マスコット(1話) [戻る]
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 今から半年程前、最新ゲーム機「ゲームステーション4」が発売され、それと同時に数々の最新技術を使ったゲームが売り出されていた。

 ネットワーク対応は今や当たり前。最新のゲームなどでは実際にリアルな世界でネットワークゲームが楽しめるように、実在する建物や地域とリンクした物まで登場し、そのエリアにいる実際にリアルでゲームに参加する人たちと、ゲーム機を経由して参加する人たちが力を合わせてクエストを遂行するタイプのゲームまで登場していた。

 そんな中、昔からこの手のゲーム機向けに美少女キャラクターを利用した恋愛物ゲームを多数発売していた老舗メーカーが、最新のCGやネットワークを駆使したリアリティー溢れる恋愛ゲーム「ピチピチメモリーズ12」を発売することになる。

 このゲームはネットワークによって、全国各地にいるプレーヤーが、ターゲットとなる美少女と恋愛関係を作るための競争を繰り広げる、と言う内容であった。
 キャラクターや地名はバーチャルなのだが、それでは面白くないと言うことで、いろいろなキャンペーンやイベントをリンクして、ユーザみんなでゲームの世界を楽しもうと、スタッフもいろいろな仕掛けを用意していた。

 そんな開発スタッフの中には、総合ホビーデパート「ホビー21」の事をよく知る人物が何人もいた。

 ホビー21は、おおよそ趣味と名の付くジャンルの物なら何でもそろうと言うほど、多種多様な品揃えを誇り、当初は都心に1店舗のみだったが、大都市圏には順調に建物が拡大し、いつのまにか政令都市は全て、中核都市も含めると20店舗にも及ぶ巨大なチェーンを作っていた。
 もちろんそのどれもが、通常のデパートとしてもその地区最大級を誇り、千葉店や福岡店は野球のスタジアムがすっぽり入る程の敷地を、仙台市は青葉城の収まる敷地をそれぞれもっていた。
 さらに、横浜店に至っては名物だった巨大ビルのすぐ横に79階建ての日本最大のビルを建設し、その1階から50階までをホビーショップにあてていた。

 趣味というジャンルで急成長出来たのは、もちろん理由がある。
 かつてはオタクというレッテルを貼られていた文化が、日本発のコンテンツとして世界中にもてはやされ、それに伴い、一般の人たちが新しい趣味として受け入れ始めた事が大きかった。
 かつての秋葉原はオタクの聖地と言われていたが、今では銀座や六本木に遊びに行く前に、ちょっと秋葉で買い物、が普通になっていた。趣味にサーフィンやスノボなど、スポーツを上げる事自体古くさく思われ、少しマニアックな趣味を披露出来た方が異性に対してもアピール出来る時代であった。

 こういう背景により、ホビー21は、かつての渋谷のファッションビルのごとく、数々の趣味とそれを欲する人たちを飲み込み、急成長を遂げていたのである。

 そして、このホビー21をよく利用するスタッフの中には、このショップのアニメフロアにいる特異な着ぐるみ達に興味を持つ者もいた。
 ホビー21のアニメフロアには、アニメのヒロインのような可愛らしい容姿の着ぐるみが店内をグリーティングしている。そして、この着ぐるみは、一般的なテーマパークなどで見かける物と違い、全身がラバースーツのような素材で作られ、スタイルが良く、とてもリアルで有る意味生々しい。
 そして、このリアルな着ぐるみ見たさにショップに通う人たちも大勢いるぐらい、良くできている事で有名だった。

 そんな着ぐるみを知るゲーム開発スタッフの中から、自然に沸き上がったのが、この着ぐるみでうちのキャラクターを作ってイベントの目玉に出来ないか?と言うことだった。

 早速ホビー21の担当に連絡を付けると、条件は色々あるが技術的には可能とのこと。その条件として、簡単に言うと『着ぐるみスタッフは全てホビー21で用意するので、着ぐるみの詳細については極秘にします』と言う事のようだった。

 それ以外にも、金額の件、稼動可能な日程の件、その他細かい条件はいくつもあったが、イベントを開く側としては、予算も含め、それほど問題になることはなく、快諾出来た。

 その結果、イベントに、ホビー21製着ぐるみが登場すると言う話題が広がり、イベント自体も大盛況になっていた。

 本来全てのキャラクターの着ぐるみを作る事が出来れば一番良かったのだが、時間と予算の兼ね合いで発売前から人気のキャラクターなどのアンケートで上位を占めたヒロイン2体を作ってみることにした。

