同棲生活「第1話」 [戻る]

1.同棲生活

 

「はい。今日の分の業務は終了っと。」

ユイはいつものようにこもった小声で言う。別にわざとではない。ユイの声は"妨げられて"、こもってしまうのである。僕とユイが同棲生活してもう1年が過ぎているが、ユイ自身、この部屋から一歩も外にでていない。買い物はもちろん、炊事・洗濯などの家事はすべて僕がしている。

今日のユイはいつものブレザー服。ひざが少し出る程度のスリットスカートにナチュナルなパンスト。そしてリボンがついたブラウスに紺のジャケットを羽織っていた。これだけなら普通のOLを想像させるかもしれない。実際僕の自宅ではあるけどSOHOっていうことで仕事場となっている。いわゆるモノ書き屋さんであった。しかもすごく売れていて僕も彼女のサポート(というか家事一切)をするため、僕は会社を辞めたくらいだ。

しかし、彼女のブレザーの袖からでている白いはずの手は、着ぐるみの肌色タイツに覆われていた。

顔は人間の目では不可能な大きな瞳。鼻はとがっているが口と同じ斜面で、口は小さな唇。そう、ユイの顔はアニメ顔、いわゆる美少女着ぐるみの姿であった。

思えばこんな姿になったのも1年前からだっけ──────。

僕たちが出会ったのはインターネットからであった。ユイ、いや彼女はそのころから売れっ子のモノ書き屋であったが、ほとんどひきこもりの生活だったそうだ。どうやって出会ったのはもう忘れた。それにお互いの気持ちが一緒になるまでにも時間がかかった。

そんなことはどうでもよかった。でも僕が着ぐるみが好きっていうことがわかってしまったときから、急激に彼女のほうから僕に積極的になった。お互い着ぐるみの話になるととても話が弾む。そして、同棲生活もしようって言い出したのも彼女だった。

そして、彼女が見つけた賃貸の部屋に引越し、同棲生活が始まったのである。

あの時は今でも鮮明に覚えてる。彼女のために着ぐるみを造り、着せたことを。そのマスクの名前こそユイなのである。しかも彼女の希望にあわせたけど...

「これって着ぐるみ面というより、拘束具?」

僕がはじめに感じたことである。通常着ぐるみのマスクって前面のみの半頭型で後頭部は髪の毛で隠すのだが、ユイのマスクはFRP樹脂でできた全頭型であり、後頭部も覆う。あらかじめ彼女の頭をラップで包んでぺたぺたとビニールテープを貼り付けるといった頭の型どりし、そこから原型を作った。マスクを彼女の頭に被せた後、両耳あたりに位置するボルトで止め、ユイの耳を後で覆い被せるのである。

ユイの鼻はもちろんのこと、口元も空気穴がなくどこで呼吸しているかはわからないだろう(もちろん僕は知ってるけどね)。瞳のアンダーラインにスリットがあり、内側でサングラスがはめこむ。そこから覗き込むのである。ウィッグもこのマスク専用に作った。マットを用意し、その上に植毛した。彼女にマスクを被せたあと、クロッチでウィッグを取り付けるのだ。

マスクと同時に、肌タイも造った。ストレッチ生地を購入し、彼女の寸法に合わせて型紙を起こした。顔もなにもかも全身を覆ういわゆる全身タイツであった。これもすべて彼女の希望だった。

こうして、引越し日が決まりやがて同棲生活へと始まったのである。と同時に彼女がユイに変わる日であった。

引越しが終わってひと段落ついた夜のこと。彼女はようやくのお風呂にありつけた。

「... シャワー浴びたよ。」
「うん。いいにおいだね。」
「あは。ありがと。じゃ、アレ見せてくれる?」
「うん。」

僕はアクリルケースからユイのマスクと肌タイを彼女の前に出した。

「うわぁ....」

彼女は微妙な表情で反応した。

「さっそく着せてあげるね」
「ん。その前に...」

彼女は立ち上がるとバスタオルが外れてしまい、一糸まとわぬ姿になってしまった。それも気にすることなく僕に抱きつくと彼女のほうからキスしてきた。

「しばらくキスできなくなると思うから」

彼女は肌タイを手に取った。彼女の白い足をくぐらせ、両腕も通す。

「どお?初めて着る感覚。」
「すべすべの感触がなんともいえないよ。こんなの初めて。すごく気持ちいいよ。」
「背中のファスナー上げてあげる」

背中のファスナーを上げると、彼女の体はタイツ生地に包まれた。僕は彼女の真正面にたつと、彼女の顔はタイツで覆われ、のっぺらぼうとなっているのがわかった。うっすらと唇が浮き出ている。

「ねぇ。ちょっと口あけてみて」
「ん? こう?」

パカっと口をあける彼女。彼女の口がタイツで塞がれたまま、彼女の舌や歯を見ることができない。僕の心の中でなにかの衝撃が走る。

「何も食べられないね」
「おなかすいたらいつでも言ってよ」
「ううん。大丈夫。でも、ずっと"裸"だし、下着着ていい?」
「うん。着なよ」

そういいつつも、彼女はその上からからブラとショーツを身につけ、黒のパンストを履いた。

そして...

