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玩具から各種趣味アイテムまで幅広く手掛け、何でも揃うと最近話題の巨大デパート『ホビー21』。
アニメグッズ、テレビゲーム、フィギュア・・・・
連日大盛況のこの店舗に訪れる人々の目的は様々なれど、「貴方は『ホビー21』と聞いて一番最初に何を連想しますか?」
と問いかければ、返ってくる答えは恐らく十中八九同じだろう。
『着ぐるみ』と
そう、ここホビー21では常時大変多くの着ぐるみマスコットが働いている。
屋上遊園地や屋内イベントスペースは勿論、各フロアには常時3~4数体の着ぐるみがグリーティングしてるし、保育コーナーにも着ぐるみ係員が、喫茶テナントには着ぐるみウェイトレスが、果てはエレベーターガールまでもが着ぐるみだから、皆が皆そう答えるのも無理は無い。
そして、ボクをその身に閉じ込めた美少女着ぐるみ『ミヅハ』も今現在、正面入り口入ってすぐの案内コーナーで案内受付嬢のお勤めの最中だ。
入ってる自分で言うのも何だけど、ミヅハは「可愛らしい」というよりかは「凛として美しい」といった表現が似合う和風美人、あえて花に譬えるならスイレンもしくはヒガンバナといった感じだ。
色白な肌に紅の唇が引き立たされて、このまま着物でも着せたら即日本人形の出来上がりって風情だけど、髪型はベリーショートだし、今日の衣装はストレッチエナメル製のハイネックノースリーブに同じ素材のタイトロングスカートとタイツ、そしてブーツにストレッチ素材のグローブ、長いリボンの垂れ下がったバスガイド風の帽子で全身黒を基調にエメラルドのラインで彩られてる。
まるでどこぞのコンパニオンか近未来人かといった印象の衣装だが、同じく近未来的なイメージのホビー21には似合ってなくもないし、衣装と顔の微妙なミスマッチもこれはこれで結構色っぽい。
師走の夕暮れ時、自動ドアの隙間から冷気が流れ込んでくるこの場所でのノースリーブは見た目には少々肌寒く映るかもしれない。
もっとも実態は全くの逆なのだ、このスーツの中は数時間前からずっと真夏以上の高温と湿度で満たされ続けており逃げ出したいという本能と演じ続けたいという欲望がボクの中で戦い続けている。
だがその切ない葛藤を外の世界から見抜ける人などは皆無であろう、ごく一部の事情を知る関係者達を除いては。
朝9時半の開店時から今までずっとボクことミヅハはここに座り続けている・・・と書けば中の地獄のような状況のいくらかは理解してもらえるかもしれない。
店内をグリーティング出来る着ぐるみマスコット達ならば歩くことでスカートや衣類の中の空気をある程度巡回させることも出来るのだが、
このストレッチエナメル製タイトロングスカートとタイツを履いて座り続けてる今の状態では空気を巡回させることも、足を組むことによってあそこを刺激して楽になることさえも出来ない。
ただただ蒸れて篭った空気を吸い続けながら、それでもお客さんの目線から外れることのないこの案内コーナーの中で、見た目にはただ平然とそこに存在し続けるミヅハをボクは演じ続けている。
頭が朦朧としてくる、お客さんの対応は音声担当のオペレーターがやってくれるのがせめてもの救いか。
それでも声にあわせて動き、時には方向を手で指し示すなどの行為はもちろん自らがやらなくてはならない。
本来の着ぐるみ案内係はもっとマメに休憩を組まれるものなのだが、今のボクにはそれは許されていない。
そう、ボクの"本来の業務"は着ぐるみ案内嬢ではないのだ。
この長時間座り続けるには向かない衣装、そしてそれによる苦しさも実は"本来の業務"のためには重要なファクターだったのだ。
店内に閉店完了の合図であるトロイメライが流れる、これで今日の案内業務は一旦終わりだ。
だが仕事が終わったからといって姿勢を崩せるわけではない。
着ぐるみの"中の事情"を知らない一般従業員の前でも、着ぐるみ同士で居るときでも、そして例え一人きりの時でもそのキャラとして存在し続けることはホビー21の着ぐるみ要員の間では暗黙の了解を通り越した常識となっていた。
それまで店内で散らばっていた着ぐるみ達はある者はすぐに楽になるため、またあるものは更なる快楽を求めてそれぞれの個室に捌けていく。
ボクもよれよれと立ち上がりそれに続く。
立って歩ける分、先程までよりかは幾分マシだが、それでも息苦しいことにはなんら変わりは無い。
だが今ここで焦ってはならない、むしろこの苦しさを楽しむように一歩一歩を踏みしめて歩く。
すぐ目の前を人気アニメの主人公キャラ・シャムとそのライバルキャラ・レラの二人が恋人繋ぎに手を握り合って通り過ぎて行った。
一見微笑ましい光景かもしれない、だが実のところあの体勢はお互いの「モノ」に互いの手を添えあってる状態に他ならないのだ。
設定ではお互いライバル同士だが中身は実は異性同士で恋人だという噂のあの二人、お客さんの目が無くなった途端にこれだ・・・
この後もどちらかの個室でお楽しみなのだろうか?
