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「はははは、ダッセーな。こいつ、またこんなマンガ見てるよ。」
「な・・なにすんだよ。返せよ、返してくれよ!」
「高校生にもなって、少女マンガなんか読んでんじゃねぇよ」
「うるさいなぁ。誰にも迷惑かけてないからいいじゃないか!」
「だいたいこんなマンガの何処が面白いんだよ。」
「そんな事言われたって・・・」
キーンコーンカーンコーン
ガラガラガラ
「起立、礼、着席!」
「よーし、じゃあ、今日は48ページからだぞ・・・」
来具留高校2年C組、前原弘幸は、いつものように休み時間に趣味の少女マンガを読み、いつものようにクラスメイト達にバカにされていた。特に、クラスで一番仲の悪い古賀隆二には、休み時間の度、何かしらの嫌みを言われていた。
弘幸は、高校生とは言え、体も小さく力も弱く、なよなよとした体格のため元々バカにされやすい傾向だった。そんなひ弱な弘幸には、当然、友達もそんなに多くなかったため、クラスでは孤立して、自然と苛められる対象になってしまっていた。
幸い、暴力や、物を壊されたり取られたり、と言った悪質な苛めは無かったが、好きな物をバカにされ、頭に来る事もしばしばあった。それでも、スポーツ万能で頭も良く、クラスの女子からも人気の隆二には、どう逆立ちしても勝てる要素は無く、いつも悔しいながらもバカにされ続けていた。
キーンコーンカーンコーン
「よし、今日の授業はこれまで。」
一日の授業が終わり、帰り道・・・・
下駄箱で、靴を変え、校庭に出ようとした時だった。
「ねぇ、前原君。ちょっといいかしら?」
弘幸はハッと振り返り、とっさに身構えてしまう。
「そんなに身構えなくても、何もしないわよ。」
佐川美由紀。2-Cのクラス委員を務める才女だ。しかも、クラスでもかなりの美人で、隆二が密かに彼女を好きな事も知っていた。ただ、隙が無く完璧に見える美由紀には、隆二と言えど、声をかける事は出来ないようだった。
クラス中の女の子からもバカにされている弘幸は、普段からクラスの女の子とも事務的な会話意外した記憶がなかった。ましてや帰り道に下駄箱で、クラスのマドンナ的女の子から声をかけられるなんて、予想すらしていなかった。
「今日も隆二からこっぴどくバカにされてたわね。」
「・・・・うん・・」
「そんなに少女マンガとかアニメ、好き?」
「・・・・うん・・」
「別に遠慮しなくてもいいのよ。私も結構アニメ好きなんだ。ああいうアニメとかマンガに出てくる女の子も可愛いと思うよ。」
「・・ホント?」
「うん。でも、休み時間、本を読んでばかりだと、周りの人がどう接していいから分からなくなるから、もう少し友達との会話も楽しんだ方がいいんじゃないかなーと思うのよね。」
「それは、分かってるけど、僕と話してると、その友達まで隆二君達に目を付けられちゃうから・・・」
「そっか・・確かにそうかもね・・ったく、隆二にも困ったモンね。でも、そんな隆二に弱点があるって知ったらどう思う?」
「え?弱点?」
「うん、まだ確証はないけど、この前の休み、隣町の大型書店で、ちょっと面白い物見ちゃったんだ。」
「面白い・・もの?」
「遠くからしか見てないから分からないけど、アニメ雑誌のコーナーに、隆二に似た人がいたの。周りを確認して人がいないタイミングでレジにその雑誌を持って行ってたわよ。たまたまその日、隣町で友達と待ち合わせしてたけど、時間が早すぎたから本屋で暇つぶししてたの。遠くのコーナーだったからハッキリした確証はないけど、あの雰囲気は間違いなく隆二よ。」
「隆二君がアニメ雑誌??」
「そう。他にもコスプレ写真雑誌とかも見てたみたいよ。実は結構近い趣味なんじゃない?だからあなたの趣味を目の敵にするのかも。」
「う~ん、でも、それがホントだとしても証拠が・・・」
「そうね。シラを切られたらおしまいよね。確証がないと。でね。ちょっといい話があるの。」
「いい話?」
「ここじゃマズイから、一緒に来てくれる?」
「う・・うん」
こうして、弘幸は、美由紀と一緒に下校する事になった。弘幸にとって初めての女の子との下校で、ちょっとドキドキしながら歩いていた。
「あのさ、変な事聞いていい?」
「うん。」
「前原君て、劇団に入ってるよね?」
「・・うん。なんで知ってるの?」
弘幸は、子供の頃から引っ込み思案で、大人しかったため、小学校3年から親が劇団に入れていた。
「この前、駅の向こうのデパートの催し物会場で、パントマイムのイベントがあったでしょ?それ、あたし、見てたの。そしたら、白塗りした彫像がいて、な~んとなく弘幸君に似てたんだよね。で、係の人に聞いたら、弘幸君だった。」
「あれは・・演劇の勉強の一環で、パントマイムとか彫像パフォーマンスとかの実践練習だったんだ・・・目をつぶってじっとしているから、誰が見ているか分からないけど、意識を集中してじっとしてるのは、なかなか大変なんだよ。」
「ふ~ん、そっか。演劇やってるなんて知らなかったなぁ。今度普通の舞台も見てみたいな。」
