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エリコさんは大手企業に勤めるキャリアウーマンで今年30歳。
容姿端麗で英語が堪能。
会社でも一目置かれる存在だが、私生活がまったく見えないことでも有名だった。
私生活の事は一切話さないし、仕事以外で職場の人間と会う事も無い。
社内では「会社に住んでるんじゃないか?」とか、「実はサイボーグなんじゃないか?」という噂が流れる程だった。
当然ながら、彼女は会社に住んでいる訳でもないし、人間である。
そんな彼女にも秘密があった。
「ジュン君ただいまー」
エリコは玄関に入るなり、小柄でどちらかというとかわいい感じの男に抱きついた。
「ちょ。ちょっとエリちゃん苦しいよ」
それが、エリコの一つ目の秘密。同居人のジュンである。
ジュン20歳。彼は高校卒業後就職してこちらに来たのだが、夢だった役者を目指し仕事を辞め友人と共同生活をしながら役者の勉強をしていた。
しかし、ある日友人と些細な事で喧嘩となり部屋を追い出され路頭に迷っていた所をエリコに拾われ、この家で暮らしている。
この事実を知っているのは、二人を含め極わずかである。
「ごはん出来てるから。ね」
この家の家事は、コンビニのバイトとたまに来る役者の仕事以外特にやる事の無いジュンが行っている。
「あ。そうだ。エリちゃん。ボク今度の土曜さ、ドラマの撮影で夕方まで居ないから」
「え?そうなの?何?主役?それとも…」
「そんな訳無いじゃん。また通行人か何かじゃない?」
「ふーん…」
土曜日。エリコが朝起きるとジュンは居なかった。
「あ。そっか…」
一人暇そうにしていると、昔からの友人ユカリから電話が掛かって来た。
「ねぇヒマ?今日さ。ダンナが居ないんだ。遊び行ってもいい?あと、例の拾った男とかいうのも見たいし」
「まぁ、いいけど。あと、拾った男って何よ。それに、ジュン君は今日居ないよ」
「そうなんだ。まぁ、いいや。後で行くね」
それからしばらくして、ユカリが来た。
「いつ見てもいい部屋に住んでるねぇ。さすが独身」
「うるさいわねぇ。で?ダンナはどうしたのよ?」
「え?あぁ。今日も練習。あの人ラグビーしか興味ないから」
「にしてもさ。あんなゴリラみたいなのどこがいいのよ?」
「うるさいわねー。アンタだってちっちゃくてかわいい男ばっかり選んでるじゃん」
ユカリがソファーに座ると近くにあったジュンの写真を見つけた。
「あ。これ?アンタ好みのカワイイ子じゃん」
「え?ま。まぁね」
「とこでさ、アレはやったの?」
「アレ?」
「例の…」
「え?何よ?」
「アンタのアレって言ったら、アレじゃない。例のお人形遊び…」
そして、もう一つの秘密が「お人形遊び」だった…。
話はさかのぼる事数十年前。エリコが幼少の頃だった。
いつものように着せ替え人形で遊んでいたエリコはいつもと違う妙な感じがした。
「何だろう。この感じ…」
何だか背中にぞくっとした不思議な感じがして不思議な思いが沸き出した。それ以来エリコは人形に大して不思議な感情を抱く様になって行った…。
それから時は過ぎエリコが大学生になった頃、大学で知り合った友人のユカリに誘われてデパートのおもちゃ屋でバイトをしていた時の事だった。
ある日ユカリは店長からの指示で、キャンペーンで使うアニメキャラクターの着ぐるみを着る事になりエリコはサポート役に指名された。
その日の閉店後、倉庫の奥で二人はアニメのビデオを見ながら動きやポーズの練習をしていた。
「こうで、こう。それから、こう」
「あ。それじゃ逆」
二人はあーでもないこーでもないと言いながら練習を続けた。