それともまさか着ぐるみごとお持ち帰りとか・・・
ヤバい、考えるだけで果てそうになってきた、今は別のことを考えよう・・・・。
永いような非常に短かったような戦いの末、ようやくボク自身の個室にたどり着いた。
ボクは衣装クローゼットの前に立つ、クローゼットの扉に備え付けられた全身鏡の中には仕事を終えたばかりのミヅハがたたずんでいる。
平然たたずむその姿と壮絶な内側との大きなギャップ、それを否応にも実感させられてまたちょっと気持ちよくなってきてしまった。
このまま一人で果ててしまうのも不可能ではないが、今は人を待たせているのでそういうわけにはいかない。
少し名残惜しく感じながらゆっくりタイトスカートとタイツを下ろす、ようやく股間のスリットから新鮮な空気が流れ込んできた。
いつからだろう、空気がこんなに美味しいって気付いたのは。
尤も、着ぐるみに覆われてる状態では決してそれほど大きく呼吸出来るわけではないのだけど、ゆっくりゆっくり時間をかけて肺に空気を送る・・
「・・・!?」
つい焦ってツバを飲み込んだせいでちょっとむせてしまった。
さっきまで余裕を演じていたのに、これでは内心の焦りがバレバレである。
きっとこの様子をモニタリングしているであろう"彼"にも伝わったであろう、今頃何処かで笑ってるかもしれない。
・・・・恥かしい。
さて、ゆっくりしてはいられない。
ギリギリまで感じて限界が近づいてることを"彼"に悟らないため、余裕を見せつけようとわざわざ時間をかけてここまで来たのだがおかげで結構時間を喰ってしまった。
きっと今頃"彼"は首を長くしてることだろう。
ミヅハとして一旦全裸になったボクは改めてパンツを履きブラを着ける、普通の女性なら何でもない行為だが限界を迎えつつある中で股間パッドの刺激に耐えながらこういった行為を行っているものだから、気持ちばかりは焦るものの実際の速度はかなりゆっくりになってしまう。
一番感じるストッキングは履くだけで5分近くも費やしてしまった。
そう、他の部屋の着ぐるみ達のようにここで解放されるわけにはいかないのだ。
ボク本来の"業務"はまだ終わったわけではない、むしろ本番はここからだ。
ワイシャツ・タイトスカート・スーツジャケットと着込んでいくと鏡の中にタイトなスーツに身を包まれたミヅハが完成した。
クールに微笑むその表情の下に灼熱と快楽の秘密の世界を内包して。
コートとスカーフを羽織りサングラスを掛けると、着ぐるみ特有のゴム質の肌や大きな目の露出は少なった。
元々ミヅハ自体がホビー21の着ぐるみの中でもかなり小顔なことも手伝って、今の姿だと遠目からちょっと見られただけでは着ぐるみだとは気づかれにくいであろう。
着替えを終えて部屋から出る、廊下の端のエレベータ脇で"彼"こと七瀬は待っていた。
ここは着ぐるみスタッフ専用のIDカードが無いと侵入できないエリアだ。
だが彼はホビー21の着ぐるみマスコット要員ではない、勿論関係者には違いないのだが。
彼は非常に優秀なエンジニアで、若くしてホビー21の着ぐるみ開発主任を務めている。
だから本来は七瀬主任と呼ぶべきかもしれないが、「二人で仕事してる時は呼び捨てでいいよ」と彼自身も言うのでボクは七瀬と呼んでいる。
七瀬はパッと見て20台半ばから30歳前後に見える、共に仕事をするようになってからはそこそこ長いのだが実年齢についてはよく知らない。
やや細身で180cm近い長身、顔は中性的と表現すれば良いだろうか・・・世間一般的には「美青年」に分類されるかもしれない。
「やぁお疲れ、今日も大変だったね」
七瀬がさわやかな笑顔で話しかけてくる、その笑顔は本当に屈託が無い。
だが実のところ、この男と過ごすことになる「この後の時間」の方がボクにとっては大変なのだが・・・・・
七瀬は内ポケットから小型のモバイル端末を取り出すと、小中学生がゲーム機をいじる様に楽しげに操作しだした。
「でも以前と比べたら見違えるほど我慢強くなった。前はこんな酸素濃度だと2時間も持たなかったっていうのに、今日は最後まで体勢を崩さなかったね。よし、ご褒美だ♪」
言うや否や七瀬がタッチペンを滑らかに滑らした、そしてその動きと連動してボク自身の裏筋の最も弱い部分に微妙な刺激が走る。