「ま、まだ僕は舞台とかには立てないよ。」
「あぁ、残念ね。でもいいわ。演劇やってるのは強みね。」
「強み?」
「まぁまぁまぁ。話はあとね。ほら、ここが家よ」
美由紀に連れてこられた家は、まさに豪邸。白い塀と豪華な門があり、中には2階だての豪華な建物があった。
門を入るとスロープがあり、高級な外車が3台止まっていた。
「うわ、すげー。これポルシェでしょ?」
「うん、パパのなの。でも音はうるさいし乗り心地悪いし狭いし、最悪よ。ここにはないけど奥の駐車場にしまってある国産のが一番好きよ。ドアも軽いし、音も静かだし、乗り心地もいいしね。」
「ポルシェが最悪って・・・これ、最新式のカレラGTってヤツじゃん・・・」
「そうなの?あたし、車の事は全然知らないから。でも、高かったらしいわ。この前もフェラーリのなんとかって言う限定車を買ったとか言ってたわ。」
「限定車って、もしかしてエンツォ?」
「あ、確かそんな名前だったわ。変な名前よね。」
「そんなもの凄い車、買っちゃったの?」
「それも凄いんだ?でも私はフェラーリは嫌い。派手だから、乗ってて恥ずかしいのよね。もっと普通の車にして欲しいわ。」
「全国のフェラーリファンが聞いたら、暴動が起きる発言だよ・・・」
「まぁいいわ、でも、弘幸君て、車も詳しいのね。意外な発見だわ。」
「うん・・・でも、僕が車好きなんてクラスの人に言わないでね。」
「なんで?車なら同じ趣味の人も多いんじゃない?男の子、バイクとか車、好きじゃない?」
「でも、僕が好きだって言うと、また何か言われそうで・・」
「そんな事、言ってみないと分からないじゃない・・・と言っても、隆二のヤツが何も言わないとも思えないか。いいわ、黙っててあげる。」
「うん・・」
「さ、中に入って。」
美由紀に言われるままに、建物の中に入ると、大きな玄関に、高そうな絨毯の廊下が続いていた。
そのまま美由紀について家の中を進むと、階段を上がって2階の奥にある部屋に通された。1階、2階、見えた範囲でも7~8個部屋があり、中が見えた部屋は、全て10畳以上の大きさに見えた。
「でっかい家だね。びっくりしたよ。」
「でも、掃除は大変なのよ。お手伝いさんが交代で来て、掃除してくれるから私は自分の部屋だけ掃除すればいいんだけどね。。」
「お手伝いさんか・・凄いなぁ。」
「でも、私じゃなくて、凄いのはパパだから。私はなんにも凄くないわ。」
「でも、凄いよ。」
「そっかな。まぁ友達も凄いって言うけど、親の関係で1人で生活してる由美とかの方がよっぽど凄いと思うわ。何度も遊びに行ったけど、部屋も綺麗に整理してあったし、いろんなアイデアで便利な生活してるのよ。私も見習わなくちゃ。」
「美由紀さんて、結構謙虚なんだね」
「あ、結構って言った?失礼しちゃうわね。私は’凄く’謙虚なのよ。」
「ご・・ゴメン」
「あはは、いいわ、許してあげる。じゃあ、早速本題ね。」
「あ、そっか。隆二君の証拠の話だよね。」
「うん。で、あいつのアニメとかコスプレ好きの証拠を掴むには、あいつの家に行って証拠を見つけるしかないと思うの。」
「でも、隆二君の家になんか入れて貰えないし、隆二君と仲のいい友達は何度も行ってるって聞いたけど、そんな噂も聞かないし。」
「そりゃそうよ。あなたをあんなにバカにしてたんだから、友達にボロを出すわけ無いじゃない。誰もいないとき、ひっそり楽しむ趣味なのよ。」
「じゃあ、どうしたら・・・」
「そこでいいアイデアがあるの。」
「アイデア?」
「密かに隆二の家に入り込んで、隆二がそう言う事してる時に、決定的瞬間を写真に撮るのよ。」
「それじゃ、家宅侵入じゃん。それに、隆二君がいるときに、隆二君の家に上がり込んだら、全然密かじゃなくなっちゃう。」
「あなたがいるって気づかれなければいいんじゃない?堂々と入っていければ不法侵入にもならないし。ちょっとびっくりアイデアだけど、そこであなたの演劇の技術が使えるの。」
「・・・言ってる意味が分からないよ・・・」
「ふっふっふ。私のパパ、何やってるか知ってる?」
「え?」
「私のパパね。アニメとかマンガとかのキャラクターグッズを扱う会社の社長やってるの。他にも、趣味関係の会社をいくつかもってて、今度そう言うのをまとめて売る、総合ホビーショップを作る計画があるのよ。」
「へ~、凄いなぁ。」
「でね、そこに、可愛い着ぐるみ達がいて、お客さんをお出迎えするのよ。」
「着ぐるみかぁ」
「うん。でもデパートの屋上とかにいる着ぐるみ達とは違って、もっと作りが凝ってて、特殊メイクのような素材のボディーを目指しているの。でね。」
「うん」
「その着ぐるみの開発の一部は、実は私も関わってるのよ。素材とかは科学的知識がいるみたいだけど、キャラクターのデザインは私を含めたアニメ好きの人たちが作ってるの。等身大の動く美少女フィギュア人形を目指してて、もう開発サンプルも何体か出来てるのよ。」
「等身大美少女フィギュアか・・・」
「うん、それで、今度の作戦は、その着ぐるみを使ってやるの。」
「着ぐるみで訪ねていくの?」
