アイドルユニット「一話」 [戻る]
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清純派、グラビア系、企画モノ・・・・
様々なタイプのユニットが現れ、そして消えていくアイドル業界。
そこには時にはこんなアイドルも誕生するのです。



ここはとあるアイドル系芸能プロダクション。
新人マネージャーである渡辺翔平は今度デビューする新アイドルユニットとの
顔合わせがあるということで、ここ会議室に呼び出されていた。

彼にとってこれは入社以来初めてのユニットを任される経験である。
だが、その心はやる気で漲るというよりはむしろ不安と不可解な気持ちで一杯だった。

不安要因、それは企画書で予め知らされたこの企画自体の特殊性にある。
そして不可解な理由、それはこの企画がわが社と大手玩具メーカー共同で、
多大な資金も投入されたとされる大掛かりなものであるにもかかわらず、
何故ド新人の自分がその担当に抜擢されたのかというものだった。

しかし件の通達自体がかなり急なもので、今までバタバタしててその事を誰にも
確かめられずにいたのだが、今なら少しは時間もありそうだ。
今のうちに同席してる上司に尋ねておこうか・・・・などと考えてた途端。

「ID社の七瀬さんが入られます」
内線が入りその場に居た全員がはっと姿勢を正す。

程なくして長身の男が入ってきた。
この男が七瀬、今回の企画のプロデューサーか・・・。
さらにすぐ後ろから作業着姿の男数名が冷蔵庫大の段ボール箱三個を慎重な手つきで室内に運び込む。


「やあやあ七瀬さん、お疲れ様です!」
上司が挨拶するのを見て自分も習う。
「はじめまして七瀬さん。この度新ユニットのマネジメントを任されることになりました渡辺です。
まだまだ未熟者ですが、どうかよろしくお願いします!」
名詞を交換する渡辺と七瀬。
「はじめまして渡辺さん。お噂はかねがね・・・」
「は?かねがね・・・?」
「いえ、こちらの話です♪(にっこり)
マネジメントとは言ってもイベントの企画やセッティングは弊社のほうがメインで行わせて頂きます。
今回の娘達は繊細なエスコートが必要な娘ばかりなので、渡辺さんにはそちらの方を重点的にお願い致しますね」

軽く渡辺の質問を受け流す七瀬。
常に笑みをたたえた優男なのだが、よくよく見ると目が笑っておらずどことなくいけすかない感じがする。

「はい、体力だけが取り柄なので付き人ならお任せください!
ところでその娘達なのですが一体どちらに・・・・?」
七瀬はまたもにっこりと笑い。
「今日は大切な"納品"日ですからね。
小さな傷がついてもいけないと思い、"重梱包"にてお届けにあがりました♪」
「の、納品?」

おもむろに七瀬が指を鳴らす。
それを合図にして後ろに控えていた作業服の男たちが手早くダンボールの梱包を解いていく。

上面・四方側面・底面の3パーツを梱包バンドで閉じられた形のダンボールだ。
底面以外の2パーツを上に抜き上げると元のダンボールとほぼ同じ形の白い直方体があらわれた。
一瞬冷蔵庫か何かのようにも見えたが、どうやら発泡スチロールの塊のようだ。
手前側と奥側の2ブロックに別れているらしい。
更にそれを前後から引き剥がすと・・・・
それはようやく姿を現した。

まだ頭上から足作まですっぽりビニールで覆われてはいるが紛れも無い、企画書で読んだとおりの・・・
いや、企画書からだけでは想像し得ないほどの美しさを持った等身大ドールであった。

順に三体姿を現したが皆一様に底面に造りつけられた椅子に座らされ、シートベルト・・・・いや
見方によっては電気椅子の拘束具にすら見えるベルトによって固定されている。

ホビー21でこのような着ぐるみが運用されているという話は聞いたことがあったが、
今まで直に見たことが無かった。
そして彼は今ここにきてようやくその事を後悔する。

・・美しい・・・これほどのものだったとは・・・

そしてその美しさ以上に何かしら淫靡な魅力すら感じられた。
どこからどう見ても美しい人形にしか見えない。
しかし企画書に記述が正しいならこれは"人が中に入れるもの"なのである。
変身願望やフェチシズムというものを未だ自覚したことの無い彼であったが、それらはその彼ですら
今後この中に入って活躍するであろう彼女たちに軽い嫉妬を抱かせるに充分な出来であった。

「渡辺さん?」
七瀬に話しかけられ我に返る、どうやら我を忘れて見とれていたようだ。
「凄いですね・・・・
こ、これが彼女たちが中に入るという"人形"なのですね?」
「フフ、お褒め頂き光栄です。
ですがザンネン半分不正解です、どうやら少し勘違いをなさってるようだ」
七瀬はいかにも楽しげな笑みを口元にたたえてる。
「え?」
「この人形たち、これらこそが"彼女たち"なのです♪」

