やっぱり、お姉さま「夢のカケラ」 [戻る]
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全ての件に、決着がついてから、すでに二年の月日が過ぎた。わたしの意識?は、いまだにこの世界に留まっている。
どうやら、あの時、紅連の炎に包まれる瞬間に、わたしの意識?は、着ぐるみから離れてしまったらしい。
そして、今のわたしは、着ぐるみではなく、普通の人。つまりは、人間として生活を営んでいる。それも、18才の高校3年生として――ちなみに、性別はヒミツб(≧∇≦)。でも、補習が貯まってて、卒業出来るかなァ(ToT)――。
でも、元が着ぐるみだったせいなのか、やっぱりわたしは、着ぐるみには、興味を持ってしまう・・・。

そんな今のわたしの名前は、凛。舘田凛。県立第三高校に通う、元気いっぱい?で、入学したばかりの高校1年生――もちろん、生まれ変わった時ねヾ(≧∇≦)――。

最初に気が付いたときには、‘また、着ぐるみに生まれ変わったのか・・’と、愕然としたが――もちろん体が、自分の意思で動かせなかったからだけど――、「凛!いつまで、寝てるの!早く起きないと、遅刻するわよ!」そう、怒っているような声が聞こえてきた。わたしは、反射的に起き上がった。ただ、そんな、何気無い、行動なんだけど、今のわたしには、衝撃的だった。今までだと、わたしの中に誰かが、入ってないと自分では、動くことなんて叶わぬ願い。でも、今は、自分の意思で体を動かす事ができる。ただそれだけの事に驚きを隠せない。さらに、驚いたのが、普通なら赤ちゃんとして、生まれ変わるのがルールだと思っていたんだけど――そんな、ルールがあればだけど――、なぜかわたしは、ある程度成長した人の体に転生?――元のわたしに、命とゆうものが存在していたらの話しだけど・・・――してしまったみたい――そして、これを転生と、よべるならだけど――。
「ゴメン、ママ。今日ちょっと体調悪いみたいなんだ。だから、学校休むって、連絡入れといて!おねがい(≧m≦)」
自然に出た、そんな言葉。初めて聞いた、今のわたしの声。作り物の声とは違い、心地好い響きが自分の耳に伝わってきた。そして、誰に見えるわけでもないのに、わたしは、ドアに向かって、手を合わせていた。そんな、わたしは、本当に人として、生まれ変わったんだって、事を実感した。今まで、わたしが、寝ていた、やわらかい、布団の感触。窓からさしこむ、やさしげな朝日。壁一面に並んだ本棚。いかにもって感じの、部屋の内装。わたしが、着ぐるみだったころ、もっとも憧れたものたちが、今わたしの目の前に広がっていた。
ふと、“今の自分の顔を見てみたい”そう、思ったわたしは、急いで部屋のドアを開けて階段を駆け下りた。

