由佳里のバースデー -inside-(1話) [戻る]
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≪ 北野side ≫

 こんにちは。

 僕の名前は、北野大地。
 あ、口調が変だな。本当はいつも自分の事は「俺」って書いてるんだけど、特殊な環境にいると、つい、僕って書きたくなっちゃうんですよ。
 言葉もちょっと丁寧になっちゃうみたいだし。
 やはり、この環境で、俺、とか、~だぜ、なんて言葉は使いにくいんで、今日はこの口調で勘弁してくださいね。
 実は僕、今、着ぐるみの中にいます。休憩中なのですが、今日は皆さんにレポートを書いてくれってお願いされてまして。
 なので、今日は色々思い出して書いてみますね。

 今日僕が書く話は、夏休み期間中にホビー21が、ゲーム会社と一緒に企画した、由佳里のバースデーパーティーって言うイベントの初日の話です。
 実はあの日、僕はその主役になる由佳里に入っている役者でした。
 そもそも僕がホビー21で仕事をやり始めたのは、家から近所で時給も悪くない店員募集からでした。
 それがいつの間にか部署をたらい回しにされて、気付いたらこうして着ぐるみの中に入る仕事をしています。
 ホビー21の着ぐるみの中でも、美少女系着ぐるみは特殊扱いで、中々役者さんが集まらないのですが、僕はたまたま色んな試験にパスしたことで、こうして着ぐるみの中にいます。
 もちろん美少女系着ぐるみですから、凄くスタイルのいい可愛い女の子の中にばかり入ることになります。
 担当キャラクターは何人かいて、由佳里もその一人ですし、他にもバス旅行に行ったり、店内をグリーティングする専門のキャラクターにも入ります。
 由佳里は、どっちかというと特殊な立場の着ぐるみで、ゲームの販売促進用キャラクターなので、定期的に出番があると言うよりは、今回のバースデーパーティーとか、他にもいくつか企画されていたゲーム会社さんの販売促進用のイベントに借り出される専門という感じでした。

 元々、このゲームは恋愛シミュレーションとして世間でも評判で、僕も、友達連中もかなりやり込んでいました。

 中でも僕のお気に入りは、由佳里。

 仲がいい成田君や、後輩の加藤君も好きだって言ってました。
 由佳里は、ちょっと生意気そうに見えて、実はかなり可愛いと言うギャップに凄くキュンと来るのと、シナリオが良くできてて凄く泣けるんです。
 最後のシーンは、本当にウルウルする名シーンで、僕は成田君や加藤君と良くファミレスなんかで、あーでも無いこーでも無い、って話し込んでは盛り上がってます。
 そんな由佳里に僕が入る事になったのは、6月が始まった頃。
 イベント企画部署が契約したゲームのイベントに出る役者を探していたのです。
 たまたま、このシーズンは、店で売り出すコンセプトと、僕が担当するキャラクターが似合わないこともあり出番が少なかったのもあって、ローテーションに余裕があったんですね。
 なので、僕に白羽の矢がたったみたいです。
 ただ、普通ならキャラクター一体に1人の役者なんですが、今回は、夏場でそれなりに長時間で、しかも第二部は野外と言う事で、かなり体力を使うらしく、2人の役者で毎日ローテーションと言うスタイルを取る事になりました。
 由佳里の体型に変化出来る身体のサイズと、ローテーションの余裕があるもう1人の人物が決められました。
 それが、なんと、僕の後輩の加藤君だったのはちょっとビックリ。
 大ファンだった2人がそのヒロインの中に入れるって、ちょっとドキドキしますよね。
 しかも再現するのは名シーンであるバースデーパーティー。
 僕があの感動のシーンの真ん中にいられるって言うだけで、もうドキドキです。
 最初に由佳里のスーツが届いたのは、6月の中旬。
 加藤君と2人で、リハーサル室で試着しました。

 新品のスーツはいつもかなり窮屈なのですが、今回の由佳里はスタイルも良かったので、初めて中に入った時には、かなり苦しかったです。
 そうそう。
 ホビー21の美少女着ぐるみは、ちょっと普通の着ぐるみと違うって知ってます?

