しっぽのキモチ [戻る]


うわ・・・

ついそんな言葉を漏らす。
その娘が目の前に現れたとき、「某」久保は最近ついぞ無かったあの感覚に襲われた。
胸がはりさけそうになり、口の中が乾く。
彼女は滑るような足取りで、
この樹木の中を模した、風俗の一部屋にすぎないところに入ってきた。
薄く、軽そうな、それで居て体にさらさらと愛撫するようにまとわりつく白いドレス。
そこから下着がうっすらと、しかし見ようによってははっきりと、見えていた。


興味本位の指名だった。
もう何度目のDoll clubだろうか、大手商社のSEをやっている某久保は、この店に来るのがほぼ唯一の楽しみとなっていた。お金には(特にそれ以外に楽しみがないので)不自由していない。ただいつものキャラクターとのプレイだけでも飽きてしまうから、新しいシステムをもった着ぐるみが出ると酔狂に試してしまうのだ。
新しいシステムといっても、「いままでとはちがう」ことが知らされても、その内容までは教えられることはない。あの表情を変えることができる着ぐるみが初登場したときも、最初のしばらくは、「特別製です」以外の何も言われることはなかったのだから。
この「どきどき」感が通の間ではたまらないものだともいわれている。
もちろん、それにだまされることもあった。
だが、今回は違った。

神秘的な表情、見ているだけで心を吸い取られそうな造形、そして柔らかく丸い、しかしエロティックというよりはむしろ女性の清潔さだけを純粋に取り出したような、そんなライン。だが某久保が惹かれたのはそんなところではなかった。


彼女には、しっぽがあったのだ。


しっぽは揺れていた。 清流の緩やかな流れにそよぐ川茂のように揺れていた。
あたかも自然に、まるで生き物のように、揺れていた。
とくにしっぽフェチとかいうたぐいの人間ではなかった某久保は、だがどこかしらか、そこに異常な興奮を覚えずには居られないでいた。 どうしてこうにも、どうしてこうにも、
ああ―――

しっぽは、ぴくっ、と反応した。
扉から入ってきた少女は、いまさら某久保に気づいたらしかった。





ドラゴン娘、カタログに彼女はとりあえずそう銘打たれていた。
目に瞳孔は描かれていない。青と緑の中間くらいの色で、グラデーションされていた。しかし、それで居ても目の前の何も見えていないような風ではなかった。彼女の目は目の前の誰かを見るように絶妙に描かれていた。それでいて同時に、そんな彼女の目を見つめようとした瞬間、もしかしたら彼女の興味の対象がこの自分から遠ざかっていくのではないか、一体この娘は何を見ているのだろう、と感じるような、そんな瞳だ。もう一度彼女の全身を見回してみた。うっすらと緑がかった髪に申し訳よりは少し自己主張した程度の角が生えていた。耳はエルフをかたどった風である。柔らかそうだ。今少しぱたぱたと動いた気がした。

その娘は、この世の清廉さをすべて引き受けたような無表情でそこにたっていた。
世の中の汚れというものに縁のない、おおよそ「空想上の」美少女が居たらこんな感じなんだろう、某久保は、(リラクゼーションに使う、あの椅子ともベッドともつかないものから立ち上がったままで)惚けるようにそこにたっていた。彼女のすべてが目の前にいながらも手の届かないところへと遠ざかっていくようだった。それほどに神秘的だった。
着ぐるみが手の届かないところにいたときの思い出、まるで某久保が初めて着ぐるみを見たときのような、最初にDoll clubに来て、まるで何もできずに帰ったときのような、そんな感じだった。しっぽだけがエロティックだった。

某久保は思った。

この娘がテレビの向こうに、ステージの向こうに居てほしくない。今おれのそばにいてほしい、ああ、でもこの娘は手の届くそこに居るではないか、でもこの距離感は何だ、何でおれが仲間はずれにならなければならない?いやだ!なぜいやだ?そんなばかな。

