメットを外せばいいのに、外す気配が無いのはなぜなのか、僕には理解できない、、、なんてことはありません。と言うより、もしもその構造が推測と同じなら、僕だって多分ヘルメットは外したくないでしょう。

ピッタリしたアオイの下半身。あの辺りには上向きに北野のモノが入ってるはずなのに、全くもって女性の下半身と言っていいスタイル。あんな中で、僕からは全く分からないまま気持ちよくなっている北野に心底嫉妬してしまいます。

しかも横には僕の彼女の麻里。
最近は麻里も北野とペアを組んだ仕事が増えている気がするのですが、彼女は浮気はしてないから、と言うので信用しています。
でも、こうして気持ちいいはずの世界を二人だけで共有している感じを見せられると、仕事とはいえ目の前で浮気されているような感覚にすらなってしまいます。

そんな休憩時間を終え、いよいよお客さんのゲームプレイが始まります。
コンパニオンたちは、お客さんの誘導と、ゲームプレイ画面を見ながら一喜一憂のリアクションをして周りを盛り上げる役。
僕は着ぐるみの様子を確認しつつ、着ぐるみの演者の体調の確認、それと、会場全体の安全確認と会場整理などの仕事です。

ですがゲームが始まった直後、アオイが不思議なリアクションを見せます。
特に何もされてないし、何もしてないのに、やけに切なそうに腰がヒクヒク反応したのです。
もちろん何も知らないお客さんは全く気づかない程度の反応ですが、ベテランの北野にしては分かりやすい反応だったので僕も気づいたのです。
衣装が全身ピッタリ覆うパイロットスーツタイプの物なので、僅かな反応も目立つ、と言うのもあるかもしれませんが、しばらくは何が理由でこの反応になったのか、僕にはさっぱり分かりませんでした。

ですが、すぐにその理由が分かったんです。
マネージャーからインカムを通して恐るべき事実が告げられます。

実は、あのゲーム筐体に組み込んだジョイスティックが、北野のパッドと繋がっている、と言うのです。
何でそんな事になったのか、と言うと、実は先日、ゲームのテストプレイをホビー21の中でやった時、開発チームの1人が遊びで作ったジョイスティックとのリンクシステム、を、ゲームに負けた演者の罰ゲームにして遊ぶ遊びをしていたそうです。
その時、北野が一番下手だったので、罰ゲームとして、着ぐるみに入って、他の誰かがプレイする時に応援しながら、スティックの感覚を伝えられ続けて、それに耐える、と言う遊びをしたんだそうです。

そもそも役者たちが、裏ではそんな遊びをしてると言う事に驚愕するとともに、北野達はいつでもそんなに気持ちよさそうで苦しそうな世界を味わえる立場なんだ、と実感してしまいます。

そして、その遊びをした後、スティックを元に戻し忘れていたらしく、今もそのまま北野のパッドに連動していることが分かったのだそうです。

今さら筐体のスティックを交換するのは時間がかかりすぎるので、このまま行ける所まで行くと伝えられました。

僕はこっそりアオイに近づき、事情は分かったからダメなら伝えてくれれば楽屋に戻すから、と告げると、アオイは大丈夫、と可愛らしくポーズします。
コンパニオンは1人いなくなるけど、アオイが抜けてもこの場は切り抜けられますし、そもそも着ぐるみの操演が困難な場合、役者は自らの判断で操演を中止する権利を持っています。
つまり、本当にツラく苦しければ、いつでも自らこの演技を辞める事は出来る訳です。
にもかかわらず、アオイは可愛らしくポーズして、このままこの場に留まる選択をしました。

マネージャの説明だと、レバーを握られるとそのまま中の人の物を握られる感覚に変わり、スティックを上下左右に動かすとそのまま動きが伝わり、ミサイルやバルカンを打つとその振動が伝わり、機体がダメージを受け取るその振動も伝わる、と言う恐ろしいものだそうで、そんなものに襲われながらコンパニオンをしているという北野を見て、かわいそうと言う感情より、羨ましいと言う感情しか浮かびませんでした。