「惜しいわ。着ぐるみってバレたら、中身が誰か探られちゃうでしょ?そしたら弘幸君が入ってるってバレちゃうからマズイわ。」
「え??!弘幸君て??もしかして、僕が入るの???美少女着ぐるみなんだよね?」
「もちろんよ。あなたが恨みを晴らすための作戦だもの。着ぐるみなら中が男か女かは関係ないし。」
「・・そりゃうだけど・・」
「弘幸君は、演劇もやってるし、パントマイムも出来るんだから、丁度いいと思うし。」
「で・・でも・・僕が入ったとしても着ぐるみじゃバレるって・・・」
「そう。着ぐるみとして家に行くのはマズイは。あくまで人ではなく人形として行くの。彫像パフォーマンスをやっていたとき、係の人に聞いたわ。あなた、意外とあれ得意なんでしょ?」
「確かに・・じっとしてるのは得意だけど・・・・」
「着ぐるみだから表情は自由に出来るから、その点は少し楽よ。その点はね。」
「その点は?」
「ちょっとね。この着ぐるみ、中の人には辛いのよ。長時間入るには、それなりの訓練がいるかも。」
「そんなに大変なの?」
「うん。普通の着ぐるみじゃないの。スタッフが特別に作った特殊ラバーで出来ているの。」
「ら・・ラバー?ゴムってこと?それだと確かに皮膚呼吸とか出来なさそうだなぁ。」
「違うの。ラバーと似ているけど特殊素材で、皮膚呼吸は出来るわ。ただ、その為にはちょっとした条件がいるの。」
「条件?」
「うん・・・」
「どんな??」
「・・・な・・中の人が興奮状態じゃないといけないの。」
美由紀は急に顔を赤らめる。
「興奮状態?」
「つ・・つまりね。ちょっとHな気分てこと・・」
「な・・なんで・・・」
「そうしないと皮膚と素材が反応して、通気性を生み出す機能が働かないの。まだ改良してる所なんだけど、なかなかクリアできなくて、現状はどうしても興奮状態でいる必要があるのよ。」
「僕が入るって事は・・僕がずっと?」
そう言いながら弘幸も顔が赤くなる・・・
「そうね・・これだけはどうする事も出来ないわ。あなたが仕返しする気があるなら、私はその着ぐるみを提供して、隆二の家に1日、届ける事が出来るわ。着ぐるみの目の部分には小型のデジカメを改造して搭載できるし、音声も記録出来るから、それで証拠の写真と音があれば、隆二を黙らせる事は出来るよね。」
「・・・・」
弘幸はしばらく沈黙して言った。
「方法ってそれしかないの?」
「うん・・・」
「・・僕に・・入れるのかな?その着ぐるみ・・」
「もちろん試す事も出来るし、中での興奮に慣れるため、しばらく練習する時間もあるわ。」
「そっか・・・じゃあ、僕、試してみるよ。それしか今の状況変えられないんだったら、それに賭けてみる。」
「そう!よかった!」
美由紀の顔が急に明るくなった。
「でも、なんで僕を助けてくれるの?僕なんかクラスの嫌われ者だし、助けてもメリット無いよ・・・」
「そんな事無いわ。弘幸君だって普通にしてれば別に変じゃないし、それに、アニメとかマンガに興味ある人を事ある毎にバカにする隆二には、ちょっと腹が立ってたのよ。あと・・」
「あと?」
「もし、うまく行ったら、新しいパパの店で、着ぐるみスタッフが出来るかも知れないし」
「そ・・それはまた別の話として・・」
「ははは、そうよね。ちょっと先走り過ぎか。でも、とりあえず見てみる?」
「着ぐるみ?」
「うん。今、あるの」
「じゃあ、ちょっと・・」
美由紀は部屋の奥にあったダンボール箱をごそごそと探り、中からビニール袋に包まれた物を取り出した。
それは、2つあり、一つは人間の皮膚の色、もう一つは白い色をしていた。
「これよ。」
「2つあるの??」
「違うわ。これで1つ。白いのを着て体形を整えて、その上から肌色のを被るの。」
白い方はウエットスーツのようで、全身をスッポリと覆う構造になっていた。
肌色の方はグニャグニャしていたが人の肌のようで、凄く薄くて伸びるのに、裏が透けない不思議な素材だった。
「これを着て、僕が・・」
「違うわ。着るんじゃなくて、入るの。弘幸君が入ったら出入り口は隠れるから、あなたが動かなければ、人が入っているとは思わないはずよ。」
「入り口は背中じゃないの??チャックが隠れるの?」
「これ、肌色のヤツはお尻の割れ目から入るの。最後にお尻を閉じてしまえば、外からはつなぎ目が分からなくなるわ。本番では、特殊接着剤で閉じるから、相当力一杯剥がさないと取れなくなるわ。」
「こ・・これ・・口に穴が見えないけど・・・息はどこから吸うの?」
「ここよ」
そう言うと、美由紀は着ぐるみの股の間を指さす。そこはスリットが刻まれ、隙間はタイツ状の布が張ってあるのが分かった。
「白いスーツの中を見て。」
言われるままに白いスーツを手にとって見る。マスクの中にはチューブが見えた。
「このチューブ。細い抱2本は、鼻に挿して、大きい方は口にくわえるの。そうすると白いスーツの中を細い何本の管に分かれて這って、最後に股間のスリットのところで繋がるの。こうすると、呼吸音が消えるし、吐く息の勢いが分散するから、呼吸口の周りがじわっと暖かくなる程度で、息をしていると分かりにくいのよ。それに、スーツが通気性を持つから、外気をチューブに取り込んで、呼吸量を増やせるの。実験では、裸なら見た目程は息苦しくないはずよ。」
