友達?彼女?それとも・・・(23章) [戻る]
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 ひかりやこまちの動きに負けまいと、真一は、激しく切ない快感を押し殺して、一層可愛らしいのぞみを演じながらのグリーティングが始まる。

 野外で10分ぐらいを費やした結果、既にのぞみの中はかなりの温度と湿度である。
 そしてのぞみのスカートの中は、それはそれは素敵な香りが充満する空間となっている。
 スカート内の空気を入れ換えるにはそれなりに動き回る必要がある。
 だが、動けば動くほど気持ちよくなり、息も荒くなる為、余り激しく動くと結果的に息苦しさは増してしまう。
 真一はそのギリギリのポイントで、出来る限り可愛いのぞみを演じ続けていた。もちろん、外から見ているお客さんの誰もが、そんな真一の苦悩など、全く気づくことは無いままに。

 グリーティング中は、子供達も遠慮無く近寄ってくる。
 子供達とのコミュニケーションはしゃがんで行う事が多いのだが、その度に立ったりしゃがんだりを繰り返すことは、実はかなり大変な事だったりする。
 もちろん普通に着ぐるみを着ている状態で立ったりしゃがんだりを繰り返すだけでも、マスクに呼吸を遮られた状態でスクワット運動を、繰り返すわけだから次第に苦しくなる。マスクに呼吸用のスリットや紗幕が貼ってあったとしても、決して楽な訳ではない。
 当然、のぞみ達の中はそんな普通の着ぐるみと比べても、比較にならない程の過酷な状況になる。
 呼吸は元々かなり苦しい上に、しゃがむと股間のスリットがひしゃげてしまい、実質的な呼吸口の面積が小さくなる事もしばしばある。
 しゃがみ方を工夫すればある程度は緩和できるのだが、可愛らしく内股気味にしゃがめばしゃがむほどに苦しさは増す。
 そして、タイトにフィットしたスカートと、その上に巻き付く巻きスカートの絶妙な擦れとシワが真一の悩ましい部分を容赦なく苛める。
 子供が来るたびにそんな快感を内に秘めながら立ったりしゃがんだりを繰り返し、可愛らしくのぞみを演じ続ける。

 もちろん行動自体の自由はある。何かにくくりつけられて身動きできないという訳ではない。そういう意味では自由なのだが、当然、現実にはそうではない。自由に動けると言っても、真一の取れる行動は、気持ちよくなってしまう事が分かっていながら可愛らしく女性っぽくしゃがんだり立ったりを繰り返す事だけである。
 来ると分かっていても息子を自由に反応させられる権利を奪われた状態で受ける快感は、過酷を極めると言って良かった。
 しゃがむたびにスカートの中に吐息を漏らし、立つたびに僅かな空気で呼吸を整えながら、のぞみを存在させ続ける事は、真一の想像以上に大変な事だった。
 そんな状態にもかかわらず、ふと周りを見ると、ひかりもこまちも元気そうにグリーティングを続けている。
 あの中はホントに真一と同様の苦悩に包まれているのだろうか?すくなくとも和志は同性である。とすれば当然装備は真一と同様のはずである。
 もちろん和志はベテラン中のベテランではあるのだが、今までの経緯や、和志と家で遊んだ経験を考えたら、少なくとも和志の動きにだけは負けたくないと思えた。

 和志への対抗心もあり、ギリギリの所で踏みとどまりながら演技を続ける真一。
 もちろん、本人は全く気づいていないが、その演技力は見事という他無く、誰一人和志の苦悩に気づくお客さんはいない。

 のぞみは、しゃがんだ状態で子供の相手をし、子供が満足そうに手を振ると、お返しに手を振りながらスッと立ち上がる。
 その可憐な立ち振る舞いは上品な女性そのものであり、スタッフの中には、のぞみの動きの美しさに、汗まみれの中の女性を想像して、少し気持ちが興奮している人間もいるほどであった。
 そんな可憐な立ち振る舞いののぞみが、その場を立ち上がった瞬間にアクシデントが襲う。