 一人はアイ。活発でおっちょこちょいで、でも実は寂しがりや。頭は良くスポーツも出来、もちろん容姿端麗。まさに才色兼備で人気ナンバーワンである。
 そしてもう一人はユイ。こちらはアイと対照的に、交通事故で足を悪くして、車いす生活を送る、か細いヒロインである。本当は足はもう治っているのに、怖くて立てずにいると言う設定なので、プレイヤーとハッピーエンドを迎えると立つことが出来るようになるらしい。

 彼女たちはゲーム上では、高校生で、イベントでも基本的に制服である。

 制服のデザインはワンピースセーラー服である。だが、ワンピースと言っても決してゆったりとした感じではなく、かなりタイトに身体にフィットする。また、腰の丸みを強調するため、太ももの付け根ぐらいまではタイトなスカートが続き、そこから下がプリーツスカートになっている。
 タイトなワンピースが身体中を締め付けているにも関わらず、セーラーカラーと太ももから下に広がるプリーツスカートのおかげで、一見イヤらしさはない。お腹から股間付近まで、ワンピースの生地がピタピタに貼り付いていて、足の動きに合わせて、股間辺りにもイヤらしいシワが出来るのだが、飾りになっているベルトとバックルが、そのイヤらしい部分から目をそらさせる効果があるらしく、またベルトのデザインも可愛らしいので、全体としてはセクシーでスタイリッシュな制服という感じに纏まっていた。

 この独特の制服のデザインもゲームの特徴であり、この衣装を着たコスプレイヤーも最近のコスプレイベントではよく見かける。

 だが、この制服の本質は『タイトなワンピース+ベルト』である。
 しかも殆どストレッチしない制服の素材であるが故に、普通の女性でも着ると相当に窮屈に感じる。
 少なくとも現実にこんなタイトな制服を着て毎日授業を受けるとしたら、かなり生徒には不評なはずだ。

 このような得意なデザインは、女性を強調する必要がある特殊なゲームならではの物と言えた。

 そして、この衣装を着る着ぐるみのアイ、ユイもまた、同様に着心地がいいとは思えない状態なのである。
 特に、この着ぐるみはスタイルも良く、そのスタイルをより強調する為に、わざと、少し小さめに服を作ってある。それを着たアイ、ユイは、それはそれはセクシーなスタイルを見せつけている為、イベントを訪れた客には非常に好評なのだが、実際に着ているアイ、ユイ、のその内側にいる役者にとっては、非常に苦しい衣装と言えた。

 これだけ可愛らしい着ぐるみであるのに、実は中身は女性ではない。
 長時間の演技とゴム製のスーツによる締め付けに耐えられる体力、それから、男性が女性を演じる方が演技が強調されて女性っぽく見える、と言う事もあり、中は男性なのだ。
 また、この着ぐるみはゴム製と言っても、本当のゴムではなく、ゴムに似た特殊な素材で出来ている。
 この素材の特徴は、条件を満たす事で、通気性、放熱性を確保出来ると言う事にあった。
 この特殊な素材のおかげで、ゴムにしては長時間着続けても、中の人間がバテずにすむのだ。
 但し、この条件を作るところに問題があった。
 内部の人間が興奮状態になっている時に、身体に微弱の電磁波を当て、その反応により皮膚と接した部分が反応を起こして通気性と放熱性を生むのだ。
 つまり、中にいる人間は絶えず興奮している必要があるのである。

 この興奮を作り出すため、役者は股間パッドに自らの息子を格納し、着ぐるみに入る。
 着ぐるみは、身体全体にセンサーを持ち、特に胸、股間、ウエスト付近などはかなり敏感なセンサーにより、身体の動きや、衣類の締め付け、擦れを読み取ってパッドに伝える。
 より端的に言えば、着ている服に、締め付けられ、扱かれるのだ。
 パッド自体はがっちりと押さえつけて固定され、周りに肉付けもされているので、水着を着ていても股間が目立つことはないが、役者はそのパッドの固定により締め付けだけでも相当に気持ちよくなる。
 その上で、センサーからの刺激に耐えるのだから相当大変な事にかわりはない。