「だいぶ出来る様になったみたいだし、一回着てみたら。こういうの着たら見え方とか動きも変わって来るだろうし」
エリコは着ぐるみを出しユカリに渡した。
「そうね。じゃあ、そうしよっか」
エリコはユカリが四苦八苦しながら着ぐるみを着る姿を見ていると、心の奥にしまってあった「あの感情」が沸き起こった…。
「こう。かな?」
マスクを着け鏡を見ながらあちこちを確認するユカリにエリコはゆっくり近づいた行った。
エリコはユカリの後に立つと、衣装を直しながらユカリのあちこちを撫で回し始めた。
「え?あ?ちょっと。な。何?」
「あれ。なんでお人形がしゃべるの?お人形はしゃべれないんだよ」
「え?何?ちょ。ちょっと…」
エリコはうっとりとした目をしながら、ユカリのあちこちを撫でる様に触り出した。
「ちょ。ちょっと。や。やめてよ」
その声はエリコには聞こえてないらしく、エリコはさらに続けた。
「さ。ここに座ってお着替えしましょうね」
エリコはユカリを椅子に座らせた。
「え?何?何?」
エリコは完全に自分の世界に入っていた。
「普段あんなに大人しいエリコに何があったの…」
ユカリはエリコの豹変ぶりに少し動揺していた。
「あれ。このお人形すごく柔らかい。こんなお人形初めて」
エリコはゆっくりとユカリの服を脱がせ、ユカリの体を触り始めた。
「え。あ。ちょ。ちょっと… あ… はぁ…」
ユカリも感じ始め、小さな声が漏れた。
「あれ?お人形なのに感じてるの?気持ちいいの?」
ユカリが小さくうなずく。
「そう。じゃあ、もっと気持ちよくさせてあげようね」
エリコの手がユカリの体を滑る様にして動いて行く。
「あ… いや… はぁ… や… やめて…」
その時、遠くの方から店長の声が聞こえ二人は我に返った。
エリコは店長の元へ走って行った。
「どうした?こんな時間まで」
「あ。いや。明日の為に二人で練習してたんですよ」
「そうか。もう遅いから、早く帰って」
「はい」
二人がやりとりしている間にユカリは急いで着替えた。
帰り道、エリコはユカリに「特別な感情」について話した。しかし、ユカリにはその事が全く理解出来なかった。
あれから随分と時間が経ったがその事が二人とも何となく忘れられずにいた…。
「実はね…」
エリコは立ち上がり奥から箱を持って来た。
「何?」
箱の中には着ぐるみが入っていた。
「したの?」
「まだ…」
「まだって事は、したいって事?」
「うん…」
「やめなさいって。そんな事したら、すぐに逃げちゃうから」
「だよね…」
エリコは軽くうつむいた。
「ごめん。変な事言ったかな?な。何ならワタシでもいいよ。ひ、久しぶりに、ああいうのもいいかなぁって…。ハハ…」
「いいよ…」
「そう…。あ。も、もうこんな時間。そろそろダンナが帰って来るから、ワタシ帰るね。じゃあまた、電話する」
「うん。じゃあね」
ユカリが帰った後一人ぼんやりと色々な事を考えていると、ジュンが帰って来た。
「ただいま。あれ。エリちゃん元気ないね」
「そう…?。あ。ゴハン…」
「あ。いいよ。これもらって来たから」
そう言ってジュンは袋を出した。
「ロケのお弁当が余ってたからもらって来たんだ」
「そう…」
「ね。早く食べよ」
ジュンが袋から弁当を出していると、見慣れない箱に気付いた。
「ねぇ。あれ何?」
「え?あ。な。何でもないから…。さ。は。早く食べようよ」
エリコは弁当を食べ終えると、風呂に入っていた。
ジュンは先ほどの箱が気になり、エリコが居ない事を確認すると箱を開けた。
「あ。ちょっと!」
エリコの声が後から聞こえた。
「え?」
「何で勝手に箱を開けるのよ」