「裸なら??」
「衣装を着ちゃうと、どうしても塞がっちゃうからちょっと息苦しいのよ。」
「うわ・・凄そうだなぁ。」
「ゴメンね。でも、これが一番目立たず呼吸する方法なの。チューブが長い方が、皮膚から取り込む空気も多くなるから、酸欠にもなりにくいし。」
「なるほど・・でも実際にこれに入って、興奮状態を保たないと、皮膚からは呼吸できないんだよね?」
「それだけじゃないわ。蒸れるし、熱も籠もるから、多分1時間もしたらグロッキーになっちゃう。だから、なんとしても興奮していないとダメなの。」
「でも、どうやって興奮すればいいの・・・」
「それは大丈夫。・・・・ちょっと言いにくいんだけど・・股間に仕掛けがあって、パッドを通してあなたを刺激してくれるの・・」
「そ・・それってバイブレータってこと???」
「う~ン、チョット違うかな。そんな機械的な刺激じゃないのよ。着ぐるみの表面には触覚センサーが仕込んであるの。それを頭に埋めたコンピュータで処理して、パッドに伝えるの。これ以上は入った人にしか分からない感覚だから、私はノーコメントだけど、試しに入ってみる?」
「ここで?」
「うん。ここならお客さん用の部屋だから、別に試着してもいいよ。」
「・・・うん、じゃあ試してみる・・・」
「そう。じゃあ、入り方を一通り説明するね。まず下着も含めて全部脱いでから入るの。」
「え?全部!?」
「うん。全部。で、白いスーツを着るの。で、その、あの、弘幸君の股の物をこの穴に差し込むの・・そのまま着ると固定されるから、外がモッコリする事もなくなるのよ。背中のファスナーを閉めるときになったら私を呼んでね。手伝ってあげる。その後は私も手伝ってあげるわ。多分最初は誰かがいないと入れないし。」
「・・分かったよ。じゃあ、やってみる。」
「じゃ、私はとりあえず隣の部屋にいるから、全部脱いで白いスーツを着てね。」
美由紀はそう言って部屋を出て行った。
弘幸は、着ている物を脱いでたたむと、覚悟を決め、スーツを手に取る。ウエットスーツを着るように両足を穿くと、腰までスーツを引っ張り上げ、自分の息子をつまんで、スーツの内側に開いた穴に差し込む。穴は上向きに息子を固定してギュッと圧迫するように押さえつけた。
弘幸は慣れない刺激に、これだけで気持ち良くなり始めていたが、まだ先が長いと悟り何とか我慢した。
そのまま胸まで持ち上げると、加工された大きな胸が大きく揺れる。
「んっ・・・」
揺れに合わせるように息子がパッドに刺激される。
『もしかして・・これ、胸と繋がっているの??』
弘幸は疑問に思い、自らの手で作り物の胸を触る。
「あっ・・」
手が胸に触れると、その感触がそのまま息子に伝わって来た。
『こんなに刺激が伝わるなんて・・・・』
そうは思っても、ここまで来て引き下がるわけにも行かず、とにかくスーツを着てみる事にした。
両腕に袖を通し、後はマスクを被ってファスナーを閉めるだけと言う段階で、美由紀を呼ぶ。
「あ・・あの、そろそろ準備できたけど・・」
「・・・」
「おーい、準備できたよー」
「あ、ゴメンゴメン。テレビ見入ってたわ。」
そう言いながら隣の部屋から美由紀が戻ってきた。
「いいわね。サイズもピッタリみたい。」
「そ・・そんな事より、これ、刺激強すぎるんじゃ・・・」
「あ、それ?大丈夫よ。刺激に身を任せていいのよ。コンピュータで制御してて、寸前で刺激が弱まるから、長時間興奮をキープできるの。最初は刺激が強いのも、早く興奮させるためなの。だから、後は我慢してくれればいいの。」
「我慢て・・」
「まぁ、それだけは仕方ないのよ。頑張ってね。ちょっと汚い話だけど、出しちゃっても吸収剤がパッドに入ってるから、ある程度は大丈夫だし。」
「ある程度ねぇ。」
「まぁとにかく入って慣れましょう。マスクに顔を入れるわよ。しっかりチューブを鼻に挿して口にくわえてね。」
「う・・うん」
弘幸はマスクに顔を埋め、顔とマスクを上手く調節してチューブを装着した。マスクに顔を埋めた瞬間から、耳が塞がれたように、周りの音が籠もって聞こえるようになった。何となく外界から遮断された気分が強くなった。視界は、マスク表面に埋め込まれた銀色のパーツから見えるようだ。中からは思ったよりクリアに見える。チューブからの呼吸も思ったより楽で、一安心だ。
「じゃあ、閉めるわよ。」
「うん。」
チーッ。
ファスナーが引き上げられ、それと共に身体がギュッと圧迫されるのが分かる。
「どう?息できる?大丈夫そう?」
「なんとか・・」
「じゃあ、いよいよ肌色のスーツの中に入れるわよ。」
「うん。」
「あ、そうそう。中に入ったら喋っちゃダメよ。」
「なんで・・」
「女の子から男の声がするのは、変でしょ?あくまでも中に入ったらこのキャラクターに成り切ってくれなきゃ。動きも女の子っぽくしなくちゃね。」
「そ・・そんなぁ」
「文句は言わないの。あなたのためでしょ。」