少女は、未だその無垢な瞳で某久保を見つめていた。
リラクゼーションルームに入ってくる風だけが、彼女を愛撫していた。
どんな下卑た、無粋な戯れもおよびもつかないような、前戯だった。
羽衣は嫌らしくも神秘的に彼女の肢体にまとわりついた。
某久保はなめるように彼女の体を見た。
自分の視線だけが薄汚く思えて不快だった。
風に揺られたスカートが、彼女の秘部を下着の上からそっとなでた。
どんなフェティッシュなAVでも、あんなエロティックな皺を、双陵を、作ることはできないだろう。

某久保は、頭を振った。
ただの風俗じゃないか。
何を物怖じすることがある!

彼女は、小首をかしげた。
そんな仕草に、また心臓が悲鳴を上げる。
我慢の限界はとっくに超えているのに、近づけない、何かがあった。
某久保はなけなしの勇気を振り絞って彼女に歩み寄ると、

彼女の肩を、

後ろに手を伸ばして、

自分に、寄せた。








―――柔らかい。








羽のようだとは、彼女のことだった。
まるで彼女は舞い降りる一枚の羽毛のように、某久保の胸板に舞い降りた。
彼女は、きょとんとしていた。
ここがどういう場所で、これから何をされるのかもわかっていない。
そんな表情。
しっぽだけが揺れていた。

なんて無垢なんだろう、表面上は。
・・・そうだ、少なくとも、表面上は。
すっかり忘れるところだった。

彼女は着ぐるみだ。
確かに、技術も上がり、しかもここに使われている着ぐるみはおそらく世界最高峰だろう。だがそれは直接女性を造形で再現することを意味しない。リアルな女性とは別のリアリティをそこに表現しようとしているのである。こんなくだらないことにここまでの技術を使うのは日本人だけだろう、と某久保は思ったこともあった。明らかに作り物なのに(もちろん、狙って、わざとらしく)、何か独特の「リアリティ」を感じさせる質感。ゴムとストレッチの布の合成物なのに、そこにあるのは間違いなく何らかのリアリティ。だいぶ前に入った表情を形づくるシステムは(それが「声優」付きであることも手伝って)、また強烈なインパクトを生んだ。
だがなによりも。


彼女には間違いなく誰かが中に入って演技しているに違いない。


Doll clubのキャラクターは、キャラクターとしても格別にレベルが高いが、何よりも、その中身を想像させるところが重要だった。
この傾向は、表情のシステムが確立されてからは、さらに重要度が高まった。中身と外見にずれがあればあるほど、想像力は広がってゆく。つじつまの合わないところに、想像の種は転がっている。
これはその典型だった。
実際に演じられているそのキャラクター、そしてその中身の人、さらに、中の人の状況を知ってか知らずか、表情を作り、演出し続ける、「声優」。
キャラクターがあえぐところを、演者が状況に翻弄されるところを、声優が興奮するところを、想像するたびに、某久保は興奮した。
今回もそうに違いない、このキャラクターのしっぽは間違いなく「声優」が動かしているのだ。やつらめ、安全なところから俺たちが淫猥な夢にふけるところを見て興奮するに違いない。
抱いた彼女をよく見ると(視覚だけでなく、触覚で)、時折、ぴくっとふるえるのがわかる。寒いのだろうか。こんな薄着で風が吹いているのだ・・・いや、そうではない。彼女は、彼女のまとっている薄い肌着が風にあわせて体を愛撫するのが気持ちいいのだろう。某久保に抱かれてなお、この嫌らしい布は彼女の体をなで続けている。それに併せて彼女は反応しているのだ。もっとも、本来彼女は「無垢な」キャラクターなのだからそんなそぶりは見せられないはず。あくまで、ばれないように、そうでなければ、無垢が故に震えているのだと、そう思わせたいのだろう。
 ここの娘たちは、なにやら、感じやすいのだ。最初は演技かと思ったが(当然演技していることもある)、幾度も経験するうちにどうやらそうではないことを証明してみたことがある。あの布にしてもそうだ。相当考えて衣装や着ぐるみのスーツを作ってあるのだ。まあ、プラスして言うならば、ここの娘たちはおそらく「フェチ」という人種に近いのだろうが・・・。 だが某久保には一つ、どうしても解せない点があった。それが先ほどから引っかかっていたのだ。なぜ、しっぽなのか?
某久保は、この着ぐるみに関する注意事項を思い出していた。こう見えてもこの店は客に対してはかなりのルールを強いる、ええとたしか・・・

