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ひっそりとマニアの間で流行っていた「DollClub」。
ところが、この新しいタイプのお店は、口コミにより徐々に、そして確実に客を増やし、店側の売り上げも伸びていく。
もちろん店の売り上げは、新しいキャラクターたちや、店舗自体の改装、設備投資などにまわされ、さらなる集客アップを狙っていた。
そんな中、ある企画会議において、新しいキャラクターシステムの提案がされる。
キャラクターのマスクに改造を加え、表情の変化と言葉の発生を行うという物だった。
とは言っても、役者が表情を操作したり、言葉を発することは事実上出来ない。
そこで、マスクにパッドと同じ人工筋肉を流用した表情変化機能を加え、その表情は遠隔操作で外部の者が行う事にした。
また、マスクにCCDカメラとマイク、スピーカーを装備し、表情を操作する者がカメラ画像を見て、マイク音声を聞きながら言葉を話すと言うシステムを作り上げた。
つまり、体はスーツ内の役者が操作し、顔の部分は声も含め、外部の役者が担当すると言う一種の二人羽織のような仕組みとなった。
開発自体は既存機能の応用だったので、それほど時間もかからず、表情も基本的な喜怒哀楽だけで50パターン以上可能になっていた。
スーツ内の役者は自分の表情が見えないため、マスク内に小型イヤフォンを備え、ピピピっと言う信号音のパターンと強さ、左右のチャンネル切り替え等のバリエーションにより表情を知ることが出来た。
声と表情担当の役者は、ネットで募集した声のかわいい女性ばかりであり、彼女たちは風俗店とはいえ、自分は表に出ず声の出演と機械の操作でそこそこの給料になる気軽さもあり、お得な仕事だと喜んでやった。
初期の段階では、このシステムを装備したキャラクターは僅かに3体しかなく、実験的に導入されることになったのだが、そんなキャラクターの1体が今日も指名を受けていた。
新システム仕様キャラクター名:ジュリ
「じゃあ、このジュリちゃんでお願いします。」
「了解しました。60分のコースでジュリちゃんですね。他のオプションは必要ですか?」
「う~ん、とりあえずノーマルコースでいいです。会話出来るんですよね?」
「ええ。ノーマルコースなら出来ます。言いなりコースの場合、お客さんが会話を許可しないと、いくら話しかけても声も表情も変えませんけどね。」
「会話の許可って?」
「いや、簡単ですよ。一緒にリモコンが付いてくるんです。そのスイッチを入れると会話モードになります。切ればまた人形に戻ってくれますから。」
「へぇ。リモコンか。でもまぁ今日はどんな感じか試したいだけなんで、また今度にしておくよ。」
「そうですか。ではノーマルコースで60分。ジュリちゃんを指名という事で。」
利夫は、料金を精算すると、さっそく指示された部屋に入ってジュリを待った。
ドキドキしながらジュリを待つと、しばらくしてドアがノックされる。
コンコン
「おっ。来たな。」
利夫はすかさず部屋の扉を開ける。
するとそこには可愛らしい花柄のワンピースを着たジュリが立っていた。
服装は花柄が少女っぽさを醸し出しているが、ルーズなためセクシーさはない。
とりあえずの軽装と言ったところか。
「はじめまして!」
次の瞬間、ジュリが挨拶をした。
なにしろここの店の着ぐるみが喋る姿を見たのが初めてだったので、利夫は一瞬驚く。
ジュリは言葉に合わせて口もパクパクと動き、時折表情も変わった。またその表情にあわせるように身体も動かし、本当に人間の女性と挨拶をしたかのような錯覚すら覚えてしまう。
「あ、ど、どうも」
利夫はビックリしてしまい、挨拶もしどろもどろである。
「ふふふっ。驚いた?最初はみんな驚くの。でもきっと楽しんで貰えるわ。」
ジュリは嬉しそうに話す。
「入ってもいいかしら?」
「あ、うん。どうぞ・・」
ジュリに言われて、ふと我に返り、ジュリを招き入れる。
そのまま床のクッションに座るように手で案内すると、ジュリは可愛らしく女の子座りで床に座った。
利夫もクッションに座り込む。
これまで見たキャラクター達と違い、普通に喋っているジュリに、なんとも不思議な気持ちになる。
「あのさ、どうやって喋ってるの?」
利夫は素朴な疑問を投げかける。
「う~ん、そうねぇ。だいたいあなたと一緒よ。」
「一緒?」
「そう。あなたの話を聞いて、頭で考えて、言葉として話すのよ。」
ジュリはあまりにも当たり前のことを言った。
「そりゃそうだけどさぁ。だって君、着ぐるみだろ?」
「違うわ。私はジュリよ。着ぐるみなんて言わないで。」
どうやら正解は教えてくれないようだ。あくまでもジュリというキャラクターになりきっていると言うことだろう。
だが、ジュリの一連の行動を見ていて、利夫はあることに気づく。
おおよそ、彼女の話の内容と、表情、身体の動きはシンクロしているが、時々微妙にズレるのだ。言葉と表情はほぼリアルタイムで動くのに、身体がワンテンポ遅れるのだ。
もちろん、それは、顔の操作と身体の操作は別人が担当していると言う事も直ぐに理解できた。
それに気づいたとき、利夫はジュリに不思議な興奮を覚える。
実は、このDollClubの着ぐるみが好きな理由の一つに、着ぐるみそのものより、中にいるであろう女優の奮闘ぶりを想像して興奮しているところがあった。それはおそらくこの店に来る客の半数以上が感じる密かなる魅力だとも思っていた。