 だから中に入れる役者は限られていて、僕の友達の成田君も役者志望なんですが、中々試験をパスできないみたいなんです。
 そんな、ちょっと違う着ぐるみの仕組みを説明しますね。
 簡単に言うと、ウエットスーツみたいな全身タイツのようなスーツに入って、背中のチャックを閉めて、その全身タイツのようなスーツの上から、着ぐるみの皮、つまり、今回なら由佳里の身体を被るんです。
 由佳里の身体は、出入り口がお尻の割れ目にあり、全身が一つになった構造ですから、お尻の割れ目から潜り込むようにして入り込んで、顔をフィットさせ、身体、手、腰、と被って、足をぐいっと引っ張って伸ばして穿いて、最後にお尻の割れ目に出入り口を食い込ませると、あーら不思議。外からは出入り口が見えなくなってしまうんです。
 これで、例え水着になっても、下着一枚でも、着ぐるみの身体に繋ぎ目や隙間が一切無い状態になり、よりリアルなフィギュア人形のような身体になれるわけです。
 もちろん顔にも一切隙間がないのですが、視界は目の模様の一部が偏光グラスになっていて、外から見ると目の模様に見えるけど、中からはしっかり透明に透けて外が見えるんです。
 その裏側に着ている全身タイツ状のスーツも、目の部分はシルバーのマジックミラーのようなパーツで作られていて、外からは視界が見えず、中からは視界がクリアに見える仕組みです。
 目の模様の一部から視界を取るので、視界は広くはないんですが、それでも、結構目の位置から視界が近いので、見た目よりはよく見えています。
 着ぐるみの顔に隙間が無いので呼吸は大変な気がしますが、実際結構大変です。
 実は、股間にだけ、スリットがあって、そこにメッシュの布が貼られ、そこからチューブを伝わって顔まで空気を導くんです。
 これで、中の人は何とか生きていられますし視界も確保できますが、僕、普通の男ですから、可愛い女の子の身体に入り込むのは普通ならちょっとサイズ的に厳しいですよね。
 でも、これがホビー21の着ぐるみの凄いところ。
 特殊な電磁波と、ちょっとした中の人の条件が合致すれば、中の人の細胞を、機能を全く損なわずに一定割合だけ縮める事が出来るんです。
 このせいで、170センチの身長の男性でも、130センチぐらいの小さい身長の女の子にすら化ける事が可能です。
 外から見たスタイルは、完全に女性で、中に入ってる本人ですら鏡を見て欲情するぐらい良くできた女性の身体に化けられます。

 でもね。

 鏡に映る姿を見て欲情する前に、この着ぐるみの細胞を変化させる「中の人の条件」のせいで、中の人は絶えず過酷な状況を維持する必要が出てくるんです。
 その条件て、実は、中の人が興奮しているって事。
 中の人の物が固くなっているぐらい興奮していると、電磁波に細胞が反応してくれるらしいんです。
 それと、そう言う状態だと、着ぐるみスーツの皮膚が、着ぐるみの中の熱や湿気を逃がしたり、外部の空気を取り込んだりと言った機能も働くようになります。
 外部の空気は、例えば股間が完全に塞がるような状態でも空気を供給する為に機能するので、普段は殆ど股間の空気だけしか供給されないんですけどね。
 スキニーのピッチピチのジーンズを穿いてても、お尻の割れ目とか僅かな隙間を伝ってくる空気が、八割から九割らしいので、残りの一割りを補う程度。
 当然中にいる役者さんは、そんなジーンズの股間の香りが充満した空気を吸い続けるので、臭いし苦しいし、本当に大変ではあります。
 でも、なんとか呼吸が出来ると言うことで、苦しさを我慢すれば、ずっと着ぐるみの中にとどまれる事になるんです。

 つまり、中の人が興奮を維持していれば、ずっと女の子の体型のまま、こんなゴムのような素材の着ぐるみの中で長時間演技を続けられる事になります。
 ではどうやって興奮を維持すると思います?