「ゴメン…。あ。でも、これ、エリちゃんの?」
「う。うん。まぁ。そうだけど…」
「へー。こういう仕事してたんだ」
「は?」
「いや。ボクもさ。たまに仕事でこういうの着る事があってさ。エリちゃんもこういうのするんだ」
「え?あ。いや…。前にね、仕事でね。使ったのよ。それでさ、終わった後どうするか聞いたら、処分するって言ってたからもらって来たの。あ。あの。ウチのお姉ちゃん幼稚園で先生してるからさ、こいうのあったら子供とか喜ぶんじゃないかなって…」
「ふーん」
「あ。それより、明日も早いんでしょ。早く寝たら」
「うん。じゃあ、おやすみ」
ジュンは奥の部屋へ入って行った。
エリコは箱を奥に仕舞うとベッドへ入った。
次の日の朝、エリコが起きるとジュンは既に出かけていた。
「そうか…」
一人家事を済ませぼんやりとしていると、昨日ユカリに言われた事を思い出した。
「逃げるよね。やっぱり…」
小さくため息をし、天井を見上げた。
「どう、なんだろ…?お人形になるって…」
そんな事が頭に浮かんだ。
エリコは立ち上がり奥に仕舞った箱を出して来た。箱を開けしばらくじっとマスクを見ていた。
意を決したエリコは服を脱ぎ始めた。一枚、一枚とゆっくり脱いで行きすべてを脱ぎ終え、肌タイツを身につけピンクのドレスを着てマスクを着けた。
「コレガ ワタシ ナノ」
鏡の前に立つとあの時とは違う何か別の感情が沸き起こった。
「ワタシ オニンギョウニ ナレタ ノネ」
じっと自分の姿を見続けていた。
そして、ゆっくり右手を挙げた。
「ウゴク ジブンノ オモウ ヨウニ ウゴク」
続いて左手を同じ様に挙げた。
「ヤッパリ ウゴク」
お人形なのに自分の意志で自分の思う様に動く。不思議な感じだった…。
「ソウダ オキガエ シナキャ」
ゆっくりとピンクのドレスを脱いだ。
「コンドハ クロノ ドレスネ」
黒いドレスを着るとまた鏡を見た。
「コッチノ ホウガ カワイイナ」
色々なポーズをしていると、ある事に気付いた。
「アレ オニンギョウナノニ コノカラダ ヤワラカイ」
「アノトキノ オニンギョウト オナジダ…」
そして、胸に手を強く押し当てた握りしめた。
「アレ キモチ イイ ワタシハ オニンギョウノ ハズ ナノニ…」
その手は段々と激しくなった。
「ア… ア… ァ… ァ…」
段々と声が出始めた。
「オンナノコ ナンダカラ ココモ キモチイイノ カナ…」
左手がゆっくりと下へおりた。
「ア… ハァ… ァ…」
「アレ ナンダカ ヌレテル ワタシ オニンギョウ ナノニ… デモ… キモチ… イイ…」
左手がゆっくりと動く。
「ハ… ア…」
「ワタシハ オニンギョウ ナノニ コンナ ハズカシイ コトヲ シテル… デモ… キモチ… イイ…」
恥ずかしいという感情により気持ち良さが増し、気持ち良さが増す事によって、また恥ずかしさが増す。
「ア… ハァ… ア… イヤ… ハズカシイ… イ… ィ… ハ… ァ… イ… ィ…」
そのままガクッとその場に落ち込み、両手を床に付き肩で息をした。
夕方。ジュンから電話が掛かって来た。
「駅に着いたよ。今から買い物でも行かない?」
「いいよ。じゃあ今から行くね」
エリコは部屋着のまま駅に向かった。
「お待たせ」
「じゃあ行こうか」
二人は駅前のスーパーに入った。
「ん?」
エリコは野菜売場の向こうに居る誰かと目が合った気がした。
「どうかしたの?」
「あ。いや…。別に…」
月曜日。昼休みが終わろうとした頃、食事から戻ったエリコを後輩のリナが呼び止めた。
「先輩。ちょっといいですか?」
「え?何?」
リナをそのままエリコを給湯室へ押し込んだ。