『注:Dollclubに適用される注意事項はすべて適用のこと。ただし、今回はシュチュエーションをよりリアルに再現するため、以下に特殊事項を設ける。①着ぐるみに対して、何かの行為をするときに許可を取る必要はない。ただし、その場合に着ぐるみおよび役者に危害、損傷を与える行為は禁止する。②本番行為は同様に禁止である。③上記のことを徹底するため、この着ぐるみのテストには会員の顧客データの審査を必要とする・・・』

こういうことか。今回は、シュチュエーションにこだわるつもりか。

まあいいや。それなら遠慮はいるまい。そんな考えは、「夢から覚めて」すでに興奮状態となった某久保にはとるに足らない些細な疑問にすぎなかった。某久保は、もう辛抱たまらなかった。
吸い付くように、彼女の腰をくの字に折ると、むしゃぶりつくように、彼女の胸をつかんだ。

「は・・・・・ふ」

彼女は、それにたいして、驚くでもなく、ただ反応した。
小さな胸(と彼は思っている)から、彼が圧迫した分の空気が漏れただけのようだった。
しっぽも彼女が息を吐くのにあわせてくの字に曲がった。
まるでしっぽも生きているようだった。


―――上手い。
どうやっているのかはわからないが、あるいはプログラムなのかもしれないが、あのしっぽの動きは見事だった。しっぽなのに、ただのしっぽなのに、どうしてこんなにも自然に動くのだろう。どうせ中にはつめものくらいしか入っていないのに、生身の人間の体が入っているわけではないのに、どうしてあんなにエロティックなのだろう。
思うと同時にどうしようもない愛おしさが立ちこめてきた。
それしか感情の表現を知らない某久保は、とっさに彼女の肩を少し戻しながら包み込むように、彼女の股間に手をはわせると、そのまま透けた下着ごとその秘部を受け止めた。


きゅっ。


某久保は(おそらく)彼女の、最初の反応を見た。

「ぁっ・・・・・・・く・・・。」


彼女の軽い(とおもわれる)体の抵抗が、さらにすくなくなった。
某久保の手にかかる体重が、少し重くなった。
彼女はどうやらそれで力が抜けたようだった。
彼女の布が、某久保の指と一緒にさらに彼女のクレバスに食い込んでゆく。
自分の重みでその事態を招いた彼女は、その刺激に耐えられず、もう一度ぴくりとはねた。
彼女の顔があがる。
とっさに、彼女の顔を見る。目は前髪に隠れていた。
何をされたかわからない表情、でも体はわかっているような。
少しだけ開かれた口から、吐息が漏れた。


吐息が。


確か、呼吸は股間だったんじゃ・・・・


某久保は、吐息のにおいをかいでみた。
なんだろう、甘い、においがした。
でもそんなものはどうでも良かった。
ただ、彼女の息が彼女の延長が、たまらなく恋しくなった。
彼はたまらず彼女の息ごと彼女の唇にむしゃぶりついた。
舌をはわせる。
某久保は口腔内を這う空気に気づいた。
ははあ、これが彼女(そして「彼女」)の息か。
股間と同じ方式を使っているな。
奥の通気口から、外壁を這わせる形になっている。
そこまでは良かった。

だが、彼の舌が彼女の舌にふれたとき、
そのゴム状のものが動いたのだ。
某久保の舌にとまどっているようでもあり、遊んでみたいようでもあり。
これは、まさか。


舌が着ぐるんでいる!!!