 実は、役者は、最初に入る全身タイツのようなスーツの、股間に空いている穴に、自分の息子を挿入します。
 その穴は、息子を上向きに固定してくれるのですが、実は、その穴の中には人工筋肉繊維が敷き詰められていて、これが動いて息子に対して刺激が与えられるので、絶えず興奮した状態になるんです。
 この刺激は、主に、着ぐるみの身体と、その纏った衣装によって生まれます。
 胸や股間、ウエストなど、身体の各所に埋め込まれたセンサーがその動きを察知して、股間に伝えるのですが、例えば股間に指を這わせると、指先の感覚が演者の息子の裏スジに伝わることになります。
 胸の揺れはそのまま息子の揺れへ。
 胸やウエストの締め付けは息子の締め付けへ。
 その他にも、腕にまとわりつく袖や、ロンググローブの締め付け、素材の感触、ブーツ、タイツと言った太ももや足にまとわりつく素材の締めつけや感触も息子へ伝わる事になり、演者はその刺激を受けながら興奮を保って演技をする必要があります。
 感覚的には非常に高性能なオナホールが、機械的では無くもっと自然な動きによって動作し続ける感じ。
 説明してる今でも、絵筆が固い物を撫でまわすような切ない感覚と、適度な圧力で締め付けられながら縦横無尽に擦れる感覚で今にも出しそうな状態になっています。
 ですが、ただ快感を与えられると、割と直ぐに我慢できなくなってしまいますよね?
 そこで着ぐるみに内蔵のコンピュータが、演者の息子の状態や、体温、心拍、脳波等を監視し、イキそうになると刺激を弱め、落ち着くと刺激を戻し、と、常に固い状態を維持するように制御されるんです。
 ですから、慣れた演者は、場合によっては、半日近く固いまま我慢を続けることになります。
 もちろん我慢出来るからと言って楽なわけではなく、あくまでも固い状態を維持させられ続けると言うことなので、ずっと寸止めを繰り替えされる事になり、実は相当に苦しいのです。
 可愛い女の子を演じながら、ひたすらイキそうな快感を我慢し続けているんですから、それが苦しい事は想像出来ますよね?
 コンピュータ管理ですから、中々イケないでしょうし。
 でも、やはり、人間が感じる興奮が、コンピュータの予測を上回るケースとか、女の子が本当に感じてしまうような行為をされているときは、コンピュータが制御を止めてしまうので、そのまま感じ続けて、寸止めされることなく最後まで達します。
 ですから、操演中の役者さんは、一日に出せる回数を把握して、その範囲で、何処かのタイミングで適切に着ぐるみの中で処理することになります。
 あくまでも平均値で言うと、だいたい一時間につき一回出せるぐらいのペースであれば、操演に不都合はなくなる感じです。
 ただ、長時間操演の場合には、回数を考えて我慢しないと、後で大変なことになります。
 出した後、萎えても、20分ぐらいのうちに回復できるなら、着ぐるみの機能は働き続けるんですが、それ以上回復にかかると、徐々に機能が弱くなって、やがて停止します。
 すると体型も元に戻りますし、放熱も出来ないし、呼吸も補助が無くなるので、殆ど操演不能に陥りますからね。
 そうならないように、役者は自分の回数と相談しながら適切に処理するのも仕事です。
 こう言う苦しくて気持ちのいい着ぐるみに入って、女の子を演じると言う事で、特殊な環境に耐えられる人が少ないので、役者さんは色んな役をやる事になるんです。