「あの。ちょっと聞きたいんですけど。たぶん。ワタシの見間違いと思うんですけど、昨日の夕方駅前のスーパーに居ませんでしたか?」
エリコはドキッとした。
「え?いや…。行ってないけど…」
「ですよね。先輩みたいな人がジャージ上下で、しかもほぼすっぴんで外に出るなんてありえないですよね」
「当たり前じゃない…」
「あ。何だ。人違いか。すません。お忙しいのに」
「い…。いいのよ…」
エリコが去って行ったの確認すると、物影に隠れていた三人が出て来た。
「ねぇ。どうだった?」
「間違いないね」
「え?でも、違うって言ってたじゃん」
「でも、あの動揺見た?普段あんなに冷静な人がアレよ」
「あぁ。確かに」
「あれは絶対間違いないって」
「で?で?その一緒にいた男の人ってどんな人?」
「うーん…。何て言うか、ちっちゃくてかわいい感じ。小動物系?そんな感じかな?」
「えー。えー。あの人そういうの趣味だったんだ。意外」
その話はその日のうちに社内に広まりエリコの知らない所で話題の中心となっていた。
エリコは家に帰ると、その日の午後以降社内で自分に対して妙な空気が流ていた事を話した。
「気のせいだよ」
「そうかな?」
「そうだよ。疲れてるんじゃない。今日は早く寝た方がいいよ」
「そうね…」
エリコは少し早いが、寝る事にした。
誰もが聞きたいけど聞けない。エリコに対してぎこちない態度を取る人は日増しに増えていった。
金曜日の夜。最近の妙な空気のせいで疲れていたエリコは珍しく少し飲んでいた。しかし、エリコは元々酒に弱く少し飲んだだけで軽く酔っていた。
「エリちゃん。大丈夫?」
ジュンは心配そうにエリコを見ていた。
「あー。大丈夫。大丈夫。で。明日は?休み?仕事?」
「うん。さっき電話があって、雨で撮影が出来ないから休みだって」
「そう。じゃあ。今日はゆっくり出来るわね」
「うん」
エリコは少しふらついた足取りで奥から箱を取り出した。
「あれ?これって…」
「そう」
「これが、どうしたの?」
「うん…。ふふふふ…」
「え?何?着るの?」
エリコを笑みを浮かべながら大きくうなずいた。
「わかった。じゃあ、向こうで着替えて来る」
ジュンが部屋へ入るとと、エリコが近くの引き出しから自分のブラジャーと胸パットを出した。
「あ。コレもね」
部屋のドアを開け、隙間から手だけ入れてジュンに渡した。
着替えにはしばらくの時間を要した…。
ガチャリという音と共にドアノブが右へ回るとドアがゆっくりと開いた。
エリコの目の前に現れたのは、まさにお人形そのものだった。
黒いドレスを身に包み、細くすらりと伸びた脚、触ると今にも折れてしまいそうな腕。
エリコは思わず抱きしめた。
「く…。苦しいよ…」
小さな声がした。
「あれ?お人形から声がした。お人形は喋らないはずなのに…」
エリコはお人形になったジュンを鏡の前に立たせ、肩のあたりに手をやり耳元で囁いた。
「ほら、見て。あなたはかわいいお人形なの」
お人形は緊張しているのか微動だにしなかった。
「あなたは動けないの?あ。緊張してるのね」
エリコはお人形の両手を掴み、その手をマスクに当てた。
「ほら。こんなにかわいい顔してる。そして、この体…」
その手を体の中央を通りながらゆっくりと下げ、脚の辺りで手を離した。
「ほら。自分でやってみて」
お人形は同じ動きをやってみせた。
「そう。そうよ。自分で動けるのね。じゃあ、今度はワタシが」
エリコの左手が肩の辺りから、斜めにゆっくりと滑り降りる。
時々お人形の体を仰け反る。
「感じてるの?お人形なのに?恥ずかしいわね」
エリコは不適な笑みを浮かべる。