『ヴっ・・・!!?』
はたしてそれは声になったのかならなかったのか・・・
とにかく蒸れ蒸れの状態で長時間我慢しっぱなしだったボクはそのたった一撃を受け止めきれずに不覚にも果ててしまった。
不意打ちでもたらされた開放感と虚脱感に膝から崩れそうになるボク、いやミヅハをさっと脇に滑り込んだ七瀬が受け止めた。
そしてそのまま彼の腕で背中を支えられる体勢になると、朦朧としたままのミヅハを支えながら七瀬が歩き出す。
遠目に見れば女性が長身の七瀬にエスコートされてるようにしか見えないだろうが、実のところミヅハは背中に回された七瀬の左手に終始翻弄されっぱなしなのだ。
そしてその状況を七瀬は心から楽しんでいる。
そう、七瀬は鬼畜なのだ。
ああ、それにしても先程の一撃・・・あれは本当に不覚だった。
「このギリギリの状態」を悟られないために必死で「平然」を装ったのが裏目に出てしまったみたいだ。
七瀬の端末にはこのミヅハの状態を絶えずモニタリングし、更には内部機能を思い通りに操作できる機能まで備わっている。
ミヅハの中に居る事は"この"七瀬に己の全てを握られるのと同義なのだ。
その「事実」に抵抗するための平然を装った必死の演技すら七瀬には完全に見透かされていたと思うとくやし涙すら出て来そうになる。
ボクが逃れようのない現実に打ちひしがれてる内に直通エレベーターは地下駐車場に到着していた。
七瀬の車はすぐに見つかった。
元々、お客さんや他の一般従業員が利用する駐車場とは別に設けられた駐車場なだけにスペース自体も広くないのだが、そのこと以上に七瀬の車の真紅のボディはよくよく目に付く。
もっともインナースーツにはめ込まれた視界レンズとミヅハ自身の目、更にその上からサングラスに遮られたボクの視界ではそれを「真紅」だとははっきり認識できないのだけれど、それでも同じスペースに並ぶ他からたった1台だけ浮いたその車体は一目瞭然だ。
車どころかバイク免許すら持ってなくて車に関してはチンプンカンプンなボクですら、その車が特別なことくらいは流石に分かる。
スポーツカーというやつだろうか?シートは二つしかない、もっとも着ぐるみ状態だと広いシートは至れり尽くせりではあるから非常にありがたいのだが。
左ハンドルなのは外国車が好きなのではなくて、助手席に着ぐるみを乗せたときに対向車からもそれがよく見えるからだといつか話していた。
彼にとっては助手席に座るのが「一見普通の女」に化けたミヅハでは多分に物足りないことだろう、もっともこんなことで一矢報いた気になってる自分自身も情けないが。
それにしてもこの車は恐らく相当に値段も張るのだろう、一体この男は普段どれほど儲けているのやら・・・。
扉がまるでSF映画のように大きく上に跳ね上がる、足元が危ないからと七瀬はいつも通りお姫様抱っこでシートに座らせてくれた。
「じゃあいくよ、いつも言ってるけど車に酔ったら大変なことになるから気をつけるようにね」
言って七瀬がタッチペンを振るとボクの視界は急に真っ暗になった、ミヅハが目を閉じたのだ。
視界がなくなると急に特殊ラバーに密閉されているという感覚が強まる、かろうじて股間から吸い込める外気とカーステレオから流れ出したユーロビートだけが外の世界の存在を教えてくれた。
そして程なくして車の発進を体が感じ取る。
恐らくその気になればかなりのスピードを出せそうな車なのだが、ボク(といってもここに座るときは大抵着ぐるみなのだが)を乗せた状態で七瀬が飛ばした記憶は一度も無い。
先程のお姫様抱っこといい、実は七瀬の着ぐるみエスコートは超をつけて良いほどの一流なのだ。
最もその事実に騙されて簡単に信用してしまうと、鬼畜が顔をもたげた後でいつも泣きを見ることになるのだけど・・・。
さて、ここから先、「目的地」に着くまでの間はボクにとってはただただ闇が続くばかりだ。
そういえばボク自身についてはまだだった、今のうちに何故ボクがこんな"業務"に就くことになったのかを思い返してみよう。
ボクの名は紫原イサミ。
ホビー21で働き出したのは高校生の頃、もう4年以上も前のことになる。
もっともその当時はまだ今ほど多くの着ぐるみはホビー21にはいなかったんだけど・・・。