そんな感情を持つ人間にとって、今のジュリの状況は、ただでさえ辛そうな人形の中で、自分の意志ではなく、どこか別の場所で話す声優の言葉に合わせて演技をすると言う状況を強いられているのだ。
テープに吹き込まれた声に合わせての演技ではない。
次にどんな台詞が来るか分からない。そな台詞に合わせて演技をするとは、なんとも大変そうな状況だった。
「あ、あのさ、せっかくだから、着替えとか出来る?」
「うん、もちろん。あなたの好きな衣装を着てあげるわ。」
利夫は、とりあえず着替えをお願いした。やはり好みの衣装を着てもらいたいのだ。
クローゼットを開けると、目移りするほどの衣装が用意されているが、利夫はその中からレースクイーンの衣装を選んでみた。
ライムグリーンと白のレオタードは、短いフレアースカートが付いていて、ハイレグ部分は隠れるようになっている。
素材は光沢があり、さわり心地もすべすべで気持ちいい。
これとセットでテカテカのパンストと下に穿くハイレグショーツ、ブーツとロングの手袋もある。
「これがいいかな。」
「わぁ、レースクイーンね。いいわ。私があなたのクイーンになってあげる。」
ジュリはそう言いながら、衣装を手にとって確認するように床に置く。
手際よく着ている服を脱ぐとゆったりしたワンピースで隠れていた身体が現れる。
「スタイルいいなぁ。」
利夫のつぶやきを聞いていたジュリは言う。
「うふふ。ありがとう。でもホントはもう少しウエストが細い方がいいのよね。」
「これで?」
「うん。あと2センチは細くしたいなぁ。」
そう言いながら自分のウエストを確認するようにスリスリとさすっている。
その手もまたセクシーだった。
下着も手際よく脱ぎ捨てるジュリ。下着は可愛らしいシンプルな物で、派手ではない。
その下着も脱ぎ終わり、全裸になると鏡で姿を確認する。
「どう?私の裸もなかなかでしょ?」
ジュリはそう言うと振り返って利夫をみる。
「知っていると思うけど、私って、普通の人と違って空気を顔から吸えないの。だからこの瞬間しか新鮮な空気って吸えないのよね。」
「そ・・それは知ってるけど・・」
もちろん利夫はジュリ、と言うより、この店のキャラクターの呼吸システムを知っている。全ての客は事前に説明されるのだから当然なのに、ジュリはなぜわざわざ説明するのだろう。
この説明は、ジュリの中にいる人物ではなく、声優さんの説明だ。
中にいる人物は、どんな気分でその台詞に合わせて演技をしているのか、想像したら利夫は堪らない気持ちになってしまう。
「あ、そうよね。やっぱり知ってるよね。わざわざ説明すること無いか。えへへ。じゃあ、もう衣装着るね。」
ジュリはそう言ってショーツを穿く。
「これ、しっかりフィットさせないとレオタードからはみ出しちゃうかもしれないのよね。」
ジュリがそう言うと、穿いたショーツをさらにしっかりと食い込ませるようにフィットさせた。
利夫には、なんとなく予定通りではなく、声優の台詞に合わせて、さらに食い込ませているように見えた。
「よしっと。」
鏡でフィット感を確認するように頷くジュリ。
そのままパンストも穿く。
テカテカのパンストが足を覆っていく光景は、かなりセクシーで、見ているだけで興奮してしまうが、ジュリは手慣れた手つきで下半身をパンストに覆って行く。
「うん。いいわ。このテカテカ感がいいのよね。」
「あ・・あのさ?」
「ん?何?」
利夫は思わず質問してしまう。
「あの・・そう言うのって苦しくないの?」
「え?そう言うのって?」
「つまりその、下半身」
「あ~、これ?う~ん、そうね。そこは想像にお任せするわ。でもね。たぶんあなたの期待は裏切らないと思うわ。」
「マジ??」
「ふふふ。そりゃあ、見た目にも通気性はあんまり高くなさそうだもんね。」
「そ・・そっか。」
ジュリはそう言いながらも楽しそうだ。
中にいる役者の表情とは全く連動していないであろうその表情からは、苦しそうな様子は全く感じられなかった。
さらに着替えを続けるジュリ。
レオタードはハイネックタイプで、首の後ろのファスナーを開けて着る。もちろんまったく平然と着替えているが、レオタードはしっかりと呼吸口を覆っている。
背中のファスナーを閉めるために手を背中に回すシーンでは、ジュリの胸が強調されてとてもセクシーだった。なかなかファスナーが閉められず苦労している様子で、その光景だけでも利夫には堪らない物があった。
「これでよしっ・・と」
ジュリは、鏡で確認するようにそう言うと、ブーツを手に取り、その場でしゃがみ込むようにして履いていく。しゃがんでブーツを履く事はそんなに難しいこととは思えなかったが、ジュリは、何度かフラッとふらつく。また、ほんの一瞬だが手が止まる瞬間もあった。それが何故だか利夫には分からなかったが、その後のジュリは何事もなくブーツを履き終えたので、特に気にもしなかった。
ブーツの次は手袋だ。肘まで覆ってしまう長い手袋に覆われていく手は、素手よりも(と言ってもジュリの素手は当然作り物のゴム製だが)数段魅力的に見える。
ジュリは、最後に鏡で全身を確認するように写すと、納得するように頷く。
「ふふふ。結構いいわね。やっぱり私ってスタイルいいわよね~。」
そう言いながら、ちょっとエッチな手つきで自らの身体をなでるように触れて、スタイルの良さをアピールするジュリ。
「ね。衣装着たわよ?どうしたいの?」
ジュリはそう言うと利夫の方を向いて微笑む。
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