彼女の口の中は、キャラクターのもの。
しかし、そこに薄いゴム一枚隔ててあるのは間違いなく「彼女」のもの。
しかし、その「彼女」は、口の中まで、体を覆うものと同じもので覆っているのだ。

某久保は、たまらなく興奮した。
こんなところまで着ぐるんで、「彼女」は相当苦しいに違いない。
しかもここから息をすればいいのに、わざわざ「人形の」呼吸に見せかけるというおまけ付きである。そして『彼女』は、こんなところまで着ぐるんで、その覆われたエッチな体で楽しもうというのだ!

これはたまらない。 某久保は、これまでこの店に通い続けて初めて嫉妬というものを覚えた。
こんなところまでおれと境界を区切ろうというのか。
たまらない。

某久保はしばらく夢中で彼女の「舌」と戯れた。
下の口をいじるのも忘れて。
だがそのとき、

はたと、気づいた。








彼女のしっぽが、ぴくぴくと、動いているのを。








感じている。
しっぽで?




間違いなく、それは感じていたのだ。
は虫類の持つ独特の光沢が、レオタードやタイツに覆われた女性の肢体の独特なエロティシズムを想像させた。光沢のあるレオタード地のタイツに覆われた女性が、歩くときに、その振動で自らのメリハリのある部分を揺らすあの振動。そんな女性がもしタイツのまま感じたとしたら、そのときにわき上がってくる感覚にあらがえず体を打ち振るわせるであろうあの振動!
この無垢な(無垢を演じている)女性が感じているかどうかは、キャラクターの無垢さが故にわからない。しかし、これはどうだ。その少女の着ぐるみは、清純さを維持しながらも、隠し得ないトコロをもっている。

今さっきまで、ディープキスに夢中でもはや口だけの存在となっていた某久保は、今まで忘れていた中指を思い出したかのように動かした。突然のことで、某久保も少し強すぎたかと思ったが、少女にはものすごい刺激であったらしい。

「は、ぁっっっ・・・」
あいかわらず声は押し殺されているが、先ほどとは違う緊張感のようなものが感じられる。
「声優」は予想以上にプロだ。
彼女の体のこわばりを抱いたままの触感で確かめると、某久保は彼女のしっぽを見た。しっぽは揺れていた。快感に耐えているようなこわばり、でも今にもその快感に負けてゆるみそうなこわばり・・・。

また少し指をずらした。
ジェルでぬれたゴムの谷間を通過するときの、あの独特でスムーズなざらつきがした。

彼女は(キャラクターは)混乱していた。無垢な彼女は、自分がされていることと、そのわき上がってくる感覚に、もはや快感に変わろうとしている感覚に、ひたすら困惑してい(るような表情をし、演じてい)た。

だがしっぽは正直だった。

しっぽは、波打ち、揺れていた。
無垢さが故に、新しい感覚に耐えられないといわんばかりの困惑。
だがその裏で、間違いなく正直なしっぽ。
そしてそのしっぽはタイツとゴムの混成物に覆われた、その脚に負けじとぴちぴちと張りつめ、まるで別の生き物のような、それで居て、彼女に見事にシンクロして脈動していた。
無垢なキャラクターと、エッチな、感じやすい、正直な、淫乱な、しっぽ。
着ぐるみのもつ二面性をすらも、演じてみせる着ぐるみ。

某久保は思った。まるで自分の中身をさらけ出されるようなこの着ぐるみ、果たして中の人はいったいどのような心持ちでいるのだろう。
そう考えるとさらに興奮していた。
なるほど、しっぽはそういうことか。
さすがはDoll club、ファンの心理をつくのが上手―――



まてよ。

『彼女に見事にシンクロして』!?