洗面所のカガミに写し出された、わたしの顔は、美少女とは、言い難いけど、まぁ中の中――って、自分でゆうのもなんだけど――?ぐらいの顔が、薄いブルーのパジャマを着て、写っていた。
「まぁ、良いんじゃないかな?人としては・・・・」小声でつぶやいたわたしの背後から、「・・・・・・凛、あなた体調悪いんじゃ、なかったの?」って、声がかかった。カガミ越しに、見えたのは、今のわたしの顔に、ほんの少しだけ、シワ――初めて逢ったのに、失礼だけど――をつけただけの顔がわたしの事を見ていた。
「ゴメン!ママ。今日ってさ、あの日だから・・ね!(≧m≦)」
わたしは、振り向きながら手を合わせて、そう言った。
「・・・・あぁ、アルバイトの日ね。ハイハイ、分かりましたよ」
あきれたとも、納得したともとれる表情が、ママの顔に広がった。
「ちょっと、そこのお二人さん、どいてくれる?顔、洗えないんですけど」
不機嫌そうなでも、ちょっとからかってるような、声が、ママの背後から、聞こえてきた。そこに、立っていたのは、わたしから見てもかわいくて、もう、絶対守ってあげたくなるような、くやしいけど、美少女――どことなく、昔、わたしの内臓をしていた、人が買った続葉に、にている――がいた。
「あぁ、涼。ゴメン!今どくから」
そう、言いながらわたしとママは、そそくさと洗面所を後にした。「・・・お姉ちゃんも、よくやるよパパのアシス・・・」って、言葉がわたしの耳に聞こえてきた。
そう言えば、パパって、イリュージョニストだったけ?あんまり、有名じゃないけど・・・。
ってな、事を考えてたら、とんでもない事を思い出した。“わたしって、パパに切り刻まれるんだった・・・Σ( ̄◇ ̄)”――もちろん、トリックは、あるわよ・ね・・多分(^o^;)いや、なきゃ困るわ!だって、いくら、凛さんの記憶を受け継がせてもらってても、肝心のトリック部分だけは、記憶にないんだもん(T-T)――。
人生初の食事。トーストにスクランブルエッグ。それに、香りのいいコーヒー。それらを、ぺろりと食べてしまい、ゆっくり二杯目のコーヒーを飲んでいたら、「凛!今日も、頼むよ」と言いながら、パパにバシバシと背中を叩かれた。もう、パパのおかげで、せっかくのおいしいコーヒー、こぼしちゃったじゃない!(* ̄O ̄)ノ「あなた!いいかげんにしてください。また、テーブルクロス買いかえじゃないですか!」
「ハイハイ、これで、文句ないだろ」
そう、言うがはやいかさっと、テーブルクロスの色を白からアイボリーへと、変えてしまった。
あぜんとしながらも、わたしは、パパの顔を見つめた。そんな得意気なパパの頭をママはなんと、フライパンで一撃――軽く叩くぐらいならいいんだけど、おもいっきり振りおろしたんだよ――。まったく、なんて夫婦なの・・・。
「・・・・・・ママ。大丈夫だよね?パパは」
「心配ないわ、そのうち気付くから」
そうなの?かなり疑問が残ってるんですけど、まぁ、とりあえず脇に置いておいてっと、パパが気付くまでに準備しなきゃ。
「ごちそうさま」
そう、言ってわたしは、今は自分のものとなった部屋へと向かった。

「・・・・ふぅ。なんだか、大変な事になりそうな予感がするわね」
部屋のドアにもたれかかりながら、そう、つぶやいた。

約30分後。
「凛。準備出来たんなら、行くぞぅ!」
ドアの外からは、ついさっきまで、ママに一撃をくらってのびていた、人とは思えないような、パパの声が聞こえてきた。
「はぁ~い」
そう、言いながらドアを開けると、そこには廊下がなく、薄暗い闇が広がっていた。
「・・・・・・」
わたしは、言葉もなく、ドアノブに手をかけたまま、ただぼうぜんと、立ち尽くしていた。
「なに、ぼうっと、つッ立ってんのよ、美紗都」
「!だっ、誰?」
突然、かけられた呼び掛けに、びっくりして、振り返ると、わたしの部屋もなくってて、そこには、不適な笑みを浮かべた涼が、立っていた。
「・・・・あなた、誰?」わたしは、明らかに雰囲気の違う“涼”に戸惑いながらも、そう問掛けた。
「忘れたのか、美紗都。あの日お前を、燃え盛る炎の中から救いだした、モノの事を」
姿かたちは“涼”なんだけど、声そのものは、涼本人とは、似てもにつかないまったく違う声――男とも女とも、取れる――が、聞こえてきた。
「知る・・・わけ・・・ない・・・じゃ、ない・・・・。あの日の、あの時に、わたしは、死んだはずで。もしも、生まれ変われる、事が、出来たら、・・・出来たら・・・・」
だんだんと、自分の声が小さくなっていくのが感じられて、最後には、自分が何を言いたいのか、分からなくなってしまい、ついには、ペタン。と、座り込んでしまった。
ポタッ。ポタッ。
軽く握っている手の甲に、落ちて来る水・・・。いえ、涙?初めて流す、本物の涙。着ぐるみとして、生きていた間にも、仕掛けとして流す涙は、経験したことはあるにはあるけど、この涙は、紛れもなく、わたしの目元から、流れ出て来るもの。
などと、関係のない事でも考えていないと、わたしの心が、こなごなに砕け散ってしまうんじゃないか、って不安が広がっていた。
「ん~ん、いい、気持ちだ。初めてにしては、なかなかいいな」
ポン、ポン。と、軽くわたしの肩を“涼”が叩いてきた。わたしは、涙に濡れた顔をその“モノ”に向けた。
「・・・・なんで、わたしなの。なんでよ」
「なんでって、よく言うよ、自分で最後の瞬間に、まだ、死にたくないって、願ったくせに。だから、ちょうど、死んだばっかりのその子、凛だっけ?に連れてきてやったんだよ」
わたしは、言葉もなくその“モノ”の発した言葉の意味が、理解出来ずに、ただただぼんやりと、流した涙を拭う事もせずに、うつむいてしまった。
「・・・・ったく、しょうがないな。そんなに嫌なら、今すぐにでも、元にもどし・・・・」
「嫌!それだけは、絶対に嫌!」
わたしは、その“モノ”の、言葉をちからいっぱい否定した。
「じゃぁ、いったいどうしたいわけ?」
“モノ”は、呆れ果てたような声をはきだした。
「・・・・生きたいわよ。普通の人、いえ、人間として、生きたいわよ」
わたしは、きっぱりと断言しながら、その“モノ”を見つめた。
「・・・・・・わかった。お前の好きにしな・・・」その“モノ”は、そう言い残して、姿を消した。
わたしはただ、ぼうぜんと、“モノ”が消えた後の空間を見つめ続けた。