 ただ、今回僕が入る由佳里は、もう一つ、特別な装備がありました。
 その為、特に入れる人が限定されるんです。

 その特別な装備とは、瞬きが出来る機能。

 着ぐるみの目が瞬きをするんですね。凄く自然で滑らかな瞬きをするのですが、その瞬きの制御は、普段は自動モードと言って、コンピュータがやっています。
 ある程度リアルになる様に、ランダムに適当なタイミングで瞬きをするんですね。
 これだけなら、もちろん中に入る人を特に選びません。
 他の着ぐるみと同じような条件で入れるはずです。
 でも、この瞬きは、自動モードから、手動モードに切り替えることが出来るんです。
 この手動モードに切り替える作業を始め、全ての瞬きの操作は、僕の固くなっている物を使って行うんです。
 着ぐるみの中で、外から目立つことなくある程度自由に動かせる場所として、この固くなった物を利用するのですが、自動モードから手動モードに切り替えるには、僕の物を着ぐるみの中で、ヒクヒクヒクッと3回連続で反応させるんです。
 こうすると、モードが切り替わったことを、股間パッドがブーーンと軽く振動して知らせます。
 その振動は外からは全く分からないはずの些細な振動ですが、中にいる僕にとっては相当ダイレクトな振動なので、実はかなり切ない物になるんです。
 でも、この切ない振動を感じないと、モード切替が完了したことになりませんから、歯を食いしばって我慢する事になります。
 こうして、嵐をやり過ごしたら、そこからは、僕の固くなった物をヒクヒクと反応させることで色々な瞬きを実現出来るんです。
 個別にヒクヒクと反応させると、その反応に合わせて瞬きが同調しますから、僕の演じたいリズムで固い物をヒクヒクさせてあげる事になります。
 それ以外にも、3回連続なら右目のウインク、4回なら左目のウインク、そして力を入れっぱなしにするとその間目を閉じる事も出来ます。
 このようにして、自分の演技に合わせて由佳里を瞬きさせてあげることが出来るのですが、一旦手動モードになった瞬きを自動モードに戻すのが結構苦しいんですよ。

 と言うのも20秒の間、一切固くなっている物をヒクヒクと反応させてはいけないからなんです。
 反応が20秒間無かったら、モードが切り替わると言う仕組みのために、演技で必要なシーンを終えたら、20秒間ひたすら快感に反応出来ず、我慢を続ける必要があります。
 役者仲間の間では、この20秒を、地獄の20秒間、なんて言ってます。
 地獄の様な20秒の快感、と言う意味ですよね。
 こんな苦しい装備があるため、中に入れる人は、普通の着ぐるみよりも更に限られるんです。

 こうして、僕は、こんな苦しそうな由佳里の試着を済ませ、その後はイベントの進行表に従ったリハーサルをこなし、七月に入ると、衣装のフィッティングも行いました。
普通、着ぐるみ一体につき衣装は最低2セット用意されるのですが、今回は、二体で3セット。
 と言うのも、ローテーションで1日おきに交互に出る上に、身体のサイズが全く同じになるので、僕の入る由佳里と、加藤君の入る由佳里が、衣装を共有する事になるんでするね。
 ドレスは、何着かあるのですが、基本的には、ウエストから上はタイト、下はゴージャスなプリンセスラインを保ったロングスカートで、スカートの裾は、床までついて引きずる程に長いので、かなり息苦しいものでした。
 中に穿くパニエも、柔らかく股間とか息子が隠された下腹部を擦るので、着心地もかなり嫌らしく、初めて試着したドレスは、さすがに僕でも30分我慢できずにイッてしまいました。
 あの、サテンに包まれる感じは、その快感に溺れてしまいたくなる程に気持ちいいのですが、その状態で、由佳里を演じるのは本当に苦労しそうでした。
 でも、だからこそ凄く興奮もしました。
 僕たち2人だけが体験できる、由佳里とドレスの産み出す悩ましい世界。
 試着の段階だけでも、かなり悩ましいことが分ったのですから、それは興奮しますよね。
 ドレスの中に充満する空気もまた、興奮します。
 熱も湿気も篭もりやすいし、シルクの香りやパニエ、タイツの香りも混じって凄く埃っぽい、でもそれこそが由佳里の下半身から伝わる素敵な空気で、それは役者さんだけが楽しめる空気。
 世の中で、僕と加藤君だけが知っている世界という事になります。
 それは興奮しますよね。
 試着が終わった直後ぐらいからは、一週間のうち4日か5日は、仕事の合間を縫ってのリハーサルや、時には休日を返上してのリハーサルもしました。
 イベントの進行に合わせての演技は、演技指導の先生に何度も怒られながらやり直させられたのですが、怒られながら余りにも気持ちよくて出してる事もしばしばありました。
 それでも先生に気づかれないのは、この着ぐるみの醍醐味です。
 ドレスを纏った由佳里の苦しさを嫌と言う程実感しながら、演技の練習が繰り返し行われていました。
 特に集中して練習したのはダンス。
 一応普段から着ぐるみの演技の研修の中で、ダンスと言うのはあるのですが、社交ダンスは初めての経験でしたし、ドレスと言う重装備のまま優雅なダンスを踊るのは、かなり苦しい物でした。
 ただ、それでも僕らはベテランだったのでなんとかなりましたが、これで苦労していたのはメイドさん役の人達。ローテーションで15人の新人の役者さんが入るのですが、ほとんどの役者さんは、メイド服を着てダンスをするだけで、かなり気持ちよかったらしく、中には気持ち良すぎてしゃがみ込んでしまうメイドさんもいました。
 僕や加藤君の入る由佳里は、そんなメイドさんを優しく介抱してあげるのですが、見た目に優しく由佳里が介抱してあげているのですが、メイドさんの中の苦悩は全く晴れていないようです。
 新人君が苦労するのは分かりますが、由佳里のドレスに比べたら、メイド服の苦しさなんて序の口ですから、そのぐらいで態度に出しちゃうのは役者としてまだまだです。
 ホビー21の着ぐるみに入ると言う事の苦労を教えてあげる為にも、僕はそのメイドさんを凄く意地悪に介抱してあげるんです。
 優しく身体をさすったりするんですが、もちろんわざとメイド服を身体に擦りつけてあげるんで、余計に気持ちよくなってしまっているはずです。

