お人形達の学園(プロローグ) [戻る]


西暦20XX年、日本は長期の不況から抜け出し、再び世界経済をリードする好景気を迎えていた。

この好景気の原動力には、実はある特徴があった。
好景気を作り出した実力者達の多くは、ある学校の卒業生だったのである。
また、この学校の卒業生は社会生活でのマナーにもたけた紳士達が多いと評判だった。

この学校は、全寮制で高校から大学まで一貫教育のシステムを取る男子校である。

そして、東京から電車を乗り継いで5時間かかる人里離れた山奥にあり、しかも一番近い人家までも1本しかない林道を通って車で30分以上かかる場所の為、基本的に外界から隔離されている。
また、林道の入り口にも厳重なセキュリティーチェックがあり、さながらアメリカの砂漠に建設されたという秘密の軍事施設のような隔離された雰囲気である。

入試は通常の学科の成績の他に、複雑な心理テストをパスしなければならず、その為、ただ学力が高いだけで入学できるわけではなかった。

見事に学生として合格すると、最初の1年は基本的に学校の敷地を出る事は許されない。
夏休みなども、最初の1年は全て学校の敷地で過ごす事になる。また、学生側からの外部へのコンタクトも禁止されている。親族などからの緊急の電話や手紙以外のコンタクトは一切受けられないほど、徹底的に隔離される事になる。
この1年のうちに、学校の基本を身につける事で、2年目からはかなり自由が許されるようになる。
春、夏、冬の休みは外出も許可されるし、年に何度かは普通の休日であっても申請を出す事で外出も許可される。ただし、外部の物が敷地に入る事は厳重に禁止されているため、親族であっても、学校内で起きている事は誰1人知らない。

ここまで厳重に隔離しているのには、勿論理由がある。そしてそれは優れた人材を育成する上での重要な秘密でもある。

実は、男子校と言いつつも、この学校の生徒は入学当時でおよそ半分が女子なのである。
しかし、全員が男子として入学しているのであるから、当然、普通の女子ではない。
女子は全員が着ぐるみなのである。

着ぐるみと言っても非常に特殊な着ぐるみである。
ここの学校を創設した創始者が、その昔起こしたホビーショップで開発に成功したもので、着ぐるみの中に入る人物に対し、過酷な環境を強いる。
全身を2層のゴムに似た特殊素材で覆い、つなぎ目などは一切見えないように作られている。
唯一外界と繋がっているのはお尻の割れ目に添って巧妙に作られた出入り口と、股間に開いたスリットを利用した呼吸口である。
この状態で着ぐるみを着続けると、内部に熱が籠もってしまう。それを防止するために、着ぐるみの特殊素材が放熱性や放湿性を持っている。ただし、それらを機能させるためには、内部の人間が興奮状態を保つ必要がある。そのため、中の人間は着ぐるみの各所に埋め込まれた触感センサーを経由して、敏感な男性のシンボルに刺激が伝わり、快感を得続ける。しかも、快感は、脳波とシンボルの状態を検知して、イク寸前の状態を保つように感度をコントロールされる。
つまり、着ぐるみを着ている間は、中の人間はかなり悩ましい、嫌らしい快感に晒され続ける。

また、このスーツに埋め込まれた細胞補正機能が、内部の人間の細胞を、機能を損なうことなく一定比率縮小する。
このため、中の人間の体格にかかわらず、ある程度の小柄な女性に変身が可能なのである。

生徒と言うからには言葉も話せる。最新の人口音声と脳波のスキャニング技術を組み合わせて、内部の人間が話したい言葉を、代わりに機械が喋ってくれる。
直接ボイスチェンジャーなどで発話する方式では無いのは、見た目は可愛い女生徒であっても、実は快感を必死に我慢し、股間についた小さな呼吸口から必死に呼吸をしている男子生徒であるため、普通に声が出せないのだ。
だが、この脳波スキャンと人口音声を使えば、非常に自然に「女生徒」の声を出せるのである。

こういう特殊な着ぐるみを目の当たりにし、入学当初から、半数はこの着ぐるみを着る事になる。
そう言った状況に耐えられる人材という事で、入学時に心理テストが行われるのである。
また、こういった特殊な状況を外部に知られないようにするために厳重な隔離が行われているのだ。

では、なせこのような特殊な着ぐるみを着て生活を送るのか。

高校生から大学生と言えば、まさに身体が大人として成長し、色々な欲求も強くなる年頃である。
こういう状態で、こういう特殊な着ぐるみを着るという事は、まさに学校公認で欲求を処理できると言う事である。
入試時の心理テストでは、こういう着ぐるみに密閉され、興奮させられる事へ憧れる生徒を集めている。
つまり、この学校の生徒は、基本的にこういう着ぐるみを着て女子生徒として授業を受けてみたいと心の何処かで思っている事になる。

しかし、生徒は成績が優れている順に着ぐるみを着る事が出来る。入学試験の時から成績によってポイントが与えられ、入学当初から持つポイントにより、女子として生活をスタートできるかどうかが決まる。