某久保ははたと手を止めると、突然、彼女の敏感なところを責め立てた。
吐息とともに、「感じる」彼女。
すかさず確認する。



やはりだ。
こちらの行為と、仕草と、しっぽの動きにずれがない。



つまりはこういうことか。

中の人の興奮具合を検知して、キャラクターの仕草にかかわらず行為の相手にモニターしてみせる仕組み。

演者は、本人が望む望まないにかかわらず、自らが感じていることを余すことなく相手に伝えてしまうわけだ。どんなにキャラクターを清楚に演じようと、どんなに感じるふりをしようと、どんなに感じないふりをしようと、それらはすべてしっぽの動きという形で、相手に伝わってしまう。
中身の様子を、キャラクターの演技によってどれほど取り繕うことができても、しかし彼女のしっぽは正直なのだ。
「彼女」は果たしてそのことを知らされているのだろうか。

もしおれのように「新しいシステム」というだけで知らされていないとしたら?
もしかして、知っていてなお、このような倒錯したキャラクターを演じているとしたら?
そしてなにより、そんなアンバランスな状況が生み出した、このキャラクターそのものの愛らしさといったら・・・!!

某久保は、思った。

「―――そんな彼女を、穢したい―――」


ふと表情を見ると、それは紅潮していた。
何もわかっていないような、無垢な無表情。
でも少し恥じらうような、恥じらう自分に気づかないような表情。
その口からは吐息が漏れ、視点の定まらない、うるんだ(ようにみせた)瞳。
すごい、こんなところにまでこだわっているのか。
そしてこれがもし、またしっぽのように中の様子と直結していたのなら・・・・!!
某久保はもうたまらなかった。
この着ぐるみは、なんと、着ることによって、中の人の恥ずかしい感覚をそのまま浮き彫りにしてしまうのだ。しかも、この着ぐるみのキャラクターの持つ、神秘的なまでの清純さは、中の様子を何一つ隠してはくれないのだ。
某久保には、すでにそれだけの理由では、あの生きているようなしっぽの動きの自然さを説明する根拠が何もないことに気づいていなかった。それはもはや、夢中の彼にとっては些細な問題にすぎなかった。

某久保は、彼女を再び抱き寄せた。もう遠慮はいらない。純粋な人外の少女に覆われた、淫猥な「彼女」をいじりだしてやるのだ。彼女をたたせたまま、ゆっくりと全身を愛撫する。彼女は小刻みに揺れていた。太股の内側をつーっとなでてやると、感じやすい彼女は(先も言ったようにDoll clubの特徴なのだが)力が抜けてへたり込みそうになる。そこを背中に回した手で止め、彼女の背中を左の腕にのせた格好になった。「彼女」も客に負担をかけてはまずいと思ったのか、敏感な太股を(一番敏感なところにとてもきわどいところで)なぞられながらも、何とか体重を乗せすぎまいと耐えているようだ。内股気味になりそうになる彼女の太股を、某久保はこまめに少し開いてやる。彼女の息が荒くなってきた。不意をついて、彼女の確信に手を滑り込ませる。反った体をさらにのけぞらせる彼女。彼女の形のいい胸がまとわりついた衣装からひときわに際だって見える。某久保は、そいつをわしづかみにつかんだ。「あ゛あ・・・・。」彼女の声が漏れる。そのまま秘部を攻め続ける。ついに耐えられなくなり、彼女は地べたにへたり込む。ほてった顔はようやく快感というものに気づいた風であった。まるで何かを求めるように口を開け、あえぐ。
 そこで某久保は、ピタ、と手を止めた。彼女は、突然止まった快感にハッとなると、はじめて恥ずかしそうに、切なそうに、うつむいた。しっぽはあの生々しい動きを止めた。すかさず、某久保はズボンの上から、彼女の顔を自分のものに押しつけた。彼女は、何か堅い物が顔に触れたのを少しの間をおいて認識すると、ぴくっとして顔を離し、そのいびつにテントを張った物を凝視する。