そもそも、自らそうなる事を分かっていながら、ここに留まっているのです。
それってつまり、北野からしたら、そういう入力を受け入れながらコンパニオンで居続ける事を、望んでいると言う事です。
苦しくてツラくてここから逃げたいのに、立場上逃げられないならともかく、北野は逃げられるのにその場にとどまる事を選択した訳です。
そう考えると、よっぽどあの中は快楽の園になっている可能性が高いのだと思います。

スティックを乱暴に扱う人、優しく握る人、操作も激しかったり優しかったり、その感覚が全部北野に伝わっていると思うと、羨ましくて悔しくてたまりませんでした。
止めてと言う事も出来ず、ただただお客さんの操作に息子を翻弄されながら、それでもコンパニオンとして存在し続ける北野。

次から次に、いろんな人に、自分の息子と直結しているレバーを握られ続ける。
例えばそれが自分の身体の一部なら、手を使ったり、姿勢を変えたりして防御だって出来るでしょう。
ですが、あのレバーはアオイの身体とは全く違う場所に備え付けられた、ゲーム用のスティックなのです。
触るな、なんて言えるはずもなく、ただただ無防備に据え付けられているスティックは、お客さんの操作を受け入れ続けています。
それをただ近くで見る事しかできないアオイ。
もしかすると中身の北野は、そんなに乱暴に扱わないで、とか、そんなに握ったら出しちゃうよ、とか、心の中で思っているかもしれません。
色んな人に握られ、動かされ、ボタンを押され、ダメージを貰われ、その度にあのアオイの中で、自分の大切な息子が、次から次に襲ってくる想像を絶する様な快感の波に晒されながら、一切の抵抗を許されず、ただただアオイとしての振る舞いを続けている。
きっと何事も無いように笑っているアオイの中で、北野は僕が想像も出来ないような恍惚の表情を浮かべながら、溢れそうになる白濁の液体を必死に体内に留める戦いを続けているはずなんです。
どんなに切なくても、どんなにいやらしくても、腰を落として感じまくるような行為は出来ません。
ただただ、アオイとして存在する。そうする事が仕事であり、そうする限り、誰もがアオイの中のそんなにも切ない事情を察する事は出来ないのです。

呼吸だってものすごく苦しいはずなのに、アオイの態度にその苦しみが出る事はほぼなく、それ故にそこに隠された裏が気になって仕方ない僕。

さらに気づいたことがあります。
アオイの後頭部。ヘルメットの付け根辺りのアクリルの曇りが、先ほどと比べて明らかに大きくなってます。
着ぐるみのスーツ自体が呼吸の荒さを殆ど隠してくれるのですが、実際に中の人が吐き出す吐息の量だけは変えられません。
つまり、見た目は苦しげな態度を全く取っていないのに、実際には凄い量の吐息を吐いて、おそらくはヘルメットに籠る空気を吸い込んでいる。
アクリルヘルメットの曇りは、後頭部なので殆どのお客さんからは見えないのが幸いしているようです。たぶん空気の出入り口を後頭部に持ってきたのは、その辺りの、お客さんから見えにくいと言う計算もあったんでしょうね。
ちなみにこれはあくまでも推測ですが、仮にヘルメットの中に空気が籠っている状態だとしたら、ヘルメットのサイズ自体はそんなに大きくないので、むしろ床まで届くようなドレスのロングスカートの方が中の体積が多く、つまりこのヘルメットは、ロングスカートのドレスよりは空気が籠りにくい気がします。
ですが、実際にはスカートの場合、スカートの揺れや足の動きによって中の空気を入れ替える方法はあるのです。
ヘルメットの場合、固定されているのでヘルメット自体が動いて中の空気が対流する事はあり得ませんし、顔だって、足や腰のように空気を大きく対流させられるほど動かせるものではないでしょう。
とすると、見た目よりずっとヘルメットの中の空気は淀んでいるはずなんですよね。
可愛い笑顔と、アクリルのヘルメットの間にはその淀んだ空気が充満しているはずなのですが、その空気がどれほど蒸れて苦しい淀んだ空気なのかを知っているのは、あの笑顔の中に詰め込まれた北野だけなんです。
しかも、その空気は、彼女の束ねた髪の毛のフィルターを通してヘルメットとチューブの間を出入りしている。
どんな香りが中に伝わっているのかは僕には全く分かりませんが、想像しただけでもクラクラしそうな香りになった空気が中に伝わっている気がしてなりません。
もちろんヘルメットからチューブを経由して股間に導かれ、きっと穿いているはずの下着類のフィルターも経由して中に導かれているはずなので、その香りがさらに複雑になっているはずなんですけどね。