 また、この着ぐるみは呼吸の方法にも特別な仕掛けがあった。
 役者はマスク内にあるチューブにより、外気を取り入れて呼吸するのだが、このチューブは細いチューブに細分化され、全身を経由して最終的に股間に開いたスリットに導かれる。
 これにより、激しく呼吸しても、呼吸音のエネルギーがチューブ内に分散し、それほど呼吸音が目立たないと言う理由と、そもそも空気穴が目立たないのでよりリアルな着ぐるみに出来ると言うメリットがあった。
 そして、もう一つのメリットが先程のスーツの持つ、通気性と組み合わされる。
 呼吸口は、基本的には常に下着などの何らかの布が覆っている。衣装によってはかなり苦しい状態なのだが実際に酸欠になる程酸素量が低下すると、スーツの通性を利用し、外気を浸透させて、足りない分をチューブ内に補うのだ。その為にも全身にチューブを這わせ、外気を取り込みやすくする必要があったのである。
 この結果、常に最低限の生命維持に必要な酸素が供給出来るため、全身をゴムで覆ってしまうような衣装を着ない限り、長時間演技を行っても酸欠になることはなくなった。

 ただし、供給される酸素は最低限であり、また不足するまでは、ギリギリまで股間から導かれる酸素で呼吸を行うため、基本的には常に苦しい。

 そんな状態で演技を続ける必要があるから、とてもこの中身は女性には出来ない、と言う理由もあった。

 そして、そう言う状態のアイ、ユイが、このゲームに出てくるタイトな制服を着ている。

 前述のとおり、胸もウエストも役者のパッドに直結しているので、サイズの小さくストレッチの効かない衣装の為、相当に締め付けがキツイ。そのうえ、スカートのタイトな部分が太ももの辺りまであるので、足を動かす度に(つまり、歩いたり、立ったり、座ったり、足を組んだり、と言った動作の度に)股間付近にピーンと張った布がシワを作り、そのシワがその裏側に厳重に封印されているパッドを刺激する。

 さらに最悪なのは飾りで付いているベルトとバックルだ。飾りのため、腰の両サイドで固定されているだけで実際にはかなりルーズに腰にぶら下がっている。
 そして、ぶら下がっている中央のバックル部分は、丁度アイやユイの中にいる役者の、股間パッドの真上なのだ。
 ルーズなバックルは腰の動きにシンクロし、上下左右に揺れ、裏側に隠れた息子を上から優しくなで回す。

 もちろん、太ももから下はプリーツスカートとはいえ、太ももの付け根付近まではタイトスカートである(超ミニのタイトの下にプリーツスカートが膝上15センチぐらいで付いている)。
 当然そう言うスカートの股間付近は空間が少なく、呼吸も籠もるだろう。

 そんな状況下でも、もちろんアイ、ユイは、そんな刺激を受けているとは全く想像できないほど楽しそうにステージ場でイベントをこなす。

 アイは設定上、かなり活発なヒロインであり、実際ステージでもかなり大きなリアクションで動き回っている。
 当然、その動き一つ一つが、彼女の内部にいる役者の股間を苛めているのだが、役柄上元気よく、楽しげに動き回る必要がある。
 一方のユイは、設定上は車いすを使っている。実際のステージでも、車いすに膝掛けをして上がっているので、あまり身体を動かすことはない。そう言う点では、あまり無理に身体を動かさない為、感じる事も少ないのかもしれず、その点ではアイよりは楽なのかもしれない。
 一方で、足を自由に動かせて換気がある程度出来るアイに比べ、車いすに膝掛けをして本当に膝まで布で覆ってしまうユイの方が、呼吸は数段辛くなる。

 同様にユイはあまり動かない、と言うことは、あまり動けないとも言い換えられる。
 自由に動かせるアイは、ある程度感じ方をコントロール出来る立場であるが、ユイのようにずっと座りっぱなしでは、そう言う事が殆ど出来ない。

 アイはもの凄く感じやすく、呼吸も荒くなりやすいが、その分多少呼吸が楽で、感じ方をコントロールしやすい。
 ユイは刺激が少なく、呼吸は落ち着いて出来るが、その分呼吸は苦しく、感じ方もコントロールし辛い。