 まぁそんな楽しいリハーサルをこなしつつ、八月の本番に向かって準備を進めていくわけですが、途中でイベント企画の別部門が、テスト的に今後のショー用にイリュージョンを試してみたいと言い出しました。
 今回のイベントチームとは全く別のチームで色々テストしていた機材が、今回のイベントのメンバー構成的に使えそうだと知り、打診して来たようです。
 さすがにイベントのスケジュールはある程度確定してるので、そこにイリュージョンの時間を毎日ねじ込むのは、操演する僕らの体力的にも厳しいと言う事で、初日公演のみのスペシャルなショーとして、イリュージョンを行う事になりました。
 イリュージョンの基本は、ゲームの主人公で由佳里の彼氏役をやってる男性が演じるので、彼はかなりの練習を積んでいるようですが、由佳里はアシスタントなので基本的にはタイミング良く道具類を彼に渡すだけ。
 でも、この練習の殆ども、加藤君の由佳里がやるだけで、僕は殆ど練習らしい練習はしなくて良かったんです。
 なぜなら、僕と加藤君は、このイリュージョンの最後の方で行われる、瞬間移動と言う大がかりな仕掛けのタネになるから。
 2つの箱の、片方に加藤君の演じる由佳里が入り、もう片方の箱から僕の演じる由佳里が出てくるのですが、僕は出てくるまでの時間、箱の中で隠れる事になりますから、アシスタントとしての仕事は出来ないんです。
 なので、イリュージョン中はほぼ加藤君の演じる由佳里がアシスタントをするので、僕は箱に隠れて出てくる段取りの確認と、一応箱に入って出てくる練習をしておきました。
 由佳里は50センチ四方の正方形の箱の中に隠れたまま、ショーの会場に運ばれて、そこでタイミングを見て登場するのですが、その箱が非常に小さく、かなり窮屈な空間なのと、一応四方の面をロックされてしまうので、脱出方法の確認等を行います。
 本来、今回のイベントは、二人の由佳里が日替わりローテーションで演じる事になっていたのですが、このイリュージョンのために、この初日だけは、二人の由佳里を上手に使って演じることになっています。
 加藤君が入る由佳里は、イリュージョン中はチャイナドレスになっているので、入れ替わるタイミングで箱に隠れる時に、まだ衣装が邪魔にならないのですが、僕の由佳里は、プリンセスラインのロングスカートを持つゴージャスなドレスを着て箱に入る為、かなり入りづらくて大変です。
 一応箱の底には空気穴があって、外からファンによって送風されているのですが、それでも衣装の布が空気をしっかりと遮ってくれるので、箱の中はかなり苦しいのも事実です。
 この状態で何十分か箱の中で耐えなきゃいけないのですが、練習で初めて箱に入った時、15分でも苦しいと感じるぐらい箱の中は過酷でした。
 息苦しいのも蒸し暑いのもそうなのですが、なにより、ひたすら気持ちがいいのです。
 息苦しさについては、ある程度想定していたので、スカートを上手に束ねて、なるべく送風の穴をスカートの布で塞がず、スカートの中に導くように出来れば、箱の外でじっとしているよりも、少し苦しい程度で済むのですが、箱の中は熱が余り逃げずに篭もりますのでかなり蒸し暑いですし、当日は野外でショーを行うため、かなり蒸し風呂になる事は予想出来ます。
 その上で、くせ者なのが送風ファン。
 送風ファンは若干立て付けが悪いのか、ブーーンブーーンと軽い振動をして回るクセがあるようなのです。
 箱の中で座り込むと、お尻の重みで送風口に貼ってある厚めのタイツ生地が押しつけられて、ファンと接触するんです。
 つまり、お尻は、ファンのブーーンという振動を感じてしまうわけです。