「いよいよ頭ね..」
「どきどきしてる?」
「うん。」
「じゃ、やめる?」
「ううん。」
「被ったらなかなか脱げなくなるよ。それでもいいの?」
「うん。お願い。」

僕は彼女の後ろに立った。まずは薄いシリコンでできたマスクをかぶせる。ユイのマスクは硬いから、そのクッションとなるマスクをかぶせなければならない。いきなりユイのマスクをかぶせると硬いがあたって痛いと思うから。

シリコンマスクは単なる下地なので、顔の凹凸がすこしあるくらいである。このマスクを彼女の顎の下から、後頭部の首まで覆った。後頭部の首からの切れ目をマスクについているベルトで閉めた。

「いよいよユイをかぶせるよ」
「うん..... いいよ」

僕はユイのマスクの後頭部をあわせて、前頭部を彼女の顔に被せた。両耳の部分にボルトを通す穴が開いていて、そこにボルトを通してナットをはめた。

コキコキ..

小さなモンキレンチでナットを締めていく。あとはその上に耳を被せてボルトを見えないようにした。その上にウィッグを取り付け、ゴムマットとマスク頭部にあるクロッチをポチポチとつけた。これでロングストレートの青い髪がユイの髪となった。

... かわいい。

僕は思わず抱きつきたくなったが、ここは我慢して彼女の服を着せた。ピンクの7分袖のブラウスに、黒いスリットスカート。

こうしてユイが誕生した。

「呼吸は苦しくない? どこか痛いところとかきついところとかない?」
「大丈夫よ。頭にぴったしだから、ぜんぜんきつくないよ。ちょっと呼吸は苦しいけど慣れれば大丈夫。」
「視界は?」
「すごく悪いね。なんとか見えるけど...」

ユイは姿鏡の前に立った。じっと、興味深そうに自分の顔を覗き込むように見ていた。ちょっとだけ首傾けたり、頭とかもたげたまま首筋を触ってみたり。

自分の手を開いては握ったり。少ししゃがんで足の指先にあるつけ爪を、パンスト越しにスリスリ触っていた。

立ち上がるとユイは僕の目の前に立った。

「かわいい?」

マスクにこもった声がさらに僕の心をグリグリと責めていく。僕は今度こそ我慢していた欲望が一気に開放されたかのようにぎゅっと抱きついてしまった。

「あん。もう固いよぉ」
「だってかわいいんだもん」
「中身の私よりもコウフンしてるんだね」
「ごめん...」

そういうとユイは抱きつく僕を少し引き離し、僕の両腕を握ったままじっと見つめた。ユイのお人形の顔が僕に。固くて無機質でお人形の顔。大きな瞳が僕をじっと見つめ、小さな口は微笑んでいる。見つめられた僕の心臓は飛び出しそうになった。

「いいよ。私も望んでることだし...。私はこの姿であなたに愛してくれるほうがうれしい。」
「ありがとう...」

僕は初めてユイを抱いた。股下のクロッチを開けて....

同棲生活するまで、もう何度も何度も彼女を抱いたけど、ユイはまるで初めて女性を抱くほどの気持ちに駆られていた。ユイをベットに寝かせるときにはふわふわした枕を用意し、そこに頭をうずめさせた。首が負担にならないように枕の角度も少し工夫する必要もあったけど、用意周到のためか、ユイが楽になるまでにそんな時間が必要とはしなかった。

そして....

「いつもよりすごい勢いがあったね。私も久しぶりに何度もイッちゃった。」
「気持ちよかった...。もう脱ぐ?」

ユイは首を振った。

「だからね、お願いがあるの。」
「うん?」
「私をユイと呼んでほしいの。」
「えっ!?」
「つまりね、ずっとこの姿で生活したいんだ......」

僕の思考をはるかに超えた願いに、僕の下半身は再び... (以下略)

.... こうして僕とユイの生活が始まったのである。

 

つづく(かもしれない)

 

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