授業では各学期に1度、理解度テストという、一般的に言う期末テストが行われ、その獲得ポイントにより順位付けが行われ、各学期に1度のタイミングで新たな女子が誕生する事になる。
但し、女子になる事が決まった男子は、2ヶ月間は集中的に訓練されるため、1学期の場合、6月ぐらい、2学期は11月、3学期については期間がないので次の1学期の頭から、各クラスに入って授業を受ける事になる。

この学園の目標は、最終的には全員が女子として卒業する事にあるのだが、もちろん全員が女子として卒業できるとは限らない。
女子になった後、再び男子に戻されるケースは無いのだが、女子になっても競争は存在するので、女子になったとしても安泰ではない。
(一旦女子になった物を男子に戻すと、女子にしか分からない秘密が漏れやすくなると言う配慮もある)
女子は、ある一定以上の成績ポイントを持つと、男子の家庭教師役になる資格を得られる。これは、学園全員を女子として卒業させるるため、成績優秀な女子に、男子を教えさせると言う意味がある。
と、同時に、男子に対して、着ぐるみを間近で見せることで、早く自分もその中に入って生活を楽しみたいと言う欲求を強く芽生えさせる目的もある。
そして、ここが大事なのだが、女子は、この家庭教師をやりたがっている生徒が多いのだ。
なにしろ、目の前で男子が悶々としながら勉強するその横で、女子としての立場で男子に接し続ける事が出来るのだから。
だが、みんなの成績がある程度高くなり、学園に女子の比率が大きくなるほど、女子は男子に家庭教師として割り当てられにくくなる。
つまり、成績が優秀な女生徒の方が、男子に対する家庭教師を長い間受け持てる。そしてその結果自分が楽しい時間が増えるのだ。

このシステムのおかげで、男子は早く女子になる為に、女子は男子の家庭教師を続ける為に、常に成績優秀な人材になるべく学園全体が努力をするのだ。

それでももちろん、男子生徒が落ちこぼれる危険はある。
この時、一番危険なのは情報漏洩である。成績不振でヤケを起こした男子生徒が学園の秘密をバラす可能性は常にある。
そこで、定期的にではあるが、男子は女子生徒体験を出来る。保健体育の授業の、一部の日程で、女子体験が出来るのである。これにより実際に女子着ぐるみの中を体験した男子は、更に強く、中に入りたいと願うようになり、また時折ある体験授業のおかげで、情報漏洩して、二度とこの体験が出来なくなるよりも、秘密を守って、また体験をしたいと思うようになるのである。
(ちなみに、この学園を卒業した生徒は、例外なく全ての生徒に、専用の着ぐるみが与えられ、いつでもこの学園内で着る事を許される。学園地下の着ぐるみ倉庫には、過去の卒業生数千体の着ぐるみがクリーンな部屋で常に品質を保ったまま保管されている。そして、学園の広大な敷地の一部には、その着ぐるみを着た状態でバカンスを楽しむための施設が揃っている。中世ヨーロッパ風の施設や、近代的なオフィス、学校、和風、スポーツ施設、等、着ぐるみの中に入る人物が、その着ぐるみと好みの衣装を着て存在してみたい世界が揃っている。その為卒業後であっても情報が漏れる危険は極めて少ない)

男女とも、学校以外の生活の場は、ほぼ分離されている。寮は男女別々に存在する為、普段交流は少ない。
男子寮に対する女子の立ち入りは特に禁じられている訳ではないが、女子寮に男子が立ち入る事は出来ない。
こうやって隔離される事で、女子生徒は、寮内では着ぐるみを脱ぐ事も許される。また、学校内であってもトイレや医務室では専用のスペースが確保されていて、脱ぐ事が許される。トイレについては、小の場合は特殊な経路を着ぐるみに持ち、そのまま女性として排泄が可能である。清潔を保つため、排泄後は、スーツ内に溜め込まれた専用の洗浄液で洗浄も行う。大のほうは、スーツを脱がないと出来ないが、そもそも、大小にかかわらず、この着ぐるみに入る人物は、中に入っている間、トイレに行くことは殆ど無い。と言うのも、そもそもこの着ぐるみを開発した当初、ホビーショップで長時間着用の必要性から開発された特殊な装備として、中に入ると胃腸の機能が鈍くなり、空腹感も少なく、便意もあまり襲ってこなくなると言う機能が、スーツに備わっている。
特殊な電磁波を身体に照射する事で機能を鈍らせるようだ。
ただし、着ぐるみの中に入ればそれなりに体力は消耗するため、脱げば通常以上に空腹感や便意は襲ってくる事にもなる。