「凛、どうしたの!こんなところに座り込んで」
ママのびっくりしたような声に我にかえったわたしは、「んん、なんでもないの。ちょっと、フラッて、きただけだから」て、言ってごまかした。だって、まさかわたしが、元は着ぐるみに宿った意識らしき“もの”で、あなたの子供の凛さんは、夜中に″死んだ″んだって事を、どう伝えていいのか分からなかったし、もしも、仮に伝えたとしても、信じてもらえるかわからないし・・・。
「・・・・そうぉ?無理してまで、出る事なんてないんだから」
「大丈夫。ほんのちょっと、興奮しすぎたみたいだから」
ほんの少しぎこちないけど、なんとか笑顔を作ってわたしは、部屋の中へと戻った。

ドサッ。と、ベッドの端に腰をおろしたわたしは、自分のものとも、凛さんのものともつかないこの体をどうするべきか、考えようとしたけど、頭は虚しく空回りするばかりで、どうしたらいいのか、なんて結論が出るはずもなかった。

コンコン。
「凛、そろそろ、行くぞ」ドアの外から、またパパの声が聞こえてきた。
「・・・・・・ホントにパパなの?」
わたしは、さっきの事があるからつい、疑心暗鬼になって、確認してしまった。「なに言ってんだよ凛。お前のパパは、後にも先にも、俺ひとりだろ?」
さも、おかしそうな声がドアの向こう側から、聞こえてきた。
『・・・そうだよね、パパは、パパだよね』
わたしは、自分に言い聞かせるように、小さな声でつぶやいた。
「さぁ、行こうよパパ。おきゃ・・くさ・・・・」
意を決してドアを開けたわたしは、またまた、ドアノブを握り締めたまま固まってしまった。
別に、さっきみたいな空間が広がっているわけはなくて、いつも?と、同じ風景広がってはいるんだけど、わたしを待っていたのは、抜群のスタイルをもち、腰まで届くほど長い髪をなびかせた、ひとりの女性だった。
「・・・・・・・・あっ、あの、パパは、どこに行ったんですか?」
それだけ言うのが、やっとだった。わたしは、その人のあまりの美しさに、言葉もなく立すくんでたから・・・。
「凛、パパだよ、パパ。いつも、この格好で、ステージに立ってるだろう?」

その瞬間わたしの中で、凛さんの記憶の一部が弾けるように再現された。

世界でただひとりの、着ぐるみイリュージョニスト。正体不明の“彼女”――名前を、天一美空(てんいちみその)――の中身を知るものは、“彼女”の組織するイリュージョン集団《エルギーオン》の中でも、アシスタント数名。
そのアシスタントたちでさえも、着ぐるみに包まれ、よういには正体を知ることは出来ない。