北野は、アオイの綺麗な目のどこかにある小さな視界を通し、外界を見ているはずなのですが、その周りにあるのは、新鮮な空気ではなく、自らが呼吸する空気と、その空気を外気から隔離するヘルメットのグラスを通さないと、本当の外界に辿り着かない訳です。
可愛らしい笑顔が見えているのであまり実感しないかもしれませんが、このパイロットスーツは、実質的にもう一つの着ぐるみとして彼女たちの内側にいる役者を密閉していることになる訳です。

いずれにしても、新鮮とは程遠い空気しか供給されていないはずのアオイの中。

その事で大変そうだとか可哀そうだなんて同情する素人みたいな感想とは異なり、僕はその状況に嫉妬心しか抱きませんでした。

もちろんですが、アオイだけではなく、ソラの方も、レバーからの快感伝達が無い、と言うだけで、その他については殆ど状況は変わりません。
つまり、ソラに入ってる麻里もまた、そのソラとパイロットスーツの生み出す快感や苦しさの中にあるんです。

僕は見ている事しか出来ないのに、二人はこうしてその世界を独り占めしながらみんなの前に立っている。
今までもそうですが、この圧倒的な差に、絶望すら感じることがあるんですよね。

そんな時、お客さんの一人が、ソラにもプレイしてみて、と言います。
ソラは少し驚いたようですが、お客さんから言われ、頑張る、とガッツポーズして筐体に乗り込んでしまいます。
ソラが、スティックと北野の連動、と言う事実を知っているのかどうかは不明です。

が、ソラがスティックを握る、と言う事は、僕の彼女である麻里が、北野の息子を間接的に握る、ってことになるんです。

これ、ホントに僕には地獄の光景と言えました。
二人が楽しそうに過ごしている様子と、その裏で北野が受けている刺激を想像すると、もうこの仕事から逃げたくて仕方ない、そんな状態と言えました。

せめてソラの中にいる麻里は、このスティックが連動していることを知らないでいて欲しい。
仕事だから、多分嫌と拒否はしないはずですし、それは仕方ない事。
でも、事実を知ってて握っているのと、知らずに握っているのでは、僕の気持ちも全く違いますし、麻里の気持ちだって違うと信じたい。
知ってて楽しんでるとしたら、これはもう合法的な浮気みたいなもんですから、そうではないと信じて見守るだけでした。

僕だって麻里にあんな握り方されたことないんですよ。実際。
でも北野は間接的に、とは言え、誰からも分からない状態で、こんなに倒錯的な環境下で、ああやって麻里から握られている。

ソラの手先の動きをついつい見てしまいます。力が入ってるような握り方の時など、できればもっと優しく握ってほしいと思ったり、早く撃ち落されればいいのにと思ったり。

でもソラも中々上手にプレイして、結果的に10分近いプレイ時間になっていました。
つまり、北野は10分近く、麻里に間接的に握られていた訳です。

プレイを終えたソラは、アオイに拍手で迎えられ筐体から降りてきました。
可愛らしい拍手の裏で、しっかり胸が揺れているのが分かりますが、アオイの中では今までずっとソラの手の握りやプレイ中のボタン操作、被弾などの感覚が伝わり続けていたはずで、その状態でさらにあんなふうに胸を揺らす事が、どれ程切ないか、想像してしまいます。

