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まるで夢のようだったあの夜から数日が経っていた。
いつも通りに授業を受け、いつも通りに同級生達と過ごす一日。そんな日の放課後、先生が声をかけてくる。
『秋桜さん、最近調子がいいんじゃない?』
『え?そ、そうでしょうか・・・』
『だって、授業中も何だか生き生きしているじゃない。何か生きがいを見つけて身体に活力が沸いてるって感じね』
『生きがい・・・そうかもしれませんね。』
『この間の夜は、あなたにとってプラスになったみたいでよかったわ』
確かにそうだった。あの夜の後、何だか今までよりも何となくやる気みたいなものが上がっている気がする。
あのイベントを、もっと楽しみたい。そう強く願っている自分が居る。
その為にやっておくべきことも、わかり始めていた。自分にできうることをしっかりやって、ポイントを溜めていくことだ。
あの後、日曜の午後からはイベント参加者用のサイトにアクセスしていた。
このサイトは参加者間のコミュニティを支援するための場所となっており、他の参加者とメッセージなどで交流が可能だったのだ。
ハンドルネームや各種情報の設定を行うことが可能で、日記をつけたり、イベントで撮影した写真を公開することもできる。
そして、ここではイベント会場で出来た「外装スーツのレンタルやオーダーメイド」も出来るのだ。
基本的にはイベント会場内でのサービスと同様だけれど、スーツのレンタルに関しては「当日のみ」以外に「3日間」「7日間」のプランを利用可能。
利用者の自室に届けられ、室内で着替えて楽しんだり、セルフ撮影した写真を公開することができる。
また、本人同士で同意すれば、他の参加者の部屋に持ち込んで楽しむことも可能だという。
ちなみに本人同士の同意の場合、お互いの素性を明かす必要があると規約には書いてある。
また、もしこの際に問題行動があった場合は参加資格停止などの罰則が科せられるとのこと。
オーダーメイドに関しては、会場内のサービスと変わりはない。注文を行ってからスーツの製作が開始され、完成後自室に届けられる。
そして、そのスーツは自分だけのものとなり自由に着て楽しむことができるのだ。(勿論着れる場所は限られてくる)
スーツの発注・購入にはレンタルと同様にポイントが必要となる。勿論、レンタルとは桁が違う価格で。
だけど、このサイトを開いた時点で僕はどうするべきかハッキリと決めていた。
数分後、PCのモニターには「発注完了しました。」というメッセージが表示されていた・・・
数週間後の夜。僕は部屋の玄関先を綺麗にして、大きなダンボール箱を二つ並べていた。
一方は口の開いた、人一人入るサイズのダンボール。もう一つはそれより小さいダンボール箱・・・
そして、自ら大きなほうのダンボール箱の中に横たわる。その姿は白い素体姿だった。
暫くすると、ドアの鍵が外から開けられ、着ぐるみ姿で制服を纏ったクリーニングスタッフが現れる。
スタッフは手早く僕の入ったダンボールに封をして、二つの箱をカートに乗せてしまった。そのまま、会場へと運ばれる・・・
『ようこそおいでくださいました。入場手続きをお願いします』
僕は再び、この会場に足を踏み入れた。この間の受付嬢さんがまた迎えてくれる。
『BLUEROSEさんですね。どうぞお入りください!』
今回は、事前にハンドルネームを作っておいた。これから先何度も利用することになると思ったからだ。
ずっと名前無しだと確実に不便になってしまうから。
判別のため、ICカードのネーム欄にハンドルネームを記入することが推奨されており、
これをケースに入れて首から下げたりすることで、名札の役目を果たす。
受付に軽く会釈をして、僕はもう一つの箱を載せたカートを押しながら空いた更衣室へと向かった。
更衣室のドアにロックをかけると、僕は一度呼吸を落ち着けた。
股間まで伸びたチューブを介しての深呼吸を何度か繰り返しながら、視線を目の前の箱に向ける。
これから、この箱の中身を僕が着るのだ。
ゆっくりと、ダンボール箱のテープを剥がし、蓋を開ける。
そこから現れたのは、大きなハート型のプレート。そして、それを中心に構成される、少女の形をした装甲の集まり。
白と紫がかった青で構成されたアーマーに、ツインテール型の装甲があしらわれた頭部。
それはあの少女型メカの、所謂2Pカラー仕様だった。
僕は、溜まりに溜まってたポイントを使用し、自分の素体スーツのサイズに合わせたこのスーツを発注していたのだ。