某久保は特に何もせず、彼女の動きを観察することにした。
中身の淫猥な娼婦めが、一体どんなことをやってみせるのか、内と外から眺めてみたくなったのである。

彼女は、ほてった顔はそのままに、そのきれいな手の中指の先でファスナーの周りに際だった、その堅いものにふれてきた。不思議そうに、興味津々に彼女はそれをなで始めた。
時たま彼女のしっぽは小さく揺れる。それを見ていると、今にも某久保のそれにとりつきたくて、でもキャラクターの性格を気にして躊躇している様が見て取れた。少しそれをなでた後にしっぽはぴくっと緊張し、しかしその次になそうとすることをやめてまた、「興味津々の純粋な少女」に戻る。

だがしっぽは正直だった。
彼女がじれているのは見て取れた。
彼女の腰は切なそうに動いている。
刺激を欲している。
しっぽは緊張したりゆるめたりを繰り返している。

じれているのだ。


このまま見ているのも楽しかったが、いかんせん、最初に手間取りすぎた。
もう時間がない。
何か敗北したようで悔しかったが仕方がない。

「あけてみていいよ。」

某久保は、少女に優しく語りかけた。
しかし、思わず出た緊張で震えた声は、まるで悪魔のささやきのように感じられた。
彼女は、おずおずと、ボタンをはずし、ファスナーをあけた。
「彼女」がじれたあまり、無垢な少女にもかかわらずズボンをスムーズにあけて見せたことを某久保は見逃さなかったが、この雰囲気を壊したくないためあえて黙っていた。彼女はそれを思い出したかのように、トランクスのところではたと手を止める。某久保は目で彼女を促した。彼女は、トランクスを手に取り、それをめくった。

彼女はそれを手に取ると、そっと、ふれた。
ふれた瞬間にそれは、ぴくっ、と動いた。
彼女はそれに驚いて、ひくっ、と体を縮ませたが、それから目は離していないようだった。

君のせいでこんなになってしまったよ、これがなんだかわかるかい?
もっと遊んでみてもいいよ。
彼女はそれに興味津々といった風でもてあそび始めた。
とはいっても、実際はただもてあそんでいるようで居て、彼女の愛撫は的確だった。
だが彼女を見れば、「彼女」がじれているのはよくわかる。 彼女はまださっきの刺激がほしそうな風だった。
太股をさっきからたまにもじもじさせている。
しっぽは相変わらず揺れていた。
愛おしそうに手を伸ばす。
彼女の口が再び小さく開いた。
彼女の吐息が漏れた。
はぁ・・・はぁ・・・・彼女は、切なく、苦しそうだった。

変な気分になってきたかい?
何がしてみたい?
言ってみな。

「あの、これ・・・」

彼女が言うか言わないか、某久保は自分のものを彼女の口の中に押し込んだ。

「・・・??」

彼女は一瞬声にならない声を上げたが、そのままきょとんとしていた。
某久保は、目で即した。
彼女は再びそれに目を戻すと、まず、舌でもてあそび始めた。


ゆっくりと、それが何であるかを確認する風でいて、しっかりと刺激してくる。
だが、まるでそれが何かを理解していないように、じらしている。
やはりこいつはプロだ、と某久保は思った。
やがて彼女の愛撫は激しさを増していった。
彼女は某久保のモノに夢中になっていったのだ。
思いの外、彼女の「中」は気持ちよかった。
中に入れては「舌」でもてあそび、たまに「唇」でものを四方から刺激してくる。
某久保は今にもいきそうだった。
彼女を抱きしめたくてたまらなかったが、それができないことに強烈なジレンマを感じていた。
仕方がないので、彼女を凝視する。
彼女にあわせて、しっぽも脈打つように揺れている。
彼女も興奮を押さえられないようだ。
この場合、彼女が某久保のものにじゃれついていられるのは、彼女にとってある種の免罪符である。
無邪気でなければならない彼女を一部捨て去り、淫猥な気持ちを発散できる免罪符。
それを見ているだけで某久保はどうにもならない気分がわき上がるのを感じた。
まずい、それだけでいってしまう。彼女から目を離さなければ。いかん、もうだめだ、もう遅い、阻止臨界点は超えてしまった、モノに力を入れる。少しでも上り詰める間を長引かせるんだ。無理だ、彼女の快感が強すぎる―――


