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「ただいまぁ」
「あら、おかえり。涼は、一緒じゃなかったの?」
「一緒だったわよ、“Doll Club”までは」
ぶっきらぼうにわたしは、そうこたえた。
「で、なんで?一緒に帰って来なかったの?」
「・・・・・・ジュリよ、ママ」
わたしは、トゲトゲしい、口調にならないようになんとか、感情を抑えた。
「( ̄▽ ̄;)また、やられたの・・・・」
さすがのママも、呆れかえって、頭を抱えてしまった。
「だからチョッチ、鉄拳制裁加えて、捨ててきたから」
「そう。でも、あんまりひどくはしないようにね」
「ハァ~い(そのうち、ひょっこり帰って来るわよ!あのヴァ~カ!)」
わたしは、階段を上がりながら縛られた腕をやさしくなでた。さいわいな事に、あの着ぐるみのお陰で、跡は残ってないみたいだけど、これならパパ――もちろん、本当の凛さん――のステージに出てる方が数倍マシッ!って、思える。
「でも、あのステージ見てる人たちって、まさか、本当にわたしが、切られてるなんて、想像出来ないよねぇ(ⅢдⅢ)」
楽屋にて・・・。
『さ、凛。着替えて、着替えて』
「ぱ、じゃなくて、美空さん!なんで!僚二の両親が、いるのよ!」
わたしは、美空さんに、詰め寄りながら、ついつい指差してしまった。
「そ、それに、紗々音のお母さんまで!」
「アシスタントよ、凛ちゃん。あ、じゃなかった、エリエさん」
サラリと、した口調で、僚二のお母さん――加地晶(かじあきら)さん。ステージネームは、ルイ――にそう流されてしまった。
『そうよ、エリエ。今日は、ちょっと大掛りなことを予定してるから、集まってもらったのよ』
「そうよ、エリエさん。今日は、わたしも一緒に切られ役なんだから、安心してていいわよ」
そう言いながら、わたしの肩を、ポンポンって、夏紗音(かざね)さん――ちなみに、紗々音と、汐音のお母さんね。ステージネームは、アキナ――が、叩いてきた。
「ちっとも、安心なんかできません!」
わたしは、力一杯否定した。
「まぁまぁ、凛ちゃん。そんな事言わずに、頼むよ。吾郎ちゃんだって必死なんだよ」
『ちょっとぅ、亮湖(りょうこ)ぅ、ステージの時は、本名では、呼ばないって、のが約束でしょ!』
「あぁ、わるい、わるい。ついつい、出ちゃいんだよなぁ、本名の方が」
『(怒)亮湖!あなたも、出なさい!(切り刻んであげるわ)』
「ちょっと、まちぃな、美空。俺今日は、持って来てないぜ、レイは!」
必死の形相になりながら、亮湖さ、じゃなくて、レイちゃん――わたしのエリエより若い設定だから、ちゃん付け(^-^)v――は、逃げ出そうとしたけど、晶さんがバッグをゴソゴソと、あせりだして、「ハイ。レイちゃんなら、ちゃんとここにあるわよ」って、差し出した。
「・・・・お前なぁ、しっかり持って来るなよなぁ。今日は、家で一人で楽しもうって、考えてたのに」
『甘いわよ、レイ。そう簡単には、楽しませないから、覚悟してなさい』
トゲに毒のある青い薔薇。美空だけは、表情が自由に、変えられる機能を持っていて――最近追加された、試験段階の機能で、もしもなんの問題なく機能すれば、一部の着ぐるみにも、搭載される予定。もちろん、“Doll Club”のあの人とあの人にも、搭載されてるんだけど・・・(まったく、もはや着ぐるみの領域を越えてるわ、ホント(ⅢдⅢ)ついでに、なんで知ってる人たちばっかりなの!この集団は!)――そう表現した方が、しっくりくる表情を浮かべた。
「(まったく、悪魔なんだから)で、美空さん。今日は、このメンバーで、たりるの?後、一人ぐらいは、呼んでおいた方が、よくはない?」
『・・・・そうねぇ、アキナ』
「はい?」
『アスカは、すぐに、手配できる?』
「えぇ、問題ないとは、思うけど」
『そう、当たってみて』
「了解」
アキナは、さっさと、ケータイを取り出してアスカに、電話をかけた。
「あ、アスカ?アキナだけど、今から美空さんのステージに出れる?・・・・大丈夫なの!よかったァ~!ちょっと、人数的に、厳しいかなって、話しがでてたの・・・・そうね、これから、リハーサルして18:00に、本番だから・・・お願いね・・・・じゃぁ、後で」
