やっぱり、お姉さま「夢の狭間」 [戻る]
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かすかに感じる車の振動。後ろに流れていく海岸線。海沿いの国道を、パパの運転する車は快調に、走りつづけていた。
そんな中わたしは、ただなんとなく、頬杖を付いて窓の外を眺めていた。
そして、車に乗ってから、ずっと聴いてる、イヤホンから聞こえてくる、本当の凛さんなら、絶対な聴くはずのない、村下孝蔵さんの曲。
でも、わたしは、この人の曲を聴くと、心が癒されいくのが感じられる。何でなんだろう・・・。ポツリと、くちびるだけを動かした。
「・・・・・ん。・・り・・てば」
「ん、なに?」
片方のイヤホンをはずしながらわたしは、ママの方を振り返った。
「お昼どうするの?」
「何でもいいよ」
「じゃぁ、そこのラーメン屋にでもよってくか?」
パパは、そう言うがはやいか、さっさとハンドルを切って、駐車場に車を入れてしまった。
<すずらん>風にはためくのれんには、かろうじてそう読み取れた。
「ねぇ、こんなさびれたラーメン屋美味しいのかな?」
車から、降りて背伸びしながら涼が、ぽつりとつぶやいた。
「う~ん、どうなんだろぅ?」
「ばっかだなぁ、こういう店ほど、美味いって決まってるじゃないか!」
パパは、ひとりではしゃぎながら、さっさとのれんをくぐって行ってしまった。こうなると、誰もパパの暴走を止めることは、出来ない。いや、出来るんだけど、下手な止め方をすると、体をばらばらにされてしまう。
あ!今、胡散臭い目で見たそこの人!どんなヒドイ目にあったって、わたしは、知りませんからね!
「ちょっと、なにひとりでぶつぶつ言ってるの。しょうがないんだから、早く入りましょう。」
完全なわたしたちの敗北。あきらめムードの中わたしは、のれんをくぐった。
「ほら、ボーッって立ってないで早く座れよ。」
店内は、カウンター7席のみで、チョッチ太めの人ならきついかな?ってぐらいのせまさ。でも、入ったとたんに嗅いだ、スープの美味しそうな匂いに、グ〓〓!!ってわたしのお腹が、嬉しいヒメイを盛大に上げた。
「いい音だして、くれるじゃないか!あんた!!よし!たっぷりサービスしておくよ、お嬢ちゃん」
「相変わらず、だな、ルナは」
「「「ルナ!?」」」
わたしたち三人は、いっせいにパパと〈ルナ〉と呼ばれた人を交互に見つめた。そこには、誰がどう見たって、50は越えてみえるおじさんが、いた。
「ぱ、パパ!る、ルナって、あの伝説の、美少女着ぐるみの!?」

ホビー21に彗星のごとく現れ、そして消えていった、“Doll club”製の着ぐるみの完成品第一号。その内臓をやってた、人がわたしたちの、目の前にいる。奇跡と言ってしまえば、それまでだけど・・・。まさか、そんな人が、パパの知り合いだったなんて・・・、世の中狭いもんね。

「なんだ、美空だったのか。相変わらず無茶なステージを、やりまくってるみたいだな」
「それは、お互い様だろ?それに、新しい着ぐるみの出来はどうなんだ?」
「まぁまぁ、ってとこかな?」
ものすごく、普通の会話のように聞こえるけど、絶対に普通とは、違う会話。
だって、いい年したおじさんたちが、話題にしてるのは、野球とか、飲み屋の事なんかじゃなくって、美少女着ぐるみだよ着ぐるみ!!「お前に限って、まぁまぁって事は、ないだろ?いつものように、テストさせてくれ。さいわい、主要なメンバーはそろってるからさ」
「・・・パパ、もしかして、今回の旅行の目的って・・・・・」
涼の冷たい視線が、パパを射ぬくかのように、突き刺さった。
「アッタリ~!!」
パパは、そんな涼の視線をものともせず、まるでイタズラを見付かってしまった、子供のような顔をして、わたしたち三人を交互に見つめた。
「へい!おまちどおさま!!サービスしといたから、しっかりデータの方、頼むよ」
逃れられない、現実にわたしたち三人はおとなしく、ラーメンを食べ始めた。

作者注意。

ここから先は、“Doll club”の機密事項のほんの一部を公開します。が、行く先の研究所(すなわち〈ルナ〉の実験室)の場所や、その他の事は、一切公開出来ませんので、悪しからず。それから、この事は、他言無用でお願いします。
葛城美沙都