某久保は彼女の中に彼女への欲望を放出した。
彼女は、そのものの変化に一旦、動きを止めると、彼の欲望を受け止めるようになめとった。
過ぎたばかりの某久保には少々きつかったが、それでもなぜか気持ちよく感じた。





某久保は例の椅子に座って、彼女の帰りを待っていた。
彼女は、噴水で口の中をすすぐと(やはりそっちは吸収されないようだ)某久保の元に戻ってきた。

だが彼女は、某久保の目を見ず、うつむいて、もじもじしていた。
非常に切なそうで居て、一体自分が何をしてほしいかわからなさそうな感じ。
顔は紅潮し、しっぽは揺れる。
某久保は、そのまま彼女をしっぽごと草むらに押し倒した。

さっき思う存分抱いてあげられなかった欲求を果たさなければならない。
彼女を思う存分、頭のてっぺんからしっぽの先まで楽しむのだ。
倒れた彼女は、一瞬、倒された衝撃だろうか、びくっと体を少し大きく緊張させた。
某久保はそれを無視して彼女を執拗に攻め始めた。
某久保の激しい愛撫に、しばらく彼女はすこし苦しそうにしていた。
この期に及んでまだ演技かと、「彼女」の役者根性になかばあきれかけたが、やがて気持ちよさそうに身をよじり始めた彼女のいとおしさに、
そんな考えはすぐに吹っ飛んでしまった。


某久保は夢中で彼女をむしゃぶり、穢し、愛でた。
終了を告げるアナウンスがきても気付かないほどであった。
少女の髪の毛が円に舞い、体は天を仰ぎ、優しく閉じられためのまま、彼女の口は小さな短いあえぎ声とともに吐息をもらした。
しっぽはぴくぴく、激しく揺れていた。



―――×―――×―――×―――×―――×―――×―――×―――×――――



無断延長で少し高めの料金を払った某久保は、未ださめやらぬ夢にくらくらとしていた。
まったく、一体どんな脳みそをした人間がこんなことを考えつくんだか。
少し寒くなってきた風にようやく目を覚まされた某久保は、そんなことを考えながら口元に苦笑ともつかぬ笑みを浮かべていた。
作ったやつのツラが見てみたいものだ―――
まぁ、でも叶わぬ夢だろう。
今までだってそうやって納得させてきた。
Doll clubは特に、あのネズミ王国並みの情報管理がされているんだ。
おれなんかが探りを入れたところでわかりはしまい。
それより、こんな夢見心地を味わえることを幸運に思おう。 彼女たちは手の届くところにいるのだから。
久しぶりに感じた寂しい、苦しい気持ちを抱きながら、久しぶりにつかった、「自分を説得させるための文句」をつぶやきながら、某久保は俗社会への帰途についた。


また別の男が店へと入ってゆく。
カウンターの周りには、店の看板娘たちのカタログがはってある。
その中の一つに男は目をとめると、

「『ドラゴン娘(仮名)』―――オリジナルのキャラクターです。あたらしいシステムを導入しました!現在この娘のモニターを希望。料金は5割増。先着一名様。」
「この子の名前募集します。」

待合いにいる少女の人形に声をかけ、フロントに軽く挨拶すると奥のスタッフと書かれた扉の奥に入っていった。

「受付終了しました。ゴメンネ。」


―――ケースケさん、客はついたようですね。
―――どうでしたか?新しいシステムの方は・・・?

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