「ちぇっ。分かったよ・・」
美由紀は肌色のスーツを頭から被せるようにして行く。股の付け根が大きく割れ、中がしっかり見える。表面と違い、裏側はあまり加工されていないみたいでちょっと不気味な感じすらした。この空間に閉じ込められるのかと思うと、不思議な興奮が込み上げてくるのが分かり、弘幸自身、少し戸惑った。
しかし、美由紀の作業は淡々と続き、白いマスクの上に、ピチピチと音を立てて、本当のマスクが張り付いていくのが分かる。
「目は見える?」
弘幸が頷く。
「よしよし。なかなか可愛いわ。両手を出して」
弘幸が両手を前に突き出すと、スーツを伸ばして手の上にスーツを被せる。その表情は実に楽しそうだ。
「ちょっと刺激しちゃうけどゴメンね。」
美由紀がそう言った直後、息子に何かが被さるようなキュッと言う刺激が伝わった。
「んぁっ・・」
「あ、ゴメン、やっぱり刺激しちゃった?上手くフィットさせづらくて、難しいのよ。」
弘幸は思いきりへっぴり腰なりながら頷く。
胸の上にスーツを被せたようだ。
「ここからはちょっと刺激が強いから、はを食いしばっておいてね。」
美由紀は、そう言うと再び作業を続けた。ゆっくりウエストを被せると、腰までズリ下ろし、ググっと左足を引っ張って、弘幸の足を少し持ち上げさせ、被せる。右足も同様に被せ、タイツを引き上げるようにして両足を馴染ませるように引き上げる。最後に股間にしっかりとフィットさせる為に股の割れ目に反って人差し指をクククっと這わせる。
その間、弘幸は地獄のようだった。美由紀の指と、股間にフィットする肌色のゴムが、容赦なく息子を刺激していた。特に息子の固定されたおへその少し下から息子の付け根当たりまでにゴムが擦れながらフィットするときや、最後に出入り口を食い込ませるときは、目をつぶって歯を食いしばって嵐が過ぎるのを待っていた。
「今日は接着剤は付けないから、これでいいわ。OKよ。」
美由紀はそう言うと部屋の奥からガラガラと大きな鏡を引っ張り出してきた。
「見てみる?」
弘幸は頷き、恐る恐る鏡をのぞく。そこには背丈こそ弘幸と変わらないが、Fカップはあろうかと言う大きな胸と、くびれた腰、そして柔らかな丸みを持つヒップを持ち、可愛らしく微笑む栗色のストレートヘアの美少女がいた。
「いらっしゃい。サヤカちゃん。」
弘幸は戸惑うようにただじっと鏡に見入っている。
「この娘はサヤカって言う名前なの。私よりずっとスタイルいいのよ。素敵でしょ?」
そんな言葉も、弘幸には届いていなかった。目の前の美少女に自分が入っていると言う事実に、興奮していたのだ。サヤカの中は想像以上に窮屈で、その締め付けだけでも気持ち良くなっていたのだが、目の前でこれだけの美女を全裸で見せられ、これほど興奮しているのに、目の前の美少女は、何事もないように微笑んでいるのだ。息子の固定されている辺りを見ても、全くその痕跡はなく、スッキリとした下腹部を作っている。
この形を作るために弘幸の息子がどれほど締め付けられているかなど、想像すら出来ない程スッキリしている。
「じゃあ、服を着ましょうか。」
サヤカは美由紀が言った一言に、はっと気が付くように我に返って頷く。
「どうしたの?見とれてた?ふふふ」
サヤカはポリポリと頭をかく。
「今は専用の衣装は用意できてないの。サヤカと体格が近いから、私の服で我慢してね。」
そう言うと美由紀は、大きなウォークインクローゼットから、服を引っ張り出してきた。
「これがいいわ。着て見せてよ。」
学校の制服である。いつも美由紀が着ている物だ。
「これ、ちょっと汚しちゃったから明日クリーニングにだすヤツなの。だから着てもいいよ。ちょっと汚れてるけど、試しだからいいよね。あ、そうそう。下着とかはちゃんと新品だから安心してね。」
下着は新品とは言え、つい最近まで自分が着ていた制服を着ろと言うのである。クラスではもの凄く遠い存在であった美由紀の制服を、着ぐるみ越しとは言え、身につけようとしている自分に、弘幸きはさらなる興奮を覚えた。もちろん着ぐるみの下の表情は美由紀ですら分からないので、その興奮に気づく様子はない。
用意された下着、ブラ、そしてルーズソックス、シャツ、リボン、スカート、上着。
まずは下着を付ける事になった。いくら柔らかい布で出来ているとは言っても、股間にフィットさせた時の刺激は、ここまでの学習で想像できていた。その為、実際にフィットさせるときも心の準備をさせていたおかげで、あまり反応せずに済んだ。ところが予想外だったのが下着のゴムであった。ちょうど息子の裏スジの上に乗っかって、キュッと締め付ける状態になった為、思わず足をモジモジさせてしまった。
それと同時に、呼吸が苦しくなったのも分かった。下着で遮られた呼吸口からの呼吸は、思ったより苦しくて戸惑ってしまう。多分、普通にこの布を口に当てて息をしてもそこまで苦しくは無いはずだった。あくまでも弘幸が興奮しているため、呼吸が荒くなっていると言う事がその一要因なのだ。
ブラは美由紀に手伝って貰い、後ろのホックを留めて貰った。
『くっ・・』