「・・・・・・パパ、おどかさないでよ〈あいつかと思ったじゃない〉」
わたしは、なんとか笑顔を作って、パパを叩く真似をした。
「わるいわるい、ちょっと沈んで見えたからな」
そう言って、パチン。と、ウインクを変えしてきた。「まったく、早く行こうよパパお客さんが待ってるから」

わたしは、そう言って、すばやく階段を、下りて行った。

「ママ、それじゃぁ、行ってきまぁ~す」
わたしは、そう言いながら玄関のドアを開けた。もちろん、隣にはパっ、じゃない、美空さんを伴って。
「凛、おはよう。なんだ今日は、バイトか?」
家の前に停まった自転車から声をかけてきたのは、わたしの幼なじみ――もちろん、凛さんのだけど――の、加地僚二だった。
「うん!だから、後で授業内容教えてね」
「あぁ、わかったよ凛。それから美空さん。いつか、美空さんのショー見に行きますから、そのときは、凛をアシスタントには使わないでくださいね!それじゃぁ凛!ガンバレよ!」
そう言って僚二は、走りさって行った。
『り~ん。あなたもやるわね』
「もう、僚二とはただの幼なじみだって、いつも言ってるじゃない!先に行ってるからね!」
わたしは、美空さんのからかいの言葉に、カチン!ときて、スタスタと歩き出した。
でも、自分でも顔が真っ赤になっているのが自覚できた。
『あぁ~ん、まってよ凛。あやまるから、ゆるしてよぅ~』
まったく、パパったら美空さんになると、あんなに軽くなるんだから。普段だって軽いのに、うんざりしちゃうわよ、ホントに。

おもしろくなってきたな。
えぇ。でも、まだまだね。
あぁ、美紗都には、たっぷりと・・・。
そうね、美紗都には、しっかりと・・・。
ダメ!みさ・・・
うるさい!お前は黙ってろ!押さえろ!
どこからともなくとうとつに。だけど、誰かに聞こえる分けもないが、確かにある人物の心の中には、しっかりと刻み込まれたこの会話。だが、確かに聞いたはずなのだが、この会話は、意識の上には、決して浮かび上がってはこない。
なぜなら、その人物は、今自分が置かれた状況に、なれることにひっしで、そんな事にかまってるひまがないだけだった。

「凛さん」
歩き去る凛と美空の二人を、憧れるようなまなざしで電柱のかげから見つめている人物がいた。
その人物の名前は、梶尾汐音(しおん)。凛の友人で梶尾紗々音(さざね)の妹で、よく凛の家に用も無いのに遊びに来ている。
「しおん!あんたねさっさと学校行きなさいよ!」
カポーン。って、いい音が響いた。
「イッタァ~イ。なにすんのよ、このいたいけない妹をいたぶって何が楽しいのよ!」
そう言いながら、しおんは今にも泣きそうな表情――まぁ、もっとも全て演技みたいだけど――を、さざねに向けた。
「何がいたいけない妹よ、あんたのしでかした事の後始末は、いったい誰がしてやってると思ってんの!ほら、さっさといくわよ!」さざねは、そう言うと、しおんの襟をつかんでズルズルと、引きずって行った。「いやぁ~ん、誰かたすけて~」
いつも、舘田家の前で繰り返される朝の光景。
野良猫でさえも、あくびをしてしまうような、なんの代わり映えのない梶尾姉妹のやりとり。
そこに紛れ込んだ一つの意識と、消え去った一つの意識。この先、どう展開するのか作者であるわたしにもわからない。

その日の夕飯の席にて。

「あぁ~疲れたぁ~」
わたしはそう言うなり、テーブルの上に突っ伏してしまった。
「あぁ~もう、ジャマ!そんな所に突っ伏してられると、なんにも出来ないじゃない!どうせなら、あっちのソファにでも転がってなさい」
そう言うとママは、てきぱきと、夕飯の準備を始めた。
しかし、ママもひどいなァ、自分の子供が、疲れきってるってのに、やさしい言葉の一つもかけてくれないなんて・・・。
わたしは、心の中で悪態をはきながらも、素直にソファへと移動した。
もうそこまでだった。わたしは、ソファに倒れこむように横になったとたん、泥のように眠り込んだ。人として、初めての眠りに・・・。