そして、昨日やっと完成品が自室に届いたばかり。僕は、最初に着る場所を自室ではなく会場にすることに決めていた。
スーツを箱から取り出し、じっくり眺める。
頭部は独立しており、単独で装着する仕様になっており、うまく分割されたパーツを素体の頭部にはさみこむようにして装着するようだ。
スーツのメインとなるボディ部分は、硬質的ながらもある程度柔らかい樹脂で成型された光沢のある装甲が全身を覆う形となっている。
装甲の内側にはキャットスーツ状の黒いラバー素材のインナーがあり、その上から装甲が被さっているとのこと。
このインナーは通常着る外皮スーツと同じ素材・構造で作られており、面積は少ないものの外気を取り入れる部分は存在する。
胴体を包み込む装甲は、無機質なのに女性的な肢体のラインを形成した黒い装甲となっており、魅力の一つである。
装甲が被さった部分にもインナーが外気に触れ易いよう工夫がされており、スーツの皮膚呼吸はある程度可能となっている。
腰にはスカート状のアーマーと、リボン状のパーツが配されており、これが絶妙な可愛さを持っている。
股間部には、目立たないように呼吸用スリットとメッシュが配されている。
両脚にはニーソックス状の装甲が配されており、この仕様では左右非対称のカラーリングだ。
その他、足にはスニーカー型の装甲が、肩には丸みを帯びたアーマーが備わっている。
背中にはバックパックが配される構造になっており、その奥にスーツに入るためのジッパーが隠されている。
早速ジッパーを開き、白いラバーに包まれた身体を脚から差し込んでいく。
インナースーツも装甲も、サイズぴったりに作られているために末端まで脚を入れるのには時間がかかった。
けれど、下半身全体が装甲に覆われた時には、それ相応の満足感があった。
スーツと装甲は、ただでさえ素体スーツでぴちぴちに締め付けられている僕の身体を二重にじわじわと締め付けてくる。
けれど、その拘束感が気持ちよかった。はやく、全身包まれたい・・・はやる気持ちを抑えながら上半身も着込んでいく。
ウエストから人工の乳房まで、スーツが覆う。胸のハート型のプレートは、僕のスーツの乳房の形状にフィットするように作られており、
ぴたりと嵌まった瞬間、不思議な快感がへその下へと流れ込んでいった。
胸部をがっちりと保護するように覆うハートのプレートは、前回着たレオタードとはまた違う密着感を与えてくるのだ。
乳房をくまなく覆っているのに、柔らかくないプレート。たまらなく、不思議な感覚だった。
首から下がスーツに覆われ、残すところは背中と頭部のみになる。顔だけ白い素体を覗かせる状態は、
昔どこかのゲームで観た、ロボットの頭部装甲だけが破壊され素体が露になった状態を彷彿とさせる。
そんな頭部に、分割したヘッドパーツをヘルメットのように装着する。後頭部部分と前頭部部分を素体に挟み込み、目立たない場所にある金具で固定。
そして最後に、特徴的なマスクパーツとバイザーパーツを固定して、顔が完成。
サービスで着付けスタッフを呼んでもらい、ジッパーを上げ、仕上げのバックパックを取り付けてもらうと、そこには可憐な少女型のロボットが佇んでいた。
『すばらしい・・・すばらしい出来じゃないですか!これはたまらなく可愛いです!』
着付けのスタッフも感嘆の人工音声を上げていた。実際、僕自身心の底から感動してしまっていた。
ずっと望んでいた姿に変身できたのだ。それも、造形や着心地の面でも最高の形で。
『写真、撮ってもらえますか!?』
『へっ!?』
着付けスタッフが急にカメラを取り出して懇願してきた。
自分も一緒にファインダーに収めてる。このスタッフさん、相当ノリノリだ・・・
撮れた写真データには、2Pカラーな僕と、とあるアニメの可愛い制服を着たスタッフさんが写っていた。
全身に「仮面」をまとった女生徒達で賑わう会場内。その一角に、メカ少女が好きな人々が集まる場所がある。
そこで、白とピンクの装甲に包まれたあの人は、以前と同じく他の女生徒と交流していた。
ポーズを取って撮影してもらったり、パフォーマンスで周りをにぎわせたりして会場内でも人気のあの人。
白と青の装甲を纏った僕は、ゆっくりと彼女の元へ歩みはじめる。
やがて、僕に気がついたほかの参加者達が静まり、道をあけはじめた。その道が、あの人の下へ繋がる。
あの人が気がつき、バイザーに覆われた顔をこちらに向けた。僕は、変わらず歩み寄る。
そして、あの人の目の前にたどり着いた。