「美空さん。アスカOK!だって」
『そう、よかった。あ、そうだ、わたしエリエと、打ち合わせがあるから、みんな着替えてて』
「了解」
「わかったわ」
「ハイハイ」
三者三様に、返事をして、それぞれの楽屋へと、消えていった。
「で、美空さん『凛。今日から、あなたが、天一美空を、継承するんだ」
「え?何言ってんの美空さん?わ、わたしが美空さんに?」
「そうだ、お前が天一美空を継ぐんだ」
「ちょっと、待ってよパパ!何でいきなりなの!第一わたしには、あんなイリュージョンとかのトリック分かんないしぃ、わたしと、パパじゃぁ、」
わたしは、おもいっきり否定した。
「大丈夫だ。この着ぐるみは、特別制だから、トリックとか知らなくても、問題なく、ステージは、こなせるから」
「いや、そう、言う問題じゃなくて、学校はどうするのよ、学校は!」
「・・・・・忘れてた」
わたしは、あきれて言葉もなく、ドカッ!って、イスに座り込んだ。
「ぱ、美空!わたし、今日のステージ降りるわ。後は、アスカが、来てから、頑張って。さようなら」
わたしは、それだけいい捨てると、荷物をまとめ始めた。
「ちょっと、凛。今の話しは、忘れてくれ!今、お前に抜けられると、困るんだよ!」
「もう、知らない!さよなら!」
テキパキと、荷物をまとめ終わったわたしは、楽屋のドアに、バン!って、おもいっきり顔面を強打された。
「・・・・・・だれ?この冴えない顔した、子?」
『あ、アスカちゃん!エリエに、何て事してくれたの!』
「え、えぇ!この子が、あの、エリエさんなの!」
おもいっきり、失礼きわまりない言い方をして、ドカッ!って、今までわたしが座ってた、イスに腰をおろした。
「・・・・み、美空さんさっきの話し今日だけなら、受けるわ。そ、それに、アスカさん?それとも、アスカちゃん?」
「・・・・ちゃん付けの方よ。エリエお姉さま!」
「そう、アスカちゃん、今日は、わたしの代わりに、エリエに、なって(仕返ししてあげるから)。今日エリエは、チョッチキツイのよ。それに、美空さん――もちろん中の人よ――が、外せない、用件があるから、どうしても、代わってくれって、言ってるから・・・。お願い出来るかしら?」
顔面強打の復讐のために、わたしは、こころにもないことを並べて、なんとか、アスカちゃんを、わたしの代わりに、美空に、切り刻ませようと、言葉を並べた。
「・・・・・・代わっても、いいけど、わたしのアスカは、誰が演じるの?」
「あぁ、それなら、大丈夫よ。美空さんの中の人が、演じるから」
「え?でも、体型的には、大丈夫でも、身長が・・・・」
『あぁ、その点ならご心配なく、細胞補整用のインナーを用意してきたから』
「・・・・って、外せない、用件があるんじゃないの!」
「だから、わたしが美空さんになって、あなたがエリエになるのよ」
「いや、だから!わたしのアスカは!」
「心配ご無用。途中でアスカと、エリエを入れ替えれば、すむことよ」
『そ、入れ替え』
「という事は、エリエの上に、アスカを着るって事?」
『そうじゃなくて、あなたは、最初からエリエで、わたしがアスカを着て、エリエが、美空を着てれば問題ないじゃない?』
「そうよ、実際、美空さんの中の人が、抜けなきゃいけないのは、休憩の後からなんだから」
まぁ、早い話しが、アスカは、途中から消えたままって、事ね。秘かに心の中でニヤリと、わたしは、笑みを浮かべた。
『ほら、わかったら早く、着替えた、着替えた』
美空さんは、わたしたちをはやしたてた。
「なんか、納得できないのよねぇ」
『ハイハイ、ぐずぐずしない。』
「「ハ(フ)ァ~イ」」
わたしと、アスカちゃんは、見事にハモって返事をした。
その後、ステージにて。
わたしの代わりに、エリエになったアスカちゃんの、悲痛な叫びが、会場いっぱいに、響きわたった。もちろん、美空さんの全面協力のもと、実行されたイリュージョンなんだけど(笑)――まぁ、もっともそうは、みえないんだけど――。
チーン。合掌(≧m≦)
つづく。
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