予想はしていたが締め付けが凄い。美由紀も胸は大きいが、サヤカはFカップはありそうで、美由紀の買ってあったブラではサイズが2サイズぐらい小さいのだ。
「あらぁ、やっぱりブラはキツイわね。でも、これしかないの。締め付けは苦しいと思うけどちょっと我慢してね。でも、オッパイがはみ出しそうで凄いセクシーよ。」
美由紀に言われて鏡を見ると、胸がブラからはみ出しそうになっていた。その様子はセクシーと言うほか無かった。この鏡に映る自分に、さらなる興奮を覚えたのは言うまでもなかった。
「じゃあ次はシャツね。これは私のお古だけど、洗ってあるから大丈夫よ。」
サヤカは美由紀に渡されたシャツを羽織り、上から順にボタンを閉めるが、胸の辺りのボタンを閉めるときは、予想通りクラクラするほど気持ち良かった。通気性があるというこのスーツの中も、既に蒸し暑くなっている。
「うん、ちょっと胸がキツイかな。でも可愛いわよ。いよいよスカート穿きましょう。」
美由紀がスカートを差し出す。サヤカはそっと広げて慎重に穿き、腰まで持ち上げ、ホックを留めてファスナーを閉める。
このときもスカートのヒダヒダと、スカートの中に入れたシャツの擦れる刺激に耐えながらの作業となった。
また、スカートが呼吸口を覆った事で、息苦しさが増した事も弘幸には辛かった。
『本当にこんな状態で、耐えられるんだろうか・・・』
そんな事を思いながら耐えていると、美由紀が首に手を回してきた。どうやらリボンを付けてくれているようだ。
「これで良し。あとは上着を着て靴下を穿いたら着替えも完了よ。」
サヤカはブレザーを羽織って袖を通し、ボタンを留める。これもやはり胸が窮屈だがなんとか耐えた。
そして、靴下は美由紀が穿かせてくれた。
「うわぁ、可愛い!ねぇすごいよ!本物の女子高生だよ!」
美由紀の言葉に、鏡を見ると、そこには、顔だけがフィギュア人形の女子高生が立っていた。
「私はルーズソックス穿かないけど、サヤカなら似合うと思って買ったの。正解ね。凄く可愛いもん。」
サヤカは再びポリポリと頭をかく。
「ねぇ、中は苦しい?息は出来る?」
サヤカは『なんとか息は出来る』と言う意味を込めて、手の指先で「ちょっとだけ」と言うサインを出した。
「やっぱり苦しいんだ・・・スカートの中から息してるんだもんね・・やっぱり苦しいよね・・・」
サヤカは頷く。
「刺激はキツイ?頑張れそう??」
サヤカはちょっと考えるようなポーズを取って、最後に『頑張ってみる』と言う意味を込めて頷く。
「そう。何とか頑張ってね。気持ちいいのは仕方ないから、恥ずかしがらなくていいよ。私も高校生だし、だいたいの事は分かっているつもりだから。」
『でも、同級生の男をこんな空間に閉じ込めて、自分の制服を着せてるなんて、僕の事分かってるとは思えないよ・・・』
弘幸はそう思っても、サヤカは優しく笑っていた。
「とりあえず座ろっか」
美由紀に言われて、部屋に備え付けのソファーに腰掛ける。
「可愛い女の子なんだから、ちゃんと足をそろえて座らなきゃダメよ。」
ソファーに座る寸前に美由紀に言われ、慌てて足をそろえて腰を下ろした。
すると、元々パツンパツンに突っ張っていた着ぐるみのお尻から背中が引っ張られ、お尻の割れ目にぐいっと食い込んだ。更に下着まで引っ張られて股間を擦るように伸び、息子の裏側がなぞられるように刺激される。ソファーの為、普通の椅子より深く腰を落とす事になり、これが余計に刺激を強めたようだった。
その刺激に耐え、何とか落ち着くと、急に息苦しさが増したのが分かった。両足を閉じて座ったため、サヤカの呼吸口を、足とスカートでカバーしてしまい、一層空気が少なくなったのだ。
しかも、マスク内に入る空気は、少し汗のような、ホコリのようなムッとする臭いが混じっていた。美由紀が穿いていたスカートと言う事は、美由紀の汗や汚れが少なからず付着して、その臭いが充満しているのだ。これで興奮するなという方が無理だった。
足をモジモジして更に刺激を与えたいのだが、目の前に美由紀が座っている状況でそんな事をしたら、弘幸の興奮がバレてしまうので、焦れったい気持ちをぐっと堪えて、なるべく平静を装った。
「うふふ、とっても可愛いわ。でも、最初はいろいろ辛いと思うから、今後は家に通って、サヤカに慣れてね。」
サヤカは頷く。
「でも、思ったより順応出来るみたいね。プロトタイプの着ぐるみで、プロの役者さんに試着して貰ったときは、興奮しちゃって立てなかったぐらいなの。弘幸君の様子ならこの役に対応できそうよ。」
手をプルプルふって、「無理無理」と言うサインをする。
「そんな事言って、結構クセになっちゃうかもよ?」
今度は頭をポリポリ掻いて照れる。
「ふふふ、そうそう、その調子でボディーランゲージよ。じゃあ、今日の所はこんな感じで試着は終わりましょう。隆二の秘密を探るための作戦も考えないといけないし。」
と言って美由紀は立ち上がったる
コクンと頷いて、サヤカも立ち上がる。呼吸が楽になった弘幸は、安堵とともに、何故かもっとあの苦しい空間に身を置いていたかったと言う欲求がわいてきた。自分のこの妙な感覚に、自分で戸惑ってしまう程だった。