 たまたまたったタイミングに、後ろから子供がやって来て、手の届きやすかったスカートに手をかけてクイクイと引っ張ったのである。
 子供からすれば、後ろにいるから振り向いてね、と言う極々自然なアピールである。
 ところが、スカートを引っ張られたのぞみの裏側では、そんな気軽な状況では無くなっていた。
 元々タイトなスカートが後ろから引っ張られれば、当然息子への締め付けも増す。しゃがんだ状態から立ち上がる時も、同様に前のフィット感は増すので、そのタイミングでさらに締め付けが増すと言うことは、真一の息子の立場からすれば想定外の締まりの良さを体感することになる。
 のぞみはその瞬間、する必要のないウインクをしたまま、思わず腰を引いてへっぴり腰になってしまう。
 だが真一はそれ以上被害が広がらないように必死に耐えていた。
 可愛らしいのぞみの微笑みの裏側で、頭を真っ白にしながら、快感によって荒くなった呼吸を必死で整える真一。その間も疼く息子をじっとなだめる事も忘れない。
 もちろんへっぴり腰はすぐに、綺麗な立ち姿に戻した為、その動作を不審に思うお客さん達はいなかったが、その裏側にいる真一の苦しみも、誰一人分からない事になる。

 スッと振り向き直したのぞみは、美しい姿を崩さないまましゃがみ直して子供と握手する。
 子供は嬉しそうに笑顔を振りまきながら「かわいい」を連発。この子を裏切ってはいけないと言う思いから、真一も必死にのぞみを演じるのだが、演じれば演じるほど、息子は疼いてのぞみの中の切なさを増幅する事になって行く。
 感覚的に言えば、タイトスカートの上に巻きついた巻きスカートにまで、しっかり自分の息子が浮き上がっているように感じるほど、真一の息子はカチカチに固まっており、そんな息子をのぞみの身体とそれを覆う衣装がいじめ続ける。お客さんにはまったく見えないと頭では理解できても、お客さんの目線が痛い程恥ずかしい。
 だがそんな恥ずかしさがさらに真一を興奮させ、もどかしい快感と戦い続ける。

 スカートの中の温度も湿度も想像以上に高い。
 真一が興奮すればするほど上昇していく。
 当然だが、酸素の濃度も薄くなり、代わりに二酸化炭素の濃度が濃くなる。そして、衣装の布が発する独特の臭気や埃っぽさに加えて、先ほどまで小暮が格闘していた香りまで充満している。
 真一は嫌でもこの充満する空気を呼吸しなければいけないが、呼吸すればするほどに、不思議なことに興奮も高くなる。
 今すぐ楽屋まで戻って、下半身に巻きつく衣装をすべて引き剥がしたら楽になれる。
 だが、真一は、どういう訳かそうしたいとは微塵も思わなかった。むしろこんなに苦しくてこんなに嫌らしい空間を独り占めした上、周りのお客さんからは、素敵な女の子のキャラクターだと思われている自分が、たまらなく嬉しかった。

 歩くだけでも身体中から伝わる嫌らしい刺激に包まれ、その度に真一の息子から出て行こうとする熱い液体を必死の思いで繋ぎ止めているのだが、その事に一切周りが気づいていない様子が、真一にとってたまらない快感だったのだ。

 店内をグリーティングしながら、お客さんと戯れ続ける3人の着ぐるみ達。
 お客さんにはサインや握手、そして写真を頼まれると、みんな愛想良く答えていく。
 中でも3人のキャラクター全員と一緒に写真が撮りたいというお客さんは多く、その度に、3人がお客さんを囲むように並んであげる。
 マニアっぽい男性が来ると、のぞみは少しだけサービスとばかりに、腕をぐいっと掴んでわざと胸に当ててみたりもする。
 当然真一は涙が滲む程気持ちいいのだが、それ以上にお客さんが胸の感触にドキドキしている様子が非常に楽しい。
 なにしろ感触は本物といって差し支えないレベル。それが押し当てられているのだから、当然男性は、中の女性の胸の感触を想像しているはずである。
 この男性は、どんな女性を想像してドキドキしているのだろうか?と考えるだけでも真一の興奮は収まらない。
 その上、男性の腕が押している胸の裏で、真一が、のぞみの身体が生み出す快感を独り占めしているのだから、興奮しないわけがなかった。
 苦しいが必死に息子の反応を我慢し、別れ際にウインクをしてあげると、男性は真っ赤になってテレながら会釈をして去っていった。