 箱の中で座る位置を変えれば振動は感じなくなりますが、送風口が遠くなってかなり苦しいので、現実的には、箱の中で呼吸するために、この送風口の上に座らなければいけません。
 そのせいで、ずっと緩いバイブレーションを感じながら箱の中に入る必要があるのです。
 これは加藤君も僕も抗議したのですが、設計担当は、ファンをがっちり固定する案は拒否しました。
 理由は、がっちり固定すると遊びが無くなり、お尻の圧力でファンが止まってしまうかもしれないから、だそうです。
 少し箱をファンから浮かせて離せば解決すると思ったのですが、今更その設計変更は厳しいらしく、僕らは仕方なくこの箱でのショーを行う事になりました。
 また、このファンによってずっと疼くようなバイブレーションを感じ続けるだけではなく、箱に体育座りをもっとコンパクトにしたように、小さく丸まって入るので、ドレスの締め付けとシワの感覚が非常に強くなります。
 その上、元々感じやすい身体を小さく丸めている状態なので、少し身体にギュッと力を込めると、いろいろな所に力がかかって、余計に気持ちよくなるんです。
 膝を抱えて丸まっているので、胸は自分の膝と身体に挟まっていますから、引き寄せたら当然締め付けられますし、お尻や股間辺りもパニエなどの布が覆っていますから、ちょっとキュッと股を閉じたり緩めたりすると、その布のシワや擦れはかなり切ないのです。
 また、膝を抱えて座っていると言う事で、下腹部に格納されている僕の息子も、さらに太ももの圧力を根本付近から圧迫されているので、太ももや下腹部にちょっと力を入れると、それだけでトロけるような締め付けを感じます。
 つまり、箱の中で丸まってじっと隠れていると、ちょっとした身体の力の微妙な変化でもかなり感じてしまうと言う事。
 気持ちいいからと調子に乗ると、どんどん体温も高くなり、息苦しさも増しますから、疼いても我慢し続ける精神力が要求される事になるんです。
 一応、箱の中ではリモコンによって外部に緊急度を知らせる事が出来るので、状況に応じてボタンを操作する事になりますが、その辺りのリハーサルも含めて、何回か箱の中に留まる練習もしました。
 リハーサルでは20分ぐらいまでは入りましたが、本番では30分は箱に入る予定で、僕としては、その間箱の中で我慢出来るかが一つの勝負だとは思っています。
 ただ、お客さんの前で、箱の中に、ドレスに包まれた由佳里として身を潜めている事を想像したら、なんかそれだけで興奮するんですよね。
 リハーサルと違って、その箱に入ってる事を知らない人達の前で、じっと箱に入ってるのってなんか素敵じゃないですか?