だが、ここで脱ぎたくないなどと言えば、弘幸の気持ちを悟られる事になる。仕方なく弘幸は、この空間から出る事にした。
窮屈だった上着を脱ぎ、リボンを外す。散々焦らされた後に、更に刺激が弱くなり、凄く悲しい思いもあった。が、淡々と服を脱ぐ。シャツ、スカートも脱ぎ、美由紀にも手伝ってもらい、ブラと下着、靴下も外す。
完全に全裸となった後は、美由紀の指先の刺激に耐えながら出口を開いて貰い、入ったときとは逆の手順で外側のスーツを脱いでいった。
「じゃあ、ファスナー開けるわね。」
弘幸は頷いてOKサインを出す。
チーーッ
ファスナーの開放と共に、背中から冷たく新鮮な空気が流れ込んできた。
「あ、後は自分でやってね。タオル、ここに奥からさ。私は隣にいるよ。」
そう言って弘幸に任せ、美由紀は出て行ってしまった。
弘幸は、その後も淡々と脱いでいくのだが、股間パッドを取るとき、ふと気づいた。
「あ・・まだデカイじゃん・・不味いなぁ・・・」
散々焦らされたまま、結局イクこともなく終わってしまった息子が、怒りを表すかのようにいきり立っていたのだ。とは言え、中にいる状態ならともかく、ここでイクわけにはいかないだろう。とにかく弘幸は、パッドから息子を引っ張り出し、白いスーツを脱ぎ捨てると、美由紀が置いていったタオルをてにし、汗をぬぐう。
その汗は、ホンの3~40分間着ぐるみの中にいただけなのに、凄い量で、白いスーツの中にも汗が溜まっているのが分かる程だった。
息子のいきり立ったパンツを穿くと、シャツを着て、なんとかズボンも穿き、靴下を穿き、その後しばらく、心を落ち着ける事に専念していた。
その甲斐あって、なんとか息子が収まりつつある時、背中から声がした。
「ねぇ、なにやってんの?まだ?」
時間がかかる弘幸にしびれを切らして、美由紀が戻ってきた。
「なんだ、もう服着てるじゃない。キャッ!」
美由紀は弘幸の前に回り込んで椅子に座ろうとして、弘幸の収まりかけた息子を見つけてしまったのだ。
「あ・・ご・ゴメンなさい・・」
弘幸も真っ赤になる。
「い・・いや、僕が悪いんだ・・こんな事になるなんて。」
「いいの。私も分かっていたのに、すっかり忘れてただけなの。そうよね。サヤカの中って苦しかったんだもんね・・・」
「うん・・・でも、もう収まってきたから大丈夫だよ。」
「そ・・そう。じゃあ、とにかく、隆二に対抗する作戦を考えましょう。」
すこし落ち着いて、どうにか息子も収まると、美由紀の話が始まった。
「今回の作戦は、弘幸君の演技力が必要よ。まず隆二の家に人形に入ったあなたを預けるの。」
「まってよ。なんで隆二君が人形なんて預かってくれるの?普通に考えたらそんな変な物預からないと思うんだけど。」
「ふっふっふ、そこは抜かりないわ。実は、パパのやっている会社のデータベースを盗み見したのよ。これ、内緒だけど、パパ、意外と機械音痴だから、データベースにアクセスする方法を紙にメモって机にしまってあるの。だから、パパがいないときこっそりアクセスしたのよ。」
「それって・・・犯罪じゃないの・・・」
「いいじゃない。悪い事するわけじゃないんだし。それに、パパだって私の日記をこっそりチェックしてるんだからお互い様よ。まぁパパのチェックしてる日記は当たり障り無い事しか書いてないんだけどね。」
「それじゃあ、当たり障りのある事は??」
「それは秘密の日記に付けてるわ。何処にあるかは内緒。そんな事より話の続きね。」
「うん。」
「で、パパの会社でやっているキャンペーンの応募者名簿に、隆二の名前を見つけたの。」
「え!?隆二君の?!」
「うん。住所もクラス名簿で確認したから間違いないわ。コスプレコースに応募してた。」
「コスプレコース?」
「当選すると有名なコスプレーヤーが自宅を訪れて、写真を撮らせて貰えるって言うコースなの。」
「なんだそりゃ。」
「コスプレ写真を撮りたい人には、凄い商品なのよ。自宅に来てくれて、自分のために写真を撮らせてくれるわけだから。」
「あ、そっか。自分だけのための撮影会って事か。でも、まてよ。」
「ん?何かおかしな事でも?」
「そんな名簿あるなら、あいつに突き付ければ立派な証拠になるじゃん。」
「そんな事出来るわけ無いでしょ。私が見た名簿は、会社の関係者以外は知らない名簿なの。そんなのが流出したと分かったら、会社が潰れて、パパが路頭に迷っちゃうわ。」
「あ、そっか。」
「もう、バカねぇ。」
「ちぇっ」
「でね、この商品を利用するの。」
「もしかして隆二君に1等当てちゃうの?それでコスプレーヤーに混じって人形を?」
「う~ん、一捻り足りないわ。抽選前から一等が隆二って分かってたら、せっかくキャンペーンに応募した他の人がかわいそうじゃない。それに、コスプレーヤー達だって妙な人形が混ざってたら困るでしょ。」
「妙な人形って・・・」
「あ、ゴメンゴメン。でも変でしょ?だから、一等は隆二ではなく、ちゃんと当選した人に行くわ。で、新たに隆二には特別賞ってのをあげるの。」
「特別賞?」