あの、美味しいラーメンの余韻も、どこえやら、わたしたちは、〈ルナ〉の実験室へと半ば強制的に連行?された。

所狭しと、放り出されてる製作途中らしき、着ぐるみの数々。いったいなんに使うのか、はたまた〈ルナ〉の趣味なのか、いろんなSMグッズも一緒に転がっていた。
「・・・相変わらず、圧巻な光景だな」
「なぁに、これでも、片付いてる方さ。さっ、さっそく着替えてもらおうか、まずは凛ちゃんと、涼ちゃん両親のいるまえだけど、着ぐるみを着て、普通のHしてくれ。あぁ、もちろん、真似なんかじゃなくて本当にな」
わたしと涼は、盛大な音を立ててずっこけた。
「ちょっと待ってよ〈ルナ〉さん!!いくらなんでもそれは・・・」
「出来るんだよなぁ、これが。俺が、開発したセンサーを埋め込んだギミックを使えば、男女どっちでも、対応可能なんだ」
「でも、まだ実験段階なんでしょ?」
わたしは、痛い所を突いて、なんとか、逃れようと試みた。
「だからこその、実験で、データ採りなんだ。巧くいけば、“Doll club”の採算性が、上がるんだよ」
「さ、採算性って・・・」
まさか、〈ルナ〉さんが、お金のために・・・。
「開発に意外と、かかったンだよな。安全第一を優先したらさ」
〈ルナ〉さんは、しみじみと、何かを噛み締めるような、それでいて、後悔してるような、表情を見せた。「〈ルナ〉!アイツの事をいつまでも、悔やんだってしょうが、ないだろ!あれは、アイツが悪いんだからな」
二人の会話を聞いてた、わたしの脳裏に引っ掛かるモノが、浮かんできた。
〈ナナ〉
〈着ぐるみ殺人事件〉
〈“Doll club”〉
な、なにこれ?
〈**さんの事故死。いえ、わたしにとっては殺人も同然〉
〈葛城美沙都〉
〈***への復讐〉
わたしの記憶?
〈簡単には死なせない〉
〈どんな手を使っても〉
わたしは、突然めまいに、襲われたかのように、頭を抱えて、しゃがみこんでしまった。
〈たとえ、わたしが死んでも…〉
着ぐるみだった頃の!?
もっとも、思い出したくない、記憶。前世?のわたしが犯した、罪。
『・・・これが、償い?』
そう、心の中で、つぶやいた。
「ちょっと、凛大丈夫!?顔色悪いみたいだけど?」
「・・・大丈夫」
多分わたしの顔は、血の気なんかなく真っ白なんだと思う。
「凛、無理するなよ。わかってるとは、おもうけど、“Doll club”の着ぐるみは、体力勝負なんだからな!!それから涼も、無理なら止めとけ!」
パパは、いつになく厳しい口調で、でも優しくわたしたちをさとした。
「大丈夫。やれるとこまでやってみるから・・・。他の人には、頼めないんでしょ?」
「・・・まぁ、そうだな。それを言われると、キツイんだけどな・・・・・・。やってくれるかい?」
〈ルナ〉さんは、最終確認をするかのように、わたしたちを見つめた。
「・・・やります!その代わり、本当に安全な物作ってくださいね」
「あぁ、任せてくれ。安全で、中からでも、外からでも、楽しめるものを作るさ!アイツには、負けてられないからな」
決して安請け合いなんかじゃなく、真剣な眼差しが、わたしたち四人を、貫いた。
「よぅ~し!いっちょ、やったるで~~!!」

まぁ、こんな感じで始まったデータ採りなんだけど、結果だけを簡潔に、伝えるといつのまにか、パパとママまでが、入り交じっての乱交?って言えるのかな!?まぁ、たっぷり5時間――覚えてるだけで――は、H?しっぱなし!!まったく、仮にも親子だよ!お・や・こ!!いくら安全性第一のためのデータ採りとはいえ、ホントにHなんかしたら、近親相姦だよ!
それに、〈ルナ〉さんの作ったギミックは、精巧に出来てて、濡れるは、射精はするは――わたしも、男性タイプのを、着てみたんだけど、男の人がイクのってこんな感じなんだ!――、でもう大変。
〈ルナ〉さんは、満足出来るデータが、採れてる事に満面の笑みを、浮かべていた。

「満足のいくデータ、採れたみたいだな」
一足早く、ギブアップしていた――根性なし!――パパは、〈ルナ〉さんと交代して、代わりにデータ採りをしてたみたい。
『えぇ、これならバッチリ良いものが、出来るわ!アリガトウ!!』
〈ルナ〉さんは、キャラのまま、パパに抱きついた。あらら、パパったらまたテント張っちゃった。
「る、〈ルナ〉!ちょっと!!や、止めろって!」
『あら、でもこっちは、そうは、言ってないみたいみたいだけど?』
『ホントだ!まだまだいけるじゃない!!パパァ~、ガンバって、あと三回戦イッてみよう~!!』
「む、無茶言うなぁ!!」
パパのうれしそうな、ヒメイが、〈ルナ〉さんの実験室に響いた。

って、お~い、今晩予約しておいた、ペンションどうするの~!?(天の声?)


つづく


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