 こうして8月の本番に向けてのリハーサルはなんとか無事に終了し、いよいよ本番当日となりました。

 今回、由佳里のサポート役は、成田行夫君。そう。僕の友達で、普段は、

「成田~」
「北野君~」

 て呼び合う仲。
 なんか昔からの腐れ縁なのに、成田君は僕に敬語使うことがあるんで、あんまり遠慮するなって言ってるんだけど、なかなか性格は治らないみたい。
 でも、僕も着ぐるみの中にいる時だけは、成田君と似たような口調になっちゃうんだけどね。

 ただ、成田君は役者志望で、色々と研修には参加しているみたいなんだけど、もう一年以上先に僕が役者になってこうやって着ぐるみに入る立場になっちゃったから、それが少し遠慮を産んでるのかも。
 まぁ羨ましい気持ちはあるのかもしれないけど、普段は普通の友達として馬鹿話出来ると嬉しいし、実際僕はそう接してるつもりなんだけどね。
 とはいえ、彼の気持ちは痛いほど分るんだ。
 僕も、きっと成田君の立場だったら、色々悔しいし羨ましいと思うだろうから。
 だから、頑張って欲しいんだよね。

 成田君は他のスタッフ達と違って、一応着ぐるみ演者の選抜メンバーには入ってる。
 つまり、後は彼の努力と我慢次第で、いつでもこっち側に来る事が出来る立場なんだ。
 ルートが用意されていない人なら、可愛そうだからなるべく着ぐるみのことは触れないであげたいし、なるべくホントのことは隠して、羨ましがらせないようにしてあげるんだけど、成田君の場合には、気持ちの問題が大きいんだと思うんだ。

 特に、後輩の加藤君に先を越されたのは相当に悔しかったみたい。
 加藤君が着ぐるみの演者に合格したときの、成田君の独特の表情は今でも忘れられないよ。
 おめでとうって言いながら、すごく複雑そうな表情だった。
 悔しかったんだろうし、羨ましくもあったんだろうし、何より、自分に才能がないって思ってしまったんだよね。

 でもね。

 成田君、今、研修では30分ぐらいは着ぐるみに入れるんだ。
 実は演者の合格ラインてのは、30分以上演技できる事、が目安なんだって知ってます?
 30分演技が出来る人なら、訓練すればだいたいその10倍ぐらいの時間までは耐えられるようになるらしいんです。
 つまり、彼、惜しいところまで来てるの。
 なのに、中々そこから先に行けないまま、半年以上経っちゃった。

 最初は気を遣って、あんまり羨ましがらせないように発言に注意したりしたけど、最近だんだんそれじゃ駄目なんじゃないかな、って思うようになってるんだ。
 少しぐらい、強く悔しいとか羨ましいとか思わないと、頑張らない気がするんだよ。
 加藤君に先を越されたのは悔しいだろうけど、人と比較しても仕方ないじゃん。
 むしろ目の前にあるはずの、楽しい世界への入り口を、自分で開けようとしないと。
 だから、僕は、最近は、わざと、少し意地悪な事もするんです。
 成田君が僕の着ぐるみのサポート担当になると、なるべく彼が羨ましくなるように。
 もちろん、そうする方が僕自身も興奮できるし、楽しいってのもあるんですけどね。

 そして、今回、このイベントは絶好のチャンス。
 なにしろ由佳里は彼も大ファン。

 アダルトゲームではないのに、同人ソフトとか買って来て、アダルト物もプレイして、オカズにしているとか言うんだ。
 まぁ僕もそうなんだけど、そのぐらい由佳里への拘りはあるはずなので、その由佳里に僕が入るってのは、彼にとっては、あんまり嬉しい事ではないかもしれない。
 自分の好きな女の子の正体が、実は友達だって分ってたら、なんか悔しいじゃないですか。
 僕でもそう思うんだから、彼ならきっと仕事と割り切ってサポートしながら、内心はかなり悶々とするんじゃないかと思うんです。
 そう言う彼の気持ちを上手に利用して、由佳里の身体を使って、彼を興奮させてあげられれば、中にいる僕と加藤君に対する嫉妬心が原動力になって、今後の研修で頑張ってくれるんじゃないかなーって思うんです。