『お久しぶりです。あの時から、ずっとこうして話したいと思っていました』
『・・・こっちも、待っていたわ』
彼女の黒い装甲で覆われた可憐な手が、僕の同じように装甲に包まれた手を取った。
『一緒に、楽しみましょう?』
『・・・はい!』
その日、僕と彼女の居る区画は大いに賑わった。
赤・青二色の少女の交流は絵的にもすばらしいものだったようで、しこたま写真を取られたと思う。
僕は慣れないパフォーマンスに四苦八苦していたけれど、彼女がエスコートしてくれたお陰で、楽しく過ごすことができた。
翌日以降、メンバーズサイトの僕のアカウント「BLUEROSE」には何点かメッセージが送られてきた。
僕のあの姿を気に入って何人かがフレンド申請してくれたのだ。
そして、その中に「ALTFAILY」というHNがあった。それこそ、件の彼女のHNだったのだ。
彼女の日記で公開された数々の写真はどれも可憐さが引き立ったもので、思わず何枚か保存してしまうくらいだった。
フレンドになってから、僕らはメッセージで交流を繰り返し、月一回のイベントでもちょくちょく顔をあわせるようになった。
僕自身も、自室でセルフ撮影した写真をアップロードしたりするようになっていた。
PCを打っている間だけでなく、自室に帰ってからの殆どは、あの外装スーツを着て過ごしている。
『あ、小春さん』
『ひゃ!!あ、秋桜さん・・・』
丁度素体スーツをクリーニングに出していた時、いつも通り小春さんに出会った。
『どうしたんですか、最近?なんだか変ですよ』
『べ・・・べつに、そんなことはないんですよ。そう、ないんです・・・』
僕が充実した学園生活を送り始めたのとは逆に、ここ最近小春さんの様子がおかしい。
僕の姿を見かけるたびに、何かそわそわした様子なのだ。
でも、その理由が何なのか、その時の僕にはまだ知る由も無かった。
自室に戻った後、メンバーズサイトで外装スーツの発注を行う。
あれから消費したポイントを溜めていき、もう一着他の外装スーツを入手した。
「ALTFAILY」さんも、あのキャラ以外に何着かのスーツを所有しており、それらの写真も見たことがあった。
人間寄りのデザインの、白いスーツのメカ少女(僕が着たのとはまた違うゲームのキャラ)だったり、
とあるSFアニメのキャラクターと、彼女が着るパイロットスーツのセットだったり、
青い肌を持った妖艶な悪魔っ娘だったり、可憐なコスチュームを纏った変身ヒロインだったり・・・
どれもこれも惹かれるものがあった。それを見て自分でも別のスーツの入手を決意したのだ。
オーダーメイド品の中の一部には特殊なものがあり、既にレンタル用で量産されているものに関しては安い価格で手に入る。
それを知った僕は、最初にレンタルしたあの外装スーツを注文したのだ。何だかんだで、あれも好きだったから。
程なくして、自室での変身のレパートリーが一つ増えた。
『お久しぶりです。その節はお世話になりました』
『へっ?BLUEROSEさんがなんでそのカッコ・・・アンタもしかして、あのときの!』
『はい・・・この姿のほうがわかりやすいと思いまして』
僕は、次のイベントの日にあの時の「白いサイバーなスーツ」の姿で参加した。
初日にお世話になった「黒いサイバースーツ」の彼女に挨拶するためだ。
『そっかー、あの2Pカラー買ったのアンタだったんだねぇ。先越されちゃったわけだ』
『あはは・・・ちょっと申し訳ない気もしますけど』
『いいっていいって!アタシはアタシで勝手にやるんだからさー!』
最初にも思ったけど、黒いスーツの人・・・「MIDNIGHT」さんはひじょうにマイペースな方みたいだった。
『・・・そういえばさぁ、あの娘さっき見かけたんだけど』
『えっ、あの娘って・・・』
『うん。ピンクのあの娘ね。すっかりコンビになっちゃった感じだけど・・・
何かアンタに対して気にしてることがあるみたいなんだよねぇ』
『気にしてること、ですか?』
『うん・・・ほれ、あそこに居る悪魔っ娘居るでしょ?アレ教頭先生みたいなんだよね。』
『うぇええ!!??』
エナメルのロンググローブに包まれた指を指された先には、背丈の低いスレンダーな悪魔っ娘が居た。
これまた肘より長い丈のエナメルのロンググローブと、太腿まで覆うエナメルのサイハイブーツが映える姿。
一方、学園の教頭先生も、こういうとアレだけど「貧乳」なバストに教師と思えない小さな背丈だった。
一体誰の意向かは不明だけれど、そういうチューニングのスーツを着て教鞭を振るっている。
あそこまで極端な設定の着ぐるみは女生徒でもそうそう居ない筈。
