アイドル修行もラクじゃない!【第一話】 [戻る]
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「ドールアイズ」それは秘密のベールに包まれた新世代のアイドルグループ。僕はそのメンバーを育てるための養成所に通っています。ドールアイズは女性を熱狂させるイケメングループなのか?いいえ、みんな人形のように可愛い女の子。それがドール…という名前の由来です。だったら僕が、一人称「僕」な女の子なのかって?いいえ、れっきとした男です。

ふふ、どういうこと?ってなっちゃいますよね。もったいぶっても仕方ないので種明かししましょう。ドールアイズのメンバーは全員、着ぐるみを着た男の子で構成されているのです。着ぐるみと言っても、ゆるキャラではないですよ。デパートや遊園地でやってるような、小さな女の子向けのショウに出てくるやつ?いい線いってますね。

でも、全身タイツにマスクをかぶった男性を集めて、新世代アイドルだなんて無理があるだろうと心配になるでしょう。これを仕掛ける会社もビジネスがかかっている訳ですから、ばっちり工夫されています。くわしくは長くなるので、このあと少しずつお話していきますね。


アイドル養成と聞いて、大抵のひとが思いか浮かべるのは、大勢の候補生の中からトップの才能を持っている子たちを選び出してデビュー…というところでしょう。けれど、中身が男だなんてことは徹底的に伏せておかなければいけない訳で、「素質」がありそうな人物を探し出した上にとても厳しい守秘契約を結びます。養成所へ通う、イコール何がなんでも訓練をやり抜いてドールアイズになるということなのです。

僕が誘われたのは、もともと着ぐるみ趣味があったというのが大きいでしょう。マスクの造形工房に大好きなアニメの美少女キャラクター製作を依頼して、時にはコスプレイベントへ参加、時には動画サイトに音楽に合わせてダンスする動画をアップしたりしていました。そういった活動が先方の目にとまったのです。

ショウに出演するプロでなくとも着ぐるみでコスプレすることに抵抗がなく、上手くはなくてもダンスが出来るなら「素質」は確かだと思ったんだよと、最初の面接のときに担当の方が笑って教えて下さいました。お恥ずかしい話ですが、僕は自分ではない誰かに変身することにフェティッシュな快感を感じるタチなんです。

だから誰にも正体を明かさない、それどころか女の子のふりをして皆を喜ばせるなんて願ってもないこと。前のめりで契約書にサインをしました。もちろん、お仕事としての付き合いである担当者さんには僕のフェチズムについては内緒ですよ。それから合否の判定が出るまでの長い長~い2週間を過ごし、ついに養成所での生活が始まるのです。


養成所は避暑地として有名な、都会からはずいぶん離れた某県にありました。新幹線の駅で待ち合わせ、お迎えの車でホテルが並ぶ観光地を通りすぎた山あいに、立派な建物が建っています。背の高いフェンスと目隠しの木々に囲まれた、特徴のない誰も気にとめないような2階建てのビル。ゴロゴロと重そうな音を立てながらスライドする門をくぐって車が滑りこむと、外からチラチラと見えていた無機質さとはうって変わって、リゾートホテルのような佇まいが現れます。

門からまっすぐに車停めへの道が延び、脇には小さめのグラウンドにテニスコート、プールも完備しているようです。車を降りると、そこには僕を面接してくれたあの男性が待っていました。僕は寝泊まりのための着替えを詰め込んだバッグを抱えて、キビキビと建物の中へ歩いていく彼のあとに続きます。いわく、ここは会社の保養施設だそうで、休暇のシーズンではない今の内にドールアイズ養成所として丸ごと利用することになっているのでした。

僕はここで住み込みの訓練を乗り越え、ドールアイズの一員として巣立つことになるのです。エレベーターで2階へ上がり、正面から建物全体を見たときの右端にあたる、一番奥の部屋まで案内されます。通りすぎたいくつものドアと、いま目の前にあるドアにはそれぞれ部屋番号が書かれています。

「ここがこれから君が生活する部屋だよ」

振り返った担当者さんに、僕は背筋を正して、はい!と返事します。

「いい元気だ。部屋には君と一体となる大切なものが置いてある。それを身につけて2時間後に1階の食堂へ来てください。ずいぶん余裕があると思うかもしれないが、すぐに取りかかった方がいい。じゃああとでね」

やっぱりキビキビした足どりで去っていく彼。それを見送った僕は、心臓が跳ねて口から出るんじゃないかというほどドキドキしながらドアを開けます。そこはまさしく、清潔で広い豪華ホテルの客室でした。

着替えに使うためにわざわざ置いたのか、不自然なほど大きな姿見があります。それから、ひとりでは持て余しそうなサイズのベッド。その上には人間のぬけ殻、という表現がぴったりな肌色の何かと、銀色の全身タイツ、洋服、何枚か綴りをホッチキスでまとめたプリントが置いてありました。先ほどの言葉をちゃんと守り、さっそく準備に取りかかりましょう。