 まぁそれよりも何よりも、僕自身、由佳里のファンなので、彼女の中に入って、彼女の身体に虐められる事を想像すると、それだけで固くなって来るんですけどね。

 本番当日は、成田君達は少し先に会場に入って、準備を始めていて、僕ら後発組は、ホビー21で由佳里に入って、私服を着て、専用のバンで移動するんです。
 専用のバンは基本的には役者が着ぐるみから出てくる事は出来ないのですが、休憩したり着替えたりって事ぐらいは出来る仕組み。
 他に、小道具とか大道具も詰め込むスペースがあって、今回はイリュージョン用の大道具も詰め込む為、2台で行きます。
 と言っても、まずは僕の由佳里が乗ったバンが先に行き、30分以上遅れて、加藤君の入る由佳里とイリュージョン用の大道具が乗ったバンが到着します。
 出番の関係で、加藤君の入る由佳里は、僕よりも後で来ればいいことになってました。

 僕が由佳里の中に密閉されたのが13時40分。
 衣装はゲームに出てくる設定の私服で、ミニスカートとキャミソールなので、ホビー21の着ぐるみとしては、それ程苦しくない衣装です。
 ただ、下着だけは現地で交換が出来ない予定なので、最初からドレスに合わせてシルクの下着を穿いていきます。
 シルクの下着って通気性が皆無ですから、実はかなり苦しいんです。
 その上、ツヤツヤの肌触りがかなりセンサーとの相性がいいみたいで、由佳里の中の僕の固いモノは、ツヤツヤのシルクの滑らかな締め付けをダイレクトに感じる事になります。
 これ、今日ずっと着けなきゃいけない下着なんですが、ツヤツヤすべすべなのに、太ももを少しでも閉じると、股間にシワが何本か出来て、それがまた僕の裏スジを優しくなぞるので、この下着だけでも実はかなり悩ましいんです。

 移動中のバンの中では、まだこの下着の穿き心地にもなれていませんので、非常にムズムズしてましたが、周りに事情を知ってる人がいませんので、僕は由佳里に徹します。
 当然、周りからはゲームに出てくる由佳里がバンに乗ってるように見えているので、スタッフにも、可愛いねって言われますし、由佳里はそれに合わせてちょっとツンとしてあげます。

 ええ。由佳里は、元々生意気キャラなんです。
 学校では理解されずに孤立しそうな所を主人公の男の子が救ってくれる。
 そう言う設定なので、こう言う場面では、ちょっと生意気そうな態度でいる方が、キャラクターとしては似合うんです。
 実際、スタッフの中には、このゲームのプレーヤーもいるみたいで、僕の演じる由佳里の動きに、かなり萌えている様子。
 こうやって男の人の心を弄ぶ感じって、着ぐるみの中に入っている立場だから味わえるんで、凄く興奮するんです。
 ミニスカートの裏側で疼く、僕の固くなったモノは、そんなスタッフからは全く見えないので、それもまた興奮します。

 今日は湿度も高くて夏日になるらしいので、そう言う環境の悪さも興奮を高めます。
 バンの中は空調が効いているとは言え、やはり夏の空気ですから、楽ではありませんし、バンから移動する時は外気に触れますので、その短時間でも、由佳里の中の温度と湿度は急に上がるんです。
 蒸し風呂ですけど、一応着ぐるみの身体が温度と湿度を逃がしてくれるのですが、それでは追いつかないぐらいに環境が悪くなるので、息苦しさと蒸し暑さはかなり高くなります。
 バンがイベントの会場に到着したのが14時20分。

 既に現地の楽屋には成田君もいて、準備を始めている所でした。


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