 こんな光景を自分の行為によって産み出せるのも、この着ぐるみの凄さであると実感できた。
 それは「事情を知っているみんな」がいる訓練中とは決定的に違う興奮だった。

 そんなグリーティングの中で、再び大変なシーンが訪れる。

 お客さんの一人が、こまちとのぞみに並んで貰ってウインクした瞬間の写真が欲しいと言うのだ。
 誘導のスタッフ達は当然ウインクの仕組みなど知らない。だから遠慮なく2人にそういうお願いをしてきた。
 もちろんのぞみもこまちも、可愛らしく頷いて快諾するのだが、その瞬間の着ぐるみの中の思いに気づく人など当然1人もいない。
 誘導されて2人が並ぶと、お客さんから

「もうちょっとくっついて可愛い感じに出来ませんか?」

 と言う依頼が来る。
 すぐに2人共頷くと、そこで遠慮するのはおかしいとばかりにこまちがぐいっとじゃれ合うように腕を絡めてくる。
 それは凄く仲のいい女の子と言う雰囲気で、ここで2人がウインクしたらさぞかし楽しそうな写真になるだろうと、演じている真一ですら思えた。
 だが、それ以上に、こうやってこまちと絡む事は、自分に与えられる快感を増幅し兼ねないという事でもあるのだ。
 実際、こまちは、自分の腕をのぞみの胸に押し付けている。もちろん真一は思わず股間をきゅっと締めて快感に耐えたい衝動に駆られるが、自然な振る舞いは着ぐるみの基本であり、軽くポーズをつけている足を不自然に閉じることは出来ないと、太ももの内側をヒクつかせながら快感に耐える。
 やられてばかりでは悔しいので、のぞみも自然な形でこまちに絡み、腰に回した手でそっとスカートを引っ張ってあげる。
 その瞬間、こまちがピクリと反応した事には、こまちに絡み付いているのぞみだけが気づく。
 中にいる和志も必死なのだろう。こまちに一切の破綻がないから、見ただけで気づくことはないが、こうして接すると、こまちと言う可愛らしいベールの裏側が少しだけリアルに分かるのだ。
 もちろん、普通の人には理解できないだろう。裏で何が起きているかを分かっているスタッフにしか分からない事とも言えるのだ。

 こまちとのぞみは、お互い楽しそうにじゃれあいながら、中の人間だけが苦しむポイントを刺激しあっていた。

「じゃ、いきまーす。ウインクお願いしまーす。」

 カメラを構えたお客さんの掛け声とともに、真一がウインクをしようと、散々焦らされて我慢している息子にヒクヒクっと力を込めようとした、その一瞬前に、こまちの腕がピクリとのぞみを押した。
 その力は軽い物であったが、確実に真一に伝わると、反応させようと気を抜いた瞬間の息子は、容赦なくその刺激を受け付けてしまう。
 身をよじって耐えたいと言う願望は叶わぬ為、こまちに絡んだままのポーズで耐えるが、ウインクのタイミングが見事に外れてしまい、撮りなおしを依頼されてしまう。

 のぞみは申し訳なさそうに快諾すると、こまちを見てウンと頷きあう。
 外から見たら、2人でもう一回写真のタイミングに合わせましょうねと同意した頷きに見えるが、真一は、内心こまちではなく、小町の透き通るように美しい瞳の奥底からのぞみを見ているであろう、和志の事を、キッと睨み付けていた。

 再びポーズを決め、タイミングを合わせてウインクをしようとすると、またもやこまちの腕が絶妙なタイミングでのぞみの胸を押す。
 なんとか快感に耐えた真一は、今度はタイミングだけは合わせることが出来たが、反応の回数を間違えてしまい、ウインクが左右逆になってしまう。

「あー、出来ればこまちちゃんとのぞみちゃんで、左右反対の目をウインクさせて欲しいんですよねー」

 気軽に注文するお客さんだが、お客さんに罪はない。
 たいてい、このまぶたの動きは、口元か何かのスイッチで操作していると思っているはずなのだ。
 もちろん、こまちものぞみも、快諾する。

 だが、今度は真一もこまちにやられっぱなしにはならない。
 同じようにわざとタイミングをずらし、こまちのスカートをやさしく締め付けるように引っ張る。
 一方で真一自身はこまちの行動を予測し、今度こそタイミングを合わせてウインクすることに成功した。