プリントには着用の手順が色々と書いてあります。うすうす感じてはいましたが、僕が知っているものとはずいぶんタイプが違うようです。えっと、まずは全裸になりインナースーツを着用…銀色のこれかな。インナースーツと呼ばれるそれは、ラバーやエナメルのみたいな光沢素材の全身タイツ。僕の肌に触れるはずの内側は真っ黒で、おもての面ほどではないですが光沢があります。

どうやら、潤滑油が塗ってあるようです。全身おおうようなタイツはダブつかないよう締め付けるようなつくりになっていることが多いので、スムーズに着るためにはこのような工夫が必要なのでしょう。事実、脚を差し込めば、ヌルヌルとした感触とともにあっけなく通ります。下半分をスボンのように履きおわると、なんだか股間の収まりのわるいような違和感が…妙に思って手順書を読むと、こう書かれてあります。

『あなたの陰茎を穴に通して下さい』

内側のつくりを確認すると、股下の所にアレを導くための穴がありました。銀色スーツの上半身を両手でつかんで、ぐいと引っ張り上げると上手い具合に伸びます。それから腰を突き出す風にすると、穴の入り口に先端がさわりました。

誰がいるわけでもないのにわき上がる羞恥心。上気する顔と、硬くなりはじめるアソコ。上半身を引っ張る手を離すと、ヌルヌルした小さな空洞を押し拡げる感触がして、奥まで挿入された僕のものはぴったり包まれて上向きに固定されます。巧妙に肉付けされているスーツのおかげで、外側はふっくら柔らかそうな、なだらかな曲線があるばかり。男であることの「しるし」は、柔らかそうなお腹の中に溶けて、「付いてる」感覚といっしょに消えてしまったような、ふわふわした心地がするのでした。

ちょっと面食らった下半身に比べて、上半分を着るのは大したことがないように思えます。実際、腕を挿し入れ指を手袋の先まで通すことには何の問題もありませんでした。あとは頭を覆う部分をかぶればいいのです。ところが、ここにもしかけが。口をふさぐだろう位置に出っ張りがあるのです。プリントには無情にも、

『頭部内側の突起部を口に咥えて下さい』

…の文字。出っ張りにはいくつもの穴が横並びにあいていて、口を大きく開けていなくてもいいように平たくなっています。説明には、『そこが唯一の呼吸手段です』と恐ろしいことが書いてあります。落ち着いて頭をかぶり、ゴム製の入れ歯のようにも見えるそれを口に含めば、スースーと、ゆるやかに頼りなく空気が通りはじめます。けっこう奥まで突起が来るために、慣れるまで相当かかりそう。体の全部が収まったら、腕を背中へまわしてファスナーを上げます。

左手はスーツをつまみ、右手はファスナーの金具を持って、腰の付け根から後頭部までじょじょに引き上げていきます。このスーツには女性的な丸みをだすため、あちこちにパッドが内蔵されています。逆にくびれるところは非常にタイトで、特にお腹周りは肋骨が締めつけられて痛いほどです。口に咥えた呼吸具が口枷のように感じられるのと相まって、自由に動けるのに拘束されているような、不思議な感覚です。

インナースーツの装着を終えた段階で、自分の姿を鏡に映すと、そこには全身銀色のマネキンがいました。顔には目鼻立ちの大まかな形だけ。よく見れば眼の辺りだけは、中から外を透かして見える素材になっているのが分かります。それ以外はどこまでもツルツルで通気性がなく、外気を取り込むメッシュなども見当たりません。だけど僕は吸って吐いてができている。おそらく、小型の酸素ボンベが内蔵されているのでしょう。ボンベがどれほどの間もつのか知らないことが怖くもありますが、今は考えても仕方ないですね。

さて、ここまでで1時間ちかく経過してしまったようです。急いで次へ進みましょう。へなへなの肌色をつかみ上げると、インナースーツと同じように頭からつま先までが一体になっています。こちらにはちゃんと「人形」としての顔と髪の毛が付いています。黒髪のロングヘアは、だらんと垂れ下がったままだとちょっと不気味かも。素材はシリコンのような感じですね。布でできている一般の肌タイツに比べると、そうとうリアルです。

それでは…と着ようとしたら、なんと背中のファスナーがありません。体は継ぎ目なくひと続きですし、首と頭の境もありません。もしかして…と女性特有のスリット、つまりアソコを見てみたら、ドキっとするような造形の割れ目がありました。多少の伸縮性はあるけれど、どう頑張ってもここから入り込むのは無理そうです。手順書をめくると、ウィッグを外し頭頂部の裂け目を拡げて着用して下さい、との指示が。