グイッ!
いきなり、誰かに体を抱えあげられるような感覚がわたしを襲った。
『なっ!何!えっ、まさか・・・』
わたしは、愕然とした。だって。だって、今までわたしが発していた“声”、つまり完全なアニメ声。
さらには、体が動かない。と言う事は、まさか、まさか、わたしは、着ぐるみに?着ぐるみに?着ぐるみに?着ぐるみに?着ぐるみに?着ぐるみに?着ぐるみに?戻ったの・・・・?
まるで、思考がループ状に固定されたかのように、“着ぐるみに戻った”って考えが、頭の中をグルグルと、回り続けた。
「さてと、今日はこの子になって、楽しませてもらおうかな?」
突然、そんな声が聞こえたかと思うと、グイッ!って、わたしのお尻が広げられて、誰かがわたしの中に侵入してきた! 『っ!やだ!入って来ないで!』
あまりの気持ち悪さに、わたしはつい、声を出してしまった。
「やっと気が付いたな、美紗都。でも、もう遅いわよ。しばらくは、好きなよいにさせてもらうからな」
その声は――間違いなくあの“モノ”の――、そして間違いなくわたしの体の中から聞こえてきた。やっぱりわたしは、着ぐるみに戻ってしまったらしい。
『・・・・じゃぁ、今までのは、全部夢なの?』
「いや、夢なんかじゃないわよ。もしかしたら今、凛がおかれてる、この状況こそが夢なもな。あぁ、凛じゃなくて、美紗都だったな。でも、そんなことは、どうでもいいことだしな。そうそう、わたしたちが楽しめればね」
わたしの体のあちこちが、不自然に延び縮みしてるのが、いやがおうにも、感じられてわたしは・・・、わたしは・・・。

ハッ!として目が覚めた。「・・・・ゆ、夢?」
「あら、夢なんかじゃないわよ」
わたしは、声の聞こえてきた方を向こうと、体を捻った。
そうしたら、ソファから転がり落ちてしまった。慌てて起き上がろうとしたけど、なぜだか、起き上がれない。
まさか!と思って、おそるおそる両手を動かそうとした。
やっぱりと、言うべきなのか、愕然としたとでも、言うべきか、わたしの両手は後ろ手に縛られていた。
「・・・・・やっぱりね」「あら!あきらめがいいわね。さっきも、そうだったらよかったのにね」
「・・・・・だったら、この状態、なんとか、してくれない?」
わたしは、うらめしげな視線を“モノ”に向けた。
「あぁ、ゴメン、ゴメン。これをするのを、忘れてたな」
そう言って、その“モノ”は、わたしの口にボールギャグを装着した。
「これでよし!さてと、じゃぁ、ゆっくりと楽しませてもらおうかな?」
「!ひょっほ!ほふぇふぁ、ふぁいんひゃ
「あぁ、うっさい!おまけよ!」
“モノ”は、ボールギャグの上からなんと、着ぐるみのマスク――それも、わたしの顔を型どったやつ――を被せられた。これで、わたしの声は、完全に封じられてしまった。
そこから先は・・・・・、