再びの合図の元に、一斉に人形たちにかけられたビニール袋が剥がされ、ベルトが取られる。
すると人形達がよろよろと動き出し、そしてそれぞれのタイミングで立ち上がった。

既に彼女たちは人形の中に居たのだ。
よく見れば肩が軽く上下している。
無理もない、彼女達は今の今まで拘束されビニール袋にくるまれた上、
発泡スチロールの塊とダンボールの中に閉じ込められてたのだ。
人が入っていたのだとすれば苦しくないわけがない。

周りがざわつく中、渡辺の心は完全に彼女達に捉えられていた。
てっきり今日は中の人たちと普通に顔合わせするだけだと思い込んでいた渡辺にとって
それは大きな衝撃であったのだ。
一般的な認識を持つものであれば、重梱包された荷物として
運ばれてきた人形の中に既に人が入っているなど思いようが無いであろう。
もっとも、その事を「羨ましい」と捉える感性も一般的かどうかははなはだ疑問だが。

驚愕と嫉妬と敗北感をごちゃ混ぜにしたような感情に打ちひしがれている渡辺を満足そうに観察しながら
七瀬は言う。
「フフ・・・どうやら貴方ともいいお友達になれそうだ♪
・・・まぁそれはさておき本題に戻りましょうか」
「は、はい!」
そうだ今は仕事中、今始めて自覚したなんとも形容しがたい感情に囚われている場合ではない。

「予めお送りしておいた企画書には目を通して頂けましたね?」
七瀬が尋ねる。
「は、はい!
御社の開発された"新機能つき等身大人形"に固有の人格を持たせて、
アイドルユニットとしてデビューさせる企画だと・・」
「ええ、そしてその新機能がこちらです。
この娘達の自己紹介もかねてご披露致しましょう♪」

言うなり懐から携帯型端末を取り出す七瀬。
そしてそのボタンを操作した途端、電流でも流れたかのように3体の人形が同時にビクンと動く。

「はぁ・・・三体ともいい加減慣れなさい。
このままデビューを迎えるつもりですか?」
深いため息をつく七瀬。
「まぁいいです、ツバキから順に挨拶なさい」

「ハイ」
「は~い」
「う、ウン・・」
澄んだ三様の黄色い声が同時に響いた。

これが中の人の脳波を電子音声に変換できると言う新機能か。
まてよ・・確か朝の子供番組にもID社製のミアちゃん人形が登場してて、
リアルタイム喋ってるって聞いたこともあるけど・・
じゃあそれは声優さんが直接声を当てるとか、別のトリックがあるということか?

一番長身の人形が前に歩み出て会釈する。
「初めまして皆様、三澄(みすみ)ツバキと申します。
以後よしなに・・・」
見た目大学生くらいで内巻きがかったロングヘアーの人形だ、髪色はプラチナブロンド」
顔は上品で優しそうな笑みをたたえてる。
三体は姉妹と言う設定らしいから彼女が恐らく長女ということだろう。
服装から何からいかにも優しいお嬢様といったたたずまいだ、3体の中ではスタイルももっとも発育している。

続いて高校生くらいに見える女の子人形。
「やっほ~、ヤエちゃんで~す。
ダンスに歌に頑張るんでみんな応援ヨロシクねっ!」
頭上ピースでびしっと決めた、三体の中では一番アイドルと言う言葉がよく似合う。
明るい顔立ちでライトブラウンの髪を両サイドで纏めて包(パオ)でくるんでいる。
クルクルと動くたびに包から垂れたリボンが華麗な軌跡を描く。
細身で足が長く、スポーティーな衣装がよく似合う、だが胸はそこそこあるようだ。

最後に発育の遅めの中学生・・・ともすれば小学生でもおかしくない程幼い感じの女の子人形の番だ。
・・と思ったらツバキのもとへ駆け寄り後ろに隠れてしまった。
二人の姉に優しく促されてようやく顔を出す。
「ボ・・ボク、三澄ボタン。
あ、あの・・・ヨロシク・・・ね・・・・・・」
最後のほうは聞き取り辛かった。
「引っ込み思案な子なんです」
ツバキが「困った子ね」といった感じに小首をかしげて付け加える。
紫がかったストレートの黒髪おかっぱで、後頭部に大きな赤いリボンがついている。
お気に入りなのかさっきから一緒に梱包されていた豚(イノシシ?)の縫いぐるみを抱いたままだ。
まだ第二次成長が来てないのか体はか細く平べったいが、キャミソールの上から申し訳程度の
胸の膨らみが見て取れる。

近くでこうやって動かれるとまた個々の可愛さが引き立つ。
目の前の人形達の動きにまたもや見とれる渡辺であった。

   <To Be Continued>


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