『で、あの悪魔っ娘とピンクのあの娘がなにやら話してて、気になってこっそり聞いたのね。
そしたら、「あの娘をだまして連れて来たも同然」とか「彼女に申し訳ない」とか言ってて・・・』
『わ・・・わたしをだまして、ですか・・・?』
『うん。聞き間違いじゃないならそうなんだけどさぁ・・・いったいどういうことなんだろ?』
それから暫く、僕はあの人のことが一層気になるようになってしまった。
だましたとはどういうことなのか?あの人は、一体何を隠しているのだろうと・・・
そんなある日のこと、彼女から一本の電子メールが届く。
妙に遠慮した様子の、ヘンにあらたまった書き方で。
|||||||||||||||||||||||||
差出人:ALTFAILY
件名 :突然のことですが
BLUEROSEさん
今度、直接逢えないでしょうか。
お話しなければならないことがあります。
今度の土曜の夜11時過ぎ、あなたの部屋で待っていてください。
|||||||||||||||||||||||||
数日後、土曜夜11時。僕は、秋桜の姿で人を待っていた。
彼女は、はっきりと「あなたの部屋で待っていてください」と指定してきた。
僕の部屋を知っているということは、彼女は僕に近しい人物なのか・・・?
やがて、ドアのノック音が響き渡る。
恐る恐る、ドアを開けると・・・そこには、箱の載ったカートを引いた小春さんが居た。
『小春、さん・・・?』
『秋桜さん、ごめんなさい!』
『え、えぇっ!?』
取りあえず小春さんを部屋に入れる。彼女はカートを部屋の玄関に置き、数個の箱を部屋に持ち込んできた。
そして、その中の一つに手をかける。
『・・・私のことは、これを見ればわかると思う。』
『こ、これって・・・!』
彼女が箱を開けると、そこには鮮やかなピンク色をしたハート型のプレートがあった。その奥には、可憐な装甲で構成されたあのスーツも。
『こ、小春さん、だったんですか・・・』
『はい・・・』
僕をあのイベントに導いてくれた「ALTFAILY」さん・・・その正体は、隣の部屋の小春さんだった。
『全ては、教頭先生に頼まれたことから始まったの・・・』
話によると、あのイベント・定例仮面舞踏会を取り仕切る重役の一人が教頭先生で、
教頭は入学時の傾向検査の結果から推測して僕の秘めてた願望を察知していたそうだ。
僕が学園生活に不満を抱えてることを知り、何とかしたいと思っていたらしい。
そんな中、僕の隣の部屋に住み、かつイベントの常連だった小春さん=「ALTFAILY」さんに白羽の矢が立つ。
入学時の傾向検査で、似通った結果が出たことも理由の一つだったという。
教頭は、小春さんに「どんな手段を使ってもいいから、秋桜さんに招待状を渡して欲しい」と依頼した。
元々、イベントの新規参加者はいつも「何らかの手段でイベントに興味がありそうな生徒に招待状を渡す」形で獲得していたとのこと。
そして彼女なりに考えた結果、あの姿を見せることで僕にサプライズを与え、イベントへの興味が沸きやすいようにしたのだった。
小春さんは着替えた後、イベント関係者だった寮母さん達の協力を得て作戦を決行。
外から僕の部屋の窓に柔らかいゴム製のスーパーボールを投げつけた・・・
これが、あの日の出来事の真相だった。
『普通に招待状を渡すだけでよかった筈なのに、あんな凝った真似をしてしまって・・・
しかも、正体を隠してのこと。事が終わってから、申し訳ない気持ちになってしまったの・・・』
「MIDNIGHT」さんが耳にした話には、こういういきさつがあったのだ。
彼女は、僕をだますような形でイベントに引き込んだ気がして、それをずっと気にしてたんだ。
『そんなに気にしなくてもいいですよ。イベントにめぐり合えたのはあなたのおかげなんですから。
それに、こっちとしても凄く衝撃的だったんです、あの出来事は。』
『秋桜さん・・・』
『普通に招待状を渡されるより、ずっと嬉しかったのは間違いないですよ。
まぁ・・・同時にとっても悔しかったですけど。あんなの見せられたら、うらやましいって思っちゃいますよ』
『あっ・・・それはその。』
こっちの反応を見て緊張が抜けたのか、照れた感じに振舞う小春さん。
それを見ながら少し考えて、ちょっとした提案をしてみる事にした。
『・・・そうですね。どうしても申し訳ないって思うなら・・・一緒に写真撮りましょう!』
『え、えっ?』
『確か、本人同士が素性を知った上で同意があれば、部屋で写真を撮ったり楽しんだり出来るんですよね?