 これで一矢報いたと思った瞬間、お客さんが言う。

「こまちちゃん、違いますよー。逆なのはのぞみちゃんの方だけ。さっきまでこまちちゃんは合ってたのにー」

 真一は自分のことに精一杯で見ていなかったが、今度はこまちがウインクの左右を間違えたのだと言う。
 いや、正確に言えば間違えたのではないだろう。こまちの中で反応の回数を制御できなかったのだ。

 つまり、真一の攻撃が和志を翻弄したと言うことになるのだが、冷静に考えると、大失敗である。
 そう。もう一度タイミングを合わせてウインクをしなければならないのだ。
 あと一回。あと一回だけ、こまちの攻撃に耐えて、素直にのぞみを演じれば終わる。
 そんな事は理屈で分かっているのだ。
 第一、和志だって何度もこれを繰り返すのは辛いはずである。にもかかわらず、毎回のぞみをいじめて来る。
 理由は分からないが、こんなに苦しい行為などさっさと終わらせてしまえばいいのに、こまちの意地悪はとまる気配はない。
 それでものぞみ側が一回だけ耐えしのげばすべては終わるはずなのだが、真一も毎回、苦しいのを分かっていながらこまちに攻撃を仕掛け続けた。
 その度に頭を真っ白にし、出て行きそうな物を必死に堪えて、最高の快感に耐えながらの操演である。

 結局合計6回の撮り直しで、なんとか終了することが出来たが、その間、真一は、快感と苦しさに耐え続けている自分が、不思議なことに凄く楽しくて仕方なかった。
 むしろ最後は、もう終わってしまうぐらいならわざとミスしてしまおうかと思ったぐらいに気持ちよかったのである。

 そして、その時気づいた。
 これは想像であるが、和志も同じ気持ちだったのだ。
 こんなに堂々と、こんなに悩ましい行為を楽しめる状況なんて、いくらグリーティングしていても中々無いといえる。
 ハプニング的に悪戯されたりする事はあっても、それば1度きりのハプニングである事が圧倒的に多い。
 それに対して、今はたまたまではあるが、何度もそういった快感を、お客さん公認で楽しめる状況だったのである。
 だからこそ、和志も、こんなにオイシイ状況なのだからと、真一をいじめていたのかもしれない。
 当然真一が自分に逆襲してくることを読んでの行為だったのだろう。悪戯に絶える快感というのは、この着ぐるみの中で操演する醍醐味のひとつと言えるのだから。

 こうしてようやく激しい快感から逃れることが出来た。
 だが、先ほどまでの激しい責め苦と、それまでの苦しい操演の時間によって、既にのぞみの中にいる真一は限界に限りなく近い状態になっていた。美しい美少女の外見の中で、イキたいと言う渇望に頭を支配されていた。
 せめて瞬きの呪縛から解放されれば、息子をヒクつかせながらも頑張ることは出来そうだが、今の状態では、息子をヒクヒクさせる反応すら出来ない。腰の辺りに延々と続くもどかしい感覚を逃がす方法が全くないのだ。
 女性が演じているひかりはともかく、和志が演じているこまちは、本当にこんな状態で、ずっとこまちであり続けたのだろうか?イベントが始まってから、何度か不自然な瞬きがあったが、それ以外は、今、真一が感じ続けているようなその場でしゃがみ込んで顔を押さえて演技を放棄してしまいたい程の快感を感じ続けていたのだろうか?
 こまちをチラリと見ると、先ほどの事など全く気にしていないかのような自然な振る舞いを続けている。

 瞬きも不自然なところはまるで無い。
 だが、おそらくは和志も真一と同じ感情と戦っているはずなのだ。

 そんなこまちを見て、真一は限界ぎりぎりのところで踏みとどまって演技を続ける事にした。
 目は虚ろになり、頭もあまりの快感にボーっとしてくる中、必死にスカートの中に籠もった空気を吸い、のぞみを存在させ続けた。
 周りからは相変わらず、美しい女性の着ぐるみとして見られている。
 子供は楽しそうに近づいて、握手を求め、その度にしゃがみ、握手をし、頭を撫でて、立ち上がる。
 大人はデレデレと恥ずかしそうに近づいて、綺麗な女性の着ぐるみにドギマギしている。