「そう。私がこの前作った隆二の為の賞。等身大フィギュアとコスプレ衣装のセットを貸し出すのよ。コスプレーヤーと違って自分では動かないから、当選した人が自由にポーズを付けて写真を撮れるように、一晩貸し出してあげるの。ね、これならアリな理由でしょ?」
「う~ん、確かに行けそうな気がする。」
「でしょ?伊達にクラス委員やってないでしょ?」
「それは関係あるのかなぁ・・・」
「いいのいいの。でね。ここからがポイントなの。」
「え?僕がサヤカに入って隆二君の家に潜り込めばいいんでしょ?」
「違うのよ。それだけだとばれる可能性もあるでしょ?」
「それだけって?」
「うん。普通、あんな人形がいたら、いろいろ観察するはずよ。いくら弘幸君のパントマイムでも、一晩の時間があればピンチもあると思うのよ。」
「確かにそうだけど・・・」
「でね、サヤカに着ぐるみを被せようと思うの。」
「え?サ・・・サヤカに着ぐるみ?」
「そうよ。とっても可愛い美少女の着ぐるみ。普通、着ぐるみには人が入るでしょ?でも、その中に人形が入っていた場合、たいていの人は、その人形が内蔵だって信じるでしょ?よっぽどの事がない限り、まさかその人形の、更に内側に人が隠れているなんて思わないわ。つまり、人間の深層心理を利用した偽装って事よね。」
「まぁ、確かにそうだけど・・・ホントにそんなのでごまかせるの?」
「大丈夫よ。あとは弘幸君の演技次第。ね。」
「あの刺激の中でじっとしてるって考えたら、既に自信ないよ・・・」
「まだ作戦決行までは時間あるから、明日から毎日訓練よ。着ぐるみは一式貸してあげるから休みの日を利用して、自宅で自主トレしてもいいし。」
「自主トレ?」
「一晩貸し出しって考えると、最低でも半日は入ってる必要があるでしょ?」
「うん。」
「だから、長時間の着用に慣れる必要があるのよ。」
「そう言えば、半日も入ってたらトイレにだって行きたくなるし、喉だって渇くし・・・どうすればいいの?」
「喉の渇き対策は私も考えてあるの。なんのためにFカップも胸があると思う?あそこは内側が特殊スポンジ構造になっていて、水分を蓄えられるのよ。他にも同じ特殊スポンジを顔の一部やヒップ、太股、ふくらはぎなんかに分散して埋め込んであるわ。いろんなスペースに上手く隠して、全部で2リットルぐらいは蓄えられるから、節約して飲めば、半日ぐらいは行けるでしょ?」
「そ・・そんな仕掛けがあったんだ・・・でも、スポンジの水分が抜けたら胸の感触とかはスカスカになっちゃうんじゃない?」
「’特殊’スポンジって言ってあるでしょ?ちゃんと感触が変わらないようになってるわ。」
「特殊ラバーとか特殊スポンジとか・・・特殊って随分都合がいい言葉だね・・・」
「いいのよ。特殊なんだから。」
「まぁ、それで上手くいくならいいけど・・・あと、トイレはどうするの?」
「ふっふっふ。クラス委員の私をなめて貰っちゃ困るわ。ジャーン、これ」
「なにこれ?」
美由紀は何かの小瓶を取り出す。中には薬が入っているようだった。
「これ、最近密かに女の子の間でブームになっているダイエット薬。」
「ダイエット薬?」
「うん。これまでのダイエット薬とは発想が違うのよ。今までのは、食べても吸収されず排泄されるダイエット薬だったでしょ?」
「うん。」
「これはね。飲むと消化器系が一時的に不活性化するの。」
「不活性化?」
「そう。つまり胃や腸が動かなくなるの。だから食欲が無くなるしトイレも行かなくなるって言う仕掛け。これを飲んで食事を一回抜く事で、お腹も減らず、カロリー摂取も減らせるのよ。」
「え~、そんな凄い薬があったんだ?それならみんな痩せられそうなのに・・・」
「実は副作用があるのよ」
「副作用?」
「錠剤は、だいたい1日だけ効果が持続するの。でも、その後、反動で、身体が1日分のカロリーを欲しがっちゃうのよ。それに我慢できないと、結局いっぱい食べちゃって、元に戻っちゃうから、あまり意味がなくなっちゃうのよ。」
「な~んだ。そう言う事か。」
「そう。これ飲んで副作用に打ち勝てる意思がある人なら、こんなの飲まなくても食事を減らせるから、実は意味がないのよ。でも、今回の作戦は1日トイレと食事を我慢できればいい訳だから、使えると思わない?」
「そっか、これを飲んで着ぐるみに入ればいいって事か。」
「分かってくれたようね。副作用さえ気にしないなら、自主トレ中に試してみてもいいわ。」
「うん、じゃあ、慣れてきたら試してみるよ。まず、あの中で普通にしていられるようにならないと・・・」
「そうね。頑張って練習して貰って、作戦を成功させないとね。じゃあ、今日はお開きにしよっか。明日から、学校帰りは私の家に寄ってね?週末はスーツと衣装を一式貸してあげるから家で頑張ってね。」
「うん。頑張るよ。」
こうして、弘幸の激動の一日が終わった。
家に帰った弘幸は、サヤカの中で体験した出来事を思い出し、1人で楽しんでしまったのだが、これは仕方ない事だろう。
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