着ぐるみの脱ぐ場所は上記のように確保されているが、ほとんどの場合、一旦女子生徒になった男子生徒は、自分の寮の部屋以外で着ぐるみを脱ぐ事はない。そのぐらい、生徒にとって着ぐるみの中は魅力的な場所なのである。
食事は着ぐるみを脱いで普通に取る事も許されているが、先ほども書いたように、着ぐるみの中にいると胃腸系が不活性になりがちで、そもそもそれ程食欲がなくなるため、ほとんど皆、よほど食べたいものが出ない限り、専用の流動食を摂取する。ただし、発汗はあるので、喉は乾くため、水分だけは欲しくなる。
着ぐるみの口は完全に閉じられているが、ヘソの部分に付いた接続口に流動食用のアタッチメントを挿入すると、チューブと接続されて流動食や水分の摂取が可能となる。

この特殊着ぐるみを着続けて、女生徒として暮らす事で、忍耐強くなるのである。また、女生徒として扱われる事で、男女平等の精神も身に付く。一方で、学力は、成績優秀な方が色々と生活で得をする事が多い為、必死に勉強し、結果として非常に高いレベルになり、また悩ましい刺激の中で優秀な成績を収め続ける為には、かなりの集中力も身に付くのである。
こういった事情から、卒業した生徒はみな社会で優秀な人材となっているのである。

入学した生徒は、まず2ヶ月、オリエンテーションとして着ぐるみの構造や寮での生活、着ぐるみ女子と男子の互いのルール等を説明される。
このオリエンテーションの時点で、実は成績毎に分類され、着ぐるみを着る生徒と、普通の男子生徒とは違った場所でオリエンテーションを受ける。
もちろん女子生徒は、実際にこの2ヶ月で着ぐるみに慣れるための練習もする。
男子生徒も、この時期に1度だけではあるが、汎用女子生徒のボディーを使って、この着ぐるみを体験する。この体験により、最初から、男子は女子の中で何が起こっているかを、知識ではなく、具体的に知ることになり、その結果女子生徒に対する憧れが強くなる。

そして、6月になる頃、はじめて学生は男女共学として、勉強をはじめる事になるのである。

学校では、普通に授業があるが、体育、技術家庭科等、通常男女別々の授業も、男女共同で受ける。
外見は女とはいえ、中身は男性だからと言う理由である。

また学校行事として、体育祭、文化祭などもあり、もちろん部活動もある。

その辺は一般的な学校と変わらないのである。

男女交流は特に禁止されているわけではないが、前述の通り、基本的には寮の生活が別々なので、接点は学校内以外は少ない。
また男子は、着ぐるみを女子として扱い、女子は、自分を男子と見せないように演技を要求される。
校則でも、特別な事情がない限り、男子生徒は女子生徒を女子として扱い、女子生徒も自分が女子として振る舞う事を要求される。
特別な事情が何に当たるかは具体的な事は不明だが、男女が仲良くなると、当事者間での会話についてまでは規制出来ないと言う現実はある。そんなときでも、女子生徒に入る男子は、表向きは女子であることを要求されるのである。
そう言う意味では、女子が着ぐるみである事を除けば、ごく普通の男女共学の学校となる。

また、高校・大学と共通で、男女別に成績優秀な順にポイントが加算され、そのポイントを使って服を寮に備え付けのショップや、学校が運営する通販システムを通して買う事や、自らのスタイルを良くする為(バストアップやウエストのシェイプアップなど)の調整や、着ぐるみの装備を改良(センサーの感度や数、ギミック等の装備)が可能となる。
男子も私服の調達は同様のポイントシステムによって可能であるが、ポイントを使うと女子への道は遠のくので、ほとんど使われる事はない。

女子生徒については、制服にも種類があり、標準支給されるブレザー型女子制服の他に、4種類ほど制服が用意されている。
これについてもポイントによって購入が可能であり、形は全部ワンピースで、スカートが標準支給されるブレザー型に準ずる長さの物から、床に付くぐらい長いドレスのようなスカートを持つ物まである。
また、ウエストやバスト部分のデザイン、裏地などの違いもあるが、基本的にはスカート丈が長い物の方が高いポイントを必要とし、成績優秀である事を表す。
制服にも色々オプションを装備する事で、実際には20通り以上のバリエーションを持っているのだが、最上級の制服を着る女子生徒は、みんなから憧れられる存在であり、また嫉妬の対象でもある。上級制服を着ると言うことは、それだけ苦しくて気持ちがいいという事でもあるのだ。

生徒についてはこのようなシステムとなっているが、では教師はどうなるのか?

実は、教師は基本的には全員女性型着ぐるみである。入学のオリエンテーションから数ヶ月間は男性型着ぐるみの教員もいるようだが、それはまだ女性の着ぐるみに慣れていない生徒に考慮してのこと。
女性型着ぐるみの中身は男性である確率は高いが、中には本物の女性が着ぐるみに入っているケースもある。但し教師の中が男性か女性かは、生徒達には知らされていないので基本的に判別が出来ない。

先生の中身が本物の女性であっても、着ぐるみの放熱効果を機能させるために、中で気持ちよくなっているのも、男性が入る着ぐるみと同様である。

これが、聖包学園(せいほうがくえん)である。


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