だったら、折角なんでやりましょうよ。あなたには色々と教えて欲しかったんです。』
『ほ、ほんとにいいの?』
『どうせだから、他のスーツも持って来てくださいよ。こっちはまだ二着ですけど・・・』
『・・・わかった。準備してくる!』
少し考えていたようだったけど、この申し出に小春さんは応えてくれた。
一度隣の部屋に戻った小春さんは、数分して戻ってきた。その手に新たな箱を二つほど抱えて。
『そっちも二着だし、こっちも一着だけ追加ってことで。他のお気に入りのものを持って来たよ』
『ええと、もう一つは?』
『ふふ・・・後のお楽しみ。』
『そうですか・・・それじゃあ、はじめますか』
『折角だからさ・・・おたがい脱がせあったり着せあったりしない?』
『!なるほど・・・』
方針が決まり、僕たちは着替えをはじめた。
まずは、おたがいの服を脱がせあうことから。私服のボタンを外してもらい、こっちも小春さんの服を脱がせてあげる。
下着も、自分のを自分で脱がずにお互いに脱がせあい、乱雑にならないように綺麗に畳んでおく。
そうして、僕も彼女も樹脂の素肌をさらけ出す。
『それじゃあ、小春さんから・・・』
『わかった、おねがい・・・』
お互い向き合ったまま、彼女の後ろに手を回し、お尻の割れ目に両手を差し込む。そのまま割れ目を引っ張り、スーツの出入り口を大きく開いた。
そうして、下半身から肌色の樹脂で出来たスーツをゆっくり脱いでゆく。片方づつ、白いラバーの質感の脚が引き出される。
両脚を引き出したら、そのまま上まで捲り上げる。股間部分や乳房がこすれた時、少し彼女がぴくっと震えたような気がした。
両腕も剥ぎ取られ、最後に顔が取り去られると、全身真っ白なゴムの人形が現れる。外観からじゃ、小春さんだとわかる要素は殆どない。
『次はこっちの番ね』
『はい、お願いします』
彼女の白いラバーの腕が僕のお尻に向かう。けど、その手はすぐに入り口を開こうとはせず、僕の・・・秋桜のお尻をゆっくり撫で回してきた。
後ろなんで見えないけれど、彼女の樹脂に覆われたすらっとした手の感触は艶かしかった。
スーツの機能のお陰とはいえ、こんな綺麗な形の手に触られるのは堪らなかった。
目の前では、素体スーツの無機質な顔が映る。無機質な素材に包まれた肢体が、僕の外皮を脱がせようとしている。
数分後、ようやく彼女の白い手はお尻の割れ目を掴み入り口を広げ出した。ゆっくりと、自分の両脚を外皮から抜け出させる。
外皮と素体の股間部分がこすれると、連動してへその下に収まったものがきゅっとなる。先ほどからの撫であげもあり、それはかなり上のほうまで上りつつあった。
極力こすれないように、外皮をどんどん脱ぎ去ってゆく。程なくして、部屋の中の白い人型が二体になった。
いつも姿見越しで自分の姿は見ていたけれど、こうして他人の素体姿を見ると、また堪らないものを感じた。
その姿形は女の子のそれを模しているけど、同時にとても無機質な姿。
普段の着ぐるんだ姿とはまた別の魅力が感じられる姿。それを暫く、お互いに見つめあっていた。
僕も彼女も、本物の女の子ではない。スーツの機能でこの身体になっているに過ぎず、
形の良い乳房やお尻、すらっとした手足も作られたものに過ぎない。
けど、そんな人工的な存在だからこそ魅力を感じてしまったのかもしれない。
スーツに封じ込められているものが何なのか理解していても、それでも、自分の胸のうちの感情は火照りから冷めない。
それは、僕自身が割り切っているからなだろうか?