いくつかの小さなフックで固定されたウィッグを取れば、たしかに人間で言うつむじの位置に2センチほどの切れ込みがあります。こんな小さなところから入れるのかなと思いつつ拡げてみると、下側の穴とはちがって、信じられないくらい簡単に伸びます。足をつっこみ、腰を通して、ぐいぐい抜け殻の中へもぐりこんでいく僕。最中はとてつもなくグロテスクな情景になっていることが想像できたので、鏡を見ずに済ませます。

だいたい全身が包まれたなら、今度は肌色の皮をほぐしてインナースーツとかみ合うようにしなければいけません。まずは頭と顔をモミモミ。鼻を基準にして、僕の眼と、皮にあけてある「覗き穴」の位置を合わせてと…これで視界が確保できました。そこから首、腕、胴体へおりていきます。次はヒップをモミモミ。なんだか妙な気分になっちゃうなあ、なんてやっていると、肌色スーツのアノ部分が、インナースーツ股下にズルッとすべってフィットしました。位置合わせの基準はやっぱり…なのですね。

最後には脚を整えて、外側の「皮」にだぶつきがないことを確認します。ウィッグをフックにかけて元どおり固定すれば、ついに、アイドルのたまごができあがり。期待を胸いっぱいに鏡の前に立てば、そこには黒髪ロングの清楚なお嬢様が、生まれたままの姿でこちらを見つめています。

インナースーツを身につけた時点でだいたいのようすは分かっていたつもりでしたが、いざ全てが完成した状態は本当に美しく、思わず息をのむほどです。Cカップほどの形のよい乳房に、ぷりっとしたヒップ。

着ぐるみ女装のたしなみとして体型補正のワザにこだわってきた自負がありましたが、ここまで綺麗な曲線をつくれたためしはありません。顔つきは、現実の人間よりもややアニメキャラクター風に寄せてあって、中にいる僕の眼よりも下付きに、キラリとした大きな瞳があります。いま僕が見ているこの光景は、まつ毛でうまく隠された小さなすき間を通したものなのです。

自分の変身ぶりに僕のナニはもうはち切れそうに腫れています。興奮を抑えられなくなり、腰をくねくねと動かしてなんとかムスコを刺激しようとしますが、かっちり固定されているソレにはほとんど刺激が伝わりません。たまらなく切ないのに、こみ上げるものを吐きだす手段がないのです。

そうこうする内にも、集合時間が迫ってきます。しかたなく下着を手に取ります。フリルがあしらわれた、キュートな白のブラジャーを着けてと…世の男性はまず経験のないことでしょうが、着ぐるみをするとき必ず肌色タイツ上から女の子の下着をつけるポリシーの僕にとっては朝飯前。おそろいのパンティーに脚を通して、小さな布でお尻を包みこみます。

あれっ?パンティーを履きおえた瞬間から、なんだか息苦しい。これってもしかして、スーツに内蔵されたボンベなんか存在しなくて、本当は……頭をよぎる新しい予想を確かめるために、ベッドに浅く腰かけた僕は、細くちぎったティッシュペーパーを太ももと太もものあいだにかざします。それをもっと股下へ近づけると、一定のリズムでゆれています。一定の、そう、僕が息を吐くタイミングで。

つまり、口に咥えたあの器具から伸びたチューブがどこかを通り、最後には女の子のあそこへたどり着くということです。いったいどんな意味があってこんな風になっているのでしょうか。理由はさっぱりですが、このままでいても何ともなりませんから、お洋服を着ましょうね。用意されていたのは紺色のワンピース。セーラー服をモチーフにしたデザインで、大きな白い襟が可愛いです。裾にラインのはいったスカートは膝上10センチくらい。注意しないとパンツが見えちゃいそう。

それから黒いオーバーニーソックス、同く黒のエナメルパンプスを履きます。靴は少しヒール高めでしたが、コスプレイベントで歩くのに慣れてる僕にとっては…って、もういいですよね。ベッドの上に置かれていたものを全部身につけたら、鏡の前でくるりと回ってコーディネートを確認します。うんうんバッチリ。やったね!なんてポーズをしている姿は我ながら本当にラブリーで、抱きしめたくなっちゃいます。

さあ、なんだかんだで時間まであと10分。約束の食堂へ急ぎましょう。エレベーターで1階に降りてロビーの案内板を確認します。建物の玄関から見て左側の最初にある部屋だから…えーっと、ここですね。入り口のドアは閉じていて、中のようすは分かりません。僕は取っ手を握ります。

他のメンバーはもう集合してるのかな。どんな子たちだろうなぁ。何人いるのかな。色んな考えがぐるぐる回って、がぜん緊張してきました。ゆっくり深呼吸してから、気合いを入れて、えいっと開けます。食堂というか、レストランにしか見えないその部屋の真ん中には3つの椅子が横一列に並んで置かれていて、すでにふたりの人物、いや、お人形が座っていました。


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