 どちらがいいのかは分からないが、両者とも、お互いに相手の方が辛いと思っているかもしれないし、辛そうな相手を想像して、可愛らしい女の子の着ぐるみの中で、悶々としながら自分の演技を続けているのかもしれない。
 こればかりは実際の役者同士にしか分からないが、楽ではないと言う事だけは確実に言えるだろう。

 ファンとの交流イベントは、アイがジャンケン大会を行いユイがそのプレレゼンターをする。またアイ、ユイのサイン会と握手会や、ゲーム制作者の対談などでマスコットとしてステージ脇で話にリアクションを取ったりもした。

 ジャンケン大会では、大きなリアクションと共にアイが精一杯手を上に掲げてジャンケンをする。
 その都度参加者の歓声が上がり、みな楽しそうである。
 だが、もちろんアイにとって、手を大きく上げ、下ろし、また上げ、と言う繰り返しは大変なのだ。
 特に衣装がストレッチしないため、手を上に上げると、衣装の肩が持ち上がり、それにつられて、手を上げた側の服が引っ張り上げられる。女性の身体のカーブの為、出っ張りで衣装は引っかかり、そこを支点にしてアイの身体自身を衣装が持ち上げる。
 胸やウエストが無理矢理衣装に引っ張られ、その衣装の上下は、当然内部のパッドでも上下運動へと変化する。また、胸もウエストも引っ張られると締め付けの度合いが変化する。この変化もパッドに伝わるのだから、ただのジャンケンもアイにとっては一回一回スカートの中にと息を漏らし、全身を快感でふるわせながらの行為なのだ。

 そのジャンケンを横で見ているユイは、もちろん大人しくしている。
 自らもアイと同様に衣装に締め付けられ、パッドに詰め込まれた物が嬉しい悲鳴を上げているとは言え、アイ程激しい刺激ではなく、何となく物足りないはずだ。
 しかし、ユイというキャラクターの性格上、大人しく、ほほえましく、アイの行動を見守っている。

 このとき、しっかりと揃えて閉じられたユイの両足の奥にマイクが仕込めてあれば、さぞかし苦しげな呼吸音が聞こえたはずである。邪魔なはずの膝掛けも、一見すると大切そうに自分の膝を覆うようにしている。
 自らを苦しめる布を、自ら大事そうに扱わねばならないユイの内側の役者の心境は、さぞかし堪らない事だろう。だが、もちろんその気持ちは、当の本人にしか分からない事ではある。

 ただ、だれも気づかないが、時折少しだけユイの両足がモジモジと動くことがある。何も知らない一般の人たちにすれば、これはごく普通に座っている人が足を動かしているだけの行動に見える。が、彼女達の実態を知っている人には、あまりにも切ない行動に見えるはずだ。
 動きたいけど動けない、気持ちいいのに自由に感じられない、苦しいのに空気は入れ替わらない、その全てを最小限の動きで何とかしたかったのだろう。
 たったあれだけの動きで、実際にユイの中の人間が満足しているかどうかは分からないが、何分かおきにチョコチョコ動くところを見ると、とても満足しているとは思えない。それどころか、その僅かな刺激がより一層の切なさを増幅しているとさえ思える。

 そんなユイにとって、ジャンケン大会での勝者にプレゼントを手渡す時だけは、少しだけ身体を動かす事が出来る。車いすが邪魔になるので、身体を少し前のめりにして、手をめいっぱい前に差し出す。
 前に身体を起こすと、お腹から下腹部にかけて、タイトな制服がシワを作り、ユイのパッドに収まった物を撫でるように擦る。そのうえ胸も手の動きに合わせて無理に引っ張られた制服により、ムッチリと変形させられ、その締め付けの変化がパッドに伝わる。
 このときばかりは、ユイも刺激を堪能出来るのだが、プレゼントは1人に1度、せいぜい数人に渡すだけなので、ジャンケンを何度もこなすアイに比べれば、その刺激は可哀想なぐらい少ないことは容易に想像出来た。

 そうして何度かジャンケン大会をこなした2人は、今度はゲーム制作者の対談の脇役として、制作者やコメンテーターの横で、彼らの話にリアクションを取る事になる。


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