一目見た着ぐるみの魅力に取り付かれた当時のボクは藁をもすがる思いで一般アルバイトとして入社した。
その後着ぐるみへの憧れを見抜かれて話を持ちかけられ、裏での着ぐるみサポート・クリーニング要因という今現在とはまた違った意味での地獄のような生活を経て念願の着ぐるみマスコット要因となった。
そして入社からちょうど1年ほど経った時、ホビー21式着ぐるみの開発当初から深く携わってきたという人物、七瀬と出合ったのだ。
後から聞かされた話ではボクの勤務(着ぐるみ)意欲の旺盛さや、きつい衣装・厳しい環境での着用を非常に好むという嗜好を見抜かれて着ぐるみ開発部の社内モニター役にスカウトされたそうだ。
なんか最初から既に見透かされっぱなしだし・・・(汗
そんなこんなでボクはホビー21の着ぐるみマスコットの仕事と平行して新技術・新装備のモニターをこなすようになった。
時には呼吸の耐久限界を調べるためとかなんだとか言ってスク水で25m水泳させられたりしたこともあった。
またあるときは体型補正の限界値を探るためにと言って二次性長期前の小学生並みの体型補正をさせられた上で、フリフリワンピースと厚手の白タイツにドロワースという重装備で長時間イきっぱなしにされたこともあった。
もっとも今回同様、テスト用の着ぐるみには役者の状態を絶えずモニターできる機能がついており、本当にやばい時には七瀬が(ギリギリのところで)必ず助けてくれた。
だからどんな無茶な実験でも実のところそれほど恐くは無かった。
もっとも、毎回ご無体な実験を考案する張本人で、かつギリギリになるまでは助けてくれないのもまた七瀬なんだけどね・・・
「さて、と・・・到着♪」
七瀬の声と共に急に視界が元に戻った。
着いたそこは先程とは別の建物の駐車場のような場所だった。
四方上下をコンクリートで囲まれ、車体用らしいスロープには既にシャッターが下りていて外は窺い知ることが出来ない。
ホビー21の秘密駐車場よりも更に狭く、通路らしいものはシャッターを除けばセキュリティの厳重そうな扉一枚のみだ。
さして光源も強くない場所、しかもボクにとっては3重の色つきクリアパーツを通してやっと認識することが出来る世界なのだが先程まで漆黒の闇に閉じ込められていたおかげでいやに眩しく感じる。
七瀬は再びミヅハをお姫様抱っこに抱きかかえると「ここでは他人と出会う危険も無い」とでも言わんばかりに今度はそのままビルの奥へ歩き出した。
先程の一撃で精神力も体力も使い果たしたボクは、もう全てを彼に委ねるしかない。
余程ここのセキュリティを信頼してるのか車は扉を開けたまま放置し、IDカードでの扉の開錠を片手で器用にこなしながら七瀬は異様に狭く入り組んだ通路を進んでいく。
程なくしてボク達は12畳程のスペースの部屋に辿り着いた、奥には上に続くらしき細い階段も見える。
部屋のスペースの大部分は大きめのデスクとダブルサイズ相当のベッドのようなものに占領されている。
"それ"をベッドと呼べない最大の要因は、その上に設置されたある物体のせいだ。
「マネキンの殻」とでも形容しようか、中が空洞のマネキンをチェーンソーで前後に真っ二つに切り裂いてその後ろ半面をベッドに寝かせてあるといったら一番妥当な表現かもしれない。
残る前半面は更にいくつかに分割されて、それぞれが二枚貝の殻のように後ろ半面の各部位に繋がれている。
そしてそこから伸びた幾本ものチューブがベッドの下の地面を這い、デスクの上の複数台のコンピュータに繋がれていた。
デスクと"ベッドもどき"の丁度中間部分の天井にはカーテンレールが渡してあり、薄いカーテンで部屋を分断できる作りになっている。
何となく町の診療所を思い出させる作りだ。
「今日も一日よく頑張ったね。さあ後ひと頑張り、準備よろしく♪」
そう言うと七瀬はデスク横の小さめのソファにミヅハを降ろしてくれた。
そして自身はピアノ奏者のような流れるような手つきで複数台のコンピュータを同時に操作しだす。
長く素早くしなやかに、そして性格に動く指。
それは見たものを魅了させる美しさを持っているが、ボクはその指が「悪魔の凶器」に変わる瞬間を知ってる。