「・・・・・・ん。・・・リン。・・りん。凛!」 ハッ!と、なって起き上がろうしたわたしは、ガツ~ン!って、言うか、ゴワァ~ン!って、言った方がいいのか・・、マァとにかく、いつの間にか、ソファから転がり落ちてて、テーブルの下にいて、頭をおもいっきり強打してしまった。「・・・・・・プッ。アハハハ、何やってんの凛。あぁあ、ホントにあなたって起用ね、どうしたら、こんなに上手く手首にコードを絡ませる事が出来るの?」えっ?と、思ってわたしは、おそるおそる自分の頭を押さえてた手を下ろした。ホントに、いったいどうしたら、こんなに起用に蝶々結びが、出来るんだろう?って、思うぐらいに見事な蝶々結びが出来ていた。
「さぁ、何でだろうね。パパ、それより、ほどいてくれない?」
わたしは、そう言って両手を、差し出した。
「はいはい、もう、夕飯出来たから、・・・ホント、どうやったら(笑)」
「もう!そんなに笑わないでよ!」
「ゴメン、ゴメン、はい、OK!って、足もじゃない、まったく世話のかかる子供で、ごじゃりましゅるな、ほら、足も出して・・・・よし!今度こそOK!」(チッ!失敗したわね。もう少しだったんだけどなぁ、まぁいいさ、次があるわよ、次がな)
わたしは、ハッ!となって、おそるおそる後ろを振り返ってみたけど・・・・、もとよりそこには、誰もいるはずなかった。
『・・・・まさか、“アイツ”って、現実にも干渉出来るの?』
ふっと、心の中にわいてきた、疑問。確認のしようもないけど、どこか記憶しておいた方がいいような、でも、記憶出来るかどうかなって、不安にかられるけど、今は、凛さんの家族に悲しい思いは、絶対にしてほしくない!例えわたしが、着ぐるみに戻ったとしても。だから、わたしは、凛さんを精一杯演じる?って、いったら凛さんに失礼だと、思うから、わたしなりの、“館田凛”を作り上げていかないと、って、思った。
「凛、どうしたんだ?急に後ろなんか、振り向いて」「んん、何でもない。さぁ、早く食べようよ。ママが角を出す前に」
わたしは、努めて明るく、振る舞いながら、テーブルに向かった。

『フン、そうやって明るく振る舞ってられるのも今のうちだけだぜ、凛。いや、美紗都と、呼んだ方がしっくりくるかな?まぁいい、どっちにしても、頑張ってもらわないとな。えぇ、そうね、あの子には・・・』〈・・・・や、やめて~!わ、わたしの・・・・・〉『ったく、押さえとけって、言っただろう。ゴメン、ゴメン、油断したわ。ったく、ちゃんと縛り付けとけよな。だから、悪かったって、言ってるでしょう!』
どこからともなく、聞こえてくる会話。
誰に聞かせるわけもなく、ただ、消費されるだけの言葉。
誰にも届かずに、ここじゃない空間へと消えていった。その“モノ”の気配と、ともに・・・。

和やかに終わった夕飯。わたしは、今日一日の疲れを溶かし出すかのようにゆっくりと、湯船に首までつかった。
「ふぅ。わたしって、これからいったいどうなっちゃうんだろう・・・」
浴槽のふちに頭を乗せながら、ゆっくりと、天井を見上げた。
今日は、特にハード?な一日だったような気がする。だって、朝目覚めたら、着ぐるみから人になってるし。でも、そんなことにびっくりしてるヒマもなく、“パパ”が、“天一美空”って、着ぐるみを着てて、しかもイリュージョニストで、わたしまでステージに引っ張り出されるし、あんな事にはなるし――も、もちろん、マジックでだからね――・・・。
おまけに、“モノ”には、いろいろエッチな事されちゃうし・・・。
あぁ、思い出したらなんだか興奮してきちゃった。
f(^ー^;どうしよう・・・。
「・・・・のぼせる前に、上がらなきゃ」
わたしは、そう言うと、浴槽から上がった。
タオルで、頭を拭きながら「あ!明日は学校かぁ、どうしよう・・・。うまくやっていける自信、ないなぁ・・・・」って、言葉が自然とこぼれた。
「・・・・・でも、なるようにしか、ならないから、頑張ってみるしかないかな?」
とにかくわたしは、マイナスの事なんかは、なるべく考えないようにして、パジャマを着ていった。

「・・・・・もう、お願いだから今日は、静かに眠らせて、お願いだから・・・」
わたしは、ベッドに入りながら、“モノ”に向かって、聞こえるかどうかは、わからないけど、とにかくそう、お願いして眠りについた。

『仕方ないわね。そうだな、今日のところは、止めておいたほうがいいわね。じゃあ、この子で楽しむとしますか、えぇ、楽しみましょう』


つづく。


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