僕は経験値がゼロなので想像しかできないのですが、目の前で、北野は実際にそれを体感している。
ソラを上手い上手いと拍手で迎えるのに、そのソラに今まで10分近くいじめられ続けていたのですから、その真実を知った上で見る拍手は、僕にとっては非常にツライものでした。

その後も、アオイとソラはコンパニオンとして可愛らしく存在していました。
何だかんだでトータル5時間以上続いた仕事は、どうにか無事に終わり、楽屋に戻ったアオイとソラ。

僕が二人にヘルメットを外すか、と尋ねたら、ソラは大丈夫だからと拒否します。
一方で珍しくアオイは外すと言いました。
僕が手伝ってアオイのヘルメットのリングを動かし、固定されていたヘルメットを外すと、中からは物凄く蒸し暑い独特の匂いに包まれた空気が漏れ出していました。

この熱気と香りはすべて北野の呼気とアオイと衣類の発する熱や湿気によって産み出されたもの。
苦しかったんだろうなぁと思いますが、こんな中で仕事をしていた北野に心底嫉妬します。
このピッタリして動きにくそうなのに、胸だけが良く揺れるパイロットスーツを着て、呼吸をヘルメットにため込んで、しかもゲームのグリップによって感じさせられて。
ピッタリしたスーツの下半身の中で北野のそれは、どれほどの喜びを味わいながら存在していたのか、それを想像するだけで羨ましくて仕方ありませんでした。

ヘルメットを外したことで呼吸がしやすくなったはずで、当然ですが深呼吸することだって出来るはずなのですが、アオイは至って普通の態度でいます。
ようやく新鮮な空気が入りやすくなったのだから、大きく息を吸って足りない酸素を補えばいいのに、まるで僕に見せつけるように、わざと激しい呼吸を押し殺しているかのようです。
こんなかわいい笑顔の中で、思い切り酸素を取り込みたいのを我慢してでも、僕にいろんな想像をさせたい、と言う事なんでしょうか?
そんな回りくどい事をやって、ホントに僕が嫉妬すると思っているのでしょうかね?

正直に言います。
物凄く悔しいし羨ましいです。
思い切り深呼吸してくれれば、僕の感情の高ぶりは相当低い位置まで下げられそうな気がしますが、こうして我慢されればされるほど、僕の中にはモヤモヤした行き場のない嫉妬心が高ぶってくるんです。

多分、北野はそのことを理解してます。
だからこそ、今頃こんなに可愛くて苦しそうな姿の中で、欲しい酸素を我慢してでもわざと大人しい呼吸で過ごして僕の様子を楽しんで見ているんでしょう。
態度には出さないけど、彼から僕は丸見えなはずなんです。
笑顔に騙されているけど、本当の北野は、苦しさと快楽の狭間で、相当に恥ずかしい顔をしているはずなのに、僕からそれを見ることは出来ません。
一方で、綺麗な瞳のどこかにある秘密の視界からは、多分僕の様子は丸見えなんです。
同じ部屋にいて、手を伸ばせば触れられる位置にいるのに、この差はなんなんでしょうね。

この圧倒的とも言える距離感。至近距離なのにものすごく遠い北野達の場所。
これを改めて実感し、自分に対する絶望的な感覚を実感するのでした。

ちなみに、その夜に麻里にスティックの事を聞く勇気はありませんでした。
知らなかったとしても、だとしたら僕が伝えて知ってしまうと、彼女は間接的に北野のモノを握った事を認識してしまうでしょうし、知ってるとしたら、僕は今以上に絶望的な感情を持ってしまうでしょうから。

このことは僕の心に閉まっておくことにしたんです。

翌日以降は、さすがにスティックの連動機能は外されたようで、それによって北野が今日以上に羨ましくなる事はありませんでしたが、それでもあのスーツ姿でコンパニオンとして存在する2人に、嫉妬ばかりの苦しい仕事でした。

こんな苦しみを味わうなら、早く頑張って役者になれればいいのですが、僕の才能じゃそれは難しいって事なんですよね。。。

頑張るしかないなぁ。。。

--おしまい--


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