精も根も尽き果ててるのは先程までと変わりないのだが、ここから先は自分自身で頑張らねばならない。
いや、お願いすればここから先も七瀬は喜んでエスコートしてくれるだろうが、もしそうなった場合は自分自身でやる以上に大変な事をされるのは目に見えているから・・・
何よりミヅハとして、レディとしてクールビューティとしてここから先を殿方に委ねる訳にはいかない。
もっとも先程までの醜態の後ではクールビューティーも何もあったものではないが。
七瀬とは反対側、つまり"ベッドもどき"のある側に移動してカーテンを閉める。
そして着た時と逆の順番で衣装を脱ぎ、近くにある衣装掛けに掛けていく。
間もなくして一糸纏わぬ姿の等身大ミヅハ人形が完成する。
再び楽になった呼吸を楽しみたいところだが、リラックスできるのはもう少しだけ先だ。
ボクはベッドもどきの横の棚から薄い金属製のパンティのようなものを取り出す。
前後分割された二つのパーツで構成されるそれの見た目はまるで貞操た・・・やっぱやめよ、なんだか惨めになるし。
2枚の金属は股間部分で繋がっており、後ろパーツつまりお尻部分には根元で切断された尻尾のようなものがついている。
これを装着するとボディとの隙間がピッタリ埋まり、呼吸はその尻尾の付け根のチューブだけを通して行われる仕組みだ。
パンティを内側から覗くと他にも様々なチューブが顔を出している、そして外からは判らないがミヅハの股間部分にもそれらと対になる部分が存在しているのだ。
後ろパーツ部分をお尻にフィットさせ呼吸が問題ないことを確認すると、股間の間からもう片方の手を通して前面パーツを引き上げる。
二つのパーツをうまくかみ合わせるとカチンと音がしてロックされた。
「こっちも準備OKだよ」とカーテンの向こうから七瀬の声。
さっきのロック音が聞こえたのかもしれないし、そうでなくてもボクの状況を絶えずモニタリングしてる筈だからこちらの状況は分かって当然かもしれないけど、なんだかカーテン越しに観られてる様でちょっと恥ずかしい。
とにかく準備は整ったのだ、今はそちらを優先させなければ。
ボクはベッドもどきの上に上がるとマネキンの殻の上をまたぎ、仰向けに四つんばい・・・尻を浮かせたM字開脚とでもいうべき体勢をとる。
この格好も結構恥ずかしいのだが、直接映像ではモニタリングされてない"筈"なので"きっと"七瀬に観られてはいないだろう。
そうしてお尻の位置を調節し、マネキンの殻とピッタリ重なるように沈めていく。
尻尾の付け根ごとぴったりとお尻が殻の中に納まり、今度はガチャンというさっきより重たい音と共に金属パンティと殻もロックされた。
再び呼吸を確認する、やはり問題はない。
ここまで来ると後は簡単だ、ロックされたお尻部分を軸にして体を殻の中に収めていく。
この殻はミヅハの型を元に造られている。
一体パーツに見えるこの後ろパーツも実は細かい切れ目が所々に入れられており、パーツごとの遊びによってほんの僅かにミズハよりも大きくなっている為にこんなやり方でも無理なく体を収められるのだ。
かくしてミヅハの背面部分はマネキンの殻の中にほぼピッタリと収まった。
「まな板の上の鯉」といった感じの情けない様相ではあるが、これも"業務"の為だ。
ここから先で万が一パニックを起こしたら大変なことになるのだが、そこは流石一流のS・・・もといエスコーターである
七瀬の仕事だ、呼吸が整って落ち着いたタイミングを見計らってから作業を開始してくれる。
低い起動音と共に殻の前半分部分が次々と閉じられていく。
両腕、両足、下半身、上半身、そして顔。
かくしてミヅハの全身は硬いマネキンパーツの中に完璧な形で封印される。
勿論、ボクにとっての視界も再び漆黒の闇に閉ざされた。
最後に前後各パーツ部分の遊びが閉じられていき、まるで吸い付かれたように体がピッタリとマネキンの中に収まった。
ボクは今の状況を外側から見れたことは一度もないのだが、恐らくベッドの上に真っ白に塗装されたFRPで出来た
生命を全く感じさせない等身大人形がただ横たわってるだけにしか見えないだろう。
<To Be Continued>
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