この身体や彼女の身体の奥深くにあるものが何であっても、僕はこの可憐なボディが好きなのだと割り切っているのか。
それとも、この感情はもっと別のものなのか?自分自身では、よくわからなかった。
やがてどちらからともなく、互いの白いゴムの肢体に触れあいはじめる。
お尻や背中、二の腕や太腿、お互い後ろに手を回し、ゆっくりと撫であう。可憐な肢体と質感を互いに感じ取りながら。
そして、数センチの間隔をあけていた互いの距離がすこしづつ縮まり、乳房や下腹部、股間同士が触れ合う。
自らの持つものの感触と共に、向こうが持つものの感触が、お互いの身体に隠されたものに伝わる。
この数秒間で、僕は決壊してしまっていた。まだまだ先は長いのに。
『・・・ごめん、ちょっと調子乗っちゃったかも』
『い、いいんです。お互い様だと思いますから』
『そっか。そんじゃ気を取り直して、まずはこっちからいこうかな』
小春さんは、先ほど持って来た箱からスーツを一着取り出した。
それは、とあるゲームの主役のキャラクターだった。僕が着たあのキャラクターとは趣向が違うタイプだが、
このキャラも白いサイバーなスーツを装着したアンドロイドの少女だった。
ショートヘアに刺の無い柔らかな眼差し、水着を模ったボディスーツ、白いロンググローブとヒールの低いサイハイブーツ。
使用素材の殆どは白いストレッチエナメル。グローブ、ブーツ、ボディスーツ、全てが同じ素材で構成されている。
グローブとブーツが外皮スーツと一体化している仕様は同様だけど、意匠の趣はある意味で正反対。
同じ白を基調としたキャラクターだけれど、その印象はだいぶ異なるものだった。
小春さんがその外皮スーツにお尻から入り込んでいく。
着終わると、指先から二の腕まで、爪先から太腿まで白い素材に包まれた以外は裸の少女がそこにいた。
僕も既に、同様にロンググローブとサイハイブーツだけで、後は全裸の長髪の少女へと変身している。
残るお互いのボディスーツを着せあい着替えが完了すると、お互いの持つ三脚カメラで撮影タイムが始まった。
小春さんは、その姿のままでカメラを握り、僕を色んなポーズやアングルで撮影してくれた。
僕のほうも同様に、時折アドバイスを受けつつ彼女の可憐な姿を撮影していく。
何枚かは、セルフタイマーを使って二人一緒にも。
『それじゃ・・・そろそろメインディッシュとしますか』
名残惜しさを感じつつもお互いにスーツを脱いでいく。ある意味、ここからが本番。
白い素体に戻ると、お互いの箱からあのスーツを取り出す。
大きなハートが配された、あのスーツを。
『秋桜さんから先にどうぞ?』
『は、はい・・・』
彼女が僕の白と紫に彩られたスーツを持って、背中の入り口を向けてくれた。
今までで、一番緊張している気がする。ゆっくりと、その入り口から脚を差し込んだ。
ピチピチにフィットした脚と下半身の装甲を、ズレないように彼女が位置を合わせてくれる。
けど、自分でやっている時と力の加減が違うから、それがむずむずとした快感となって伝わってきた。
ニーソックス状の脚の装甲を手のひらで撫でられるのは、とても気持ちがよかった。同時にある意味苦しくもあったけれど。
特にきつかったのは、股間のスリットを合わせる時。うまくフィットするまでの間、危ういところまでいっていた。
そのまま、上半身も両腕からフィットさせて、首から下全てを装甲が包む。
胸のハート型プレートは、念入りにフィットさせられた感じだ。程よい硬さで乳房を覆う装甲は、小春さんの白いラバーの手でだいぶぺたぺた触られてた。
『へぇ・・・私のよりちょっと大きいんだぁ』
『そ、それは、その・・・そんなにさわらないで・・・』
只でさえあぶなくなりつつあるのに、へその下は更にギリギリな状態になってしまった。
最後に頭部パーツ・バイザー・マスクと装着し、背中を閉じてバックパックを着けてもらえば完成。
普段一人で着る場合はバックパックを一人で着けるのが難しいためオミットしているけれど、今回は二人で互いに着けあえる。
今度は、こっちが小春さんにスーツを着せていく番だ。