 真一の全身を包み込んで悩ませ続けているのぞみは、周りから見たら美しい女の子なのだ。作り物とは言え、女の子の体の中が、こんなに嫌らしい状態だなんて想像している人は一人もいないはず。それどころか、大きな胸に視線がチラチラ向いたり、くびれた腰に視線を落としたり、スカートから覗く美しい足に見とれている人もいる。
 女性の体だと思って見つめられる事の興奮は、それだけでも想像以上の物である。
 そして、その身体すべてを真一が自由に出来るのだ。衣装に隠れた身体の状態は、真一だけが知る世界。ブラや下着の着け心地も、タイツの履き心地も、スカートやシャツ、上着などの着心地も、すべて、実際に纏っている真一だけが知る世界。
 そんな世界で、悩ましい快感を受けながら、今にも反応しそうな息子を必死になだめて、荒くなった呼吸を周りに気づかれにくいように上手く動きでごまかしながら整えて、ギリギリの所でのぞみを存在させ続けているのだ。

 真一が戦いながらグリーティングを続けていると、若い男性が近づいてきた。

「あ・・あの・・・写真撮らせてもらっていいですか?」

 比較的大人しそうな雰囲気で、見た目は20歳前後。のぞみの写真が撮りたいと言うので、快諾する。
 立派な一眼レフカメラを持っていて、カシャカシャとリズムよく撮ってくれるので、のぞみはそれに合わせてポーズを決めてあげる。

「うわぁ、すごいなぁ、綺麗だなぁ」

 のぞみを撮りながら、のぞみに大興奮の男性。
 何枚か撮った後、徐々にアップ気味の写真を撮るためなのか近寄ってくる。
 男性の指示通りにポーズを決めてあげるが、真一はそこで有ることに気づく。
 写真に撮られている場所は、のぞみ、と言うよりも、のぞみの一部ではないのか?

 そう。彼は、目や口、首筋やうなじ、足、胸と言ったかなり特別なポイントを狙っているようなのだ。
 たとえば小首をかしげると、彼は首の辺りに出来る特殊な身体の素材が作るシワに視線が行っている。
 たとえば少し胸を強調すると、彼は胸に視線を集中させる。

 彼の視点が、ちょっと特殊で有ることに気づくのにそう時間はかからなかった。
 そして、彼も徐々に本音を見せ始める。

「ま・・マスクに穴とか開いてないんですね・・首にも隙間はないみたいですし・・・息は出来ているんですか?」

 快感も限界に達しつつある真一にとって、彼の存在は悪夢であった。
 本来、彼のような存在は、着ぐるみの中にいる真一に取っては一番興奮できる対象である。おそらく彼は、のぞみではなく、のぞみのような美しい着ぐるみに入っている人物に興味があるのだ。そういう人の目の前で、自分を隠してのぞみであり続ける事は、非常に興奮する行為なのである。
 だが、既に限界に近い状況の真一にとっては、こういう「かなり興奮出来る相手」が、目の前にいる事は非常に危険なのである。

 のぞみは男性の質問にたいして、ウンと頷く。
 無視してもいいような質問であるが、今の真一の精神状態は、既に大部分を興奮に支配されていた。そのため、真一は、彼の質問に答えて、彼の反応を見てみたくなってしまったのである。こういう精神状態になってしまう事が最大の危険なのだが、残念ながら既に真一の気持ちは、彼の反応に対する興味に移ってしまっていた。

「ど・・・どこからです?」

 興味津々の男性。明らかにドギマギしながら、のぞみの身体をなめ回すように見ている。
 のぞみは指を一本立てて口に持って行くと、内緒のポーズを取る。そして、ウインクを1回。

「あ・・・内緒ですか・・・ですよね・・・でも・・苦しそうだなぁ・・・」

 のぞみは軽く周りを見回し、自分たちに注目が集まっていないことを確認すると、軽く頷いてあげる。

「うわっ・・」

 のぞみの答えに驚いた男性。明らかに無視されると思っていた質問だったのだろう。その質問に答えが返り、しかも、苦しいと言って来たのだ。今や男性の頭は、秘密の呼吸の穴から息をしている、顔の見えないのぞみの中の人の想像でいっぱいだった。


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