「さ。お着替えしましょうか」
エリコはお人形の黒いドレスをゆっくりと脱がせた。
「あら。かわいい下着ね」
お人形は水色の下着姿になった。
「かわいいドレスの下は、こんなかわいい下着だったのね」
エリコの両手は鎖骨のあたりからまっすぐ下へと下りて行った。
「あれ?あなた女の子のお人形なんでしょ?なんでこんなものがあるの?」
エリコの右手にお人形の完全な状態が当たった。
お人形は思わず両手で隠した。
「あら。恥ずかしいの?女の子なのにこんなのがあるのが、恥ずかしいの?」
エリコの右手は下着の上からお人形の完全な状態をさするとお人形は思わず肩に力が入る。
「どうしたの?ほら力を抜いて。気持ちいいの?」
お人形は俯いていた。
「気持ちいいでしょ?」
エリコは右手を開いたり閉じたりしながら、上下に揺らした。
お人形は腰が段々と引け前屈みになって行った。
「はぁ…。はぁ…」
お人形から小さな声が漏れる。
「気持ちいいんだ?気持ちい…」
突然電話が鳴りエリコは急いで電話へ走った。
「もしもし。え?はい?は?違います」
マスクを外したジュンが寄って来た。
「どうしたの?」
「間違い電話」
「ふーん。じゃ、続きする?」
「いいよ…。さ。早く着替えて。もう遅いから早く寝よ」
「う。うん…」
ジュンは再び奥の部屋へ入って行った。
「あー。ワタシ何て事したんだろ…」
エリコは自分を責めた。
「エリちゃん…」
着替えを終え部屋から出て来たジュンが心配そうにエリコの顔を見ていた。
「だ。大丈夫。ねぇ。今日は久しぶりに一緒に寝よっか」
「うん」
エリコは眠れなかった。
「ねぇ…。ジュン君…」
エリコは自分に背を向けて寝ていたジュンに小さな声で言った。
「何?」
ジュンはゆっくりとエリコの方を向いた。
「ごめんね…。変な事させちゃって…。嫌だよね…。ああいうの…」
「ううん。ボクもさ、途中から何だか本当に人形なった気分になって来て楽しかったよ」
「ホント…?」
次の日。エリコは頭痛と共に目が覚めた。
「う…。え?もうこんな時間。いたたた…」
既に11時を少し過ぎていた。
「ねぇ、ジュ…」
横で寝ているはずのジュンは居なかった。
「あ。そうか…」
あの時ユカリに言われた言葉を思い出した。
『そんな事したら、すぐに逃げちゃうから…』
「やっぱり。そう…。なんだ…」
エリコは何か考える訳でもなく、何か見ている訳でもなく、一人じっと下を見つめていた。
「ただいま。あ。エリちゃん起きた?」
ジュンが帰って来た。
「え?あ?あれ?帰って来たの?」
「え?何が?」
「あ。いや…。あ。何て言うの?え。えと…」
「ボク。昨日、服とか汚しちゃったからクリーニングに出して来たんだ」
「え?」
「でね。そしたら、クリーニング屋のおばんさんが、『あなた劇団か何かの人?お金無いんでしょ。おまけしてあげる』って言っておまけしてくれたんだよ」
「そう…」
「さ。起きて起きて。もうお昼だよ」
ジュンはエリコの手を引いてベッドから出した。
数日後。クリーニングから返って来たドレスと肌タイツを箱に詰めると電話を掛けた。
「あ。お姉ちゃん。ワタシ。あのね。この間仕事で使った着ぐるみ貰って来たんだ。うん。そう。それでね。こういうの幼稚園で使ったらいいんじゃないかと思ってね。もしいるんだったらあげるよ。うん。そうそう。じゃあ送るね。うん。それだけ。うん。じゃ、また電話する」
エリコは箱にガムテープで封をすると、人形に対する特別な感情も心の奥に仕舞い込んだ。
おわり
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