同じように、背中から脚を入れてまずは下半身をフィットさせていく。
ピンク色のニーソックス状の装甲を、しっかりフィットするように引き上げ、ずらし、撫で上げる。
・・・普段、通常の着ぐるみので学生服を着る時、ニーソックスを履く時が一番気持ちいいと思ったことがある。
ニーソックスを履くのも、太腿まで包まれた感触も、その上から自分の手で撫でる感触も何だか気持ち良いのだ。
だから、このスーツに包まれている時も、脚を覆う装甲の感触にも特別な気持ちよさがある気がしていた。
そんなことを考えながら、何となく念入りに小春さんのピンクに覆われた脚を撫で続けてしまっていた。
『秋桜さん、気持ちはわからなくもないけど、そろそろ、ね・・・』
『はっ!?ご、ごめんなさい!』
うっかりしていた分、若干急ぎ気味に残りの部分を着せていく。フィットさせるべき箇所はしっかりフィットさせて。
両腕、胸のプレート、その他上半身を。胸の部分をフィットさせるとき、いじわるでふくらみの先端をつっついてみた。
『はう!?ちょっ、秋桜さん、なにやってるの!』
『さっきのおかえしです。』
『あぁん、もう・・・悪かったからやめてぇ~』
そんなハプニングもありつつ全ての工程が終わり、姿見に赤と青の可憐なロボッ娘が写った。
やっぱり、たまらない程に可愛い。CGモデルの良い部分をそのまま活かした造形はいつ見てもすばらしかった。
『それじゃあ、そろそろあれを出しますか』
『え・・・?』
小春さんが、まだ開けてないもう一つの箱を持って来る。
『じゃじゃん!』
『あぁっ、これは!』
その中には、ゲームマシンと、コントローラのセットがあった。
『折角だから、このカッコとこのキャラ同士で対戦なんてどうかなって』
『なんかイイかも、ですね!』
室内テレビに、マシンを接続。おたがいにコントローラを握り、テレビに視線を向ける。
・・・色のついたバイザーとミラーレンズ越しなのでかなり見づらいけれど。
夜なのでテレビの音量も1ケタに設定。この格好ではかなり聞こえづらい。
『あははは・・・予感はしてたけどちょっと微妙かも』
『た、確かに・・・』
・・・でも、こんな格好でゲームをするという光景はシュールながらも、何だかキュンと来るものがあった。
『ちょっと、これも写真に撮っておきませんか?』
『むっ・・・いいかも。』
と、いうわけで、二人でゲームをやってる感じで何枚か色んな角度でセルフ撮影。
ゲームは3戦くらいやってみた。見づらかったけど、久しぶりにプレイできて楽しかったと思う。
その後も、続けて何枚も写真撮影を続けていた。お互いに写真を撮りあったり、セルフ撮影をしたり・・・
それがひと段落した時、小春さんは自分のカメラを連続撮影に設定して固定した。
『ねぇ、秋桜さん・・・物は相談なんだけど・・・』
『はい?』
『ちょっと・・・きわどいの・・・だめかな?』
そう言って、ぺたんこ座りになって彼女は誘ってきた。片手を胸に、もう片方を僕のほうに伸ばして。
その時にカメラが撮った一枚は、可憐な姿に妖艶さが混じった扇情的な一枚になった。
そして、それが始まりの一枚になる。
少し迷いつつ、僕も彼女と一緒に座り、彼女の装甲に包まれた華奢な手を優しく握る。
そのまま、お互いの両手を胸の前で合わせ、身体を向き合わせたまま視線をシャッター直前のカメラへ。
彼女が、後ろに寝そべる。僕は彼女の上に乗る形になり、だんだんと耽美的な空気が醸し出される。
お互いの装甲に包まれた肢体を間近で触りあいながら、時には向きを変え、時には起き上がり、時には抱き合い・・・
シャッター一枚一枚に、ある種倒錯的な光景が収められていく。
腰のスカートアーマーも取り去られ、より身体の距離は縮まっていた。
シャッターが降りるたびにぞくぞくするものを感じる。少しだけ落ち着いていたのが、再びきつくなってきた。
枚数が重なるたび、収められる光景は徐々にエスカレートしていき、僕自身もとろけるような気分になり始めていた。
こんな格好であられもない状態になり、そんな光景が撮られている・・・意識すればするほど、上りつめそうになる。
そんな中、カメラからアラート音が鳴った。
『あと・・・一枚、かぁ・・・』
そう言うと、小春さんは・・・今まで以上に僕の身体に密着した。お互いの胸や股間が硬い装甲越しに押し付けられる。
呼吸口を塞がれ息が辛くなると同時に、直接的刺激が僕を貫く。もう、限界が近い。
カメラのアラートが、あと10秒でシャッターを切ることを知らせる。
僕たちは、身体の内から湧き上がる感覚に身を任せ、互いの局部を押し付け合う。
そして抱き合いながら身を強張らせ、やがて互いの手を背中に回したまま、天を仰ぐように身体を仰け反らせる。
最後の一枚が撮られた瞬間、へその下は大きく脈打ち、押さえ込んでいた濁流を一気に解き放っていた。
小春さんのカメラが、写真容量不足のアラートを発する。
快感と息苦しさと暑苦しさが一気に全身を支配し、お互いに肩で息をする状態になっていた。
『写真・・・満杯になっちゃったぁ・・・』
『こっちのカメラは・・・まだ残ってますけど・・・もう・・・撮れません・・・』
僕も彼女もすっかりぐったりな状態。しばらくの間、二人で床に寝転がったままになっていた。
今回撮影したうちの何枚かは、サイトのほうで公開できそうだった。
逆に、サイトでは公開できなさそうなものも結構存在したけれど。ピンボケ的な意味だったり、もっと別の意味だったり・・・
あの招待状を貰った日から、1年。
僕はすっかりイベントの常連になっていて、固定ファンも増えていた。
あれから変身のレパートリーは着々と増え、色んな姿でイベントを楽しんでいる。
サイハイブーツが可愛いサイバーなキャラクターだったり、
とある変身ヒロインとボンデージライクなコスチュームだったり、
よくプレイしていたゲームのプレイヤーキャラだったり・・・
ときたま、持っているキャラクターの外装を組み合わせて遊んだりもしていた。
たとえば、変身ヒロインのコスチュームを、別のキャラクターに着せる組み合わせだったり、
人間タイプのキャラにアンドロイドタイプのスーツを着せたり・・・
スーツの仕様によってそんな組み合わせも出来、魅力を引き立たせることがあるのだ。
・・・組み合わせが無茶なのもあるけれど。
人間タイプのスーツの上からあのメカキャラの外装を重ね着すると、特に。
生身の顔の首から下にメカ少女の装甲というのはまたそそられるけれど、キツさも暑さも無茶なものになってしまう。
・・・一度試した後に、メンバーズサイトで「生身顔パーツ」を発注できることに気がついて「何やってるんだろう」と思ってしまったけれど。
最近は「ALTFAILY」・・・小春さんとのコンビでなく、ソロでの活動も多くなっていた。
けど決して疎遠になったわけじゃなく、ときたまコンビでの活動も継続中だ。
『あ、秋桜さん、こんにちは』
『小春さん、今日もお疲れ様です』
今日もこうして挨拶しあう仲なのは今までと変わっていない。
『そういえば、今日教頭に呼ばれたんです』
『あら。それってもしかして・・・』
『ええ。どうやら悩める女生徒が居るみたいですよ』
今、僕の手元には招待状がある。心の底に願望を抱えた女生徒に渡す為の・・・
『ビックリするような渡し方にしたいですね、やっぱり。・・・小春さんとは別のアプローチで』
『うっ。それはもう勘弁してって・・・』
作戦は近日決行。いったいどんな渡し方をするべきか・・・けっこう悩みそうだった。
『ところでさ・・・また撮影会でもする?』
『!』
話題がひと段落して、小春さんがそんな話を振ってきた。
あれから、ときたま自室や彼女の部屋に集まることはあったけど、撮影会はずっとご無沙汰だった。
羽目を外しすぎた自戒がお互いにあったのかもしれない。何となく、そこまではしないようにしていた。
けど・・・たまには羽目を外すのもいいかも。
『そうですね・・・やっちゃいましょうか!』
僕は、そう返事をしていた。
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